後輩との関係づくりに悩んでいる? 「失敗談」と「ペーシング」を意識しよう

職場コミュニケーションの悩みを解消するヒント。コミュニケーション講師の宇佐美陽子さんが届けます。

後輩との関係づくりに悩んでいる? 「失敗談」と「ペーシング」を意識しよう

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こんにちは! コミュニケーション講師の宇佐美です。先日、生まれて初めて登山に行ってきました。場所は神奈川県にある「丹沢大山」という初心者にも優しいと噂の低山。ジーパンにTシャツ、スニーカーといつものカジュアルファッションでも大体オッケーでした。ただ、思った以上に足がガクガクしました(笑)。そんな初登山のナビゲーターは大学時代のアルバイトの後輩。山頂で後輩が入れてくれたコーヒーがとにかくおいしい! 後輩だけど、山登りの大先輩として憧れっぱなしの時間でした。

状況が変われば役割が変わり、指示命令系統だけではない信頼関係がもたらす心地よさがあることを改めて感じた山登り。苦しい道のりも、この人となら乗り越えられる。そんな風に職場の後輩と「仕事のパートナー」になっていくために必要なコミュニケーションとは何か。今回はそんなお話です。

本日のお悩み

こんなお悩みが届きました。

雑務などを後輩たちが進んでやらないことにイラ立つ」(40歳/契約社員)
自分より年下だけど、リーダーシップがとれる人は羨ましく思う」 (39歳/派遣社員)
後輩指導に難しさを感じてしまう」(41歳/正社員)

上司と同じように、後輩も目の上のたんこぶ状態になってしまっている方が多いように感じるお悩みですね。後輩の一つひとつの行動だけを見ることができれば良いのですが、ひとつの行動がその後輩そのものの性格、と思い込んでしまうと余計に苛立ちや、やるせなさは募るような気がします。

後輩に対して湧き上がるイラ立ちと羨望

前回の記事「『上司に振り回されたくない!』を解決する3ステップ」でも書きましたが、上司や後輩との心の距離が近くなることによって、イラ立ちや羨望は起こるもの。ですが、特に「後輩」という肩書きがそのような感情を引き起こす要因にもなっているように思います。

相手の肩書きによる役割ばかりを気にしていると、その人自身を見ることができなくなります。「後輩なんだからこうすべき」という強い思い込みの枠組みに相手をはめようとすればするほど、現実の後輩の姿を見ては、がっかりしたり苛立ったり、羨ましく思いがちになります。その背景には、日本人特有の「上下関係」が関係しているのではないでしょうか。

日本人は立場が上か下かという関係性に慣れ親しんでいます。それは、先生と生徒が根っこにあるのですが、この延長で「先輩と後輩」が発揮されると、自分自身も上の立場としてこうあるべき、という姿が強くなりすぎて、ときに後輩との関係性が“力の関係”になりやすくなってしまいます。

上下関係を横の関係に変える方法

力関係が発揮される上下関係で後輩を見ているときは、信頼関係を築くことは難しいでしょう。

まず一番簡単で、自分自身の感情の整理にもなるやり方から。それは「自分の失敗談を話す」ということです。このとき、自分の身に起きたことを実況中継するような感じで、相手の頭の中により鮮明にイメージできるよう、具体的に話すといいでしょう。

このときのポイントは、失敗したことで、自分自身に生まれたネガティブな感情はどんなものだったのかを話すこと。例えば「今日、朝仕事に行く前にお財布忘れちゃって! 本当ボケボケだよね」といった感じです。「話す」というのは「放つ」こと。恥ずかしい、人には言えないような失敗でも思い切って話して放ってみれば、見栄や照れを手放すチャンスになります。

ちなみに失敗談を話すタイミングはいくつかあるのですが、朝、会って最初に「この間こんな失敗しちゃってさ~」と軽い感じで伝えるのがベストです。仕事の出だしからやる気を見せれば後輩にはプレッシャーになります。しかし、朝から失敗した自分の経験をさらけ出し、「こんなときってどうしてる?」とさりげなく意見を聞いたりすることでキャッチボールが円滑になりそうです。

イラスト:えなみかなお

本音で話せる関係づくりのための話の聞き方

朝から自分の失敗を話すというのは勇気がいることでもありますが、先に弱みを見せてしまえば相手も話しやすくなりますし、気軽に相談する雰囲気が生まれてきます。

そして、後輩から相談があったり、本音を聞き出せそうなタイミングがあれば、さらに信頼関係を築くためにやってほしい技の一つが「ペーシング(pacing)」です。これは話し方や声のトーンを相手に合わせることです。具体的には相手がゆっくり話せばこちらもゆっくり話し、相手が早口で話せばこちらも早口にする。相手が使った言葉と同じ言葉を繰り返して使うなど、相手の会話のペースに合わせていくことで安心感を持って話すことができます。

このとき、勘違いされやすいのが、「目の合わせ方」です。話しをするとき、聞くときは、相手の目を見て! と学校で教わった方が多いと思いますが、実は視線の使い方には3つのパターンがあると言われています。ひとつめは、話をしている間中、相手がこちらをじっと見つめているパターン。こういう場合はこちらもじっと見るようにしてみてください。ふたつめは、相手があまりこちらを見ないパターン。こちらもあまり相手の目を見ないようにしましょう。最後は、相手が時々鋭く見つめて、あとはどこかよそ見をしているパターン。このときは、相手の視線の動きのペースに合わせて話を聞いてみてください。

人は、とにかく話をよく聞いてくれる人に対して心を開く生き物です。相手の話をじっくりと聞いてみることで、「後輩だから」という側面から「その人一個人」としての見え方に変わってくるかもしれません。

まとめ

後輩の前だとカッコつけたくなるし、相手のできない部分に目が行きがちになるかもしれません。ですが、共に仕事の未来像や目的を持つことで、かけがえのない仕事のパートナーになる可能性も秘めています。“後輩”というポジションで相手の良いところが見えなくなってしまうのはとてももったいないと思うので、今日から後輩は“生き別れた弟・妹”だと思って、その後輩の歩んできた歴史をひも解きながら、より良い関係を築いていってくださいね。

次回は「会議を軽やかに乗り越えるスキルを身につけるには?」です。お楽しみに!

(文:宇佐美陽子/イラスト:えなみかなお)

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「人間関係はあなたの言葉でできている」記事一覧

第1回:他人と比較するクセをやめるには?
第2回:「完璧主義でうまくいかない」から脱却するには?
第3回:「上司に振り回されたくない!」を解決する3ステップ
第4回:後輩との関係づくりに悩んでいる? 「失敗談」と「ペーシング」を意識しよう ★現在の記事
第5回:語尾の「ね」がポイント! 苦手な会議を乗り越える魔法のワードとは
第6回:「雑談が苦手」を克服したい! コミュニケーション専門家が教えるコツとは
第7回:「仕事を断るのが下手……」スマートに頼るためのキーワード「KTT」とは?
第8回:「仕事を任せるのが苦手!」なあなたに必要なこと
第9回:初対面で失敗したくない!! 心の距離をぐっと縮める「3秒ルール」
第10回:催促が苦手……! 相手に気持ちよく動いてもらうための伝え方って?
第11回:悪口が多い職場にうんざり……。スマートに対処する3つの方法
第12回:職場で評価される人、されない人のたった1つの違いとは?
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この記事のライター

TCS認定コーチ、コミュニケーション講師
大学在学時よりラジオDJとして活動。10年やってラジオDJの仕事を休止し、自分は本当は何がしたいのだろう? と30代から「自分探し」を始める。しかし完全に迷子になり、NLPコーチングを学ぶ。「訳アリ」な状況をチャンスに捉えることで好転してきた自身の体験を元に、現在はコミュニケーション講師としてお仕事展開中。愛読書は漫画キングダム。趣味はNetflixタイム、瓶集め。