【きのう何食べた?】新時代の上質“飯テロ”ドラマ、完結。「長生きしような、俺たち」!

テレビ東京で放送中のドラマ「きのう何食べた?」のレビュー。ドラマウォッチャー・チンチロ鈴がお送りします。

【きのう何食べた?】新時代の上質“飯テロ”ドラマ、完結。「長生きしような、俺たち」!

『きのう何食べた?』がついに完結。最後の最後まですんばらしかったです。

最終回は、正月にシロさん(西島秀俊)の実家に、ケンジ(内野聖陽)を連れていくというストーリー。男女のカップルが両親に会いに行くのとは、やはりわけが違います。シロさんはいたって平静を装いますが、ケンジはヒゲを剃るか迷ったり、洋服も普段は絶対に着ないであろうトレンチコートをチョイス。ケンジよ、これいつ買ったの? 着こなせてない感が半端ないんですが……。そして手にはとらやの袋。きっと中身は羊羹でしょう。いろんな違和感がある中で、おもたせのド定番のとらやの羊羹を持ってくるあたりが、“何食べ”のおもしろさでもあります。

シロさんの両親に迎えられたケンジは、緊張のあまり仁王立ちで新年のごあいさつ。おせちがきれいに並べられた居間に通され、ビールを注ぎあう男性陣。ここで乾杯、というタイミングで、母・久栄(梶芽衣子)が「矢吹さんのお仕事は美容師さんなんですってね」と、質問するもんで、かかげたグラスがぎこちなくおろされます。母におせちを勧められたケンジが数の子をひと口、そのボリボリと咀嚼音が部屋中に響きわたって超気まずい。そんな母はシロさんを誘って料理を作りに、逃げるように台所へ。献立は、唐揚げと、かぶの葉とじゃこ炒め。低温、高温で二度揚げする唐揚げ、めちゃくちゃおいしそう!

その間、父・廣太郎(田山涼成)とケンジは、シロさんの学生時代の写真を見に2階の部屋へ。シロさんの学生時代の話をして、なんとなく打ち解けた様子のふたりです。シロさんに呼ばれて、4人で宴が再開。母お手製の唐揚げを食べたケンジは、「外サクサクでお肉やわらかい~。もうこのニンニクと生姜が効いている味付けも最高~♡」と、封印していたいつものケンジ節を両親の前で炸裂。それを聞いた母の表情が一瞬でくもり、思いつめたようにこわばった顔に。見かねた父が、母を連れて廊下へ……。戻ってきた母は、うって変わって晴れ晴れとした謎のニコニコ顔に。食事を終え、別れ際には「またぜひ来てくださいね、矢吹さん」と言われて、ケンジもほっと一安心。

その帰り道、シロさんの父が「ずっと聞きたかったことがあったみたい」と、ケンジが切り出します。それは“家でどちらが女の格好をしているのか”ということ。両親の認識では、普段はどちらかが女の役をしている、と思っていたようです。それを聞いて「なんだそれ!」と驚愕するシロさん。先ほど父が、食事中に母を呼び出したのは、“自分の息子は女装なんかしていない”という話をするためだっだんですね。母の上機嫌の真相がわかり納得するシロさんですが、つまり両親は、ケンジが家で女装していると勘違いしたまま。しかしケンジは「そんなことより俺、夢みたい。恋人の実家に遊びに行って、親御さんとごはん食べる日がくるなんて。俺ここで死んでもいい」と、感極まって泣きだします。それに対して「死ぬなんて、そんなこと言うもんじゃない。食いもんは油と糖分控えてさ、薄味にして、腹八分目で、長生きしような、俺達」とシロさん。ああ、大好きな人にそんなことを言われたら、夢みたいに幸せだよね。てか、プロポーズだよね、これ。

“何食べ”では、ロマンチックなことはほとんど起こらないし、歯の浮くような甘いセリフも出てこない。ド定番のシチュエーションで行けば、視聴者を引きつけることができるだろうとわかっていても、そんなありきたりのことはしない。それは原作のよしながふみ先生が、全体を通して同性愛者のリアルであたたかな日常を淡々と描くということに一貫しているからでしょう。恋愛という非日常を、日常の暮らしに落とし込み、その中で愛のカタチ、幸せのカタチ、そして家族のカタチを描いている。

男女のカップルには結婚、妊娠、出産……と人生を激変させるようなビッグイベントがたくさんあって、そのたびに幸せや喜びを感じることができるだろうけれど、同性愛者のカップルは男女に比べて、そういうライフイベントが少ない。でもこのドラマでは、そんなイベントがなくても、毎日の暮らしの中で絆を深めていく姿が、淡々と、丁寧に描かれていて、いろんな気付きがありました。

最終回でも、これまでは人の目が気になって2人で外出するときもデートっぽく見られないように細心の注意をはらっていたシロさんが、ケンジのおねだりを聞いて、女性だらけのカフェでお茶をするシーンがありました。部屋に戻った後、ケンジがシロさんの髪を切っているときに、「お前が幸せを感じるなら、カフェぐらい何度もつき合うよ」とシロさんがひとこと。好き、愛している、なんかよりもずっと心に響く名ゼリフ。からのバックハグ! 最後のアドリブ満載のイチャイチャ料理シーンもたまりませんでした。

シロさんとケンジはもちろんのこと、小日向大策(山本耕史)とジルベールこと航(磯村勇斗)の年の差ゲイカップル、「ビタ一文も渡したくない」のセリフが胸を刺したヨシくん(正名僕蔵)・テツさん(菅原大吉)の年配カップル、そして買い物仲間の佳代子(田中美佐子)一家、シロさんが勤める弁護士事務所のみなさん、ケンジが務める美容院の仲間たち、みんな本当にナイスキャスティングでした。ひとりひとりのスピンオフドラマ作ってほしいくらい! そしてまたシロさんケンジカップルに会える日が来ることを楽しみにしています。

最後までレビューを読んでくれてありがとうございました。チンチロともまたどこかでお会いしましょう♪

(文・チンチロ鈴)

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この記事のライター

小学生の頃に放送されていた『ずっとあなたが好きだった』(1992年)に衝撃を受け、TVドラマ好きに。3姉妹の末っ子のため、チャンネル権争いに負けて号泣することもしばしば。一人暮らしを始めてからは、誰にも邪魔されずテレビ独占で、毎日ドラマ漬けの日々を送る。一番好きな朝ドラは『カーネーション』(2011年下半期)。
twitter:@ChenChiroRin