ダイアナ妃の名言をななめ斬り!「自分はどこか違う場所へ行くことがわかっていました」

矛盾に満ちた世の中を、レジェンドたちはどう渡り歩いてきたのか。ライター・仁科友里さんが名言をひも解きながら、「女の生きざま」をナナメから考察します。

ダイアナ妃の名言をななめ斬り!「自分はどこか違う場所へ行くことがわかっていました」

有名人に関する発言を追っていくと、洋の東西を問わず、同じような発言をしていることに気づくのです。

たとえば、過去にユーミンの持つ霊的なチカラについてご紹介したと思いますが、山口百恵さんも不思議な能力を持っています。百恵さんはオーディション番組「スター誕生!」(日本テレビ系)出身ですが、「蒼い時」(集英社文庫)によると、審査の途中に「自分が合格する姿がはっきり見えた」と書いています。

故・ダイアナ妃(以下、ダイアナ)も同じようなチカラを持っていたようです。「完全版 ダイアナ妃の真実―彼女自身の言葉による」(早川書房)によると、13歳の時に「自分はどこか違う場所へ行くことがわかっていました」「私はみんなが注目している人と結婚するってことがわかっているの」と周囲に話していたそうです。これだけだと、ちょっと中二病のようですが、王室入りしてすぐ「自分は王妃にはならないだろう」と感じていたそう。思考のゆがみが感情や体調を乱すと考える認知行動療法的な観点から言えば、「そうやって思い込むから、そういう結果が出た」と言えるのかもしれませんが、思い込みやそこらでプリンセスになるとは思えない。やはり運命的な何かを持っていたと考えていいのではないでしょうか。

ここでダイアナの人生を振り返ってみましょう。ダイアナは名門スペンサー家に生まれます。祖母のレディ・ルース・ファーモイはエリザベス皇太后に女官として使えており、日常的に王室のメンバーと会う機会があったそうです。母親の不倫で両親が離婚、このことはダイアナの心に深い傷を残します。勉強は苦手だけれど、運動が得意で子どもが好きなダイアナは、幼稚園の先生としてロンドンで働いていました。一方のチャールズのお妃選びは難航していました。名門貴族出身で、イギリス国教会の信者で、処女。これが王妃としての条件ですが、チャールズが33歳になってしまったことで、お妃候補の年齢も上がってしまう。となると、その女性が処女でない確率も上がっていくわけです。もともとはダイアナの姉がチャールズ皇太子と交際し、結婚も噂されていましたが、破局。その後、美しく成長した13歳年下のダイアナに心を奪われ、プロポーズします。恋愛結婚のように見えますが、子孫繁栄のため、また王室のイメージのためにふさわしい女性を選んだのではないでしょうか。

というのは、チャールズはダイアナにプロポーズする一方で、カミラ夫人(当時)と不倫をしていたのです。ダイアナは混乱し、過食症を発症。婚約期間の5か月の間にウエストは73センチから59センチになるまで痩せてしまうのです。「結婚をやめたい」と申し出たダイアナですが、世界的慶事の前に、個人の意見など通りません。姉たちにも「運が悪かったのよ」「たいしたことではない」となだめすかされ、結婚することになってしまいます。

イラスト:井内愛

ロイヤルファミリーの一員となり、ハネムーンといってもマスコミに追い回され、常に誰かがそばにいる生活。チャールズと二人きりになる時間はありません。不倫を続けるチャールズへの不信感から、ダイアナの過食症はますますひどくなり、骨が浮き出るまで痩せていったそうです。自分が原因を作っておきながら、チャールズは知らんぷり。ダイアナは自殺を4~5回もはかりますが、チャールズは「オオカミ少年(死ぬ気もないのに、自分を脅す)」とみなし、無視を決め込みます。

最初から夫婦としての相性も悪いし、王室に向くタイプでもなかったと思いますが、その一方で、ダイアナは「持っている」プリンセスだと思うのです。

過食症を患うと、嘔吐の際の酸で歯が溶け、髪や肌にも影響があるそうですが、ダイアナにはそれがまるでなかった。傍目には、健康美をほこっていた若い女性が、プリンセスとなってどんどん洗練され、ろうたけた美しさを得たように見えたはずです。夫婦仲はよくなかったものの、一番の仕事である世継ぎを生むことをすいすいこなし、妊娠中に階段から飛び降りて自殺を図るものの、お腹の子どももダイアナも無事でした。ますます美しくなり、世継ぎももうけた強運の妃。王室が合わないのに、誰よりも人目をひいてしまう。これが運命でなくて、なんでしょうか。

次第に、ダイアナの人気はチャールズをしのいでしまいます。公務の際、沿道に集まった庶民に「ダイアナを見たかった」とはっきり言われることもあり、チャールズは次第にダイアナをねたむようになります。ダイアナの仕事の邪魔をするようになり、ダイアナはどんどん孤立していったようです。

ダイアナが他国のプリンセスと決定的に違う点は、ホームレスやがん患者など厳しい立場を強いられている人に積極的に愛情を注いでいた点です。インドのマザーテレサのもとを訪れた際、テレサは「他の人を癒すためには、あなた自身が傷つかないといけません」と言ったそうです。王室での生活に傷つき、その経験が恵まれない人への支援のモチベーションとなって、世界的なプリンセスになった。そう考えた場合、ダイアナは苦労を無駄にせず、むしろ飛躍に役立てる生命力の強さを持っているのではないでしょうか。

非公式の別居を経て、ダイアナは離婚を決意。高級デパート「ハロッズ」オーナーであるエジプト人富豪のジュニア、ドディ・アルファイドと交際を始めます。パリでデートを楽しむ二人でしたが、パパラッチとカーチェイスをした挙句、交通事故で亡くなってしまいます。36歳の若さでした。この事故には不可解な部分が多く、暗殺だと見る人もいるようです。

貴い命が失われたにも関わらず、この言い草は不適切だと重々承知の上で書きますが、これもまたダイアナがプリンセスとして「持っている」証拠だと思うのです。お姫さまはいつまでも幸せに暮らしましたとさ、というありきたりな結末と、思いもよらぬ悲劇、どちらが強く人の心に残るかと言えば、断然後者だと思うからです。

生前、「人々の心の中の王妃でありたい」と語っていたダイアナ。皮肉にもあまりに早い死は、世界中の人の心に深く刻みこまれてしまいました。愛されの代名詞のプリンセスですが、多くの人に愛されることは、殺意を抱かれるほどの嫉妬や孤独に耐えることと、紙一重なのかもしれません。

(文:仁科友里/イラスト:井内愛)

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この記事のライター

1974年生まれ。OL生活をつづったブログが話題となり、2006年「もさ子の女たるもの」(宙出版)でデビュー。「週刊文春」「週刊女性」「女性セブン」にタレント論、女子アナ批評を寄稿。2015年「間違いだらけの婚活にサヨナラ!」(主婦と生活社)が異例の婚活本として話題を呼ぶ。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」