黒柳徹子の名言をななめ斬り!「これだけ言われると、面倒くさくない?」

矛盾に満ちた世の中を、レジェンドたちはどう渡り歩いてきたのか。ライター・仁科友里さんが名言をひも解きながら、「女の生きざま」をナナメから考察します。

黒柳徹子の名言をななめ斬り!「これだけ言われると、面倒くさくない?」

人間を善意と悪意の二つにわけるとしたら、もちろん私は悪意的な人間になるのですが、それでは、善意がいいもので、悪意は悪いものかというと、そうとも言い切れない気がします。売れている芸能人が時折見せる悪意に気づくこともあるのです。

たとえば、黒柳徹子(以下、テツコ)。
戦後最大のベストセラー「窓際のトットちゃん」(講談社文庫)の作者で、ギネスブックにも掲載された「徹子の部屋」(テレビ朝日系)の司会をし、ユニセフ親善大使としても知られています。今も女優として舞台に立つテツコのどこに悪意が?と思う方も多いでしょうが、まずテツコの人生を振り返ってみましょう。

テツコはNHK交響楽団のコンサートマスターも務めたバイオリニストであるお父さんと、声楽家であるお母さんの間に生まれます。お母さんの人生は朝ドラ「チョッちゃん」としてドラマ化されましたので、ご存知の方も多いことでしょう。音大を出たテツコは、NHK放送劇団のオーディションを受けます。6000人の応募のなかから、13人が合格する狭き門をくぐり抜けるのですが、「トットひとり」(新潮文庫)によると、合格の理由は「テツコがあまりにも何もできなかったから」。私がオーディションを受けた人なら、じゃ、なんで採るんだよと審査員の胸倉をつかんでやりたいところですが、何もできないけど、一目みたら忘れない何か、つまりスター性を持っていたのでしょう。

ちょうど個性を尊重する時代が来ていたこともあって(このあたりも、徹子が強運である証拠です)、徹子はテレビにひっぱりだことなります。過労で倒れた時に、自分の役がセリフ一言で消されることを知った徹子は「テレビは使い捨て」という現実に気づいてしまう。医師から「やりたい仕事だけしなさい」というアドバイスを受けたテツコは、そのとおりにすることを決め、単身ニューヨークに留学を決めます。周囲からは「休んでいたら、仕事がなくなる」と言われたそうですが、今のように気軽に海外に行ける時代でなかったからこそ、意味があったのでしょう。テツコのトレードマーク、たまねぎヘアはニューヨーク在住の日本人美容師が振袖にもドレスにも似合うヘアスタイルとして、考案したのだそうです。前回ご紹介した森英恵センセイとの交友が生まれたのも、このニューヨークでした。

テツコのニューヨーク帰りは吉と出ました。ニュースショーの司会の話が舞い込んできたのです。それまでのニュースショーは男性がメインで、女性はアシスタント。女性は主婦経験があり、服装も地味なものと決まっていたそうですが、「自由に生きる女性の立場から、発言してほしい」と口説かれたそうです。このショーの後番組が「徹子の部屋」です。その奇想天外な天真爛漫さから、芸人でも攻略法が読めず、「アメトーーク」(テレビ朝日系)で、「徹子の部屋芸人」と称して、反省会が開かれたりもしています。

テツコの天真爛漫エピソードで、私がウケたのは「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載された酢卵の話です。100歳になってもスキーをしていたプロスキーヤーの三浦敬三氏に、長生きの秘訣として、酢卵(酢の中に生卵を入れると、卵が跡形もなく溶ける。それを牛乳とヨーグルトときなこと黒ゴマの中にいれて飲む)をあげていました。テツコがこの酢卵を飲みだしたところ、骨密度がなんと120%になったそうです。ユニセフ関連の仕事でカンボジアに行ったテツコは派手に転んでしまったのですが、骨折は免れた。やっぱり酢卵ってすごいわねという話をさんざんした後、「酢卵だけじゃなかったと思います。母も強かったですから」と「骨が強いのは、遺伝」としめくくってしまうのです。今までの話は何だっだんだよ、テツコ!

イラスト:井内愛

このように想像もつかない天然トークが一般的なイメージだと思いますが、「徹子の部屋」を見ていると、悪意よりの発言をしていることにも気づくのです。先日、波乃久里子(18代目中村勘三郎の姉)と藤原紀香が出演した時のこと。二人は舞台「華の太夫道中」で共演をするので、ありていに言えば宣伝です。波乃は結婚前に愛之助から紀香を紹介されていたそうですが、「こんなきれいな方をおもらいになる」「愛之助さんは結婚後、芝居が変わってとてもいい」とベタ褒め。「家に帰ったら、こんなきれいな方がいらっしゃるなんてすばらしい」といった具合に「紀香、きれい」を繰り返すのでした。

おそらく、善意的な人は、いい話だと理解するのでしょう。けれど、私は悪意的な人間なので、どうかなぁと思うのです。紀香が美しいのはみんな知っていること。女優の外見だけをほめるというのは、演技力のある一人前の女優として認めていないから、もしくはほかに話すことがないからと思えなくもない。宣伝で出ているのなら、紀香はこんなに芝居を頑張っているという話をしてもいいのではないかと思うのです。

司会であるテツコは冷静なのでした。舞台のポスター撮りの際、愛之助はわざわざ見に来てくれて衣装を直していた、いいわぁ、優しいわぁとほめそやされると、「後で何か言われるとヤダってのがあるんじゃない?」、紀香をほめまくる波乃に対し、「うらやましいとかなんとかこれだけ言われると、面倒くさくない?」とばっさり行くのです。

テツコ発言を善意が悪意かでわけるのなら、悪意的でしょう。しかし、番組の司会者というバランスを取る役目からすると、この悪意は必要不可欠だと思うのです。「はい、私はきれいです」「はい、私は愛されています」と紀香が言えるわけがないのですから、このほめ殺しをやめさせないと、紀香が話しづらく、面白いエピソードが引き出せないので番組のためにならない。場合によっては、紀香が叩かれる。出演者のファンにもファンでない人にも見てもらうためには、中立という意味の悪意は必要なのです。

ほめることを善意、下げるようなことをいうのが悪意というのが一般的な解釈だと思いますが、私はそうは思いません。相手が答えにくいこと、そう答えるしかない質問をすることはみな悪意です。反対に、相手が自分のしたい話ができるように持って行くなら、たとえ下げているように思えても、それは善意的であると思います。

善意だけでもだめ、悪意だけでもだめ。両方を兼ね備えた上で、バランスを取ること。悪意にかたむきがちな私は、頭にたまねぎを乗せて反対したいと思います。

(文:仁科友里/イラスト:井内愛)

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この記事のライター

1974年生まれ。OL生活をつづったブログが話題となり、2006年「もさ子の女たるもの」(宙出版)でデビュー。「週刊文春」「週刊女性」「女性セブン」にタレント論、女子アナ批評を寄稿。2015年「間違いだらけの婚活にサヨナラ!」(主婦と生活社)が異例の婚活本として話題を呼ぶ。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」

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