宇野昌磨&紀平梨花、ダブル表彰台! 四大陸で日本人選手たちが見せた新たな可能性

フィギュアスケート、なかでも男子選手のすぐれた体術をこよなく愛するエンタメライターが、素人なりの偏愛を綴る、冬季限定コラム。

宇野昌磨&紀平梨花、ダブル表彰台! 四大陸で日本人選手たちが見せた新たな可能性

宇野昌磨、田中刑事、友野一希、坂本花織、三原舞依、紀平梨花。日本が誇るトップスケーター6人が出場し、世界の競合とぶつかり合った2019年四大陸フィギュアスケート選手権が幕を下ろしました。宇野選手&紀平選手が負傷中という心配な情報とともに始まった大会でしたが、結果はその2人がダブル逆転優勝! 三原選手が3位、坂本選手が4位と大健闘したほか、田中選手は7位、友野選手が12位につけました。悔しさを味わった選手もいますが、それぞれが課題に挑み、新たな可能性を見つけた重要な大会だったと思います。

まずはなんといっても、四大陸初優勝の宇野選手! 右足の負傷を抱えての出場で、SP(ショートプログラム)4位発進となったときはハラハラしましたが、FS(フリープログラム)で今季の世界最高得点を記録。FSを滑り切った瞬間、宇野選手は力尽きたようにリンクに倒れ込みました。普段は冷静な彼のそんな姿を見たのは初めてで、どれほど激しく苦しい闘いだったのかが伝わります。FS のTES(技術点)は104.48、PCS(演技構成点)は全選手中唯一の全項目9点超え。今回は4回転ジャンプを1本減らして3本にしていたため、まだスコアに伸びしろがあるのがスゴい! いつも「練習してきたことが、確実に試合に出る」と話している宇野選手。そうだとすると、今回見せてくれたすさまじい爆発力も、時間をかけて蓄えてきたマグマの表出なんでしょう。昨年の全日本選手権でも、負傷をはねのけて優勝した姿に変革の兆候を感じましたが、今大会でさらに宇野選手の新章の始まりを確信しました。

7位の田中選手は、このところなかなか結果を出せずに苦しんできましたが、今回は4回転2本とトリプルアクセル(3回転半)を成功させる会心の演技! 大技ジャンプがキマッたことで、ダイナミックな鬼ステップもリンクに映え、プログラム全体が攻撃力を増したように見えました。攻撃力が高すぎて(?)、3連続ジャンプで壁に衝突しそうになるという惜しいミスも発生しましたが……。一番悔いが残ったのは、7位のためEX(エキシビション)で「ジョジョの奇妙な冒険」が見られなかったこと。世界選手権では、渾身のジョジョ立ちでシビれさせてほしいです!

12位の友野選手は、SPでもFSでもミスが出てしまいましたが、表現面では確実に一皮むけたんじゃないでしょうか。傑作と名高いFS「リバーダンス」はもちろん、個人的にはSPの「ニュー・シネマ・パラダイス」も、指先までしなやかな手の表現や、彼自身が持つイノセントな魅力を際立たせるハマリプロだと実感しました。今大会では残念な結果に目を潤ませていましたが、大会の数日後に見た本田真凜選手のInstagramには、キラキラした目でハンバーガーを食べる友野選手が写っていてホッとしました! 誰もが味方になってしまうような愛され力と、ひたむきさは彼の武器。19歳でシニアデビューした遅咲きの選手だけに、これからも一歩ずつ着実に成長する姿を見せてくれるはずです。

イラスト:ミーハーdeCINEMA

そして女子1位の紀平選手は、公式練習中に指を亜脱臼するという困難を乗り越えて見事優勝! FSはトリプルアクセル2回の予定を1回に変えた構成でしたが、すべての要素がほぼパーフェクトで、向かうところ敵なしのオールラウンダーぶり。紀平選手は以前、「調子が悪いときでも“できる”と思って、自分を勘違いさせちゃダメ」と話していたことがあります。小手先のメンタルコントロールではなく、現実をしっかり見つめて、できることを確実に遂行する。フィギュアだけでなくすべての職業人に当てはまるような法則を、16歳にして極めているなんて、もはや弟子入りさせてほしいくらいのクレバーさ。これからもついていきます! という気持ちです。

SP8位だった三原選手は、FSの鮮やかな巻き返しで3位に。2017は優勝、2018年は2位、今年は3位と、3年連続で表彰台に立ちました。三原選手といえば、2017年に優勝した際も、SP4位からの逆転勝利。2017年の世界選手権でも、SP15位から総合5位に浮上しただけに、今回もドラマティックな逆転劇があるかもしれないと思っていました! FSの3回転+3回転でフワリと舞い上がり、着氷後にニコッと微笑んだ瞬間、自信を持って滑れていることが伝わりました。今大会で見せた底力は、確実に来シーズンにつながっていくと思います。

昨年の大会優勝者、そして新・全日本女王というビッグタイトルを携えて戦いに挑んだ坂本選手は、4位という結果でした。SPは2位発進で、73.36点という自己ベスト記録。坂本選手の3回転+3回転は、ファーストジャンプの着氷がスルスルっと伸びる流れの良さが天才的ですが、今回も惚れ惚れするような伸び具合です。FSでも3回転+3回転はドッカーンと跳んだのですが、その後のジャンプでもったいないミスを連発……。原因は「いつもと違って、“何点取れば勝てる”と思ってしまった」ことだとか。全日本女王のプレッシャーは大きいと思いますが、気持ちを一度リセットして、世界選手権では元気いっぱいの笑顔を見せてくれると信じています。

今回は日本人スケーターをクローズアップしましたが、四大陸選手権における個人的な楽しみは、普段あまり大きく取り上げられない海外選手の紹介映像が見られることです。今年もヴィンセント・ゾウ(ヴィンセント・ジョウ)選手に「頑張るゾウ」と言わせる無茶ぶりと、それに笑顔で応えるジョウ選手の人柄の良さ、開催国アメリカのブレイディ・テネル選手&マライア・ベル選手のキラキラ美女ぶりなど、レアな映像を楽しませてもらいました。競技的にも、SPで100点を超えたジョウ選手、グランプリファイナル3位&四大陸6位のチャ・ジュンファン選手、4回転に挑んだ女子・トゥルシンバエワ選手などの活躍に、新時代への突入を予感。日本のホープたちとのドラマティックな戦いが始まりそうです!

(文:白山氷子/イラスト:ミーハーdeCINEMA)

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この記事のライター

ライター、インタビュアー。映画雑誌、テレビ雑誌、Webサイトなどを中心に、エンターテインメント記事全体に関わる。主なインタビュー対象は俳優、女優、アイドル、映画監督、プロデューサーなど。趣味は読書、映画鑑賞、音楽鑑賞。フィギュアファン歴は10年ほどで、一番好きなプログラムはプルシェンコ選手の『ニジンスキーに捧ぐ』。