男子のポテンシャル覚醒、女子のヒリヒリするカッコよさ。全日本フィギュアで目撃した、偏愛的名場面7つ!

フィギュアスケート、なかでも男子選手のすぐれた体術をこよなく愛するエンタメライターが、素人なりの偏愛を綴る、冬季限定コラム。

男子のポテンシャル覚醒、女子のヒリヒリするカッコよさ。全日本フィギュアで目撃した、偏愛的名場面7つ!

新年明けましておめでとうございます! 年は明けましたが、全国のフィギュアファンは、いまだ昨年末の全日本フィギュアスケート選手権の余韻が抜けていないんじゃないでしょうか? 3連覇を果たした宇野昌磨選手、2位の髙橋大輔選手、3位の田中刑事選手を始め、男子選手たちの鬼気迫る顔。新女王・坂本花織選手、2位の紀平梨花選手、3位の宮原知子選手を始め、とんでもなく強くてカッコいい女子選手たち……。そんな鬼リピート&一時停止の嵐だった試合を振り返りつつ、個人的にリピートしまくった偏愛的名場面を「いっちょかみ」します!

001 宇野昌磨選手、ショートプログラムで気迫のスイッチオン!

直前練習で足をケガしてしまった宇野選手ですが、SP冒頭の4回転からガッツリGOE(出来栄え点)+3.61を稼ぐ男気ジャンプ。さらにステップの途中でひざをついた時、痛そうに顔をしかめたものの、すぐに気迫でスイッチオン。渾身のノーミス演技で、フィニッシュの後は手を振り下ろすようなガッツポーズをキメました。その姿は、まるで煙が立ち上ぼりそうな荒々しさで、今までと何かが違う! 宇野選手は本当に本当に小さい頃からメディアに出ているので、ずっと“宇野昌磨クロニクル”を見守っている気分の国民も多いと思いますが(※私だけでしょうか)、2018年の全日本を機に、彼のヒストリーに新たな変革が起きるんじゃないか……。そんなことまで妄想してしまうような、スゴイものを見せてもらいました。

002 髙橋大輔選手、直前練習で超絶キレイな4回転ジャンプ!

復帰した際に「全日本のFS(フリープログラム)で最終グループに入ること」を目標に掲げた髙橋選手が、見事に有言実行。復帰してからまだ試合で4回転は跳んでいませんでしたが、全日本に向けて調子を上げ、FSの直前練習で超絶キレイな4回転を! 本番ではうまく入らず3回転になってしまいましたが、練習とはいえ全日本の大舞台で髙橋選手の4回転を見られるなんて、引退会見をした4年半前にはまっっったく予想できなかった……。復帰後は何度も何度も「レジェンドが帰ってきた」と言われている髙橋選手ですが、いやいや、彼は今も現在進行形でレジェンド(伝説)を作っているんです!! FS後半は疲れが出て崩れてしまいましたが、ステップでグイグイと速度を上げて踊る姿は、まるでそれが本能に組み込まれている野生動物のごとく……。と、見る者すべてをポエマーにしてしまうような唯一無二の芸術性を、テレビの地上波で見られる幸せを噛みしめました。試合後も現役続行すると宣言してくれた彼のレジェンドは、まだまだ続きます。

003 山本草太選手、フリー冒頭で4回転成功 

3度に渡る脚の手術を乗り越え、1回転ジャンプから再スタートを切った山本選手が、ついに、ついに試合で4回転を決めました……。しかもGOEでしっかり+1.76がついている! 昨年の全日本では「ジャンプへの恐怖がある」と話していた山本選手にとって、ジャンプを跳ぶことはまさに戦い。勇敢な表情がFSの「信長協奏曲」の世界観と重なり、無邪気な天才少年から、とてつもなく大きな人間に成長していることを実感しました。

004 山隈太一朗選手、トリプルアクセルで転倒した後の30秒間

全日本初出場の山隈選手の演技は初めて見ましたが、「ずっと夢に出てきた舞台。家に帰るまでのすべてを楽しみたい」という、遠足のようなワクワクコメントにまず心を奪われてしまいました。プログラムはSPもFSも映画音楽で、映画と音楽への愛が感じられる演技。FSでは、トリプルアクセルでちょっと珍しい転倒の仕方をしてしまいましたが、その後すぐテンポアップした曲に乗って客席を巻き込み、躍動的な世界観をキープしました。アーティスト性に独特の愛嬌がプラスされたニュータイプという印象で、大物になりそうなポテンシャルを感じます!

005 紀平梨花選手、FSの3連続ジャンプで奇跡のリカバリー

イラスト:ミーハーdeCINEMA

これまでも薄々感じていましたが、今大会で再確認しました。紀平選手、めちゃくちゃカッコいい! SPで5位と出遅れながらも、FSの神演技で2位に浮上した実力もさることながら、リカバリー(※ジャンプで失敗した際に、スコアダウンを最小限にするため別のジャンプでカバーすること)がスゴすぎる! 3連続のファーストジャンプの着氷が乱れた瞬間、その乱れをオイラージャンプ(※1回転ジャンプ)として利用し、最後に2回転をつける。こんなリカバリーをとっさにできてしまう16歳って……。もちろん、シンプルに運動神経がいいところにもシビれます! 試合では禁止されていますが、バックフリップ(※バク宙。フィリップ・キャンデロロ、ジェレミー・アボットなどの得意技)もできちゃいそうだな、見てみたいな……と勝手に夢見ています。

006 最終滑走・坂本花織選手のスコアが出た瞬間

女子選手が神演技続きでデッドヒートを繰り広げるなか、SP、FSとも会心の出来だった坂本選手が文句ナシの優勝! 単純比較はできませんが、総合得点228.01は、男子でも4位に入れてしまうハイスコア。ものすごい回転速度の3回転+3回転は、もっと加点してあげてほしいくらい! 演技を終えた坂本選手は、中野園子コーチにキスをお見舞いし、スコアが出ると「あああーーー!!」と叫んで目を見開く天真爛漫さで、オフリンクでも優勝レベルのパフォーマンス。きっと日本中にファンが激増したことでしょう。

番外編:島田高志郎選手&ステファン・ランビエールの2ショット

今シーズン屈指の名プログラム、島田選手の「Adios」と「ブエノスアイレスの冬」。振付を手がけたコーチのランビエールが、島田選手とキス&クライに座っているショットは、美しすぎて思わず一時停止。現役時代は世界中がひれ伏すオーラを放ったランビエールは、無骨な特大バッグやティッシュケースを持っていても、やっぱりすごい存在感……。さらに、友野一希選手の振付を担当したミーシャ・ジーも帯同していたり、複数の選手の振付を手がけたジェフリー・バトルの名前が何度もアナウンスされたり。現役復帰した髙橋選手を含め、偉大な元選手たちがDNAを注ぎ込んでくれているような感覚がありました。

女子のヒリヒリしたデッドヒートや、髙橋選手&宇野選手の奇跡の対決など、稀に見る盛り上がりを見せた全日本フィギュア。どの選手もケガすることなく、今年さらに飛躍して、また年末の全日本でぶつかり合う。そんな1年になることを祈っています。


(文:白山氷子/イラスト:ミーハーdeCINEMA)

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【いっちょかみフィギュア<記事一覧>】
第1回 おかえりなさい、髙橋大輔! サプライズ復帰で再着火したフィギュア熱
第2回 羽生結弦がプルシェンコ&ウィアーの名プログラムをトリビュート!
第3回 トリプルアクセルとともに生きた浅田真央への愛を叫ぶ!
第4回 バトル、ランビエール、アボット……振付師になった名選手たち
第5回 セルゲイ・ヴォロノフ、31歳の戦いはデニス・テンと共に
第6回 全日本フィギュア選手権で目撃した、偏愛的名場面7つ!
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この記事のライター

ライター、インタビュアー。映画雑誌、テレビ雑誌、Webサイトなどを中心に、エンターテインメント記事全体に関わる。主なインタビュー対象は俳優、女優、アイドル、映画監督、プロデューサーなど。趣味は読書、映画鑑賞、音楽鑑賞。フィギュアファン歴は10年ほどで、一番好きなプログラムはプルシェンコ選手の『ニジンスキーに捧ぐ』。