「有価証券報告書」は上場している企業が、事業年度ごとに継続して会社業績などを開示する書類です。
投資をするなら、企業が「どのような事業を行っているのか」「どの程度の利益を得ているのか」などを知る必要があります。
上場企業の経営分析を行うには、この有価証券報告書を活用しましょう。
しかし実際には100ページ前後で構成される有価証券報告書もあり、「どこ」を「どう読むのか」がわからない人が多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では有価証券報告書を有効に活用するために、有価証券報告書の概要とその読み方のポイントを紹介していきますね。
有価証券報告書とは、投資家が業績や今後の見込みを知るための書類
有価証券報告書は、上場する企業が事業年度ごとに作成する資料です。
その企業の決算発表から3カ月ほど期間が空いてしまいますが、その分いろんな情報が盛り込まれています。
本文は二部に分かれており、第一部が「企業情報」、第二部は「提出会社の保証会社等の情報」です。有価証券報告書は、企業の情報が書かれている第一部がメインとなります。第一部に記載される内容を見てみましょう。
第一部 | 内容 |
---|---|
第1 企業の概況 |
・主要な経営指標の推移 ・沿革 ・事業の内容 ・関係会社の状況 ・従業員の状況 |
第2 事業の状況 |
・業績等の概要 ・生産、受注及び販売の状況 ・経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ・事業等リスク ・経営上の重要な契約等 ・研究開発活動 ・財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 |
第3 設備の状況 |
・設備投資等の概要 ・主要な設備の状況 ・設備の新設、除却等の計画 |
第4 提出会社の状況 |
・株式等の状況 ・自己株式の取得等の状況 ・配当政策 ・株価の推移 ・役員の状況 ・コーポレート・ガバナンスの状況等 |
第5 経理の状況 |
・連結財務諸表等 ・財務諸表等 |
第6 提出会社の株式事務の概要 |
- |
第7 提出会社の参考情報 |
・提出会社の親会社等の情報 ・その他の参考情報 |
有価証券報告書はここからさらに細分化されています。大まかに書いてもこれだけの内容が盛り込まれているとなると、最初から最後まで、すべて読むのは大変ですよね。
そこで次の項目では、特に注目すべきポイントを紹介します。
「紙一枚読めばいいだけになる」というわけではありませんが、読む内容が減ればかなり楽になりますよ。
注目すべきは3項目!有価証券報告書の読み方
有価証券報告書で特に注目すべきなのは、次の3項目です。
- 第1 企業の概況
- 第2 事業の状況
- 第5 経理の状況
それぞれの項目でどんなところをチェックするべきか、読み方のポイントを見ていきましょう。
有価証券報告書のポイント1、「第1 企業の概況」
「第1 企業の概況」では、「5 従業員の状況」をチェックしましょう。記載されている内容は次のとおりです。
- 従業員数
- 平均年齢
- 平均継続年数
- 平均年間給与
ここでは平均継続年数に注目しましょう。平均継続年数があまりにも短い企業には注意が必要です。
平均勤続年数が短い場合、離職率が高い可能性があります。
例えば離職率高い原因が「労働環境」にある場合、ニュースになるような大きな問題に繋がることもあるからです。
ただし、次のような場合にも平均継続年数は短くなります。
・新しく採用した社員数が全体の過半数を占める
これらの場合、離職率が高いわけではなく、ただ「入社してからの年数が短い社員が多い」ということになります。
有価証券報告書のポイント2、「第2 事業の状況」
「第2 事業の状況」では、「1 業績等の概要」「3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題」「4 事業等のリスク」に注目しましょう。
「1 業績等の概要」には、直近の業績やセグメント別の業績、地域別の業績などがまとめられています。「どのような事業を行っているか」「どのような部門があるか」、それぞれ「どのくらい利益を出しているか」などが大まかにわかります。
なかにはセグメントが単一の企業も。そういった場合には商品別の業績など、セグメント別以外の内容で記載されています。
「3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題」や「4 事業等のリスク」に書かれているのは、「その企業がどのように課題設定をしているのか」や「その企業にどのようなリスクがあるのか」です。
特に課題設定に関しては、直近2~3年分の有価証券報告書を読むことで、その企業が課題にどのように向き合っているのかを読み取ることができます。
これらの「第2 事業の状況」に記載されている内容については、それぞれの企業の特徴を知るために、競合他社と比較するのがオススメです。
有価証券報告書のポイント3、「第5 経理の状況」
「第5 経理の状況」では、各種財務諸表が記載されています。「1 連結財務諸表等」のなかでも次の3つをチェックしましょう。
- 連結貸借対照表
- 連結損益計算書
- 連結キャッシュ・フロー計算書
貸借対照表とは、企業が事業資金を「どのような状態で保有しているか」や「どのように集めたか」を見るための書類です。資産・負債・資本に分類され、記載されています。
損益計算書は、企業の「利益」に注目し、期間ごとの経営成績を見ることができる書類です。
キャッシュ・フロー計算書では、「実際のお金の流れ」からその企業の経営状態を知ることができます。
有価証券報告書から企業の経営状態を分析しよう
いくつもの銘柄を売買している人などは、企業ひとつひとつの有価証券報告書を最初から最後まで読むのは大変ですよね。
ここで紹介したのは、有価証券報告書を全て読むのが難しい人のための「少なくともここだけはチェックしておきたい!」というポイントです。
「ここだけ押さたら完璧!」というわけではありませんが、ポイントを押さえておくだけでも、株を売買するための判断材料を増やすことができますよ。
また有価証券報告書は決算発表から3カ月以上あとに発行されます。決算内容をいち早く知りたい場合は、有価証券報告書の前に発行される決算短信をチェックしてくださいね。