世界的に有名なアメリカの投資家、ウォーレン・バフェットを知っていますか?2016年のフォーブス世界長者番付・億万長者ランキングでは第3位にランクインし、608億ドル(約6.9兆円)の資産を有する大金持ちです。
ウォーレン・バフェットはわずか2万ドルの資産から、長期的な集中投資や企業買収を行うことでここまで資産を増やしてきました。
バフェットのように長期投資を軌道に乗せることができたら、常に変動する株価に一喜一憂することなく、安定して資産を増やすことができます。
しかしバフェットの投資術をまねするには、まずはどのような条件で投資先を選んでいるのかよく知らなければなりません。
また、ウォーレン・バフェットの投資術は、日本市場では通用しないといわれています。なぜ通用しないのか、その理由も紹介します。
バフェットの名言、愚か者でも経営できるビジネスに投資しなさい
「愚か者でも経営できるビジネスに投資しなさい。なぜなら、どのビジネスにもいつか必ず愚かな経営者が現れるからだ」これはウォーレン・バフェットの名言の一つです。
これは言い換えれば「たとえ何が起きてもビクともしない、しっかりした経営基盤のある投資先を選びなさい」という意味です。
その投資先の選び方にはバフェット自身が設定した厳しい条件が用いられます。次にバフェットが教える良い投資先の条件について紹介します。
2,事業内容がシンプルで自分が理解できる企業
3,他社のまねできないオリジナリティーを持った企業
4,社会にとって欠くことができない事業を行う企業
5,ROEが高く(20%以上)株主還元に積極的な企業
1株あたりの利益(EPS)÷1株あたりの株主資本(BPS)で求められる株主資本利益率のこと。株主資本が企業の利益にどれだけつながったかを表します。ROEが高いほど、お金を効率的に使って稼げている企業(収益性が高い企業)だと判断されます。
例えば、ウォーレン・バフェットはコカ・コーラの筆頭株主です。それは世界で愛されているコカ・コーラが、今後飲まれなくなることはまずありえないから、というシンプルな理由から。
またコカ・コーラ社は毎年1兆円の利益を出し、ROEは25~30%を保つ優良企業。上に挙げた条件にぴったり当てはまりますね。
バリュー株投資とは?バフェットは株価暴落時に目当ての株を買う
優良企業の株を安く買うことができたらお得ですよね。株の世界では「割安で買う」という言い方をします。
ウォーレン・バフェットが得意とするのは、株を「割安で買う」バリュー株投資(割安株投資法)です。バリュー株投資とは何かを説明します。
株価が暴落する理由は業績が不調な場合や、経営トップが不祥事や法律違反をした場合などが挙げられますが、その他にもその企業の経営自体に問題がない場合もあります。
・世界同時株安の影響による株の暴落
このような理由があれば、たとえ業績に落ち度がなくても自動的に会社の株は暴落します。
しかし暴落した時が最もお得に株を買うことができる「割安」の時期に当たるのです。バフェットはこの方法で過去何度も企業の買収を行い、大きな利益を得ています。
バリュー投資については、「バリュー投資とは!メリットとデメリットを解説」でも詳しく紹介しているので、ぜひ読んでみてくださいね。
暴落したアメックス株を買い、倒産の危機を救ったバフェット
今では世界屈指のクレジットカード会社として有名になったアメリカン・エキスプレスですが、1960年代、ある詐欺事件に巻き込まれ、倒産の危機に直面したことがあります。まさに企業の業績自体に問題がないケースですね。
当時、他の投資家がアメリカン・エキスプレス社の株を一斉に売り始めた時、バフェットは暴落した株を買いました。
街では顧客がいつも通りアメックスカードを使い、銀行や旅行代理店はトラベラーズチェックを利用していることをバフェットはちゃんと調べていたからです。バフェットはアメリカン・エキスプレス社が倒産しないことを確信していました。
バフェットの予想通り、アメリカン・エキスプレス社は数年後には経営を立て直し、株価を盛り返しました。
一時期35ドルまで下がっていた株価は180ドルに上がり、バフェットは時価総額で2,000万ドルの利益を得ました。バフェットは企業を評価する確かな目を持っていたといえます。
その他にも2008年のリーマン・ショックによって株価が大暴落した際に、アメリカの金融大手、ゴールドマン・サックスに50億ドル、また、アメリカのコングロマリット(多業種を統合してできた複合企業)ゼネラル・エレクトリックに約30億ドルを投資しました。
2008年、アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻し、それがきっかけで世界的な金融危機を引き起こした。負債総額は6,130億(約64兆円)に昇り、世界の株式市場が混乱に陥った。
アメリカのニュース雑誌「ウォール・ストリート・ジャーナル」は2013年誌上で、ウォーレン・バフェットがこの時に実行した投資で、100億ドル(約9,700億円)の利益を得たと報じています。
バリュー株(割安株)投資を得意とするバフェットが、金融危機をチャンスに変え、いかに優秀な運用実績を残してきたかがわかる好例ですね。
バフェット流投資術の基本はこの3つです。
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バフェット流投資術の基本
- 株価が暴落している時を狙う
- 事業や経営が安定している優良企業を選ぶ
- 株を大量に買って長期保有する
ウォーレン・バフェットの意外に質素な人物像、オマハの賢人とは
株が暴落している時期に大量に優良企業の株を買うことで資産を増やし、世界的な資産家となったバフェット。さぞ札束で横っ面を張るような傲慢な性格ではないか、と想像してしまいがちですが、実際はそうではありません。
バフェットは会長兼CEOを勤めるバークシャー・ハザウェイから、年俸10万ドルの給料をもらう意外に質素な生活を送っています。
ネブラスカ州オマハという人口約40万人の地方都市に約3万ドル(当時の金額で約1,100万円)で買った家に住んでいます。
高級車やブランドに興味を持たず、クレジットカードは今でもアメックスのグリーン(普通のカード)を愛用。お金持ちの持つブラックカードではありません。その理由も、「年会費がかからないから」。実用的なものを重要視するバフェットの性格がよく表れていますね。
バフェットは質素倹約する一方で慈善活動にも積極的です。2015年までに総額215億ドル相当の自社株をビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と、その他4つの慈善団体に寄付しています。
さらに、バフェットは親交の深いビル・ゲイツと、自らの資産の半分以上を寄付しようと資産家たちに呼びかける「ギビング・プレッジ」という取り組みを初めました。
それにジョージ・ルーカス(映画監督)やマーク・ザッカーバーグ(Facebook創業者)など多くの著名人が賛同し、活動は世界の資産家に広がりました。2015年時点では150名が誓約者として登録されています。
こんなところからもウォーレン・バフェットが世界に影響をおよぼす有力者であることがわかりますが、彼の発言はいつでも優しさに溢れています。
「今日、誰かが木陰でくつろげるのは、昔に誰かが木を植えたからだ」
これはウォーレン・バフェットの名言の一つですが、寄付や慈善事業に前向きな彼の姿勢が垣間見れる言葉として、多くの人に共感を得ています。またこの言葉は、寄付や慈善事業だけでなくバフェットの投資術にも生かされています。
「世のため人のため」になる企業は救済されるべき。これは、社会になくてはならない真面目な仕事を続けている企業が思わぬことで窮地に立たされた時、資産を投じてピンチを救ったバフェットならではの名言ですね。
もちろん「世のため人のためになっている企業かどうか」を見抜くためには、人並み外れた慧眼の持ち主でなくてはなりません。バフェットは正確に本質を見抜く力を世界から評価されているからこそ、「オマハの賢人」と敬愛されているのです。
最近変動したのはなぜ?バフェットのポートフォリオや銘柄を分析
ポートフォリオとは、金融商品の組み合わせのこと。つまり「どこの銘柄の株をどれくらい保有するか」を検討することです。
実は株式投資で資産を増やすために、ポートフォリオを組むことはとても重要なのです。資産を増やすか減らすかは、資産配分の比率であるポートフォリオをどうするかによってほぼ決まってしまいます。
そこで、世界の投資家として名を馳せるウォーレン・バフェットは一体どんなポートフォリオを組んでいるか見てみましょう。公開されている2016年のバークシャー・ハザウェイ(バフェットの会社)のポートフォリオを紹介します。
2 ウェルズ・ファーゴ 18.0% 4億7970万株
3 コカ・コーラ 14.4% 4億株
4 IBM 9.6% 8,123株
5 アメリカン・エキスプレス 7.2% 1億5,161万株
6 フィリップス66 5.1% 7,555万株
7 ウォルマート・ストアーズ 2.9% 5,524万株
8 USバンコープ 2.7% 8,506万株
9 ダヴィータ・ヘルスケア・パートナーズ 2.2% 3,857万株
10 ムーディーズ・インベスターズ・サービス 1.9% 2,467万株
バークシャー・ハザウェイが投資している企業はほとんどといっていいほどアメリカに本社がある企業です。「自分が分からないものには投資しない」というのが信条のバフェットらしい選択ですね。
バフェットは長期投資で巨額の資産を築くことに成功した人ですから、「貯金を眠らせているだけではもったいない。リスクを抑えて確実に資産を増やしたい」と思っている投資家がまねをするのにピッタリの銘柄といえます。
実際に、最初に紹介した「利益が約束された企業」の条件に完全に合致した、ウォーレン・バフェットお墨付きの銘柄ですから、これから株式投資で儲けようと考えている人にはバフェット銘柄は絶対にチェックしておきましょう。
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バフェット流投資術はこんな人におすすめ
- リスクを抑えて安定して利益を得たい人
- 株は興味あり、でも難しそうだと思っている人
- 株価の変動によって投資先を変えることに自信がない人
- 預金を眠らせておくだけではもったいないと思っている人
- ギャンブルは苦手、でも持っているお金を増やしたい人
- 株価の変動を每日見ているような時間的余裕のない人
- 頑張っている企業を投資で応援したい人
バフェット銘柄にアップルがランクイン、信条を変えたその理由
「自分が分からないものには投資しない」ことを信条としてきたバフェットですが、最近のポートフォリオに変化がありました。
バフェットはこれまでハイテク企業を信用しませんでした。なぜなら「自分が分からないものだから」。
しかしインターネット関連企業であるIBMがバフェット銘柄の第4位に食い込んでいます。バフェットはIBMに2011年から投資を始め、多少の株価変動に動揺することなく、順調に買い増されてきました。
さらに大手IT企業がバフェット銘柄に新しく登場しました。
アップル インコーポレイテッドとは、ご存知iPhoneやiPad、Macで有名なアップルのこと。バフェットはこれまでの考えを改め、なぜIT株を買うようになったのでしょうか。
世界に普及したインターネットが「社会になくてはならないもの」として認知されたこと、またIBMやアップルが単なるインターネット企業ではなく、テクノロジーという科学技術を造りだす企業として認められていることが理由として挙げられます。
最近、アップルとIBMは共同で人工知能「Watson」を開発しています。過去のデータを元に学習する機能を充実させた新しい試みです。このように技術開発に意欲的な企業ですから、「テクノロジーへの投資」といえるのです。
また、アップルはアメリカの経済誌フォーチュンに「世界で最も賞賛される企業ランキング2016年版で、9年連続1位を飾りました。ランキングはたくさんのビジネスマンにより投票で選ばれていますから、大衆の評判がバフェットの考えを変えたのだといえます。
自分の信条だけにとらわれることなく、幅広い視野で物事を見るウォーレン・バフェットは、老齢にもかかわらず柔軟な思考の持ち主ですね。
バフェットの長期投資をまねしてもムダ?日本市場に向かない理由
選びぬいた優良企業の株を買うことで知られているバフェットですが、彼がリサーチにリサーチを重ねて、結局買わなかった株があります。
それは日本企業の株です。バフェットは主にアメリカ企業の株を買いますが、外国株を避けているわけではなく、過去には中国や韓国企業の株を買うこともありました。
なぜ日本企業の株を買わないのでしょうか?バフェットが日本株を買わない理由を紹介します。
アメリカ株が長期投資に有利、その国に合わせた株投資を
バフェットが日本株を買わないのは、日本の株式市場がほぼ横ばいで長期的な成長が見込めないからです。
日本の株式市場が横ばいなのは、少子高齢化で労働人口が減少しているからです。労働人口が増えなければ、GDP(国内総生産)も増加することはありません。
GDPが増えなければ消費が弱まり、物価が下がるためデフレにつながってしまいます。デフレが続けば企業の売上が伸びず株式市場が活性化しないため、株価が上がりにくくなるのです。
アベノミクスやGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の年金運用で、日本の株価は一時的に上昇しましたが2016年は再び下降傾向にあります。
また、一旦株価が暴落すると株価の戻りが遅い日本株は、バフェットをお手本とした安定した長期運用には向きません。
NYダウ平均株価を見ると、順調に右肩上がりの上昇を続けています。2008年のリーマン・ショックでいったん暴落していますが、すぐに持ち直して再び上昇しています。
日経平均株価は、上昇と下降を繰り返し現在は下降傾向。安定していません。
アメリカ企業が強いわけは、投資家に嬉しい手厚い株主還元策にあった
アメリカの株式会社は、株主に利益還元することを重要視しています。大企業でも年々増配している企業が多くあります。
日本企業では株主還元を毎年増配している企業は少ないのが現状です。しかし、日本のように株主優待がない分だけ海外企業は高い配当金を維持することに力を入れています。
アメリカでは、株主還元を軽視する企業の株は叩き売られるのが常識です。株主還元策が投資家の評価に直結しているんですね。
2016年はアメリカ企業の高配当株の上昇が顕著です。いまこそアメリカ株を買うチャンスなんです。
アメリカ株取引の注意点!為替リスクと手数料
バフェットの投資法をまねて長期投資で利益を上げたいなら、株価が上昇傾向にあるアメリカ株を買った方が、リスクも少なく安心ですね。
しかし、アメリカ株を購入・売却するときには日本株とは違った注意点があります。注意点を知って上手に資産運用を行いましょう。
英語が理解できないと、情報弱者になってしまう
アメリカ企業の株を買うからといって、英語が理解できなければならないわけではありません。しかし株価の変動は社会情勢と関係していますから、常に新しいニュースを得ることは大切です。
アメリカの政治経済に関するニュースに敏感になれば、現地の情報をいち早くキャッチして売り時や買い時を分析することもできます。
しかし英語が全く理解できなければ、リアルタイムの情報にはなりませんが日本の新聞や雑誌から情報を得られるよう工夫しましょう。
外国株を買う場合、為替相場の変動で損をする時がある
外国株を買う場合、為替相場の変動を考慮しなければなりません。為替相場とは、外国と日本の通貨が交換(売買)される時の交換比率のことです。
円高ドル安になると、ドル建てで持っている資産が目減りしてしまいます。
例えば1000ドル保有、1ドル100円だったとすると、1000ドル×100円=10万円
1ドル90円(円高)になれば、1000ドル×90円=9万円(10,000円損)
反対に1ドル110円(円安)になれば、1000ドル×110円=11万円(10,000円得)
わずかな為替変動でも大きな損益につながりますので、取引する時は必ず為替相場をチェックしましょう。
株主優待制度は日本だけ、海外市場にはありません
株を保有すると株主優待があってお得、というイメージが強いのですが、株主優待があるのは日本ならではのサービスなんです。
株主優待はアメリカはもちろん、海外市場では(一部の例外は除いて)ほとんどありません。そのかわり、日本よりも海外の企業の方が配当金が高いんです。
海外では、高配当かどうかが最も重要視されます。配当金の低い企業は容赦なく売却されてしまいますので、企業側も必死なんですね。
アメリカ株は日本株より売買手数料が割高
株投資をする際、意外とバカにできないのが手数料の存在です。アメリカ(海外)と取引する場合、日本の株を買う時よりも手数料が割高になることがデメリットの一つです。
各証券会社によって取引する金額や株数により手数料に幅がありますので、取引する時には注意しましょう。
楽天証券の場合、日本株の手数料が139円~に対し、米国株の手数料は1取引5米ドル~20米ドル(税抜)。
このように日本の株を買うよりも手数料が高くなります。
そもそも長期で持つつもりで買うんだから、売買手数料が何度もかかるってことはないだろ!
バリュー株投資で長期保有、バフェット流ならアメリカ株を選ぼう
とてもシンプルな投資法ですが、シンプルなだけに信頼できる確かな投資法だといえます。長期的に株価が安定しているアメリカ株は持っていて損はありません。
一代で巨大な資産を築き、名声を集めたウォーレン・バフェットに倣い、あなたも第2のバフェットとなり「日本の賢人」として語り継がれる伝説になってみませんか?