VIX指数とは米国の株式指標S&P500のオプション取引をもとに算出した指数です。恐怖指数とも呼ばれ、数値が高いほど投資家が市場に対し不安感や恐怖を感じているとされます。
VIX指数の使い方としては、市場の動向を探ることに以外にもVIX指数に連動したETFへの投資を行うこともできます。VIX指数はS&P500と逆相関の傾向にあるため、株価が下がれば利益が出る可能性もあるのです。
株価急落への備えは投資家にとって必須技術。
何の準備もしていないと、リーマンショックのような状況で大損をする可能性もありますよ。
この記事ではVIX指数の概要から、VIX指数連動ETFのメリットやデメリット、注意点を紹介します。
VIX指数とは投資家の恐怖心を反映した指標
VIX指数とはボラティリティ・インデックス(Volatility Index)の略称。読み方は「ヴィックス指数」です。米国のシカゴ・オプション取引所(CBOE)が「S&P500」という株価指標を対象としたオプション取引のボラティリティをもとに算出しています。
S&P500については「S&P500とは?NYダウとの違いやおすすめ投資信託とETFも紹介」で解説しています。
VIX指数の別名は「恐怖指数」。
投資家の不安感を反映する指標として有名です。
一般に投資家が株式市場に対し不安感を感じているときはVIX指数が高く、楽観的なときは低いとされています。(平常時は14~24程度。市場リスクが低いときは12以下を示します)
なぜ投資家が不安や恐怖を感じるとVIX指数が高くなるのでしょうか?
それはVIX指数が「オプション取引のボラティリティ」をもとに計算されるからです。
ボラティリティとは株価の値動きの激しさ
まずボラティリティについて説明します。
ボラティリティとは「不安定性さ」や「変わりやすさ」を意味する単語。ボラティリティが高いとは投資商品の値動きが激しいということです。
自然災害や企業の倒産などで市場の先行きが不透明になると、ボラティリティは大きくなる傾向にあります。
ただし過去のデータからボラティリティを算出しても過去の状況しか分かりません。
VIX指数が将来的な投資家心理を反映しているのは「オプション取引」を利用しているからです。
オプション取引のボラティリティは投資家の予想を反映している
オプションとは、ある商品を決められた「期日」までに特定の「価格」で売買する「権利」です。権利を買う場合は「コール・オプション」、売る場合は「プット・オプション」と言います。
株価が上昇すると予想した場合は「コール・オプション」の買いが増え、下がると予想した場合は「コール・オプション」の売りが増加します。
株価が下落しても損失は権利購入費の200円だけです。
VIX指数は30日間のS&P500のオプション取引における「コール・オプション」と「プット・オプション」を加重平均して算出しています。
オプション取引には投資家の将来的な考えが盛り込まれているため、オプション取引のボラティリティを算出すれば投資家心理をある程度予想できるのです。
VIX指数とS&P500は逆相関の関係
VIX指数は投資家の恐怖心を反映した指数ですが、実際にはどのような使われ方をするのでしょう?
VIX指数の特徴は市場の逆相関の関係にあることです。
赤丸を付けた部分はリーマン・ショック時におけるS&P500とVIX指数のチャートです。S&P500の下落に対し、VIX指数が大幅に上昇していることが分かります。このときVIX指数は80.86という史上最大値を記録しました。安定期の10~20付近と比べると、かなり高い数値です。
VIX指数を見ればS&P500の値動きを予想できるかもしれません。
ただし緑丸を付けた部分のように、VIX指数とS&P500が同時に上昇している局面もあります。
完全な逆相関ではないので注意しましょう。
VIX指数の上昇がNYダウを押し下げた「VIXショック」
実際にVIX指数によって株価が影響を受ける事件が発生しました。
2018年2月初旬に発生した「VIXショック」です。この事件は米国の長期金利上昇を受け、VIX指数が急上昇(2月8日の終値は33)。リスク・パリティ戦略※を取るファンドが機械的な売りを実行しました。
ポートフォリオに占めるリスクの割合が均等になるよう資産配分を調整すること。株式や債権のボラティリティに合わせて資産の組入比率を自動的に変更します。
その結果2月8日のNYダウは1,000ドル以上という大幅な値下がりを記録。
日経平均も影響を受け、2%以上の下落となったのです。
VIXに連動するETFを紹介!長期ではなく短期取引で購入しよう
VIXは株価指標であるため直接投資することはできません。しかしVIX指数に連動したETFを購入することはできます。
ETFとは上場投資信託のことで株式のように市場で売買できるのが特徴です。詳しくは「ETFとは?仕組みやメリットをわかりやすく解説」を参照してください。
VIX指数に連動したETFには次のような商品があります。
- <1552>国際のETF VIX短期先物指数
- <1561>国際のETF VIX中期先物指数
いずれもSBI証券や楽天証券、松井証券で購入可能です。
ではこれらの商品を購入するメリットやデメリットは何でしょうか。
VIX連動型ETFは株価の下落で得をするのがメリット!
- 株価下落時に利益が上がる
- 市場が不安定なときリスクヘッジとして使える
VIX指数は株価が下落するときに上昇する傾向にあります。実際リーマンショックの際、S&P500が下落する一方でVIX指数は大きく上昇しました。
また市場が大変不安定で株価の乱高下が激しいときにVIX連動ETFを購入しておけば、株価下落による損失をVIX連動ETFの値上がりで相殺できます。
VIX指数連動型ETFデメリットは長期投資に向かないこと
VIX指数連動型ETFにはデメリットもあります。
長期投資に向いていないのです。
その理由は主に2つあります。
- 基準価額が下がり続けている
- 長期で保有するとコストが割高になる
下の図は<1552>国際のETF VIX短期先物指数の基準価額推移です。
基準価額が下落しているのは、S&P500が右肩上がりで上昇していることが大きな要因です。
上の図はS&P500の1941年からの推移。2000年代のITバブルや2008年のリーマンショック時を除き、基本的に上昇しています。VIX指数はS&P500と逆相関を示す傾向にあるので、時間が経つほど価値は下がっていくのです。
また長期で保有するほどコストが高くなるのもデメリット。このファンドはVIX指数そのものではなく「VIX短期先物指数」に連動します。
短期先物は先物取引なので取引期限があります。もし取引期限が過ぎた後もファンドを保有したい場合ロールオーバー※が必要です。
取引期間が終了した商品を一度決済し、次の取引期限へ乗り換えることです。先物取引のほか、NISA口座でも用いられます。
ただし先物価格が「コンタンゴ」という状態の場合、ロールオーバーするごとに損失が広がります。
コンタンゴとは「期近物(きぢかもの)」より「期先物(きさきもの)」の価格が高い状態のことです。期近物は決済日(限月)が最も近い取引で、期先物は期近物より限月が後の取引を指します。
限月が遠いほど先行きが不透明なので、期先物の価格が高くなります。
そのためロールオーバーを繰り返すごとに、より値段の高い取引を購入しなくてはならずコスト負担が増加するのです。
短期保有が基本の、これらのETFは売買手数料をあまりかけずに取引したいですよね。
松井証券では、10万円までの取引手数料が無料なので、ETF購入のときにも手数料を抑えられます。
また、NISAを使えば、ETFの売買手数料は完全無料。
松井証券の口座をまだ持っていない人は、こちらから口座開設してみてくださいね。
VIX指数への投資は保険として考えよう!
S&P500と逆相関を示す傾向にあるため、VIX指数連動ETFに投資すれば株価下落時に利益が出るかもしれません。
ただしVIX指数連動ETFは長期投資には向きません。VIX指数が上昇する場面は少ないため、基本的に基準価額は右肩下がり。コンタンゴ状態だとロールオーバーするたびにコストが割高になるため、損失も大きくなります。
VIX指数連動ETFは、万が一に備えた保険としての使い方が最も適切でしょう。