明日の相場を予想する場合、あなたは1ヶ月前の株価と今日の株価のどちらを参考にしますか?もちろん今日の株価ですよね。
現在に近い株価のほうが今後の予想を立てる上で、価値の高い情報になるのは当然ですが、この考え方を移動平均線に加えたのがMACDです。
MACDは移動平均線をさらに進化させ、売買タイミングを簡単に判断できるようにした人気の分析方法。具体的にはMACDがシグナルを下から上へ突き抜けたら買い、上から下に抜けたら売りのサインなどと判別できます。
移動平均線と同じようにチャートに自動で表示できるので、難しい知識は必要なく、株初心者の人でも簡単に利用することができますよ。
今回はそんなMACDについて紹介し、MACDを利用して売買タイミングが自分で判断できるようになれるよう説明していきます。この記事を参考にしてMACDを使いこなせるようになりましょう。
移動平均線をもとに開発されたMACD
MACDは移動平均線を進化させて、より精度の高い分析を行うために1979年にジェラルド アペルによって開発されたテクニカル分析です。
移動平均線についての基本知識が必要なので、まだ移動平均線についてわからないという方は、「株の売買タイミングが一目瞭然!移動平均線の正しい使い方」を参考にしてください。
MACDとは、「Moving Average Convergence Divergence」を略したもので、「マックディー」と読みます。
日本語に直訳すると「移動平均収束拡散法」という難しい単語が並びますが、わかりやすく説明すると、2種類の移動平均を使って株価のトレンドを分析する投資手法です。
移動平均と言っても、ただ株価を平均したものではありません。一般的な移動平均線は単純移動平均を使っていますが、MACDで使用する移動平均は指数平滑移動平均(しすうへいかついどうへいきん)と呼ばれ、最近の株価ほど比重が重くなるよう計算するのが特徴です。
指数平滑移動平均を利用したMACDの計算方法
指数平滑移動平均が一般に用いられている単純移動平均とどう違うのか、次に計算方法を比べてみましょう。例として3日間の終値平均を計算します。
指数平滑移動平均=(1日目の終値+2日目の終値+3日目の終値+3日目の終値)/3日間+1日
このように最終日の終値を2倍で計算するため、最新の株価の値が大きく反映されやすくなっています。
単純移動平均では実際の相場と少し遅れて形状が変動しますが、指数平滑移動平均だと実際の値動きに近い形で平均値が算出できるというわけです。
MACDは、期間の短い指数平滑移動平均である短期平均と、期間の長い指数平滑移動平均である長期平均を用いて、短期平均から長期平均の値を引いた差で求められます。
さらにこのMACDの値を一定の期間で単純平均したものをMACDシグナル、もしくは単にシグナルと呼びます。
シグナル=MACDの単純移動平均線
※シグナルの計算式には、単純移動平均を用いるのが一般的ですが、指数平滑移動平均線を用いる場合もあります。
一般的には短期平均の期間が12日、長期平均の期間が26日で、シグナルの平均期間は9日を利用する場合が多いです。
これらのMACDとシグナルの推移をグラフ化し、その位置関係からトレンドを読むのがMACDを活用した投資手法です。通常は株価チャートの下に表示して、チャートの値動きと合わせながら、MACDとシグナルを確認します。
このMACDを株式投資に役立てる方法について次に説明しましょう。
MACDの買いサインと売りサインを見極める方法
MACDを利用した売買ポイントの見極め方はとても単純です。
MACDがシグナルを下から上へクロスしたポイント(ゴールデンクロス)が買いサインとなり、反対にMACDがシグナルを上から下へクロスしたポイント(デッドクロス)は売りサインになります。
また、どこでクロスしたかも重要な指標になり、グラフのより高い位置(山)でクロスした場合や、グラフのより低い位置(谷)でクロスした場合ほど強い買いサイン、売りサインと判断することができます。
さらにMACDとシグナルが0ラインとクロスする状態も重要なポイントとなります。MACDとシグナルの2本が0ラインを下から上へクロスしたときは、株価の上昇トレンドの継続を意味し、0ラインを下に向かってクロスした場合は、下降トレンドが継続することを意味します。
MACD、シグナルの値が0になるチャートの横軸を0ラインと呼びます。
MACDにはヒストグラムという棒グラフもある
MACDとシグナルがどれだけ離れているかを棒グラフで表したMACDヒストグラムという指標もあるのであわせて紹介しましょう。
MACDヒストグラムは次のように計算できます。
ヒストグラムは0ラインを中心に、下側に出ている場合はシグナルがMACDより上に推移し、上側に出ている場合はシグナルがMACDより下に推移しているという位置関係がわかります。
0ラインを基準として、ヒストグラムが上側や下側へと切り替わるということは、MACDとシグナルがクロスしていることを意味し、ここが売買ポイントと判断することができます。
ヒストグラムが上側にある場合は上昇トレンドを表し、下側にある場合は下降トレンドを表すので、ヒストグラムが下側から上側に切り替わったポイントが買いサイン、上側から下側に切り替わったポイントが売りサインだとわかります。
つまりMACDやシグナルを表示しなくても、MACDヒストグラムだけでも売買タイミングがわかるので、視覚的には株初心者にも扱いやすく人気の分析方法です。
株初心者におすすめ!SBI証券のMACD
投資家に人気のSBI証券でも、標準のチャート機能にMACDがあります。MACDシグナルやMACDヒストグラムも表示でき、株初心者でも売買タイミングを知るのに良い指標となるでしょう。
1つ注意点としては、SBI証券の株取引ツール「HYPER SBI」を使ってMACDヒストグラムを表示させようとした場合、「MACDオシレータ」という名前で扱われていることです。
呼び名は違っても意味は同じなので、心配はいりません。SBI証券のHYPER SBIは、口座開設して1ヶ月は無料で利用できます。(その他、無料利用条件多数)各チャートでMACDを表示し、買い時の株を探してみてください。
MACDにも欠点があるので注意しましょう
このように株の売買タイミングをわかりやすく示してくれるMACDですが、残念ながら欠点もあるので紹介しておきます。
- 横ばいの相場ではダマシ※のシグナルが出やすい
- 相場が緩やかに変化している場合は、ゴールデンクロスやデッドクロスが出てもサインとして弱く、信頼性に欠ける
- 移動平均を利用しているので、急激な変化に対応できない
横ばいの相場中に急に上昇相場になったと思い、買い注文を出しても、予想に反して株価が急落してしまう状況をダマシと呼びます。
MACDは、上昇トレンドや下降トレンドを読み、売買タイミングを見極める投資手法です。
そのため、上昇や下降のトレンドがない横ばいの相場では、うまく機能せずに間違ったサインを出してしまう場合があります。
MACDを利用するときは相場の変動が大きく、わかりやすいトレンドがあるときを選びましょう。また、MACDは移動平均線の性質を持っているため、急な株価の上昇や下降に対応できず、売買タイミングを逃してしまう場面もありますので注意してください。
MACDに限った話ではありませんが、売買サインに100%はありません。
分析の精度を上げるためにもMACDに加え、企業の業績や世の中の経済状況などの情報も併用し、合わせて判断するように心がけましょう。
MACDを活用してチャート分析の精度をアップ!
今までチャートの分析に移動平均線を利用していた人は、MACDを利用することでさらに精度の高い分析を行うことができるようになります。
MACDは1979年に開発された比較的新しいテクニカル分析方法ですが、とても人気があるため現在は世界中で多くの投資家が利用しています。
日本のネット証券会社から提供されている株価チャートにもMACDが表示できるようシステムが組んであるので、興味を持った方はぜひ利用してみてください。
MACDやシグナルの位置関係を読むのが難しい場合は、MACDヒストグラムで視覚的に売買ポイントを簡単に見極めることができます。初心者にもオススメの分析方法ですので、必ずマスターしておきましょう。