東京証券取引所が開いているのは9:00~15:00です。リアルタイムで株売買ができるのはこの時間のみ。
日中仕事のある人は、なかなかこの時間帯に取引をするのは難しいでしょう。
しかし、リアルタイムで売買ができなくてもネット証券ならほぼ24時間注文を出すことができます。
さらに、どうしても株価の値動きを見ながら取引がしたい!という人なら、PTS(私設取引システム)を使って夜間取引を行うこと可能。
株取引ができる日本の証券取引所と株式市場の種類、取引ができる時間について勉強しましょう。
証券取引所は東証だけじゃない!日本の証券取引所と株式市場について解説
はじめに証券取引所について説明していきます。
株の話をするとき、「東証」という言葉がよく出てきますね。これは「東京証券取引所」の略。
実は、日本には名古屋、札幌、福岡にも証券取引所があるのです。
かつては大阪、京都、新潟、広島にも証券取引所がありましたが、統合がすすみ、今では4つになっています。
- 東京(東証)
- 名古屋(名証)
- 札幌(札証)
- 福岡(福証)
上場企業数や取引数は東京証券取引所が圧倒的。
名古屋や札幌、福岡の証券取引所では上場企業数は少なく、取引高も多くありません。
また、名古屋、札幌、福岡の証券取引所で上場している企業も、東証に重複して上場していることがあります。
例えば名証(名古屋証券取引所)1部上場企業191社のうち、名証だけに上場(単独上場)しているのは5社のみ。なんと186社もの会社が重複上場しています。
地方の証券取引所にも優良銘柄が上場している
しかし規模が小さな地方の証券取引所が劣っているというわけではありません。
地元では知る人ぞ知る優良企業・老舗企業も地方の証券取引所に上場しています。
かつて札証(札幌証券取引所)に上場していたニトリのように、上場する市場を東証に変更したことで知名度が上がり、株価が急上昇する銘柄もあるのです。
ニトリの調整後終値(株価)※と出来高(取引された株数)について、5年ごとの9月1日の値を抜き出してみました。株価は東証に上場した2002年以降に値上がりし、取引も活発になっているのがわかります。
株式分割が実施されると、表面上は株価が下落します。1株を2株に分割すると発行済み株式数が2倍になり、1株の価値が1/2になるからです。
株式分割前後の株価を連続的に見ることができるよう、分割実施前の終値を分割後の値に調整したのが調整後終値。「現在から見た、当時の株の価値」と思ってください。
ニトリは2006年、2013年など複数回株式分割を行っています。
地方の証券取引所への上場企業にも、有力な企業があることをお分かりいただけたでしょうか?
新興市場の企業は安定性は欠ける?株価の値動きが激しい
次に市場の種類について説明していきます。
東証1部とかマザーズという名前を聞いたことがあるでしょうか。それが東京証券取引所が開設している市場の種類です。
名古屋、札幌、福岡にもそれぞれ複数の市場があります。次の表を見てみてください。
証券取引所 | 開設している市場 | 上場企業数 |
---|---|---|
東京 | 第一部(東証1部) 第二部(東証2部) 【新興市場】マザーズ 【新興市場】JASDAQスタンドード/グロース 【プロ投資家向け】TOKYO PRO Market |
1部2130社 2部494社 マザーズ276社 JASDAQスタンダード689社 JASDAQグロース37社 TOKYO PRO Market 29社 |
名古屋 | 第一部(名証1部) 第二部(名証2部) 【新興市場】セントレックス |
1部194社 2部82社 セントレックス12社 |
札幌 | 既存市場(札証) 【新興市場】アンビシャス |
既存56社 アンビシャス9社 |
福岡 | 既存市場(福証) 【新興市場】Q-Board |
既存94社 Q-Board14社 |
表の中に、新興市場という言葉が入っていますね。これは中小ベンチャー企業が中心になっている市場です。
それぞれの市場には、上場するための基準がありますが、新興市場の基準は、1部・2部や各既存市場よりも緩やかに設定されています。
つまり、ベンチャー企業も上場しやすい環境なのです。
東証の2部とマザーズの上場審査基準の違いを見てみましょう。
基準項目 | マザーズ | 東証2部 |
---|---|---|
事業継続年数 | 新規上場申請日から起算して、1年前以前から取締役会を設置して継続的に事業活動をしている | 新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしている |
純資産の額 | 基準なし | 連結純資産の額が10億円以上(かつ、単体純資産の額が負でない) |
利益の額または時価総額 | 基準なし | 次のどちらかを満たす (1)最近2年間の利益の額の総額が5億円以上 (2)時価総額が500億円以上 |
東証マザーズには東証1部・2部に比べて、新興市場には会社としての体力が劣る企業も存在していそうだということが分かります。
また、新興市場に上場している企業は、比較的、株式発行数が少ないので、売りたい時に売れない、買いたい時に買えないという状況が起こることも。
この状況を「流動性が低い」といいます。企業が新しく、流動性が低いと、株価の急上昇がある反面、急落もよくあること。
思わぬ大損をしてしまう可能性もあるのです。
これらのことから、新興市場への投資は投資初心者にはおすすめできません。
まずは、東証1部・2部の企業への投資から始めるのが無難と言えます。
証券取引所は平日の日中しか動いていない!立会時間と休日
日本には4つの証券取引所があり、株式市場の種類も複数あることがわかったところで、それぞれの証券取引所で取引ができる時間をチェックしましょう。
取引所名 | 前場 | 後場 |
---|---|---|
東京証券取引所 | 9:00~11:30 | 12:30~15:00 |
名古屋証券取引所 | 9:00~11:30 | 12:30~15:30 |
札幌証券取引所 | 9:00~11:30 | 12:30~15:30 |
福岡証券取引所 | 9:00~11:30 | 12:30~15:30 |
日本にある証券取引所の取引時間の特徴は、昼休憩をはさんで前場(ぜんば)と後場(ごば)にわかれていることです。
そのうち日本の証券取引所も休憩時間がなくなるかもしれんな。
取引ができる時間を立会時間と呼びます。
東京証券取引所の立会時間は15時まで。一方で名証、札証、福証は15時30分まで取引をしています。
また、証券取引所の休日は、土日祝日(振替休日含む)、大晦日と正月三が日です。
つまり、証券取引所で取引ができるのは、平日の日中のみということになります。
株の売買注文はほぼ24時間可能!土日もOK
平日の9:00~15:00(東証以外は15:30)だと、仕事があって取引できないという人も多いでしょう。
しかし、ネットで株の売買注文ができる証券会社なら、立会時間後でも問題なく注文を出すことができます。
価格を指定すれば(指値注文)、自分の希望した価格で売ったり買ったりすることも可能。
ちなみに、立会時間終了後の注文は、翌日の注文として扱われます。
ただし、注文は24時間ずっと受け付けてくれるわけではないので注意が必要。
前場終了時、後場終了時には注文が入り乱れるので、混乱を防ぐために受付を停止しますし、システムメンテナンスの時間も注文ができません。
例えば、マネックス証券の注文受付中断時間は次のとおりです。
取引所名 | 受付中断時間 |
---|---|
東京証券取引所 |
3:00~4:00(日・月曜日を除く) 11:30~11:35 15:00~17:00頃 |
名古屋証券取引所 札幌証券取引所 福岡証券取引所 |
3:00~4:00(日・月曜日を除く) 11:30~11:35 15:30~17:00頃 |
なかなか株が買えない?指値注文は取引が成立しにくい
立会時間外のネット注文でも、指値注文なら自分の希望した価格で売ったり買ったりすることが可能だとお伝えしました。
しかし指値注文にはデメリットもあります。
当然のことですが、希望価格にならないと取引が成立しません。
通常の株取引では、価格を指定しない成行注文が最も優先され、指値注文に取引の順番が回ってくるのはその後。
希望価格になっても、そのタイミングで同じ銘柄に成行注文が入ったら、成行注文が優先されてしまうのです。
そのため、株価が希望価格になっていても、なかなか取引が成立しないことがあります。
PTSでの夜間取引なら夜中にリアルタイムで取引できる
これまでみてきたように、時間外でも注文を出すことは可能。
ですが、中には「どうしても、リアルタイムで動く株価を見ながら取引したい」という人もいるでしょう。
そんな人におすすめなのが、PTS(Proprietary Trading System、私設取引システム)です。
PTSは証券会社が独自に持っている取引システムを使って、夜中まで取引ができる仕組み。
現在、PTSで一般投資家が取引できる証券会社はSBI証券、楽天証券、松井証券です。
SBI証券、松井証券は、SBIジャパンネクスト証券株式会社が運営する「ジャパンネクストPTS(JNX)」に取り次ぐことで夜間取引が可能に。
楽天証券は、JNXに加えてチャイエックス・ジャパン株式会社が運営する「チャイエックスPTS(Chi-X)」にも取り次ぐことが可能です。
ちなみに、PTSの他に証券会社の独自システムを利用した取引として「ダークプール」と呼ばれるものもあります。
「ダークプールとは何か?個人投資家には手数料が安くなるメリットも」を参考にしてください。
PTSのメリットは主に3つ!夜間におトクに取引可能!悪材料も怖くない
PTSについて少し詳しく見ていきましょう。
PTSのメリットは次のようなものがあります。
- 夜間にリアルタイムで取引できる
- 取引所より有利な値段で取引できる
- 悪材料の出た株をすぐに売却できる
日中忙しくても夜間に取引できるのが、PTSの大きなメリット。
PTSの取引時間は次のとおりです。
証券会社 | 取引時間 |
---|---|
SBI証券 | ディタイムセッション 8:20~16:00 ナイトタイムセッション 16:30~23:59 |
楽天証券 | ディタイムセッション 8:00~16:00 ナイトタイムセッション 17:00~23:59 |
松井証券 | ディタイムセッション 8:20~15:30 ナイトタイムセッション 17:30~23:59 |
また、取引所よりもおトクな値段で取引できる可能性があることもPTSのメリットです。
なぜなら、PTS取引では取引所と比べてより細かい単位での注文が出せるから。
例えば株価が3000~5000円なら5円単位での注文。(TOPIX100銘柄は0.5円単位)。4000円の株に対して、4002円での売り注文は出せないのです。
夜間取引は呼値が小さいので、3000~5000円の株は0.5円単位で取引ができます。少しでも高く売りたい、安く買いたいという場合には有利になります。
また、PTSで取引ができると悪材料の出た銘柄を、翌朝を待たずに売却することができます。
引け後に発表された決算が赤字だったり、夜間に起きた突然の事故などで、翌朝株価が暴落することはよくあること。
暴落によって資産が大幅により減ることを防ぐことができるのです。
PTSが利用できる証券会社の中でも、SBI証券は手数料も比較的安く使いやすさに定評があります。
また取り扱い金融商品も幅広く、投資信託の取り扱い本数もトップクラス、外国株式はアメリカだけでなくタイ、マレーシア、シンガポールのような発展途上国の取引も可能です。
さらにSBI証券は、FXや先物取引までオールマイティに対応できる証券会社なので、口座を持っていて損はありません。
SBI証券は口座開設をしたり、取引をするだけでポイントがたまるシステムもあるのです。
ぜひ口座開設をして、サービスの充実度を体感してみてください。
PTSでは差金決済に注意しよう!十分な買付余力を
夜間取引を利用する際には、差金決済に注意してください。
差金決済とは、同じ銘柄の株を何回か取引した際に、最終的な差額のみを取引する決済方法のことで、現物取引(株取引)では禁止されています。
このような取引があった場合を考えてみましょう。
(2)同じ日に、A株を6万円の株価で売却=プラス1万円
(3)同じ日に、A株を3万円で購入する=マイナス2万円
このとき、最終的に2万円のみを支払って株式をやり取りすると差金決済になります。
しかし差金決済は禁止されているので、取引ごとに、5万円支払い、6万円受け取り、3万円支払いしなくてはいけません。
そのため、5+3万円=8万円の買付余力※が必要になるのです。
買い注文を発注することができる金額のこと。
通常の証券取引所の取引の際にも、もちろん差金決済はできません。
しかし、PTSでは特に差金決済に注意する必要があります。
なぜなら夜間取引(ナイトタイム・セッション分)は翌日分の取引として扱われるから。
翌日の証券取引所での取引と合わせて差金決済になるかどうかと考える必要があります。
差金決済取引に該当する可能性があるケースはこちらです。
- 当日PTSナイトタイム・セッションでA株買付⇒当日PTSナイトタイム・セッションでA株売却⇒翌営業日証券取引所でA株買付
- 当日PTSナイトタイム・セッションでA株売却⇒PTSナイトタイム・セッションでA株買付⇒翌営業日取引所でA株売却
- 当日PTSナイトタイム・セッションでA株買付⇒翌営業日取引所でA株売却⇒同日取引所でA株買付
- 当日PTSナイトタイム・セッションでA株売却⇒翌営業日取引所でA株買付⇒同日取引所でA株売却
差金決済を理解していないと、売りたい時に売れない、買いたい時に買えないという事態に陥る可能性があります。
PTSは利用者数が少なく値動きが極端なので初心者は注意
また、PTSは利用者が少なく、流動性が低いことにも注意しましょう。
PTSの注文は指値のみ。
利用者が少なく指値注文のみだと、極端な値段で取引が成立することもあり、価格の変動が大きくなってしまいます。
実際PTSでは、業績下方修正などのネガティブなニュースが出た時には、通常の市場では考えられないほど株価が下落することも。
反対に、良いニュースが出た銘柄については高騰することもあります。
これを利用して、こんな戦略をとる人も。
- PTSで暴落した株を買い、翌日の市場で高い値段がついたら売却する
- PTS市場で高騰している株を売り、通常の市場よりも大きな売却益を手に入れる
しかし、新興市場のところでも説明したように、値動きが大きい市場は思わぬ大損をする可能性が高く、初心者には向かないのが現実です。
夜間取引は株取引に慣れてきてからサブとして使うことをおすすめする。
立会時間外に株を買う方法の比較!PTSは株取引に慣れてから
最後に、各証券取引所の立会時間外に株取引をする方法についてまとめておきます。
方法 | メリット | デメリット、注意点 |
---|---|---|
時間外のネット注文 | ・受付時間が長い | ・翌日の注文として扱われる ・指値注文だと取引が成立しにくい |
PTSを使った夜間取引 | ・夜もリアルタイムで取引可能 ・手数料が安い ・呼値が小さい |
・流動性が低く株価の値動きが激しい ・資金が少ない人は差金決済に注意 |
PTSは株価の上下が大きく初心者向きではありません。
PTSはあくまで補助的なものと位置づけ、まずは時間外でも受け付けてもらえるネット注文を活用しましょう。
時間外でも株は買える!初心者はまず時間外注文から
地方証券取引所には地元の優良企業も上場していること、ひとつの証券取引所の中にも複数の株式市場があり、そのうちの新興市場は値動きが激しい初心者にはおすすめできないことを説明しました。
各証券取引所の立会時間は15:00(東証以外は15:30)まで。とはいえネット証券のネット注文機能を使えば、ほぼ24時間売買注文を出すことが可能です。
夜間でもリアルタイムで取引したい場合は、PTSも利用可能ですが、PTSは値動きが激しく流動性も低いので注意が必要。
初心者の方はまずは時間外のネット注文を活用して株取引にチャレンジしてください。