あなたは株価が上がるか下がるかをどのように分析していますか?運や勘に任せる投資方法では、いつまでたっても勝率は上がりません。
ベテランの投資家は、自分なりの分析方法を使って株式の売買を行っています。その手法は人それぞれですが、どの投資家にも共通している点が、1つではなく複数の投資手法を併用しているということです。
その中の1つに「価格帯別出来高」という指標があります。これは株価チャートに自動で表示できるので、普段から株価チャートを見て分析を行っている人は、ぜひ合わせて見ていただきたい指標です。
価格帯別出来高の見方を覚えれば、投資家の心理を読みながら今後の相場を予想することができ、分析の精度も今までより一層上げることができます。
今回は、価格帯別出来高の見方について説明し、実際の取り引きでどう利用していけば良いか説明します。分析の精度を上げるためにも価格帯別出来高をぜひマスターしておきましょう。
時間毎に株の取引量を示す出来高について
価格帯別出来高を説明する前に、まずは単純な出来高について説明しましょう。通常のチャートに表示している出来高は、時間毎に約定した株式の数を指します。(上のチャート下部に表示している棒グラフが出来高です。)
株式は売り手の希望価格と株数、買い手の希望価格と株数の希望が合ったところで取り引きが成立します。
通常の出来高は、この売買が完了した株数をチャートに時間別で棒グラフに並べて、その増減を確認するのに利用します。
数が多ければ売り手や買い手が多いことを意味し、人気が高いことがわかりますし、少なければ人気が低いなど銘柄の需要と供給を把握する重要な指標となっています。
このように通常の出来高は時間毎にどれだけの取り引きがあったかを確認するための指標ですが、今回ご紹介する価格帯別出来高は、時間ではなく株価毎の取り引き量を示した指標になります。
価格毎に株の取引量を示す価格帯別出来高について
イメージがつきにくい人のために具体的な例をあげて説明しましょう。
株価 | 出来高 |
---|---|
500円 | 15,000株 |
505円 | 25,000株 |
510円 | 40,000株 |
515円 | 10,000株 |
上の表のように500円から515円の価格帯で、合計90,000株の取り引きがあったとします。
この表から510円の価格帯で株を購入した人が多く、この銘柄は510円が適正価格だと考えている投資家が多いと判断できます。
また株価は上下しますから、510円で株を買ったとしても当然下がることも考えられます。一度下がって再び株価が上がってきた場合、510円からなかなか上がらないケースが見られます。
これは510円で株を買った投資家が多く、株価が戻ってきたことで株を売って手放そうとする人が多いからです。売りが多くなることでこの価格帯から先へ値が上がりづらくなるということです。
同じようにその反対も考えられます。例えば株価が550円ぐらいから徐々に下がってきたとします。
その場合でも上の表から価格帯別出来高を見ると、510円で株が多く買われている実績があるため、投資家はこの銘柄が510円ぐらいになったら買おうと準備している人が多いとわかります。
そうなると、株価が徐々に下がってきたとしても515円の辺りで大きな買い圧力が出て、それ以上株価が下がりにくくなるというわけです。
つまり出来高の多い価格帯では、上昇トレンドや下降トレンドの最中であっても相場の流れが止まってしまい、その価格帯が上値抵抗線や下値支持線となります。
上値抵抗線とは、その価格まで上がると売り圧力が強くなり、それ以上株価が上がりにくくなる線(価格帯)のことで、下値支持線とは、反対にその価格まで下がった場合、買い圧力が強くなり、それ以上下がりにくくなる線(価格帯)のことです。
515円を超えるには相当大きな買い圧力が必要になりますが、このことを知っているか知っていないかだけでも、今後のトレード方法が変わってくるのではないでしょうか。
では、次に実際のチャートで価格帯別出来高を表示させて、売買の判断基準にする方法について説明します。
価格帯別出来高の見方について実際のチャートで確認しよう
通常の出来高は株価チャートの下側に棒グラフで表示されますが、価格帯別出来高はチャートの右や左側へ価格別に表示されます。
上のチャートで見ると右側に表示されている赤い棒グラフが価格帯別出来高です。
その分布を見ると一定の価格帯に出来高が集まっていますが、チャートを見てみると、同じようにその範囲内で株価が推移しているのが確認できます。
このことからも上のオレンジ色の線が上値抵抗線となり、下のオレンジ色の線が下値支持線になっているのがわかりますよね。
価格帯別出来高なら楽天証券がオススメ
だいたいどの証券会社の株価チャートでも価格帯別出来高は表示できる仕様になっています。証券会社によってはSBI証券のようにチャート内にロウソク足と一緒に表示されたり、楽天証券のようにチャートの外に表示されるなどさまざまです。
一通り見てみると、やはりチャートの外に表示される価格帯別出来高が一番見やすいでしょう。楽天証券の価格帯別出来高を見てください。
オレンジの線で引いた価格帯が取り引きの多かった価格だということがわかりますか?この2本が上値抵抗線と下値抵抗線になってチャートがボックス相場になっています。
この抵抗線を抜けることができれば、あとはスムーズに株価の上昇が予想できるわけですが、このように価格帯別出来高を活用すると今後の相場を読むことができます。
価格帯別出来高が見やすい楽天証券のチャートを確認してみてください。
価格帯別出来高はこのような分析で、株式投資の指標として利用されています。では、次に価格帯別出来高を利用した、さらに踏み込んだ分析方法について紹介しましょう。
投資家の心理を利用した価格帯別出来高の分析方法
価格帯別出来高を分析に利用するには、まずどの価格帯に山があるかを確認します。
その山が現在の株価より上にある場合、多くの投資家は含み損を抱えていて、損失がなくなったら早く売りたいと株価が上がるのを待っています。
現在の株価が購入時の株価より低く、まだ売買を確定はしていないものの、現時点では損失が出ている状態、またはその差額のことを含み損と言います。
これは人間の心理を利用しているので、自分自身に置き換えても共感できる人が多いと思います。自分が買った株が買った直後から下がり始めて含み損でイライラしているときに、一ヶ月後にようやく買った株価まで回復してきたら、すぐにでも売ってスッキリしたいと思いませんか。
同じように考える人が多いため、価格帯別出来高が多い山の近くまで株価が上がると売り注文が増えてきて、その勢いが強い場合は押し戻されて上値抵抗線として働いてしまいます。
その反対に価格帯別出来高の山が現在の株価より下にある場合、多くの投資家は含み益を抱えているため、少しぐらい下がっても慌てて売りに出す投資家も少なく、一般的に穏やかな市場になります。
現在の株価が購入時の株価より高く、まだ売買を確定はしていないものの、現時点で利益が出ている状態、またはその差額のことを含み益と言います。
少しぐらい株価が下がっても、山がある価格帯で下値支持線が働き、反発が期待できるので待っていれば再び上がってくることが予想できます。
また、価格帯別出来高の山がない価格帯は、株価の急騰や急落などで出来高が少ないまま価格が推移したことがわかります。
この場合、上値抵抗線や下値支持線がないため、値動きは比較的軽快に推移しやすいことがわかっています。
価格帯別出来高を使う際の注意点
このように価格帯別出来高は、その後の相場を読む便利な指標になりますが、出来高の大きな山があっても、それだけで100%判断してはいけません。
あくまで過去の出来高の記録であって、その価格帯で買った投資家たちも、実は他の価格帯で売ってしまったという可能性もあります。
今回紹介している価格帯別出来高を利用した投資手法は、投資家の「損はしたくない」という心理状態を前提としています。上値抵抗線や下値支持線は、絶対ではありませんので、他の分析方法と合わせて活用することをお勧めします。
価格帯別出来高を活用し売買ポイントを見極める
今回は価格帯別出来高の見方について説明しました。価格帯別出来高は損失は出したくないという投資家の心理を利用した分析手法です。価格帯別出来高を利用した売買ポイントについて次にまとめてみます。
まず上昇トレンドの場合には、価格帯別出来高を確認し、取引量の多い価格帯(上値抵抗線)を探します。上値抵抗線が見つかったら、以下のような売買ができます。
- 株価が上値抵抗線を上に抜けたら株価の上昇が期待できるので、買いポイント
- 株価が上値抵抗線まで上がっても押し戻されたら株価の下落が予想できるので、売りポイント
まず下降トレンドの場合には、価格帯別出来高を確認し、取引量の多い価格帯(下値抵抗線)を探し、見つかったら以下のように行動しましょう。
- 株価が下値抵抗線を下に抜けたら株価の下落が予想できるので、売りポイント
- 株価が下値抵抗線まで下がっても反発があったら株価の上昇が期待できるので、買いポイント
このようにまずは価格帯別出来高からどの価格帯に取り引き量が多いかを確認し、上値抵抗線と下値支持線を見付けます。
上値抵抗線や下値支持線は1本ずつしかないわけではなく、取り引き量の多い価格帯が複数あれば、その価格帯で株を売りに出す人も多くなると予想でき、3本あったり4本ある場合ももちろんあるので、注意深く確認してみましょう。
価格帯別出来高はボリンジャーバンドと組み合わせるのがおすすめ
価格帯別出来高と併用するのがおすすめなのはボリンジャーバンドです。ボリンジャーバンドも価格帯別出来高同様、株価チャート上に表示できるので、手間をかけず同時にニ通りの分析が可能です。
価格帯別出来高は株の取り引き量で分析を行うのに対して、ボリンジャーバンドは株価の平均値をもとに株の売られ過ぎや買われ過ぎを分析する指標なので、全く別のニ方向から相場の流れを読むことができ、分析の精度を上げることができます。
株価チャートにはボリンジャーバンド以外にも様々な指標がありますので、今まで行ってきた分析方法と合わせてぜひ価格帯別出来高も確認するようにしてください。