チャートを見る際、株価の値動きだけじゃなく「移動平均線」も同時に表示させると、売買タイミングを見極める精度がグッと上がります。
株価の平均値を見れば、いま株価は上昇傾向にあるのか下降傾向にあるのかがひと目でわかり、さらに移動平均線には株価との位置関係から売買タイミングがわかる秘密の法則まであるんですよ。
今回は移動平均線とは何か?という基本的な説明から、移動平均線を利用した投資手法までご紹介します。株価チャートの見方を理解した後は、移動平均線の活用方法をマスターし、株式投資のレベルアップを行いましょう。
平均値の計算方法と移動平均線の書き方を説明します
移動平均線はある特定の期間内にある株価の各終値で平均をとり、その平均値を結んだ線のこと。
移動平均線を見ることで、株価が「上昇トレンド」にあるのか「下降トレンド」にあるのかを確認できます。
具体的には移動平均線が上向きで右肩上がりなら「上昇トレンド」。
下向きで右肩下がりなら「下降トレンド」の傾向にあります。
実際に移動平均線を計算してみましょう。
例えば期間を5日間と設定し、5日移動平均線を書く場合を例について説明しましょう。
日 | 終値 | 5日間の平均値 |
---|---|---|
1 | 240 | – |
2 | 270 | – |
3 | 210 | – |
4 | 180 | – |
5 | 280 | 236 (1日~5日の終値の平均値) |
6 | 300 | 248 (2日~6日の終値の平均値) |
7 | 320 | 258 (3日~7日の終値の平均値) |
8 | 270 | 270 (4日~8日の終値の平均値) |
9 | 250 | 284 (5日~9日の終値の平均値) |
10 | 280 | 284 (6日~10日の終値の平均値) |
5日移動平均線は、当日から過去5日間の終値を合計し、5で割って平均値を計算します。
つまり5日の平均値は1日から5日までの終値の平均値、6日の平均値は2日から6日までの終値の平均値、7日の平均値は3日から7日までの終値の平均値です。
それぞれの平均値を結んでいくと5日移動平均線ができあがります。
例では5日移動平均線の場合で説明しましたが、その他にも期間を25日や75日、26週、12ヶ月と設定して平均値を計算した移動平均線もあります。
証券会社のホームページで提供される株価チャートには、複数の期間を設定して自動で表示できる移動平均線がありますので、一度確認してみてください。
短期 | 5日、25日、75日移動平均線 |
---|---|
中期 | 13週、26週、52週移動平均線 |
長期 | 12ヶ月、24ヶ月、60ヶ月移動平均線 |
株価は日々変動しているため、一時的なブレが出るとそのブレに惑わされてしまうこともありますが、移動平均線でチャートを見れば全体的に上昇パターンか下降パターンかを判断することができます。
期間が短い移動平均線と長い移動平均線のメリット・デメリット
移動平均線には5日移動平均線や12ヶ月移動平均線など、様々な種類があると説明しましたが、どういう場合にどの移動平均線を使用するのか次に説明しましょう。
移動平均線は期間が短いものほど実際の値動きに近くなり、期間が長いものほど緩やかになります。
実際の値動きに近い短期の移動平均線は、株価の変動に素早く対応できるメリットがある反面、「だまし」にも影響してしまうデメリットがあります。
株価を意図的に上げたり、下げたりする手法で、「騙し上げ」「騙し下げ」とも呼ばれいます。
株を一気に買って株価を上げ、その後に保有する大量の株を売って利益を得る場合などに用います。だましはチャートにブレとして現れ、騙された投資家は損害を受ける場合もあります。
長期の移動平均線は、だましの影響を受けにくいメリットはありますが、株価の変動への対応が遅いというデメリットがあります。
期間の設定によって移動平均線は変わりますが、それぞれメリット・デメリットがあります。
複数の移動平均線を同時に表示することで、互いのデメリットを補いましょう。
組み合わせて分析する方法を次から紹介するからマスターしろ!
トレンドの転換点を示すゴールデンクロスとデッドクロス
短期の移動平均線と長期の移動平均線の2本を同時に表示し、その組み合わせから相場の流れを読む手法を説明します。これはチャートを見る上で、多くの投資家が利用する基本的な手法なので、必ず確認するよう心がけてください。
上昇トレンドへの転換点であるゴールデンクロス
短期移動平均線が長期移動平均線を下から上に突き抜けることをゴールデンクロスと呼びます。このゴールデンクロスは、株価が上昇傾向に切り替わったことを確認するサインとして機能しています。
上のチャートでは、赤い13週移動平均線が青い26週移動平均線を上抜けたことで、株価が上昇トレンドに入ったことがわかります。
このようにゴールデンクロスは「上昇トレンドに入ったことを確認するための目安」として捉えてください。
実際に株を買うタイミングは、このあとで紹介する移動平均線乖離率やグランビルの法則など、他の買いシグナルと組み合わせて見極めるようにしてください。
下降トレンドへの転換点であるデッドクロス
ゴールデンクロスの反対で、短期移動平均線が長期移動平均線を下へ突き抜けることをデッドクロスと呼びます。デッドクロスは、株価が下落傾向に突入したことを確認するサインとして機能しています。
あくまで目安程度に考えて、必ず次で紹介する移動平均線乖離率やグランビルの法則など、別の指標と合わせながらこの先の相場を予想してください。
あくまで「あ、確かにトレンドが転換したな」という確認や参考程度にすべきだ。
移動平均線乖離率から売買タイミングが読める
ゴールデンクロスやデッドクロスと合わせて確認してもらいたいのが、移動平均線乖離率(いどうへいきんせんかいりりつ)です。移動平均線乖離率とは、実際の株価が移動平均線からどれくらい離れているか見るための指標です。
株価は時間や日によってバラバラですが、適正な株価から大きなズレがある場合は必ず修正が入ります。
移動平均線乖離率は、「移動平均線から大きく離れた株価は、やがて適正な価格(平均値)まで戻ってくる」という見方に基づいています。
通常は、日足チャートでは5日移動平均線や25日移動平均線、週足チャートでは13週移動平均線や26週移動平均線を使い、終値が移動平均線より上にある場合、次のような相場の経験則があります。
- 終値が移動平均線から5%以上離れると、過熱感が出て調整局面に入ります。
- 終値が移動平均線から10%以上離れると、天井圏になる。
また、終値が移動平均線より下にある場合は、こちらです。
- 終値が移動平均線から5%以上離れると、この後に反発する傾向が高くなってきます。
- 終値が移動平均線から10%以上離れると、底値圏になる。
株価チャートの波で、株価の値が上がったところを天井圏と言い、下がったところを底値圏と言います。高値圏・安値圏という呼び方もありますが、意味は同じです。
上のチャートは、25日移動平均線とその乖離率を示しています。移動平均線より株価が上にある場合は、乖離率10%前後を天井圏として下げ始め、移動平均線より株価が下にある場合は、5%前後で反発していることがわかります。
今回の例では、相場が上昇トレンドだったため買い勢力が強く、上の乖離率が約10%で反落、下の乖離率が約5%で反発という形になりました。
移動平均線乖離率は、株価が上げ過ぎか下げ過ぎかを判断する1つの指標になり、買いシグナル・売りシグナルにもなり得ますが、乖離率がどの程度で反転するかは各銘柄によって違いますので、その銘柄の過去の乖離率を確認して目安を決めてください。
移動平均乖離率の高い銘柄は「Yahoo!ファイナンス」の高かい離率ランキングから確認できます。
具体的にどの程度の株価で反発や調整が起こるのかは「価格帯別出来高」を確認すれば分かるようになります。価格帯別出来高も株価の転換点を知る1つのポイントになるので、合わせて確認するとよいでしょう。
移動平均線を考察したグランビルが導き出した8つの売買ポイント
移動平均線を利用した投資手法でもう1つ有名なものを紹介しましょう。
それは、移動平均線を考察したアメリカのJ.E.グランビルが導き出した8つの売買ポイントです。これを「グランビルの法則」と呼びます。
証券アナリストだったグランビルは、過去200日の終値の平均値を結んだ線から、その後の相場の流れを予測できることを発見しました。
これが移動平均線のはじまりですが、グランビルは移動平均線と株価の組み合わせから、4つの買いサインと4つの売りサインがあることを見い出しています。
【グランビルの法則】4つの買いサイン
移動平均線の下から株価チャートが上へクロスするポイントが、グランビルの法則による買いサインです。相場がこれから上昇トレンドに転換する場合によく見られます。株価はこのあと上昇すると予想できますので、このポイントが1つの買いサインとして機能します。
移動平均線が上昇しだしたところで、株価チャートが移動平均線を上から下へクロスしたポイントが、グランビルの法則による買いサインです。
このポイントには「だまし」が行われている場合が多いので、株初心者の場合は見逃して様子を見ることをお勧めします。
株価チャートが移動平均線より上にあり、株価が下がってきても移動平均線とクロスしないで上昇するポイントが、グランビルの法則による買いサインです。上昇トレンドの最中に現れ、買い勢力が強いためこの後も上昇トレンドが続くことが予想できます。
移動平均線が株価チャートより上にあり、株価チャートが移動平均線から最も離れたところ(乖離率が高いところ)が、グランビルの法則による買いサインです。
売り勢力が特に強い場合に表れるポイントのため、株初心者はしばらく様子を見ることをお勧めします。
【グランビルの法則】4つの売りサイン
移動平均線が天井圏の辺りで、株価チャートが上から下へクロスしたポイントが、グランビルの法則による売りサインです。上昇トレンドから下降トレンドへ切り替わる重要なポイントなので、ここで売ることを忘れないよう注意してください。
移動平均線が下落し始めた辺りで、株価チャートが移動平均線を下から上へクロスしたポイントが、グランビルの法則による売りサインです。移動平均線が下降トレンドに入っているので、今後は株価の下落が予想されます。このポイントで忘れず売っておきましょう。
移動平均線の下に株価チャートがあり、株価が移動平均線を突き抜けようと上昇してもできずに下降した場合、そこがグランビルの法則による売りサインです。
このポイントは相場の流れが早く、見逃さないよう注意が必要ですが、株を保有している場合は最後の売りポイントとして忘れず売っておきましょう。
移動平均線が上昇トレンドにあるなかで、株価チャートが大きく上へ離れたところ(乖離率が高いところ)が、グランビルの法則による売りサインです。
買い勢力が強く、移動平均線が追いつかないほど上昇しています。今後も上昇する可能性はありますが、ここで利益を確定するためにも売っておくことをお勧めします。
2のポイントで買うより「だまし」にひっかかる可能性は少なくなるはずだ。
レベルアップのために覚えておこう!売買代金移動平均線
移動平均線に似たテクニカル指標で、売買代金移動平均線というものがあります。
売買代金移動平均線とは、一定期間内の1株当たりの平均コストを計算しグラフ化したテクニカル指標です。
普通の移動平均線が株価の終値だけで平均を出すのに対して、売買代金移動平均線は株価の終値に当日の出来高をかけた金額をその期間内の出来高合計で割って平均を出します。

売買代金移動平均線は出来高も影響するため、より詳細な移動平均線が求められます。短期線は直近の状況、中期線はトレンドの転換点を確認するのに用いるのがよいでしょう。なお、売買代金移動平均線には次の日数が使用されます。
短期 | 6日、10日 |
---|---|
中期 | 25日、45日、75日、100日 |
移動平均線はどの証券会社のチャート機能でも表示されますが、売買代金移動平均線は大手ネット証券では楽天証券のテクニカルチャートでしか利用できません。
楽天証券のチャート機能には約60種類のテクニカル指標が搭載されていて、他の証券会社ではできないチャート分析だって可能なんです。
より詳しい分析をしたい場合は、楽天証券のチャート機能をご利用ください。
移動平均線を活用して売買タイミングを見極める
移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスはトレンドの転換を示しますが、それだけで判断してはいけません。
移動平均線乖離率で株価の上げすぎ・下げすぎを判断して、反発のタイミングをはかりましょう。移動平均線を利用したグランビルの法則による8つの売買タイミングも有効です。
株を買うにもいつ買えばいいのか?いつ売ればいいのか?と、売買のタイミングを見極めるのは投資家が初歩の段階で感じる大きな壁だと言われています。
移動平均線の見方がわかれば、売買タイミングを見極める有力な指標になりますので、今回紹介した手法はぜひマスターしてください。
とにかく移動平均線は「その期間中に株を買った人の買い値の平均値(売り値の平均値でもある)」だと認識しておけ。