相場の格言には、相場の心構え、相場の見方に関するものもあれば、売買タイミングに関する格言もあります。しかし、何でもそのまま実践すればいいというわけではありません。
「二番底は黙って買え」という有名な格言があります。
これは下落局面の株が一旦持ち直したあと、再度最初の底値あたりまで下がった場合(二番底)は、急激に株価が上がるケースが多いので「買い時」という意味の格言です。
しかし減収減益で経営不安がある銘柄なら、二番底以降も株価が下がり続けることが多いので、もしその銘柄を保有していれば「売り時」の可能性が高いです。
このように時と場合を選んで、格言通りに行動するかを決める必要があります。
この記事では、初心者が売買タイミングで悩んだ時に役立つ格言、具体的な実践方法、注意点を紹介するので参考にしてください。
【相場の格言1】落ちてくるナイフはつかむな地面に刺さってから抜け
「落ちてくるナイフはつかむな 地面に刺さってから抜け」は、「安易な逆張り※をせず、順張り※で投資をしなさい」という格言です。
逆張りは、株価が下がっている下降トレンドで株を買い、株価が反発して上昇したところで利益を得る方法のこと。成功すれば、大きな利益が見込めます。
順張りは、株価が上昇トレンドに入ってから株を買う方法です。逆張りよりも利益は少なくなりますが、株価が下がるリスクも小さくなるので初心者向けです。
順張りと逆張りについて詳しくは「株を買うタイミングを見極める!順張りと逆張りの買いサイン」で解説しています。
初心者はリスクが少ない順張りでの売買が基本。この相場の格言は、初心者にはとくに覚えておいて欲しい格言です。
落ちてくるナイフとは、株価が下落している銘柄のことです。
株価が下降トレンドに入っている株を「ここがもう底値だろう、下げ止まるだろう」と思って買っても、予想が外れてさらに株価が下がり続けることはよくあります。
しっかり下げ止まって、上昇トレンドに転じてから買いましょう。順調に株価が上がっていけば、上昇トレンドに入ってから買っても、ちゃんと利益は出ます。
相場の格言・実践編:上昇トレンドへの転換は移動平均線で見抜く
上昇トレンドへの転換は、2本の移動平均線で判断できます。
長期の移動平均線を、短期の移動平均線が下から上へ突き抜ける「ゴールデンクロス」が起こるのは、株価が上昇トレンドに入っているときです。
移動平均線は、どの証券会社のチャートでも表示されていますから、簡単にチェック可能。移動平均線の使い方は「株の売買タイミングが一目瞭然!移動平均線の正しい使い方」で紹介していますから、ぜひご覧ください。
ちなみに、上昇トレンドに入ったときに、一時的に株価が下がることを「押し目」といいます。下がったポイントでタイミングよく買うことができれば、順張りでも利益が増えますから、「押し目買い」を狙う投資家はたくさんいますよ。
押し目を待っている間に、株価がひたすら上がり続けて、買うタイミングを逃してその銘柄を買うのは諦めざるを得なくなります。
だから初心者は順張りで「落ちてくるナイフはつかむな 地面に刺さってから抜け」!
【相場の格言2】欲を出し過ぎると失敗する!「三割高下に向かえ」
持っている株がどんどん値上がりしていると、誰でも「さらに値上がりしてから売れば、利益がますます増える」と欲が大きくなるもの。そんなときに思い出して欲しいのが「三割高下に向かえ」です。
「三割高下に向かえ」は、株価が3割上昇すれば売り、3割下がったところで買うという格言。
これを実践していれば、欲をかきすぎて失敗することはありません。
「三割高下に向かえ」は、相場が株価上昇でも下落でも使われる格言
持っている株が予想通りどんどん値上がりしているときは「このままもっと値上がりするんじゃないか」と期待し、株を持ち続ける人が多いでしょう。しかし、欲を出して長く持ち続けた挙句、株価がガクンと下がってしまい、利益が目減りしてしまうのはよくあることです。
「三割高下に向かえ」を実践して、株価が3割上昇したところで機械的に売っていれば、売りタイミングを逃して失敗することはありません。
確定した利益で、より投資金額が大きい銘柄を買えば、下の例のようにどんどん資金を回転させて増やしていくことが可能なのです。
- 500円の株が3割値上がりすれば650円(150円値上がり)
- 650円の株が3割値上がりすれば845円(195円値上がり)
- 845円の株が3割値上がりすれば1,098円(253円値上がり)
「三割高下に向かえ」は買いのタイミングでも使われます。株価が3割も下落したら、そこから反発するはずなので、とりあえず買ってみようという意味です。
ただし、不祥事を起こした会社や、経営状態が良くない会社の株は、3割下落以降もそのまま下がり続けます。四季報などで財務状況や利益の推移を確認するのを忘れないでください。
相場の格言・実践編:機械的な売買には指値注文やリバース注文が便利
順調に値上がりするとつい期待しすぎてしまい、なかなか「三割高下に向かえ」が実践できない人におすすめなのが「指値注文」です。
証券会社の注文ページから、「130円になったら売る」と設定しておけば、130円になったら自動的に売り注文を出してくれます。
さらに便利なのが、100円での買い注文を出すときに、「130円まで値上がりしたら売る」という売り注文を同時に出せるリバース注文機能。
リバース注文(Uターン注文)は、マネックス証券で使えます。
マネックス証券は他の証券会社と比べ、さまざまな注文方法があることで有名です。
便利な注文方法を活用すれば、忙しいサラリーマンでも売買タイミングを逃さず株取引ができるので注文方法の豊富さはとても重要ですよね。
これ以外にもマネックス証券にはメリットがたくさんありますので、詳しくはこちらを参考にしてください。
便利な注文機能の使い方は「指値・成り行き注文・逆指値の使い方!便利な株の注文方法」を参考にしてください。利益確定してすぐに別の銘柄を買いたい人におすすめの、連続注文機能についても解説しています。
【相場の格言3】売買は小分け!「二度に買うべし、二度に売るべし」
売買タイミングを見極めるのは難しいので、慎重に売買注文を出すべきだと教えるのが、「二度に買うべし、二度に売るべし」という格言です。
本当はもう少し長い格言で、「売り買いを一度にするは無分別、二度に買うべし、二度に売るべし」と言います。
投資家には慎重さが求められるということを的確に表している格言です。
相場タイミングに自信がないなら「二度に買うべし、二度に売るべし」
テクニカル分析を使っても、売買タイミングに確信を持てないことも多いでしょう。
そんなときこそ、「二度に買うべし、二度に売るべし」の出番です。
自信が持てないなら、一気に売ったり買ったりするのではなくて、少しずつ売ってください。
高値に差し掛かって最初に売ってから、さらに株価が高くなった場合には、高くなったところで2回目の売り注文を出せば、利益を伸ばすことができます。
株価が下がった場合には、最初に利益確定している注文があるので、損失が少し減る効果があります。売買を小分けにすることで、リスクを分散することにつながるんです。
相場の格言・実践編:2度とは言わず、3度4度に分けて売買しよう
「二度に買うべし、二度に売るべし」を実践して小分けにする場合、2回ではなく、3回4回と分けても構いません。
「高値圏に入ったようだけど、もう売っていいか自信がないな」というときには、まず最低単元を売ってみましょう。しばらく様子をみて、そのまま下がらないなら、また少し売ってみます。そして、下降トレンドに入ったと確信した場合は、一気に売ってください。
買いの時も同様です。上昇トレンドに入ったと確信したら一気に買いましょう。
【相場の格言4】「二番底は黙って買え」はいつでも正しいのか?
冒頭でも紹介した格言「二番底は黙って買え」は、ここまで紹介した格言と比べて、かなり力強いフレーズですね。
「二番底になったら、つべこべ言わずに買っておけ!」という感じなので、「そんなに確信があるのかな」と信じたくなります。
二番底とは何か、いつでもこの格言を信じていいのか、説明します。
二番底とは?反発の後、最初の安値水準まで株価が下がること
株価が下落している銘柄が、底値に到達し、一度上昇に転じることを一番底といいます。
上昇に転じると、下落局面で株を売ることができなかった(損切りできなかった)投資家たちが、「やれやれ、ちょっと株価が上がった間にさっさと売っておこう」と売り注文を出すので、また株価が下がり、一番底と同じくらいまで株価が下がります。これが二番底です。
- 一番底:下落局面の株価が底値に達して反発する
- 二番底:「やれやれ売り」のせいで一番底くらいまで株価が再度下がる
二番底の時点では、売り注文が全て消化されている状態なので、その先は株価が上がっていくことが多いです。
相場の格言・実践編:二番底で反発するか下落を続けるか見極めろ
二番底のあとは株価が上昇することが確かに多いですが、チャート上に二番底があらわれたからといって反射的に買うのは危険。
「二番底は黙って買え」に黙って従うのは危険、という人もいるくらいです。
株価が減収減益で経営不安がある銘柄や、日本全体・世界全体で株価が下落傾向にある場合などは、二番底のあとも株価が下がり続ける可能性が高いからです。
二番底があらわれたら、次のことをチェックしてから買いましょう。
- 二番底の株価が、一番底の株価を下回っていない
- 減収減益、経営不安などの株価下落要因がない
- 上昇トレンドに転じている
ま、株式市場全体が下げているのではない限り、増収増益企業の二番底は黙って買っておけばいいだろう。
【相場の格言5】3日連続で窓が空いたら利益確定しろ!三空は売り
江戸時代の米相場で活躍した本間宗久が編み出した酒田五法をベースにした格言が「三空は売り」です。
強い上昇トレンドにあるように見える株価の動きが長く続くと、「そろそろ下がるんじゃないか」と考える投資家があらわれて株価が下がるので、早めに売って利益を確定させるべきだという格言です。
空と窓とは?投資家心理を読んだ相場の格言「三空は売り」
空とは、始値が前日終値より高く始まり、1度も前日の株価まで下がらない状態のことです。「窓が開く」ともいいます。
株価が窓を開けて上昇するのは、買いたいという人が多いことを示していて、強い上昇トレンドの真っ最中です。しかし、さすがにそれが3日も続くと(三空)、「そろそろ下落するだろうから、売ったほうがいいだろう」と考える投資家が増えます。
売り注文が出てくれば当然株価は下がります。そうならないうちに高値圏で売って、利益を確定しようというのが「三空は売り」です。
相場の格言・実践編:株価は下落が早い!三空が見えたら成り行き売り
「登り百日、下げ十日」という格言もあるくらい、株式相場は上昇よりも下落のほうが急激になることが多いです。
窓を開けて上昇した銘柄は、株価が下がり始めるとすごいスピードで下がっていく可能性が高いので、上昇トレンド中に三空が確認できたら、売り注文を出しましょう。
指値で売り注文を出した場合、急激な株価の下落が始まってしまうとなかなか約定しません。注文が置いてけぼりになって売りタイミングを逃す可能性が高いです。
売りタイミングを逃して損をしないためには、指値注文ではなくて成り行きでの売り注文を出すのがおすすめですよ。
だから、「下降トレンド中の三空は買い」という戦略もあるぞ。
【相場の格言6】一攫千金のチャンス!?保合い放れにつけ!
株価が大きく動かず、値動きが膠着状態になることを保合い(もちあい)とかボックス相場といいます。「この株は上がるはず」と思っている投資家と、「下がるはず」と思っている投資家が拮抗している状態です。
保合い状態から株価が動き始めたら、上昇するにしろ下落するにしろ株価は一気に大きく動きます。一般的には、上昇トレンドの中で保合い状態に突入した銘柄は、保合い離れ後株価が上昇します。
大きな値動きは株で利益をあげるチャンスなので、「保合い放れにつけ」とか「保合い放れは大相場」という格言があるのです。
相場の格言「保合い放れ」が大相場になる仕組み
株価が長期間動かないと、株を持っていて資金が拘束されている側は焦れてしまい、売り注文を出して株価が下がり始めます。するとそれに便乗して、信用売り※で儲けようとする人も売り注文を出し、さらに株価が下がります。
証券会社から株を借りて高く売り、株価が下落したところで安く買い戻して、差額分の利益を得る投資手法のこと。
しかし、もともと売りたい人と買いたい人が拮抗していたので保合いになっていたのですから、株価がある程度下落したところで、買い注文を出す投資家が必ず現れます。
信用売りをしていた人たちも必ず株を買い戻す必要があるので、さらに買い注文が入って、株価が上昇するのです。
相場の格言・実践編:保合い状態にある銘柄を見つける便利ツール
マネックス証券や松井証券の「チャートフォリオ」を使えば、簡単に保合い状態になっている銘柄を見つけることができます。チャートフォリオで「もみ合い」と表示されているのが、保合い銘柄です。
試しに松井証券のチャートフォリオで検索してみたら、保合い銘柄が95銘柄出てきました。下のように表示され、1ヶ月~2年半のスパンで銘柄を検索できます。
このようにチャートの形で簡単に検索することができます。この他にもチャートフォリオには便利な機能がたくさんあるので、ぜひ試してみて銘柄選びの判断材料に活用してください。
チャートフォリオが使える松井証券について詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
マネックス証券や松井証券に口座を開設していなくてチャートフォリオツールが使えない人は、いくつか気になる銘柄をピックアップして、チャートをチェックしてください。
チャート上にボリンジャーバンドを表示したときにバンドの幅が狭くなっている銘柄は、値動きが膠着している状態です。
実践しやすい!売買タイミングに関する相場の格言
売買タイミングで迷うことが一番多いでしょうから、困ったときにはぜひここで紹介した格言を思い出してください。
格言の意味だけではなく、実践方法まで紹介しましたので、きっと役立てていただけると思います。
格言を実践するために使うテクニカル分析の手法についても他の記事でたっぷり説明していますので、合わせて参考にしてくださいね。