株の注文方法はひとつではありません。大きくは値段を指定する指値(さしね)注文と、指定しない成行(なりゆき)注文にわかれますが、他に条件をつけることで、もっと便利な使い方ができるんですよ。
たとえば、日中仕事をしていて株価をチェックできない時間帯に、保有している銘柄の株価が急落したら、大きな損失を受けますよね。
そんな場合に備えて、「株価が上がったときにはこの注文を出し、下がったときにはこの注文を出す」と、複数の注文を同時に出すことができるんです。
これなら、株価が上がった時には利益確定のタイミングを逃しませんし、下がった時には損失が大きくなる前に売ってしまうことができます。
ここで紹介するさまざまな注文方法を覚えて駆使すれば、あなたの株式投資生活は、もっと便利で安心なものになるはずです。
指値注文と成行注文の使い分けは基本中の基本
株の注文方法の基本としてまず重要なのは、指値注文と成行注文です。
注文方法 | 概要 |
---|---|
指値(さしね)注文 | 希望価格を指定して発注する方法 |
成行(なりゆき)注文 | 価格を指定せず、「いくらでもいいから買いたい(売りたい)」という注文方法 |
さらに指値注文とよく比較されるのが逆指値注文です。
注文方法 | 購入 | 売却 |
---|---|---|
指値(さしね)注文 | 希望価格より安くなったら購入 | 希望価格より高くなったら売却 |
逆指値(ぎゃくさしね)注文 | 希望価格より高くなったら購入 | 希望価格より安くなったら売却 |
指値注文と成行注文それぞれのメリット・デメリットと、効果的な使い分けを解説します。
逆指値注文については次の章で解説しています。
株を安く買いたい!「この値段でしか欲しくない」なら指値注文
指値注文では、下の例のように、買う値段・売る値段を指定して注文します。
- 300円の指値で1,000株の買い注文:300円以下になったら1000株買いたい
- 500円の指値で2,000株の売り注文:500円以上になったら2000株売りたい
指値注文だと、株価が自分が指定した金額にならない限りは約定(取引が成立すること)しません。
そのため、指値注文は「この価格まで株価が下がらなければ、その株は欲しくない」とか、「この価格でなければ売らない」というときに使います。
自分が思った通りの値段で取引ができる点がメリットですが、表裏一体のデメリットもあります。希望した価格にならないと取引ができないので、下の例のような場合には、売買のチャンスを逃す可能性があるのです。
- 現在、800円の株価がついている銘柄を購入したい
- 「もう少し下がるだろうから、750円以下になったら買おう」と考え、750円で指値の買い注文を出した
- 株価が750円まで下がらずに、900円、1000円とひたすら上昇を続けた
750円ではなく800円で買っても、十分値上がり益は出ていたのに、750円の指値注文にしていたせいで株が買えないことになります。指値注文は、株価が急騰しているときや、反対に急落しているときは向いていません。
株価急落で損切りを急ぐ!とにかく早く売りたい時は売りの成行注文
成行注文は、価格を指定せず、「いくらでもいいから買いたい・売りたい」という注文です。価格を指定しないので、即座にその時の一番安い(低い)売り注文、または一番高い買い注文と約定します。
- 株価(直前の約定価格)が400円で、一番安い売り注文が402円
- 成行の買い注文を出した
- 402円で約定
成行注文は約定が早いのがメリット。
しかし価格を指定しないので、自分が思ってもみなかった価格で取引が成立する可能性があります。
思ったより安く買えたというパターンは良いのですが、思っていたよりも高く買ってしまうとか、安く売ってしまうこともあります。
例のようなわずかな価格差ならさほど気になりませんが、株価が急騰・急落している場面や売買高が少ない銘柄(流動性が低い銘柄)などに成行注文を出すと、もっと差が広がることもあります。
また、寄付や引け※では、成行注文が全て約定する板寄せ方式での取引になるので、この場合も、想定や直前の株価とは大幅にずれた金額で約定することがあります。
成行注文を使うのは、「価格が急騰しているのでできるだけ早く買いたい」とか「急落しているのですぐに売ってしまいたい」など、価格よりも速さを優先したい時です。
「いくらでもいいから、とにかく早く売りたい・買いたい」という時以外は、「自分が許容できる上限・加減での指値注文」を使いましょう。
寄付は前場(午前の部)・後場(午後の部)の最初の取引、引けは前場と後場の最後の取引のこと。単に「寄付」というと前場の寄付を指すことが多いので、区別するために後場の寄付を「後場寄り」と呼びます。また、前場の引けを「前場引け」、後場の引けを「大引け」といいます。
「買付余力が足りません」とは!?成行注文は買付余力に注意
指値注文と成行注文では、発注の時に必要になる買付余力※にも違いがあります。必要になる買付余力は、こうなっています。
当日に株を購入できる上限額のこと。買付余力を上回る買い注文を発注することはできません。
買付余力の目安は、次のとおりです。
- 指値の買い注文:指値(指定した株価)×株数+手数料
- 成行の買い注文:ストップ高の株価×株数+手数料
成行注文の場合は、いくらで約定するかわからないため、その日の株価の値動きの上限(制限値幅の条件、ストップ高になる株価)を基準にして決まります。
ストップ高について詳しい解説は「ストップ高・ストップ安と前日の終値で決まる値幅制限の関係とは」を参考にしてください。
成行注文の場合、「現在の株価」を基準に必要な買付余力が決まるわけではありませんので、注意してください。
指値注文を引けで成行注文に変えてくれる「指成」の執行条件
指値注文や成行注文では、注文を出すときには「寄付、引け、指成」などの執行条件を指定できます。
主な執行条件は、次のとおりです。
寄付(よりつき) | ・寄付でのみ有効な注文 ・前場寄付で約定しなければ後場寄付に注文が引き継がれる ・後場寄付でも約定しなければ失効 ・寄指(寄付の指値注文)、寄成(寄付の成行注文)がある |
---|---|
引け | ・引けでのみ有効な注文 ・引けで約定しなければ失効する ・引指、引成がある |
指成(さしなり) 不成(ふなり) |
・引け(板寄せ)までは指値注文 ・引けの板寄せ時に成行注文に変わる ・引けで約定しなければ失効 |
指成(さしなり)は、「ザラバ中は希望価格で注文を出しておいて、引けまでに約定しなかったらいくらでもいいから売る・買う」という注文です。
どうしても今日中(前場中)に売買したい場合に使います。
指成はどうしても当日中に売買を完了してしまいたいデイトレーダーなどが活用しています。
ただし、引けで取引が成立しない「ザラバ引け」の場合は、引け注文や指成注文は約定しませんので、必ず当日中に約定するとは限りません。
売買のタイミングを逃さない!逆指値注文の意味と使い方
もうひとつ、必ず覚えておきたい注文方法として逆指値注文があります。これは「ある株価以上になったら買う」「ある株価以下になったら売る」と指定する発注方法です。
逆指値注文とは?指定価格以上で買う・以下で売る注文方法
指値注文と逆指値注文を比較しながら、逆指値注文の特徴を理解しましょう。
発注方法 | 注文成立条件 | 発注者の意図 |
---|---|---|
900円の指値売り注文 | 株価900円以上 | 900円以上になったら売りたい |
900円の逆指値売り注文 | 株価900円以下 | 900円以下になったら売りたい |
800円の指値買い注文 | 株価800円以下 | 800円以下で買いたい |
800円の逆指値買い注文 | 株価800円以上 | 800円以上になったら買いたい |
逆指値注文は会社員投資家のお悩みを解決してくれる、とても便利な注文方法。逆指値注文について詳しく解説します。
売りの逆指値注文の使い方!リスク管理に必須
売りの逆指値注文は、リスク管理のために使います。
「ある価格以下になれば売る」という注文をあらかじめ入れておくことで、株価が急落した時に自動的に売り注文が出せて、損が大きくならずに済むのです。
マーケットはいつどんなきっかけで状況が急変するかわかりません。
兼業投資家の場合、仕事中に株価急落の原因となるような悪いニュースが出ても、すぐに売却の注文をするのは難しいですね。
しかしあらかじめ逆指値注文を出しておけば、株価が急落しても大損するリスクを回避できるんですよ。
もし逆指値注文をしなかった場合、株価が下落するほど含み損が広がってしまいます。
上昇トレンドへの転換点で買える!買いの逆指値活用法
買いの逆指値注文は、上昇トレンドの転換点を逃さずに株を買いたいときに使います。
一定の高値と安値の間をウロウロしているボックス相場(揉み合い)の場合、株価が直近の高値を超えたら(ブレイクアウト)、そこから株価が上昇していく可能性が高いことが知られています。
そのため、直近の高値付近で買いの逆指値注文を出しておけば、上昇トレンドの最初のうちに株を買うことができ、値上がり益を多く確保できます。
日中頻繁に株価をチェックできない人でも、買いタイミングを逃さないので助かりますね。
もし150円や160円で購入してしまうと、それだけ割高になってしまいます。
逆指値の指値注文だと含み損拡大の悲劇を招くかも
逆指値注文には指値注文と成行注文があります。「逆指値注文は、指値注文じゃないの?」と思ってしまいますが、「逆指値」という言葉自体は、「その価格になったら発注される」という意味です。
逆指値注文では、「その価格になったら、指値または成行で注文する」という指定ができます。
例えばこんな注文が可能です。
発注方法 | 内容 |
---|---|
500円の逆指値買い注文で指値500円 | 株価が500円になったら、500円の指値注文を発注 |
500円の逆指値買い注文で成行 | 株価が500円になったら、成行の買い注文を発注 |
400円の逆指値売り注文で指値400円 | 株価が400円になったら、400円の指値注文を発注 |
400円の逆指値売り注文で成行 | 株価が400円になったら、成行の売り注文を発注 |
なぜ、思っていた値段と違う値段で約定する可能性がある成行注文を使うのでしょうか。それを理解するために、こんな例を考えてみましょう。
- 株価が急騰していく状態
- 逆指値買い注文500円(指値500円)だと、株価が500円になった時点で500円に指値注文を発注
- その時点で株価はどんどん上昇していって、600円とか700円になってしまう
- 500円の指値の買い注文は約定しない
指値注文にしていたために、売買タイミングを逃して、株価が上昇してしまいました。
売りの場合も同じで、株価が急落していくときに、約定できずに指値注文が残ってしまう可能性があります。そうなると、株を売れずに含み損が大きくなってしまいます。
これ便利!会社員なら知っておきたい注文方法3つ
「逆指値って便利!」って思いましたよね。でも、実は他にも便利な注文方法があるんです。
通常の指値注文と逆指値注文を組み合わせて発注できたり、ある条件をクリアしたら、その次の注文を自動で出してくれたりするんです。具体的に見ていきましょう。
指値注文と逆指値注文を同時に発注するOCO注文
まずは通常の指値注文と逆指値注文を同時に発注できるOCO注文(One done,then Cansel the Other)についてご説明します。
証券会社によって、逆指値付き通常注文、ツイン指値などの呼び方もあり、似たような注文方法として追跡指値注文というものもあります。
このOCO注文を売りで使えば、利益確保とリスク管理が同時にできます。
- 指値注文=ある価格以上になったら売りたい=利益確保
- 逆指値注文=ある価格以下になったら売りたい=損失を最低限に抑える
このふたつの注文が同時に出されるため、株価が上昇すれば利益確保ができ、下落すれば損失を最低限に抑えられます。
では買いのOCO注文はどうでしょうか。買いたい株がある場合、安く買うのも重要ですが、上昇トレンドに乗り遅れないように買うのも重要です。そのどちらも叶えてくれるのが、買いのOCO注文です。
- 指値注文=ある価格以下になったら買いたい=安く買う
- 逆指値注文=ある価格以上になったら買いたい=モミ合いを抜けだし上昇トレンドに転じたタイミングを逃さず買う
株価が上昇トレンドになる場合は、上昇トレンドの最初で買えますし、モミ合いが続いて安値付近まで戻ってくるなら、安く買うことができます。
OCO注文では、どちらかの注文が約定したら、もう片方の注文は自動で消滅します。
連続注文が便利!少ない資金で何度も売買したい会社員におすすめ
連続注文という方法は、資金が少なくて、サーフィントレード※をしたい人におすすめです。
同じ資金で銘柄を変えながら連続して取引を行うこと。少ない資金でも効率よく利益を取れるので人気のトレード方法です。
サーフィントレードには、「A株が売れたかどうか確認して、あらためてB株の買い注文を出す」という細かい作業が必要になります。
しかし忙しい兼業投資家などは、常に株価をチェックしているわけにはいきませんね。
そんな人に最適なのが、連続注文です。
連続注文をしておけば、A株の売り注文を出し、A株が売れた場合には自動でB株の買い注文を出すことができます。
仕事中でも自動で売りと買いを行ってくれるので、「忙しいが資金を有効に使いたい」という人にぜひおすすめです。
最初のA株の売り注文を「親注文」、続いてB株を買う注文を「子注文」と呼びます。
リバース注文なら、購入から売却まで自動で完結!
連続で注文をだせる方法としては、リバース注文もあります。Uターン注文と呼んでいる証券会社もあります。
これは買いの注文をいれるときに、「買った後、ある値段まで上昇したら売る」という条件をつけることです。
買った後に株価が上昇したら、同一銘柄を売りたい値段で売ることができます。約定の状態の確認、株価チェック、発注作業を行う時間がなくても、あらかじめ発注しておくだけでその日のうちに株を買って売ることまでできます。
これも、会社員には嬉しい機能ですね。
注文機能で比較!おすすめはマネックス証券とauカブコム証券
証券会社によって、使える注文機能には差があります。主要ネット証券5社の注文機能についてまとめましたので、これから証券口座を開設するという方は、証券会社選びのひとつの条件にしてみてください。
マネックス証券とauカブコム証券は注文方法が豊富でおすすめです。
証券会社 | OCO注文(逆指値付き通常注文) |
---|---|
SMBC日興証券 | 〇 |
SBI証券 | ×(先物・オプション取引なら可能) |
楽天証券 | 〇 |
マネックス証券 | 〇 |
auカブコム証券 | 〇(W指値注文) |
松井証券 | 〇 |
むさし証券 | × |
ライブスター証券 | 〇 |
岡三オンライン証券 | 〇 |
※2018年10月現在
マネックス証券は、注文方法の豊富さが魅力の証券会社です。
マネックス証券から無料で提供される「マネックストレーダー」を使えば上記注文方法はもちろん、最短ワンクリックで注文ができるスピード注文や、2WAY注文が可能です。
これらの注文方法を駆使すれば株価を随時チェックしなくても、自動で思い通りの取り引きができてオススメです。
常時株価チャートに張り付いていられない人は、ぜひマネックス証券の豊富な注文方法を活用してくださいね。
またauカブコム証券も業界トップクラスの注文方法を誇っています。
OCO注文やリレー注文、Uターン注文に加え、トレーリングストップ注文や時間指定注文などauカブコム証券でしか扱っていない注文方法も多数あります。
auカブコム証券の豊富な注文方式を活用すれば、自動で株の売買を行ってくれるので、仕事で忙しいサラリーマンにもおすすめです。
注文機能を使いこなして株式投資をもっと快適で安心に
基本は、値段を指定する指値注文と、値段を指定せずに売買スピードを優先する成り行き注文の使い分けです。リスク管理のためには逆指値注文も活用しましょう。
指値と逆指値を同時に発注し、リスク管理と利益確保を両立できるOCO注文も使い方を知っていて損はありません。
連続注文やリバース注文は、使える証券会社が限られていますが、日中に仕事をしている人にとってはとても便利な注文方法です。
相場の状況や自分の戦略に沿って使い分けるのが重要です。注文機能を駆使することで、あなたの株式投資をもっと手軽で安心なものにしていきましょう!