※リーマンショックについてアニメで学びたいという方は「【リーマンショック解説①】サブプライムローンが悲劇の始まりだった」をご覧ください。
リーマンショックとは2008年9月、大手投資会社リーマン・ブラザーズが経営破たんしたことで起きた、世界的な経済危機のことです。アメリカ市場のみならず世界の市場が混乱に陥り、株価が急落しました。
しかしリーマンショックは突然起きたわけではありません。リーマン・ブラザーズが破たんするより早く兆候が表れていました。
リーマンショックで一切の財産を失った人もいますが、その兆候に早く気付いていればリスクを回避できたかもしれません。
この記事では、日本経済まで大きな影響を及ぼした、リーマンショックの本当の原因は何だったのかを掘り下げます。
リーマンショックの兆候!サブプライムローンの破綻は予測されていた
リーマン・ブラザーズはドイツからの移民だったリーマン兄弟によって創業され、数々の大手企業と買収や合併を繰り返し、アメリカの投資銀行の最大手になった会社です。
リーマンショックの引き金を引いたリーマン・ブラザーズの破たんより前に、アメリカや世界にどんな兆候があったのでしょうか。
- ニューセンチュリー・ファイナンシャルの破たん
- ベアースターンズの破たん
- パリバショック
それぞれ、次に詳しく説明します。
予兆その1、ニューセンチュリー・ファイナンシャルの破たん
経済危機の兆候は、リーマンブラザーズの破たんから1年も前のことでした。
2007年4月、サブプライムローン※を提供する、アメリカでトップクラスの大手銀行ニューセンチュリー・ファイナンシャルが破たんしたのです。
2001年ごろから始まった、アメリカの低所得者(サブプライム層)向け住宅ローンのこと。
サブプライムローンはもともと返済能力が低い人が利用していたため、債券が回収できなくなり資金繰りが悪化していました。
2007年2月に、アメリカ市場ではサブプライム融資関連株が急落。さらに影響は拡大し、NYダウは前日比100ドルを超える下げ幅を記録するなど、関連銘柄も大きな影響を受けました。
しかしそれでもまだ、誰もが事の重大さに気付いてはいなかったのです。
予兆その2、ベアー・スターンズの破たん
次は2007年7月アメリカの大投資会社「ベアー・スターンズ」が実質的に破たんしました。
危機に瀕する直前まで、ベアースターンズは黒字見通しを発表していたにもかかわらず、わずか数日で資金繰りが悪化。
170億円あったはずの資金はあっという間に底をつき、破たんは急転直下の勢いででやってきました。
原因は徐々に表面化してきたサブプライム損失を危うく思った顧客や貸し手がベアー・スターンズから資金を撤収し、さらに金融機関が一斉に返済を迫る「取り付け騒ぎ」が起きたためです。
しかしベアー・スターンズは危機に瀕した直後、アメリカの銀行最大手、JPモルガン・チェースにタダ同然の破格値で買収され、なんとか一命をとりとめました。
予兆その3、パリバショック
2007年8月、BNPバリパ(フランスに本拠のある金融グループ)がサブプライム問題を深刻に受け止め、パリバ傘下のミューチュアル・ファンドが投資家からの解約凍結を発表したことで、大混乱になりました。
かねてから懸念材料のあったサブプライム関連商品が含まれた投資信託を、解約したくても解約できない事態に陥ったのです。
2007年8月9日に解約の凍結が発表されたことで為替相場は急変、欧米株は急落、14日の日経平均は一時、600円安と深刻な事態に陥りました。
リーマンショックをわかりやすく説明!原因は高金利の住宅ローン
リーマンショックはアメリカのサブプライムローン問題が元凶。ここではどのようなメカニズムでこの問題が深刻化していったのか解説します。
サブプライムローンは低所得者のための高金利ローン
好景気に沸いていたアメリカは2000年ごろから住宅ブームが起きていました。建てた家が売れ残らないよう低所得者でもローンで家が買えるようにしたことで、ますますブームは過熱しました。
ここでサブプライムローンの特徴について説明します。
- 返済能力が低い人でも借りられる
- ローンを組んでから一定期間が過ぎると金利が高くなる
- 家を手放せばローンの返済義務がなくなる
ローンの金利が高くなっても、この時期アメリカの地価や住宅価格がどんどん上昇しているので、利用者が損をすることはないだろうと楽観的に考えられていました。
このようにサブプライムローンは「おいしい話」で塗り固められていたので、誰もが一斉に飛びついたとしても無理はありません。
得体の知れないデリバティブが横行!金融業界のあきれた実態
一方で、ローン会社は債券を銀行に売り、銀行は債券を証券化して投資家が買えるようにしました。MBS(モーゲージ債)と呼ばれた金融商品です。
さらにMBSやほかのローン商品とごちゃまぜにしたCDO(債務担保証券)という怪しげな金融商品も発売され、リスクが低くリターンの高いデリバティブ(金融派生商品)として大人気になりました。
ローンをただ転がしただけなのに、大きなお金を生み出すことに成功したのです。しかしここで注目すべきはローン会社の怠慢です。
ローン会社は結局債券自体をほかの会社に売り飛ばしてしまうので、ローンを組む人がどんな支払い能力が低くても気にしませんでした。
お金を回収できるかどうかは二の次で、契約させたもの勝ちの杜撰な審査だったのです。
格付け会社がAAA評価?誰もがサブプライムブームに沸いたわけ
アメリカでは債券の発行元を分析し、信用度の格付けを行う格付け会社があります。
当時ムーディーズやスタンダード・アンド&プアーズ、フィッチなどの格付け会社は、サブプライムローンの中身が空っぽなのにもかかわらず、この債券に「AAA」という最高ランクを付けていました。
当然サブプライムローン債権を保有する多くの投資家や銀行はリーマンショックで大きな損失を出しました。
なぜアメリカの代表的な格付け会社が、中身のない金融商品に「AAA」という最高ランクを付けたのでしょうか?
それは会社の根底にある「売れればどんな手を使ってもいい」という無責任な考え方と、アメリカを牛耳る大手企業の抜き差しならない利害関係があったのです。
大手銀行のゴールドマン・サックスやリーマン・ブラザーズ、メリル・リンチ、・ベアー・スターンズというサブプライム・ローンの立役者と、JPモルガンなどの金融複合企業、さらにムーディーズなどの格付け会社はサブプライム関連商品を売って大儲けするため、水面下で結託していました。
そのため格付け会社が、サブプライム関連の商品に「AAA」という最高評価を付けていたのです。
この評価を信用した多くの人々がなんの疑問も持たずサブプライム・ローンを組み、多くの投資家がデリバティブの購入に誘導されました。そしてリーマンショックの傷はどんどん深くなっていくのです。
住宅バブルの崩壊!地価下落でリーマンブラザーズの経営破綻に
ローン利用者はもともと返済能力の低い人だったのですから、返済が滞るのは当然ですね。
ローンが返済不可能になると債券はたちまち不良債権化し、各地でサブプライム問題が一気に表面化するとともに、世界経済の不安材料となってしまったのです。
前章で説明したベアー・スターンズの実質的な破たんや、パリバショックが起きたのはちょうどこの頃です。
投資家が自分の持っている証券にサブプライム関連債券が混じっていることを知り、損失を恐れ慌てて売りに転じたことで市場は大混乱しました。
ローン引き受けの筆頭だったリーマン・ブラザーズは、もろにこの影響を受けました。リーマン・ブラザーズはアメリカで第四位の大手証券会社でしたが、負債総額は6130億ドル(約60兆円)という莫大なものでした。
止まらない株価暴落!大手金融機関が買収断念した理由
しかしベアー・スターンズのときと同じようにリーマン・ブラザーズも、アメリカの代表的な銀行や証券会社に買収され、危機を乗り切るかと思われていましたが、結局のところ買収は見送られました。
アメリカ政府が公的資金を投入するなどの救済策を講じないと発表した影響も大きいのですが、何よりリーマン・ブラザーズの抱え込んだ負債が途方もない大きさだったからです。
サブプライムローンで損害を被った金融機関はリスクを恐れず、レバレッジ※を何十倍もかけて金融商品を売っていました。
取引する金融機関に証拠金を預け、自己資本の数倍から数十倍の金額の取引をすること。例えば100万円の証拠金を預け、10倍のレバレッジをかければ、1,000万円の取引が行えます。
大きな利益を期待できる反面リスクも大きく、判断を間違えば資本金を大きく損なう危険もあります。
リーマンショック時には、多くの金融機関が30倍~40倍のレバレッジをかけていたといいます。中身のない金融商品で、大きく儲けようとした結果だったのです。
世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、「デリバティブは殺傷力の高い危険な武器である」とかねてより警鐘を鳴らしていました。
- うまい話に惑わされ多くの人がローンを組んだ
- サブプライムローンがさまざまな金融商品に姿を変えて世界中で売られた
- 内容もよくわからない債券を多くの人が買ったため値段が高騰した
- サブプライムローン債券の格付けを格付け会社が誤った
- 金融機関が過剰なレバレッジをかけすぎた
- アメリカ政府がリーマンブラザーズを救済しなかった
リーマンショックはさまざまな原因が重なり合い起きたことだったのです。
アナリストや指標を信じすぎるのではなく、自分なりの分析力を磨くことが事故を未然に防ぐ保険にもなるんだ。
予測すれば避けられた?大暴落を予測して空売りで大儲けする知恵
リーマンショックを予知できたとしたら、私たち個人投資家はまず何をしたらよいでしょうか。
ひとまず自分の持っている株の中にサブプライムローン関連の怪しい証券や債券が含まれていないか確認し、自衛策のために早めに売りますね。
しかしこれは防衛のための一手です。未曾有の株価大暴落を目前にした「攻めの一手」に何があるか紹介します。
攻撃は最大の防御!株価が暴落する前に空売りを入れろ
先ほど説明したように、リーマンショックの予兆は随所に現れていました。経済新聞やニュースを見てアンテナを張り巡らせていれば、ある程度予測がついたことです。
そこでサブプライムローン関連銘柄に空売り※を入れるという手を使います。
金融機関から株を借りて「売り」、予想通り安くなったら「買い」戻して金融機関に返します。売買金額の差額で儲けを出すやり方で、信用取引といいます。
信用取引についての詳しい解説は「信用買い、空売りとは?株初心者向け信用取引の基礎知識」を参考にしてください。
実際にリーマンショック時に、とっさに入れた空売りで莫大な金額を儲けた人もいます。
しかし借りた株は返済期日を過ぎると自動的に決済されていしまうので気を付けましょう。暴落の予兆が表れたといってもあまり早い時期から空売りを入れていると、返済期日6か月を過ぎてもまだ暴落しない、なんてことにもなりかねません。
また信用売りには年率で何%(証券会社によって違いがあります)という貸株料がかかります。株を借りている期間が長いと貸株料も多くかかるので注意しましょう。
信用取引ならむさし証券!信用取引手数料が業界最安値
むさし証券のインターネット取引「トレジャーネット」は、信用取引にかかる手数料や貸株料が安いメリットがあります。
制度信用と一般信用、それぞれのルールを下の表にまとめました。
制度信用 | 一般信用 | |
---|---|---|
返済期限 | 6か月 | 無期限 |
金利(買建て)年率 | 1.35% | 2.35% |
貸株料 | 1.15% | × |
信用取引手数料は現物取引手数料と同料金です。
約定金額 | 手数料(税抜き) |
---|---|
10万円まで | 75円 |
20万円まで | 95円 |
50万円まで | 175円 |
100万円まで | 320円 |
150万円まで | 380円 |
300万円まで | 440円 |
実際に株取引をしている人なら、むさし証券の手数料や信用取引金利が格安なのがわかるのではないでしょうか。
金利は毎日かかるもの。株を長期間持ち続けると、その分手数料がかさんでいきます。
コストをかけずに、信用取引にチャレンジしてみたい人は、ぜひこちらからむさし証券に口座開設してみてくださいね。
むさし証券のホームページ上では、信用取引についての無料動画も視聴できます。
信用取引が初めてでも、わかりやすい動画で説明を受けられるので嬉しいですね。
ただ信用取引口座を開設するには「信用取引についての理解はあるか」「保証金が用意できるか」などの審査基準があるから気を付けよう。
リーマンショックが日本に及ぼした影響!泥沼の円高不況と株価低迷
実際のところ、サブプライムローンにはあまり関係していなかった日本は影響が少ないといわれていました。しかし影響が少ないどころか、リーマンショック後3年半近くもの長い間、日経平均株価が低迷するほど深刻な不況に陥ってしまいました。
不安視された米ドルが売られ極度の円高に
サブプライム問題の噴出からリーマン・ブラザーズの破たんが原因で米ドルが極端に売られ、代わりに買われたのが財政が安定していた日本円だったのです。
1ドル104円で取引されていた為替レートが、2008年12月には87円まで円が買われ、急激な円高にシフトしました。
そのせいで日本の輸出産業は大打撃を受け、リーマンショックに直接関係していないにもかかわらず日本市場も大暴落しました。
円高が進むと輸出産業が大損するので、日経平均株価も引きずられるように株価を下げてしまうんです。
日本の株価が輸出産業で保たれているという証拠でもありますね。
日経平均7,000円割れ!リーマンショックから株価低迷が始まった
日本市場が低迷しているさなか、最もダメージを受けた当事国であるにもかかわらずアメリカは経済危機をうまく脱し、順調に株価を回復しました。
移民が多く少子化問題のないアメリカは、GDPも順調に推移し経済危機を脱する条件がそろっていました。
またリーマンショック後、アメリカ経済はFRB議長のベン・バーナンキがリーダーシップをとったことで、いつまでも不況が長引くことがありませんでした。
そのせいでベン・バーナンキは「ヘリコプター・ベン」とか「ヘリコプター印刷機」というあだ名が付いたほど。ここからもアメリカ政府の徹底的なデフレ抑制対策が取られていたことが分かります。
一方日本は、泥沼の株価低迷からなかなか脱することができませんでした。2011年には東日本大震災に続き、福島第一原発事故が起こり、日本経済は大打撃を受けます。
ようやく不況から回復したのは、2013年日銀の金融緩和政策により、円安に傾き始めたことが大きく関係しています。
国債の値段が急上昇したことで一気に円安と株高がもたらされた。「日銀のじゃぶじゃぶ金融」とも揶揄されたが、カンフル剤的な金融政策に大きな効果があったことは日経平均チャートを見ても明らかだな。
個人投資家はリーマンショックに学べ!市場の過熱感を見落とすな
リーマンショックは「不況」ではなく「恐慌」のレベルだといわれています。しかしどんな経済危機でも過ぎてしまえば、いつの間にか危機は脱していたことに気付きますね。
しかし過去のこととして済ませてしまっては、今後必ず起こるといわれている大きな波乱に備えることはできません。
リーマンショックの元凶となったサブプライムローンは、住宅ローンの異常な加熱から始まりました。ここから異常な過熱感は、大きな反動が必ずやってくるという忠告を読み取ることができます。
自らの資産を守るため、私たち投資家は常に不安材料がないか目を光らせ、市場の過熱感に敏感になることが必要な心構えだということです。