個人型確定拠出年金(iDeCo)は自分の老後のために積み立てたお金の分だけ、住民税や所得税の課税対象額から控除してもらえるとってもオイシイ制度です。
個人型確定拠出年金は、以前401kや個人型DCと呼ばれていましたが、2017年から新しくiDeCo(イデコ)と名称を変え、公務員や主婦まで加入対象枠が拡大し、実質だれでも加入できるようになりました。
しかし個人型確定拠出年金に加入したはいいけど「運用商品に何を選ぶか考えていない」と運用方針が曖昧だったり、「元本確保の定期預金が安全でしょ」なんて決めつけていませんか?
そんなあなたは個人型確定拠出年金の恩恵を100%享受できているとはいえません。
個人型確定拠出年金の恩恵は節税効果だけではなく、投資信託で得た利益にかかる20%の税金が非課税になるという大きなメリットがあります!
この記事では個人型確定拠出年金で資産運用するならどんな商品があるか、またそのメリットとデメリットは何か、商品の選び方まで解説します。
個人型確定拠出年金(iDeCo)で運用できる商品とは
個人型確定拠出年金は自分で年金を積み立てるだけでなく、掛金の分だけ所得税や住民税といった税金の控除が受けられます。
iDeCoの運用益に税金はかかりませんし、退職所得控除や公的年金等控除もあるので、運用時や受け取りのときにも節税の効果があるのです。
個人型確定拠出年金のメリットとデメリットについて詳しい解説は「【確定拠出年金】iDeCo(イデコ)とは!メリットとデメリットを紹介」を参考にしてください。
このようにメリットが盛りだくさんの個人型確定拠出年金ですが、掛金は運用することができます。運用できる商品の種類は以下の通りです。
<個人型確定拠出年金の運用商品>
- 元本確保型商品
- 元本変動型商品
この二つには具体的にどんなものがあるのか表にしました。
運用商品の種類 | 商品例 | 特徴 |
---|---|---|
元本確保型 | 定期預金、保険商品 | ・満期時に元本と利息を確保 ・あらかじめ決められた金利で運用(固定金利) ・金利が低いとあまり資産が増えない ・保険商品の場合は途中解約すると元本割れの可能性あり |
元本変動型 | 投資信託 | ・元本減少のリスクがある ・運用成績によっては資産が大きく増える ・投資信託の場合は信託報酬という手数料が必要 |
ではどんな違いがあるのか、メリットとデメリットも踏まえて詳しく解説します。
元本確保型商品(定期預金や保険)にはデメリットも
元本確保型商品とは満期時に元本と利息が確保される安全性の高い商品のことです。
1年や5年など預け入れの期間が決まっており、その期間まで解約しなければ元本割れするリスクはありません。
元本確保型商品は元本変動型商品と比べて資産の目減りが少ないというメリットがありますが、デメリットもあります。
ここでは元本確保型商品の意外な落とし穴を紹介します。
金利がほとんどつかず、資金は減らないが増えることもない
元本確保型の定期預金や保険商品は、どこの金融機関も金利がほとんどつかず資産が増えません。
それでも「節税効果で得しているから大丈夫」とはいえ、投資信託の運用パフォーマンスと比較してみるとあまりにも大きな違いがあります。
例えば、ごく一般的な日本株式のインデックスファンド「三井住友・DC日本株式インデックスファンドS」を購入していた場合、今までの3年間で約0.34%、5年間なら約1.02%も資産が増えた計算になるんです。
定期預金などの利率と比べると、利益にかなり大きな違いがあることが分かりますね。
保険商品の中途解約は注意!
元本確保型商品として、保険会社が提供している保険商品があります。
つまり個人型確定拠出年金は運用商品の変更(スイッチング)を自由に行うことができることが特徴ですが、保険商品を選んでいると、スイッチングするたびに資産が減ってしまうということ。
5年、10年単位で満期を設定している保険が多いのですが、満期を待たずにスイッチングを行う可能性があるなら、元本確保型には定期預金を選ぶほうが適しているといえるでしょう。
将来インフレが進めば「実質」元本割れ
「デフレ脱却」を掲げた政府は、景気回復のためさかんにインフレを推進しようとしています。
また2019年10月1日には消費税率が10%に引き上げられう予定です。
このままインフレや増税が進めば、物価が上がりお金の価値が下がるということ。つまり1万円あれば買えた商品が、1万円では買えなくなってしまうということです。
政策上そう簡単にはいかないのが現実ではありますが、20年後や30年後は確実に今よりお金の価値は下がっていると考えられます。
つまり元本確保といわれている定期預金や保険は資産がほとんど増えないため、将来お金の価値が下がったら(額面は変わらなくても)実質的に元本が割れるのと同じことなんです。
元本確保型の商品は必ずしも「お金が減らない」わけではない、ということをしっかり理解して、将来安心して暮らせるだけの金額を積み立てましょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の運用商品には投資信託がおすすめ
元本変動型商品の代表は投資信託です。
元本確保型の定期預金などとは違い、投資信託は損をしそうでなんとなく不安、という人も多いのではないでしょうか。
ここが最も大きな投資信託のデメリットです。
また、投資信託を購入すると「信託報酬」という費用が余分にかかることもデメリットの一つ。※すでに信託報酬が基準価額に組み込まれているので、別途徴収しない金融機関もあります。
そのほかに投資信託を途中で解約したときにかかる費用「信託財産留保額」があります。
信託財産留保額は解約時にかかる投資信託とかからない投資信託がありますので、購入するとき確認し、できるだけ余分な費用がかからない投資信託を選びましょう。
投資信託では20%の税金が非課税になるメリットが!
個人型確定拠出年金は、運用で得た利益に税金がかからないというメリットがあります。通常、投資信託で得た利益には約20%の税金がかかりますが、これが全て非課税になります。
個人型確定拠出年金で投資信託を購入すると、とてもオトクだということがわかりますね。
個人型確定拠出年金は掛金分を課税区分から控除してもらうことで節税できるうえに、利益も非課税になるのですから一石二鳥なんです。
利益が非課税になる制度にNISA(少額投資非課税制度)が有名ですね。しかしNISAは年間120万円という上限金額が決められており、その金額以上売買を繰り返すことができません。
NISAについて詳しい解説は「NISA(ニーサ)とは?株初心者が知るべきメリットとデメリット」を参考にしてください。
しかし個人型確定拠出年金の場合、運用商品を変えること(スイッチング)の上限が定められておらず、何度でも変更することが可能です。
定期預金に比べて投資信託が安全な意外な理由
「投資信託はリスクがある、それに比べて定期預金は安心」それは間違いではありませんが、正解ともいえません。
投資信託は定期預金より意外と安全だという理由があります。
ペイオフとは預金保険制度に加盟している金融機関が破綻した場合、預金者に支払われる保険金のこと。
2005年(平成17年)からペイオフ方式が全面解禁になったことで、1金融機関に1預金者あたり1,000万円まで(普通預金や当座預金、利息を含む)しか払い戻されない可能性があります。
個人型確定拠出年金にそんなたくさん積立てないという人も安心はできません。同一金融機関の普通預金や当座預金などに預けているお金も全部合わせて1,000万円なので、それ以上預金のある人は要注意です。
また運用委託会社が破綻しても、投資家の資金を保管・管理しているのは受託会社で、信託財産に直接影響はありません。さらに信託銀行が破綻しても加入者の財産とは分別して管理される法律があるので安心です。
このように何重にも財産が守られるようになっているので、資産を投資信託で運用するほうが意外と安全なんです。
投資信託で少しでも利益を取っておくことが最大の防御
個人型確定拠出年金は、1年間で積み立てた金額分だけ税金が軽減されてとてもオトクな制度ではありますが、一方で手数料など負担しなければならない費用がかさむのが悩ましいところ。
毎月かかる手数料は定期預金の金利よりもはるかに高く、それに加えて60歳以上で実際に年金を受け取るときも毎月手数料が400円(税抜)かかります。
さらに個人型確定拠出年金は積立するときには節税できるのですが、一時金として一括で受け取ると退職金と合算になってしまい、退職所得控除からはみ出た部分は課税対象になってしまうのです。
このように受け取り方に気を付けないとせっかく節税したにもかかわらず、出ていく金額のほうが多くなってしまい損をしたなんてことになりかねません。
定期預金より運用パフォーマンスが高い投資信託で、掛金だけでなく運用益を積み上げていくくらいが個人型確定拠出年金の運用にちょうどいいといえるのです。
個人型確定拠出年金を定期預金に預けるなら、少なくとも預金の合計が1,000万円以上にならないように工夫しよう。それから破綻しないしっかりした金融機関に預けることが基本だ。
個人型確定拠出年金(iDeCo)で運用する投資信託の選び方
個人型確定拠出年金を投資信託で運用するには、どのような投資信託を選べばいいのか、商品の選び方を解説します。
基本はアセットアロケーション
投資信託の安全な運用方法として最も大切なのは、アセットアロケーション※という考え方です。
資産を偏った対象に投資するのではなく、運用対象(アセット)を分散させることでリスクを回避し安定した資産形成をめざす考え方です。
代表的なアセットには国内株式、国内債券、国内REIT、海外株式、海外債券、海外REITなどがあります。
色んなアセットを組み合わせることによって、価格変動のリスクを軽減させることができるんです。
オーソドックスなアセットアロケーション例
投資信託を購入する金額が決まったら、どの運用対象にどれだけの割合を投資するかを決めます。
これはアセットアロケーションのオーソドックスなものの一例です。
比較的安定的な国内と先進国中心の株式や債券、国内REITで8割を占め、残りの2割で新興国の株式や債券を配置し、バランスを保つ運用です。
もちろん個人の好みなので「これが正解」というアセットアロケーションはありません。しかし自由に組み替えることで運用パフォーマンスに差がつくのが投資信託の面白いところ。
個人型確定拠出年金のアセットアロケーションについて詳しい解説は「個人型確定拠出年金(iDeCo)おすすめのアセットアロケーション」を参考にしてください。
バランスファンドは組み入れられているアセットクラスを確認しよう
アセットアロケーションなんて難しいことは理解できないという人には、初めから運用対象をバランスよく組み入れられているバランスファンドがおすすめです。
ただ信託報酬が高いものや、信託財産留保額が定められていることがあるので注意。また「すべてお任せでOK」と考えるのではなく、どんな投資方針か、投資対象は何かなど、基本的なことはしっかり確認しましょう。
とはいえバランスファンドは「難しいからお任せで」という他人まかせな投資信託。
どちらかというと、バランスファンドのようなセット商品より、変わりやすい世界の情勢や経済状況によって投資信託が組み替えられるほうが自由度が高く、トータルで得る利益にも違いが出てくるのではないかと思われます。
バランスファンドについての詳しい解説は、「バランスファンドのメリットとデメリット、注意点を解説!」を参考にしてください。
インデックスファンドとアクティブファンドの違いを理解しよう
投資信託の種類にはインデックスファンドやアクティブファンドなど、運用方針が違う投資信託があります。
(日本株式のインデックスファンドの場合)日経平均株価やTOPIXなどの市場平均に連動した動きをする投資信託で、パッシブファンドとも呼ばれます。それぞれのインデックスファンドに、どんな市場平均に連動しているか明記されています。
アクティブファンドはインデックス(市場平均)以上の運用パフォーマンスを目指す投資信託のことです。
アクティブファンドは、ファンドマネージャー(投資信託を運用する専門家)によっては大きな利益を期待できる反面、信託報酬が高くつくものが多いことがデメリット。
その点、インデックスファンドは大きな利益を見込めるわけではないながら、安定的な資産運用におすすめ。信託報酬の安さも魅力です。
またアクティブファンドの運用実績が市場平均を上回ることも、現実にはなかなか難しいのが一般的です。
確定拠出年金の運用なら、素直に低コストのインデックスファンドを選んだほうがよさそうです。
投資信託選びに迷ったら「個人型確定拠出年金(iDeCo)におすすめの投資信託を比較」を参考にしてください。
iDeCoで運用するファンドを選ぶなら、安定した利益が見込める低リスク&低リターンな一般的なインデックスファンドを組み合わせるのが、最善の策といえるだろう。
投資信託で選ぶなら対象ファンドの多いSBI証券!
個人型確定拠出年金で対象となっている投資信託は種類も本数も金融機関によって違います。
個人型確定拠出年金の金融機関選びについて詳しい解説は「個人型確定拠出年金(iDeCo)を取り扱う金融機関を比較します」を参考にしてください。
商品のバリエーションが少ない金融機関で始めてしまうと、後々「理想的な投資信託が見つからない!」なんてことにもなりかねません。
個人型確定拠出年金を投資信託で運用するなら、対象投資信託の本数がダントツに多いSBI証券がおすすめです。
SBI証券は対象商品数が60本以上。豊富な商品のなかから自由にアセットアロケーションを組むことができるので、個人型確定拠出年金を運用するのにピッタリです。具体的な運用商品は「SBI証券のiDeCoの特徴とは?おすすめ商品も紹介」を参照してください。
さらにSBI証券で個人型確定拠出年金に加入すると、毎月の口座管理手数料が0円!
これから個人型確定拠出年金を検討している人は、ぜひSBI証券を選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。
SBI証券で口座開設をするならSBI証券の特集記事をお読みください。
iDeCoの口座開設なら楽天証券もおすすめ!
個人型確定拠出年金に加入するなら、楽天証券もおすすめの証券会社です。
その理由は次の通り。
- 口座(運営)管理手数料がかからない
- 証券口座が一括管理できて便利
- 投資信託の信託報酬が低いものが多い
楽天証券は口座管理手数料がかからないので、低コストで個人型確定拠出年金を利用することができます。
また通常の金融機関では年金口座は別管理、というところが多いのですが、楽天証券は証券口座と同じIDで管理できるところが便利。
ログインを何度も繰り返す必要がなく資産管理に手間がかかりません。
対象の投資信託は信託報酬が低いものが中心で、利用者の負担が少ないのも嬉しいですね。
楽天証券はこちらから口座開設ができます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の商品の選び方
元本確保型なら保険より定期預金がおすすめ。しかし老後の年金を少しでも増やす必要があるため、金利の低い定期預金一本に絞って運用するのはおすすめできません。
自分のリスク許容量に合わせ、例えば掛金の50%をノーリスクの定期預金に、残り50%を投資信託を購入するなどの運用方法がおすすめです。
リスクを取りたくない人も、投資信託をいくつか組み合わせ分散投資することで、リスクを抑えた資産形成が可能になります。利益が非課税になるメリットがある個人型確定拠出年金に加入するなら、運用する商品まで考慮し、しっかり利益を取っていきましょう。
自分のリスク許容度に合わせ、元本確保型と元本変動型をミックスしバランスを考えた運用をするのがおすすめだ。