iDeCo(個人型確定拠出年金)とNISAは、長期での資産運用に適した制度。
どちらも利益が非課税になる点は変わりませんが、上限金額や取扱商品、非課税期間などに違いがあります。
資金を貯める目的や自分の投資スタイルに合わせて、どの制度を活用するか検討してください。
この記事では個人型確定拠出年金(iDeCo)とNISA、つみたてNISAの違いを比較しています。
iDeCoとNISA、どれを選べばよいかもケースごとに紹介していますので、長期資産運用の参考にしてくださいね。
iDeCoとNISA、つみたてNISAの違いを比較
個人型確定拠出年金(iDeCo)とNISA、つみたてNISAの共通点は次のとおり。
- 資産を長期的に運用できる
- 利益にかかる税金は非課税になる
一方で、異なるのはどのような点なのでしょうか。
iDeCoとNISAの比較表を次に紹介します。
iDeCo | NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|---|
対象年齢 | 20~60歳 | 20歳~ | 20歳~ |
上限金額 (非課税枠) |
12,000円~68,000円まで 被保険者の種別によって差がある |
年間120万円まで | 年間40万円まで |
運用方法 | 定期預金、保険、対象の投資信託 | 上場株式、上場REIT、上場ETF、投資信託など | 投資信託(ETF) |
売買 | 何度でも可能 | 120万円以上は再投資できない | 40万円以上は再投資できない |
引き出し | 60歳まで引き出しできない | いつでも引き出せる | いつでも引き出せる |
非課税期間 | 運用期間中はずっと | 5年間(ロールオーバーすれば最長10年) | 20年間 |
損益通算 | できない | できない | できない |
iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後の資金を貯蓄するのが目的の年金制度。
積み立てたお金は60歳になるまで引き出すことはできません。
しかし積み立てた掛金の分だけ、所得税や住民税の課税対象額から控除されるので、節税になるというところも大きなメリットです。
iDeCoについて詳しい解説は「【確定拠出年金】iDeCo(イデコ)とは!メリットとデメリットを紹介」を参考にしてください。
一方、NISA(少額投資非課税制度)は「預貯金でお金を眠らせておくなんてもったいない!利益は非課税にします、日本の景気を上げるためお金を投資に回しましょう!」ということで始まった制度。
そのためNISAで投資した資金や利益はいつでも引き出して使うことができます。
ただその反面、年間の投資金額の上限が定められていたり、運用期間が定められていたりと制約もさまざま。
NISAについて詳しい解説は「NISA(ニーサ)とは?株初心者が知るべきメリットとデメリット」を参考にしてください。
NISAとつみたてNISAでも非課税枠や期間などに違いがあります。
NISAの非課税期間は5年間なのに対し、つみたてNISAでは20年間と長期。
一方の非課税枠はNISAが120万円なのに対し、つみたてNISAでは40万円と半分以下です。
iDeCoとNISA、またはiDeCoとつみたてNISAの併用はできますが、NISAとつみたてNISAの併用はできないので注意してください。
iDeCoとNISAは運用商品も異なる
iDeCoとNISAでは運用できる金融商品にも違いがあります。
対象となる金融商品・投資商品 | |
---|---|
iDeCo 個人型確定拠出年金 |
元本確保型(定期預金、保険) 元本変動型(対象の投資信託)のみ |
NISA 少額投資非課税制度 |
株式、投資信託、ETF、REIT、外国株など幅広く対応 |
つみたてNISA | 投資信託(ETF)のみ |
このように株式から投資信託、外国株まで幅広く購入できるNISAに比べ、iDeCoとつみたてNISAは対象となる金融商品が限定的。
特にiDeCoは運用できる投資信託の本数自体がかなり少なく、各金融機関で取扱があるのがだいたい10~30本です。
ただし、何度でも商品を変えること(スイッチング)が可能で、購入時手数料はかかりません。
iDeCoでおすすめの投資信託について詳しい解説は「個人型確定拠出年金(iDeCo)におすすめの投資信託を比較」を参考にしてください。
つみたてNISA対象の投資信託は、金融庁の基準を満たした商品に限られるため、本数が少なめになっています。
ノーロード(販売手数料が無料)で信託報酬が低い商品に限られ、また毎月分配金を出す投資信託も除外されるので、投資初心者にも安心というのはメリットです。
一方で、NISAはさまざまな商品を取引できるのがポイント。
投資信託に関してもノーロード(手数料無料)のものに限らず、購入時手数料が必要になるものも。アクティブファンドを含め、さまざまな商品から選べます。
iDeCoやつみたてNISA対象の投資信託がたくさんあるのはSBI証券。60本近くあるからほかの金融機関と比べてもダントツの商品数だ。iDeCoの金融機関比較について詳しくは「個人型確定拠出年金(iDeCo)を取り扱う金融機関を比較します」を読むといいぞ!
iDeCo?NISA?どれを選ぶ?ケース別に紹介
iDeCoとNISAは資産の使い道や自分の投資スタイルによって何を選ぶべきか変わります。
時には併用したほうがいいケースも。iDeCoとNISAは併用できるんです。
ここでは個人型確定拠出年金(iDeCo)とNISAの使い分けや、おすすめの併用方法について解説します。
老後資金を貯めるなら「iDeCo」に決まり!
老後の生活のために、資産運用したいというのであれば迷わずiDeCoをおすすめします。
iDeCoは、運用益が非課税になるだけではなく、所得控除もあるんですよ。
これは「積み立てただけで増えたお金」であり、これを利回り換算するとなんと20%以上にもなるのです。
節税効果という意味では、NISAやつみたてNISAよりもiDeCoの方が優れているといえます。
ただし、iDeCoは60歳まで引き出し不可という特徴があるので気をつけてください。
60歳より前に使う資金を貯めるならNISAがおすすめ
結婚資金や子どもの教育資金、住宅購入資金などを貯めるため、数年~10年程度で資産運用したいというのであればNISAを利用するのがいいでしょう。
NISA口座からNISA対応の積立投信を購入し、iDeCoと同じように毎月積み立てていくことも可能。
NISAは年間120万円まで投資することができますから、iDeCoより投資枠を広くとることができます。
ただしNISAは購入した株式や投資信託は最長10年までしか保有することができません。
つまり10年経ったら売却するか、課税口座に移換する必要が出てきます。
もし10年後損失を出している状態で解約しなければならないとなると、資産が減る可能性も。
課税口座に株式や投資信託を移換し、保有し続けることもできますが、移換後に利益が出ればその分は当然非課税とはならないので注意が必要です。
NISAで運用する場合、利益確定のタイミングをよく考えて運用しましょう。
株取引したいならNISA、コツコツ積立ならつみたてNISA
株への投資も積極的に進め、大きなリターンを得たい人はNISA、毎月コツコツと積み立て、長期的に資産運用したい人はつみたてNISAがおすすめです。
NISAとつみたてNISAは「運用期間」と「選択できる商品」が大きく違います。
NISAの非課税期間が5年間なのに対し、つみたてNISAは20年間とより長期的。
またNISAは株やREITなど多様な商品に投資できますが、つみたてNISAは投資信託のみです。
NISAは積立以外に単発での株式購入などもできますが、つみたてNISAの場合は積立での運用しかできません。
NISAとつみたてNISAの併用はできないため、どちらか自分の投資スタイルに合った制度を選んでください。
10年以上かけて安定した運用を目指すならつみたてNISA
長期間で安定した運用をしたいのであればつみたてNISAを選ぶといいでしょう。
つみたてNISAの商品は、一定の条件を満たした投資信託(ETF)に限られます。
購入手数料が無料で、信託報酬が安いもの、毎月分配金を出さないものが選ばれているので、長期投資にうってつけ。
知識が少ない投資初心者も商品を選びやすく、安心して運用ができます。
また、少額でコツコツ積み立てるので、分散投資になり、リスクを減らすことも可能。
投資信託の運用がはじめての人にもつみたてNISAはおすすめです。
非課税期間も20年と長く、NISAより長い期間で安定した運用が見込めます。
iDeCoとNISAの併用はアリ!
iDeCoとNISAの併用をおすすめするのは次のようなとき。
- iDeCoで上限まで積み立てしても余剰資金があるとき
- 老後資金と他の用途の資金を同時に貯めたいとき
老後資金を貯めたければ、まずはiDeCoで上限ギリギリまで積立を行うのがおすすめ。
iDeCoは毎月手数料がかかるので、その方が効率的です。
上限まで積立しても、余剰資金がある場合は、NISAかつみたてNISAに資金を回すのがよいでしょう。
老後資金の他に住宅の購入、子供の学資金に充てる資金なども貯めたい場合は、iDeCoだけでは不十分。60歳まで引き出すことができないので、必要なときに資金を利用できません。
この場合も、iDeCoとNISA(つみたてNISA)を併用することを検討してみてください。
iDeCo(イデコ)とNISAは目的によって使い分けよう
iDeCoとNISAは利益にかかる税金が非課税になり、長期運用が可能である制度ということは共通しています。
老後資金を貯めたいのであれば、節税効果の高いiDeCoがおすすめ。
車や家、子供の学費など、数年~10年以内くらいの大きな出費に備えたいならNISA。株式取引など、さまざまな商品に投資したい場合もNISAを選ぶのがよいでしょう。
安定して長期(10年以上)で運用したければつみたてNISAを選んでください。
iDeCoとNISAは併用も可能なので、状況に合わせて併用を検討するのもおすすめ。
将来設計をしっかり立て、お金の用途に合わせた資産運用を検討してくださいね。