レオス・キャピタルワークスが運用するアクティブ・ファンド「ひふみ投信」の人気が沸騰しています。
「結局アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない」といわれ、インデックスファンドでのパッシブ運用がもてはやされる昨今、なぜひふみ投信はこれほどまでに人気なのでしょうか?
その人気のヒミツを探るべく、ひふみ投信の運用報告会に行ってきました!
実はレオス・キャピタルワークスが開催するセミナーや運用報告会は、いつも大人気で予約が取れないほどなんです。
この記事では、投資初心者の筆者が、名古屋でのひふみ投信の運用報告会に出席し、「どんな内容だったのか?」をレポートします。
会場は名古屋吹上ホール!ひふみろがお出迎え
ひふみ投信の運用報告会は、2017年12月2日、名古屋吹上ホールで開催されました。
エレベーターを降りると、レオス・キャピタルワークスのイメージマスコットキャラクター「ひふみろ」がお出迎え!
まさか「ひふみろ」が名古屋に来てくれるとは!ひふみろ登場のサプライズで驚きましたが、会場に入って2度めの驚き。会場が広い!
学会やシンポジウムなどの催しに利用されるという430人収容できるメインホールに、満席の勢いで人が入っています。
上の写真はメインホールのビューですが、ここに約400名がぎゅうぎゅう詰めでした。意外に女性投資家が多く、半数が女性だったのではないでしょうか?
ひふみの運用報告会!当期の運用状況や配当金、費用を公開
受付を済ませ入場するときに、「2017年ひふみの運用報告会」というパンフレットと、ひふみろが印刷されたクリアファイルが配布されました。
報告会はこのパンフレットに書かれた内容に沿って進行するようです。
表紙の運用メンバーの笑顔がまぶしいです。なんなんでしょうか、このおじさんたちのカッコよさは。
「一度はカリスマファンドマネージャーといわれている、藤野英人さんのお話を直接聞いてみたい」と思っていたので、一気にテンションが上がる筆者。
写真の右にいるのがファンド・マネージャーの藤野英人さん、左にいるのが運用部シニア・アナリストの八尾尚志さんです。
ひふみ投信の配当金はゼロ!複利効果でリターンの増加を狙う
ひふみの運用報告会では、最初にひふみ投信とひふみプラスの気になる配当金について報告がありました。ひふみ投信とひふみプラスの配当については、次のとおりです。
項目 | ひふみ投信・第9期 | ひふみプラス・第6期 |
---|---|---|
1、配当等収益 | 754,742,312円 | 2,258,911,935円 |
2、有価証券等損益額 | 14,442,669,615円 | 35,309,696,032円 |
3、収益調整金 | 47,670,799,866円 | 177,276,777,057円 |
4、分配準備積立金 | 4,864,625,647円 | 2,146,396,938円 |
5、分配対象収益額 (1+2+3+4) |
67,732,837,440円 | 216,991,781,962円 |
一万口あたりの分配対象収益額 | 35,439円 | 27,009円 |
ひふみ投信は2008年に設定した投資信託のため第9期の決算報告、ひふみプラスは2012年に設定した投資信託のため第6期の決算報告です。
上の表から見てもわかるとおり、一万口あたりの分配対象収益額として、ひふみ投信では35,439円、ひふみプラスでは27,009円とあります。
しかしひふみ投信・ひふみプラスの配当は今年も0円でした。
つまり収益が上がり分配できるお金があっても、そのお金は引き続き投資資金として運用されます。それによって元手をより効率的に増やすことができるというわけ。
これが投資資金が増えることによって、さらに大きなリターンが期待できる複利効果というものなんです。
ひふみ投信・ひふみプラスの運用費用!一万口あたりのコストはいくら?
ひふみの運用報告会では、運用コストの説明も丁寧にされていました。
投資信託を購入すると、ファンドを運用するのに必要な費用が、保有資産から毎日少しづつ徴収されています。
投資家としてはできるだけ、このようなコストをかけたくないものですね。ひふみ投信とひふみプラスの一万口あたりの費用は、次のとおりです。
ひふみ投信 | ひふみプラス | |
---|---|---|
信託報酬(年率) 売買委託手数料 その他費用 |
1.358% | 1.357% |
平均基準価額 | 39,054円 | 31,806円 |
平均基準価額に対する費用の金額(年間) | 531円 | 431円 |
ひふみプラスの方が設定時期が遅く基準価額が低いため、金額的には安くなっていますが、年率ではほぼ同程度です。
ほかのアクティブファンドと比較しても、運用費用の合計が1.3%というのはかなり低コストといえるのではないでしょうか。
コストについて説明されていた方は、今後もできるだけコストの削減に努めていくと話しておられました。
ファンドマネージャー藤野英人さん登壇!みずから「ひふみ」を語る
次にマイクを取ったのは、ひふみの運用責任者である藤野英人さん。
藤野さんのお父様は転勤族で、名古屋にも住んでいたことがあるそうです。当時のお友達もたくさん名古屋にいらっしゃるとか。
通っていた高校は愛知県下で偏差値トップを争う名門校「旭丘高校」と聞いてびっくりしました。優れた人は若いころからやっぱり頭脳明晰だったんですね!
ところがAグループで旭丘、Bグループで千種を受験したところ旭丘に合格してしまったため、結局千種高校の正門前のマンションから、3年間ずっと旭丘高校に通学することになったそうな。
藤野さんは「事前によく調べることの大切さ」を言いたかったみたいですが、このお話で会場が一気になごみ、笑いに包まれました。
そのほかにも「味噌かつ」や「味噌煮込みうどん」のご当地ネタを披露し、会場の笑いを誘っていましたよ。
たくさんの藤野さんファンができるのは、投資のうまさだけでなく、人の心をつかむ話術や愛嬌のあるルックス、人柄の良さなどがあるのではないだろうかと筆者は思います。
藤野さんが語るひふみらしさ?パフォーマンスはTOPIXを上回る
ひふみ投信・ひふみプラスは、当期もTOPIX(東証株価指数)を上回る運用パフォーマンスでした。TOPIXが+29.2%に対し、ひふみ投信(ひふみプラス)は+37.5%です。
ファンドマネージャーである藤野さん曰く、ひふみ投信の値動きには「ひふみ特有のくせ」があるといいます。
ひふみ特有のくせは、日経平均やTOPIXなどベンチマーク(市場価格)と比較することで明確にわかるんですよ。
ベンチマーク | ひふみ投信の基準価額 |
---|---|
急激な上昇時 | あまり上昇しない |
急激な上昇のあとの横ばい相場 | ベンチマークを追い抜く上昇 |
急激な暴落時 | ベンチマークと同程度の下落 |
急激な暴落のあとの反発 | ベンチマークを追い抜く上昇 |
アベノミクス相場やトランプ相場など急激にマーケットが上昇するときには、大型株が上昇しますが、ひふみが投資する中小型株はあまり上がりません。
しかし大型株の株価の上昇が落ち着いたころ、ひふみ投信の構成銘柄である中小型株の株価が上がりだすので、基準価額も上昇します。
またリーマンショックや東日本大震災などマーケット全体が大暴落するときには、誰もが株を投げ売りしている状態なので、当然のことながらひふみの基準価額も下がってしまいます。
しかしマーケットが大暴落したあと反発が起きますよね。そのとき優良株ばかりで構成されているひふみ投信は堅調な伸びが期待できるんです。
これはひふみ投信とTOPIXの価格推移を比較したものです。
TOPIXが横ばいのとき、ひふみ投信は急上昇しており、先ほどの「ひふみ特有のくせ」といわれるものがしっかりと当てはまっています。
ひふみ投信のくせを把握していれば、これから先必ず起きる相場の大暴落も、あまり悲観的にならずに済みそうですね。
ひふみ投信の今後の展望は?世界を股にかけたワールドワイドな運用を
ひふみ投信は2016年から一部アメリカ株にも投資を始めていますが、今後は本格的に外国株式の保有数を増やしていく方針だそうです。
たしかに海外の出張費を捻出できるようになったから、というのも理由のひとつではあるでしょう。
しかしひふみ投信のファンドサイズが大きくなったことで、日本の銘柄だけでは収まり切らなくなってきたというのもあるのではないでしょうか。
また日本は労働人口の先細りが懸念されていますが、海外の多くの国では日本よりもよりエネルギッシュに経済活動を行っており、そこに投資枠を設けるのは当然といえば当然ですね。
日本という狭い枠を打ち破り、ワールドワイドに活動範囲を広げる、これからのレオス・キャピタルワークスに大いに期待したいですね!
藤野英人VSテリー小池!ブラザー工業代表取締役社長との対談
「ひふみの運用報告会」のもうひとつの目玉は、ブラザー工業株式会社の代表取締役社長、小池利和さんと藤野英人さんの対談です。
レオス・キャピタルワークスが認めた企業人と、レオスのファンドマネージャーが語りあう場に、私たちのような一般の投資家が陪席できるなんて光栄すぎます!
写真左がレオス・キャピタルワークスの藤野英人さん、右がブラザー工業株式会社の小池利和社長です。
小池社長は、社内でなぜか「テリーさん」と呼ばれているとか。
というのも小池社長は、1982年ブラザーインターナショナルコーポレーション(U.S.A.)に出向し、23年間にも及ぶアメリカ赴任でがむしゃらにやってこられた経歴の持ち主。
アメリカ暮らしが長かったために、生粋の日本人にもかかわらずいつのまにか「テリーさん」と呼ばれるようになったそうです。
今後、海外進出を拡大する予定のレオスだからこそ気になることも多いのか、藤野さんはテリー社長に集中的に当時の海外赴任についての質問をしていました。
「英語で苦労しませんでしたか?」
その藤野さんの質問に対し、テリー社長も丁寧に回答していらっしゃいました。
ときどき笑いが起きつつも会場全体がテリー社長の話に聞き入り、1時間強の対談時間はあっという間でした。
普段聞くことができない企業内部のお話をうかがうことができ、とても有意義で贅沢な時間を過ごすことができたんですよ。
「変わらない努力」と「変わり続ける努力」が共存するブラザー工業
筆者自身ブラザー工業というと、「ミシンの販売・・・?」くらいしか思い浮かびませんでした。
しかし実際のブラザー工業は、多岐に渡るさまざまなモノづくりを推進している企業です。
日本だけでなくアメリカやアジアに企業の拠点を移し、海外での営業利益が順調に推移しているそうです。
しかしブラザー工業は次々新規事業に参入し、事業拡大していく企業だと思いきや、テリー社長は「(ブラザー工業は)あきらめの悪い会社」だといいます。
「ここまで会社が成長できたのは、ある意味あきらめないでしがみ付き、必死でやってきたから。それが実を結んだために会社として生き残ることができた」のだそうです。
ブラザー工業はいまだに需要の少なくなったファックスなどの生産もわずかながら続けているそうで、そういう面では「あきらめが悪い」とおっしゃる理由も理解できますね。
ブラザー工業は、時代のニーズに従っていろいろなモノづくりにチャレンジする「変わり続ける努力」と、逆にユーザーが求める限り作り続ける「変わらない努力」が共存する、ちょっと面白い会社だと筆者は感じました。
テリー社長は長年「テリーの徒然日記」というブログを続けており、その1,000回記念に、ブログをまとめた書籍を作ったそうです。
通常は非売品なんだとか。しかし今回の参加者には特別に販売してくれると聞き、すっかりテリー社長に心酔した筆者は、テリー社長の企業人としてのノウハウを学ぶべく即購入!
すごい行列で買うのが大変でしたが、何とかゲット!これをよんで大成できるよう精進いたします!
書籍の売り上げは、東日本大震災の復興支援として寄付されるということです(さすがです)。
行って損はない!ひふみ運用報告会は投資家として知るべき情報が満載
ひふみの運用報告会は予想以上に盛りだくさんな内容で、この記事だけで書ききることができないほどです。
通常、購入しているファンドについて「どんな銘柄を選んでいるか」「どんなふうに運用しているのか」など、知っているようで詳しくは知りませんよね。まして「誰が運用しているか」など知る由もありません。
そういう中でひふみ投信は「誰が」「どんな銘柄を」「どんなふうに」投資しているかまで詳しく教えてくれます。
今回運用報告会に行き、藤野さんの堂々とした態度を見ていると、本気で「私はこの人を信用したい」「この人にお金を預けたい」という気持ちになりました。そして「また藤野さんのお話を聞きたい」とも。
ただ藤野さんのお話をもっと聞きたいがために「ひふみ投信で積立しようかなあ」と考えています。こう思わせる不思議な魅力が、藤野英人さんをして「カリスマファンドマネージャー」と呼ばせる所以ではないか、と感じました。