ニュースでよく聞く「FRB」「FOMC」「利上げ」という単語。
いずれも米国の金融政策に関係する言葉ですが、なぜ頻繁に取り上げられるのでしょうか。
それはFRBの動向が世界中のマーケットに多大な影響を与えるからです。
FRB議長の発言やFOMCの政策によってNYダウや各国為替相場が大きく上下。
日経平均株価は米国の株価に連動するケースが多いため、NYダウが下落すると日経平均も下がる傾向にあります。
2008年のリーマンショックもFRBの利上げによって、サブプライムローンの支払い負担が増加したことが原因とされているほどです。
この記事ではFRBや利上げの仕組みと影響について分かりやすく解説。
日々のニュースを理解したり、株価や為替相場の動きを読むための参考にしてください。
FRBは日本の中央銀行に相当する機関
FRB(Federal Reserve Board)は「連邦準備制度理事会」と呼ばれ、FRS(連邦準備制度)という米国の中央銀行制度を構成する一機関です。
創設は1913年で当時は連邦準備局と呼ばれていました。1935年に現在の名称へ変更。ワシントンD.C.に本拠地が置かれ、7名の理事(議長:副議長が1人ずつ)で構成されています。FRB議長の指名は大統領が行い、2019年1月時点の議長はジェローム・パウエル氏です。
FRBは全米12の中央銀行を調整する役割
FRBは「連邦準備制度理事会」という名称にある通り、正確には銀行ではありません。
紙幣の発行など、実際の中央銀行業務はアメリカ各地区に置かれた12行※の連邦準備銀行(Federal Reserve Banks)が行います。
FOMCで利上げが決定されるユニークな組織形態
FRBは年に8回、FOMC(Federal Open Market Committee)を開催します。連邦公開市場委員会と呼ばれるこの会合にはFRBの理事7名と連邦準備銀行の総裁5名が参加。
このFOMCが米国のフェデラルファンドレート(FF金利)の上昇、いわゆる利上げを含む金融政策を決定しているのです。
FRBの利上げとは短期金利を上昇させる金融政策
FRBの利上げとは、FOMCがフェデラルファンドレート(FF金利)の上昇を決定することです。
米国の民間銀行は預金額に応じた準備金(フェデラルファンド)を連邦準備銀行に預かり入れなければなりません。銀行によっては準備金が不足しているので、他の銀行から資金を借りる必要があります。
民間銀行同士の資金の貸し借りに適用される金利がフェデラルファンドレートです。
FRBの利上げと為替:株価:原油:日経平均の関係性と影響
FRBの動向がニュースで頻繁に取り上げられるのは、それが米国内のみならず新興国や原油などの商品市場など各マーケットの価格変動に影響を及ぼすためです。
一般にFRBが利上げを行うと次のような影響が考えられます。
利上げ | 利下げ | |
---|---|---|
ドル相場 | ドル高 | ドル安 |
米国企業株価 | 下落 | 上昇 |
円相場 | 円安 | 円高 |
日経平均株価 | 下落 | 上昇 |
新興国通貨 | 下落 | 上昇 |
原油価格 | 下落 | 上昇 |
FRBが利上げをすると、米国の金利が高くなります。
資金は金利の低いところから高いところへ流れるのが基本。利上げはドルの人気を高めてドル高を生み、他通貨の価値を下落させます。
FRBの利上げが日経平均の下落につながった仕組み
2016年は年始から円高の動きが加速しました。2015年には1ドル=120円程度だったのが、1月には115円程度まで上昇。年内は1ドル=100円程度で推移しました。
円高を加速させた要因の1つがFRBによる利上げです。
FRBは2008年のリーマンショック以降、FF金利をほぼ0にする「ゼロ金利政策」を実施。同時に国債を大量に買い入れる「量的緩和」を段階的に行い、資金供給量を増やし続けてきました。
日時 | 政策内容 |
---|---|
2008年11月 | ・量的緩和(QE1)を開始(アメリカで量的緩和策が施行されるのは始めて) |
2008年12月 | ・ゼロ金利政策がスタート ・FF金利を0.00%~0.25%に |
2010年11月~11年6月 | ・量的緩和(QE2)を開始 |
2012年9月~14年10月 | ・量的緩和(QE3)を開始 |
2014年10月 | ・量的緩和を終了 |
2015年12月16日 | ・ゼロ金利政策を解除。 ・FF金利を0.25%~0.5%に引き上げる |
アメリカが低金利になるとドルの魅力が低下。余ったマネーは新興国などに流れ込み、原油価格等を押し上げることになりました。原油価格の代表的指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は2009年ごろから上昇を始め、1バレル=100ドル前後となっています。
しかしFRBは2015年12月、イエレン議長は労働市場の改善を理由にゼロ金利政策を解除。FF金利を引き上げます。資金は金利の高いところに流れるので、原油に集まっていたマネーが再びドルに集中。結果的に原油価格の暴落が発生しました。
FRBが利上げを実施したことで、マネーの流出が発生した新興国の経済が停滞。
投資家はリスクオフの手段として、安全資産の代表である円を買い求めた結果、円高が進みました。
また日経平均株価は円高と連動する傾向にあります。
日経平均を構成する企業に輸出関連企業が多く、円高が進むと採算の悪化が懸念されるためです。2016年は日経平均株価も低水準で推移する形となりました。
利上げの引き金となる雇用統計、失業率、物価上昇率
新興国通貨や円相場など多くの指標に影響を与えるFRBの利上げ。
その決定はFOMCで決定されますが、利上げに際してFOMCが参考にしている指標があります。各指標を参考にインフレ懸念が疑われる場合、利上げを決めているのです。
名称 | 利上げ要因 | 概要 |
---|---|---|
PCEデフレーター | 上昇 | ・米国個人消費の物価上昇率を測る指標 ・食品とエネルギーの価格を除いたものを「PCEコアデフレーター」と呼ぶ ・消費者物価指数と並ぶ代表的な指標 |
非農業部門雇用者数 | 上昇 | ・米国の非農業部門における給与支払い帳簿を基に算出される雇用者数 ・経営者や自営業者は含まれていませんが、米国の3分の1を網羅するとい言われています |
失業率 | 下落 | ・失業者を労働力人口で割ったもの ・16歳以上の男女、約6万世帯が対象 |
ほかにも「平均時給」や「週労働時間」といった指標があります。各指標は米国労働省が毎月発表する米雇用統計の中に含まれており、市場も敏感に反応するケースがあります。
しかし2015年以降FRBが利上げを繰り返してきたこともあり、「賃金上昇→FRBの利上げ加速→経済の停滞」という連想がなされ、結果的に世界規模で株価が暴落。
2月5日にはNYダウが一時1597ポイント下落しました。
FBRの動向には要注目!金融危機の引き金になることも
古くは1982年の利上げによって債務の支払い負担が増加したことにより、メキシコで金融危機が発生しました。
2000年代のITバブル崩壊に対しては大胆な金融緩和を遂行。余剰資金がサブプライムローンを始めとする住宅市場に流れましたが、その後の利上げで不動産市場が暴落。世界中を巻き込むリーマンショックに発展しました。
世界の金融市場がグルーバルにつながる現代社会において、米国の中央銀行の政策決定はまったく他人事ではありません。
株式投資やFXを行っている人はもちろん、そうでない人もFRBの動きにアンテナを貼っておくことでリスクに対する備えをする必要があるでしょう。