株取引をする個人投資家になったら、毎年2~3月の確定申告は必須です。
もちろん、源泉徴収あり特定口座なら確定申告はいりません。そこに惹かれて源泉徴収あり特定口座を選んでいる人も多いでしょう。
しかし、源泉徴収口座で運用している人も、年間トータルでマイナスになったとき(年間通じで売却損が出たとき)は確定申告したほうが得です。
損失の繰越控除という制度を使って、翌年の利益にかかる税金を減らしたり、完全になくしたりできるんです。
WEB上で確定申告書類が作れる国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の画面を実際に見ながら、年間通じて損益がマイナスになったとき確定申告の必要書類の書き方を学びましょう。
開設している人が多い、特定口座(源泉徴収あり)を例にしますよ。
確定申告は難しいものではありません。この記事を読み終わったら、「確定申告って意外に簡単じゃん!」と思えるはずです。
確定申告の時期と必要書類は?知っておきたい基礎知識
例年2月16日~3月15日(休日の関係で変動あり)が確定申告の期間です。直前になって慌てないように、1年間の取引が終わったら、自分が確定申告したほうがいいのか確認しておきましょう。
確定申告必要 | 一般口座・源泉徴収なし特定口座で取引をしている人 |
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確定申告不要 | ・NISA口座のみで運用 ・源泉徴収あり特定口座のみで運用※1 ・年間で得た利益が配当金のみ※2 ・年収2000万円以下で、譲渡所得が20万円以下の会社員※3 |
※の中で確定申告したほうがいい人 | ※1※3 売却損が出た人:損益通算や損失の繰越控除を行うと、翌年の利益にかかる税金が軽減 ※2 課税所得額が少なくて、売却損が出ていない人:配当金を確定申告(総合課税)すると、配当金にかかる税率が低くなる |
源泉徴収あり特定口座で運用している人でも、損失が出たら確定申告したほうがお得です。
源泉徴収あり特定口座で取引している人も、確定申告の知識は必須。
特定口座なら、年間取引報告書は証券会社が作ってくれる
具体的な書類の作り方に入る前に、まずは自分で揃える書類を整理しておきます。会社員で、特定口座を開設している場合の必要書類です。
- 印鑑
- マイナンバー
- 会社からもらう源泉徴収票
- 特定口座年間取引報告書
特定口座年間取引報告書は、1月ごろに証券会社から郵送されてきます。
電子交付(WEB上で交付)される証券会社もあるので、「なかなか届かないな」と思ったら会員画面でチェックしましょう。
一般口座で取引をしている場合、年間取引報告書は証券会社ではなく自分が作ることになります。
ネット上で確定申告書類を作れる国税庁のページが便利
確定申告の書類を作る方法や、提出方法はいくつかあります。
- e-Taxで作成:オンラインで提出
- 国税庁WEBサイト「確定申告書等作成コーナー」で作成:印刷して郵送または持参
- 税務署で書類をもらって手書き:郵送または持参
e-Taxはネット上で書類提出ができ、還付金の振込も早いので便利なのですが、使用にあたって事前手続きがあったり、専用の機械(ICカードリーダライタ)の購入も必要です。
一方、書類を手書きするのは時間がかかりますし、書き間違いもおきそうです。
国税庁WEBサイト「確定申告書等作成コーナー」なら、源泉徴収票と特定口座年間取引報告書を見ながら数値を打ち込んでいくだけで必要書類が完成します。
できた書類を郵送または税務署に持参すれば確定申告完了です。面倒な手続きも、ICカードリーダライタの購入も必要ありません。
ここでは、便利で手軽な「確定申告書等作成コーナー」を使って、書類の作り方を説明します。
源泉徴収あり特定口座で損失が出た時の確定申告
では、こんな状況を想定して、具体的な確定申告書類の作成画面を見ていきましょう。
- 会社員
- 株取引を始めて最初の年の確定申告を行う
- 源泉徴収あり特定口座を開設している
- 特定口座で配当金受入を選択している(上場株式配当等受領委任契約※を結んでいる)
- 年間の譲渡損50万円
- 配当金収入20万円
特定口座に配当金を受け入れる契約。この契約を結ぶことで、特定口座内で配当金と譲渡損の損益通算ができ、譲渡損が出た時には、配当金にかかる源泉徴収税が自動で軽減されます。
1、確定申告書等作成コーナーで書類作成開始
源泉徴収票と特定口座年間取引報告書を手元に用意してから、実際の作成に入ります。
WEBで「確定申告書等作成コーナー」と検索すれば、国税庁のページが出てきます。
「作成開始」をクリックすると、「e-Tax」か「書面提出」かを選択する画面に。今回はe-Taxは使いませんので、右側の「書面提出」を選択しましょう。
続いて、推奨環境や利用規約についての説明ページが表示されるので、内容を確認してチェックを入れ、右下の「次へ」ボタンを押します。
次に申告書の種類を選びます。作成するのは「所得税の確定申告書」ですから、一番左の赤色ボタンをクリック。
続いての画面では、真ん中の「左記に該当しない方」を選びます。株式譲渡・損失申告があるので、左ではなく真ん中の赤色のボタンをクリック。
続いての画面では生年月日を入力します。青色申告と「所得・所得控除等の入力フォームについて」はチェック不要です。
ここまでで入力前の準備が完了です!文章にすると長いですが、実際は、数回クリックして誕生日を入力しただけなので、3分もかかりません。
2、「株式等の譲渡所得等」欄に株の損益を入力します
次に、ずらりと所得種類が並ぶ「収入金額・所得金額入力」ページが出てきます。下にある「分離課税の所得」のブロックに、「株式等の譲渡所得等」がありますので、「入力する」ボタンをクリックします。
次に表示される「金融・証券税制(入力項目の選択)」画面の「1 配当所得の課税方法の選択」では「申告分離課税」を選びます。
その後「2 株式等の売却・配当・利子等の入力」で「特定口座年間取引報告書」の内容を入力するボタンをクリックします。
3、特定口座年間取引報告書の内容を転記していきます
次の画面でようやく特定口座年間取引報告書の出番です。
報告書の赤丸数字をつけた部分の数字を、画面上の対応する欄に入力していきます。
最後に、証券会社名を入れます。ここでは例としてSBI証券を入力しました。ネット証券のため支店がありませんので、本支店名等は空欄でOKです。
完了したら「入力終了(次へ)」を押しましょう。すると最初の「金融・証券税制」画面に戻ります。下の方までスクロールすると、「平成29年分の申告で上場株式等に係る譲渡損失の金額を繰り越した方」の項目があるので、今回はいいえを選択します。
このあと2つ、確認画面が続きます。
- 金融・証券税制(株式等の譲渡所得等・計算結果確認1)
- 金融・証券税制(株式等の譲渡所得等・計算結果確認2)
間違いがないかチェックして、そのまま「次へ」をクリックします。
4、源泉徴収票をもとに給与所得の入力をする
そうすると、最初の方に見た「収入金額・所得金額入力」画面に戻ってきます。「株式等の譲渡所得等」や「配当所得」の欄には、たった今入力した数字が反映されている状態です。
続いて給与所得を入力していくので、上の「総合課税の所得」ブロックの中にある、給与所得の欄で「入力する」をクリックします。配当所得の欄の下です。
次に出てくる給与所得の入力画面では、源泉徴収票の赤丸部分の内容を入力していきます。この例だと生命保険料の控除額などがないのですが、源泉徴収票に記載がある場合はそれらの金額も入力してください。
給与所得の入力1~4までを完了し「次へ」を選択後、表示される確認メッセージに「OK」を押すと、また「収入金額・所得金額入力」の画面に戻ります。
今入力した給与所得が反映されているので、画面上で表示されている「給与所得の金額(入力内容から計算した所得金額)」が、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」と一致しているか確認してください。
5、医療費控除などがあれば続けて入力
「次へ」を押すと、所得控除と税額控除の入力画面にうつります。医療費控除や外国税額控除などを受ける場合は、ここで入力をしてください。社会保険料控除は給与所得の入力画面で入力した数字が、ここに反映されています。
「次へ」を押すと、完成形が表示されます。ようやく終わりが見えてきました。内容を確認したら「次へ」クリックします。もうひと踏ん張りです!
次に住民税等の入力の画面が出てきます。ここは該当する人のみ、該当する箇所に入力が必要です。今回は扶養家族もいませんし、損益がマイナスで配当所得も譲渡所得もないので、入力せずにスキップ。
損益がプラスになっている場合には、ここで住民税の徴収方法を「自分で納付」にすれば、加算分の住民税が給料から天引きされるのが防げます。
それぞれの内容について自分が当てはまるかについては、画面上の「詳しくはこちら」で確認可能ですよ。
6、最後に住所などを入力して終了!書類を印刷して提出
続いて住所、氏名、職業や連絡先を入力する画面があります。
全部入力して次へを押すと、マインバーを入力するページに移ります。
書類の作成にはマイナンバーが必須なので、予め準備しておきましょう。
最後まで入力すると書類を印刷できるページに移ります。書類を印刷して、はんこを押し、源泉徴収票と特定口座年間取引報告書を添えて郵送で提出すれば確定申告完了です。
繰越控除を受ける場合は来年も確定申告が必須
今回、30万円の損失が平成26年から平成27年に繰越されました(損失繰越)。
すると、平成27年に20万円の譲渡所得を得ても、差し引きしてまだマイナスなので、課税されません。平成26年の損失は平成27~29年まで、最大3年間繰り越すことが可能です。
損失を繰り越して繰越控除を受けるためには、3年間毎年(繰り越した損失がなくなるまで)確定申告する必要がありますから、忘れないようにしてくださいね。
来年の確定申告では、「3、特定口座年間取引報告書の内容を転記していきます」のところで出てきた画面で「平成○年分の申告で上場株式等に係る譲渡損失の金額を繰り越した方」の質問に「はい」と答えてください。
確定申告方法の知識は個人投資家のたしなみ
読んでいると時間がかかったかもしれませんが、実際にやってみると慎重にやっても30分かからないくらいです。
たった30分でしっかり節税できるんですから、譲渡損が出たら確定申告は絶対やるべきです。
源泉徴収票と特定口座年間取引報告書が手元にあれば、何も難しいことはありませんよ。
源泉徴収あり特定口座を使っている人も、損失がでたときには確定申告すべきです。
「源泉徴収ありだから確定申告は関係ない」なんて思わずに、確定申告についての知識はしっかり身につけておきましょう。