「初心者におすすめの投資信託!」といろいろな証券会社で宣伝されています。
しかしたくさんの投資信託が売られているので、どう選べばいいのか悩んでしまいますよね。
証券会社の「これおすすめだよ」という言葉で何となく投資信託を選んでしまうと、後悔する可能性も。
投資対象の分散やリスクの大きさ、運用実績も考慮する必要があるのです。
この記事では、投資信託の選び方7箇条を紹介します。投資信託の商品選びで、ぜひ参考にしてくださいね。
【投資信託の選び方第1条】標準偏差で投資信託のリスクを確認
投資には、大なり小なりリスクが伴います。
どんな投資をするにも、自分がどれだけのリスクを負うことができるか決めることは重要。
「自分はいくらまでの損失なら許せるだろうか?」と自問自答してみてください。
取れるリスクの大きさによって、あなたが選ぶ投資信託は変わってきます。どのように変わってくるのか、どのように選べばいいのか見ていきましょう。
資産クラスによってリスクの大きさが違う!
大きなリスクをとれる人は、ハイリスクハイリターンの商品を選べます。たとえば、新興国への株式投資がメインとなる投資信託などが該当。
大きなリスクをとれない人は、ローリスクローリターンの商品を選びましょう。債券への投資がメインの投資信託が挙げられますね。
国内株式、海外株式、国内債券、海外債券など、資産を分類することを資産クラス(アセットクラス)といいます。
投資する資産クラスが株式なら、ハイリスクハイリターン。債券の場合は、ローリスクローリターンな商品が比較的多いです。
とれるリスクの大きさ、望むリターンの大きさによって、どの資産クラスを選べばいいかが変わってきます。
投資信託の種類で変わるリスクとリターンの大小については、次の記事を確認してください。
標準偏差ってなに?投資信託の値動きの大きさを表す
同じ資産クラスに投資する、複数の投資信託を比較するときにはどうしたらいいのでしょうか。
より明確に投資信託のリスクをはかる数字として、標準偏差という指標が使われています。
標準偏差は値動きの幅の大きさを表し、標準偏差が大きいほど、良い値段にも悪い値段にもなる確率が高くなります。
例えば、5年間の平均収益(リターン)が5%の投資信託Aと投資信託Bを考えます。標準偏差はAが10%、Bが20%です。この場合、平均収益は同じでも、年ごとの収益のブレはBのほうが大きくなります。
投資信託 | 平均リターン | 標準偏差 | 収益のブレ(騰落率のブレ) |
---|---|---|---|
A | 5% | 10% | リターンが-5%~15%の間におさまる確率が68% |
B | 5% | 20% | リターンが-15%~25%の間におさまる確率が68% |
68%という数字の根拠はここでは詳しく説明しませんが、大事なのは「標準偏差が大きいほどプラスもマイナスも大きくなる可能性がある」ということ。
標準偏差が小さいほうがリスクが小さく、長期的・安定的に利益を出すのに向いています。
資産クラスの分類に加えて、標準偏差を使えば、リスクの大きさをより具体的に把握できるんです。
68%(約2/3)の確率で、自分が許容できるリスクの範囲内に収まるなら購入を検討してもいいのではないでしょうか。
標準偏差は、モーニングスター社の投資信託検索画面などで調べることができます。試しに、資産クラスが海外株式(ヨーロッパ)の投資信託について、標準偏差を比較してみました。
名称 | 標準偏差(3年) |
---|---|
ベアリング 欧州株ファンド | 15.86 |
欧州株式指数ファンド | 20.30 |
【投資信託の選び方第2条】資産規模のチェック
資産規模である、純資産残高を確認することも重要です。
投資家からの解約が多く資産規模が小さくなっている投資信託の場合、運用が停止するされることも。
ある程度投資信託の価値が上がってくると、値上がり益を得ようとして解約する投資家も出てくるため、一時的に資産規模が小さくなることもありえます。
しかし、それと同等以上に新規購入者が増えているファンドなら安心です。
資産残高があまりに大きすぎると、小型株などに投資しにくいというデメリットもあります。
概ね純資産総額※が100億円以上くらいあると、安心だといえるでしょう。
投資信託の運用総額のことで、資産の規模を表します。投資信託が保有している(組み入れられている)株や債券の時価総額に、配当収入などを足し、ファンド運用のために必要な経費を引いた額です。
ただし、ファミリーファンド方式やファンド・オブ・ファンズ方式をとっている投資信託なら、「そのファンドの資産残高が少ない=問題あり」とは言えません。詳しくご紹介します。
ファミリーファンド方式だと資産規模が少なくても問題ない場合も
「当ファンドはファミリーファンド方式で運用します」という投資信託を、見かけることは多いですよね。
ファミリーファンドもファンド・オブ・ファンズも、ファンドが別の投資信託に投資して資産を運用します。
ファミリーファンド方式では、投資家はベビーファンドという投資信託を買い、ベビーファンドは同系列の運用会社が運用を担当するマザーファンドに投資を任せます。
マザーファンドで複数のベビーファンドの資金をまとめて運用することができるので、規模が大きくなり、効果的な投資ができます。
同系列のファンドを利用するので、追加で手数料がかかることはありません。マザーファンド方式のファンドにはこのようなものがあり、いくつかのマザーファンドに分散投資するものもあります。
ベビーファンド | マザーファンド |
---|---|
朝日Nvestグローバルバリュー株オープン | 朝日Nvestバリュー型外国株マザーファンド |
日興ストラテジック・アロケーション・ファンド(株式資産) | 日本株式インデックスTOPIXマザーファンド 海外株式インデックスMSCI-KOKUSAI(ヘッジなし)マザーファンド 海外新興国株式インデックスMSCIエマージング(ヘッジなし)マザーファンド |
一方、ファンド・オブ・ファンズでは、複数の投資信託に分散して投資します。
資産規模が大きい投資信託に投資すれば、スケールメリットの恩恵を受けることが可能。少額投資でも、分散投資が可能になるメリットがあります。
しかし、投資先であるそれぞれの投資信託に手数料(信託報酬)を支払うので、コストがかさむデメリットも。
【投資信託の選び方第3条】信託報酬と販売手数料に注目
投資信託を選ぶうえで、コスト面の検討もしっかりしておきましょう。
投資信託には、主に信託報酬や販売手数料などの費用がかかります。コストがかかるとせっかくの利益が目減りするのと同じなので、手数料が高い投資信託は候補から外すのがベター。
投資信託の費用などの仕組みについては、次の記事を参考にしてください。
投資信託のコストを、「微々たる額だから、別にいいや」と甘くみてはいけません。投資での収益を最大限にするためには、手数料にもしっかり注意を向ける必要があります。
日々資産から引かれていく信託報酬!コスト減の意識を持とう
「ファンドの純資産総額×○%/年」というかたちでかかってくるもので、日割りにして毎日資産から引かれていきます。信託報酬が2%だと、日々引かれていく信託報酬は0.0055%という計算に。
こう書くと、「毎日引かれていくなんて嫌だ」と思うでしょう。
しかし実際に投資信託の運用が始まってしまうと、投資家が投資信託の信託報酬を意識することはほとんどなくなってしまいます。
なぜなら、毎日発表される投資信託の基準価額(投資信託の価値)※は、信託報酬が引かれた後の額だからです。
普段はあまり意識できなくても、信託報酬のせいで知らない間に利益は確実に目減りしています。
三菱UFJ国際投信によると、信託報酬0.4%の場合と1%の場合、同じ年3%運用利回り(運用によって得られる利益)でも、実際に得られる儲けはこんなに違ってきます。
年0.6%というわずかに見える差でも、保有が長期になるごとに収益の差は広がっていますね。信託報酬はファンドによってまちまちですから、信託報酬が少しでも低い投資信託を選ぶべきです。
特に、ローリスク・ローリターンの投資信託なのに信託報酬が高いと、信託報酬がリターンを上回って赤字になる可能性もあるので注意しましょう。
投資信託検索で、同カテゴリ(資産クラス)の投資信託と比べて、信託報酬が高いか安いかを調べることができます。運用成績にもよりますが、信託報酬は1%以下が理想です。
販売手数料は販売会社によって違う!ノーロードなら手数料無料
販売手数料とは、その名のとおり投資信託を買うときにかかる手数料のことです。
同じ投資信託を買う場合でも、どの販売会社(証券会社や銀行)で買うかによって販売手数料は異なりますから、安く買えるところで買いましょう。
中には、手数料無料の投資信託(ノーロード)の取扱数が多いことを売りにしている証券会社や銀行もあります。例えば、SBI証券ならが1096本の投資信託がノーロードです。
SBI証券はノーロード投信の取り扱いが多いだけじゃなく、通常の取引手数料も安いので、ETFのような上場投資信託の購入もお得に売買ができます。
またSBI証券のNISA口座を活用すれば、年間120万円まではノーロード以外の投資信託でも手数料無料で購入できるため、まだ口座を持っていない人は断然SBI証券に口座開設しておきましょう。
【投資信託の選び方第4条】過去3年分の運用実績を調査
投資信託選ぶ際は、ファンドの過去の運用成績もチェックしましょう。
過去の実績がそのまま未来に反映されるとは限りませんが、安定して実績を上げ続けている投資信託のほうが安心です。
ただし直近1年間の運用成績では判断できません。たまたまその1年が、好景気に沸いていた年だったかもしれないからです。
最低でも3年間、できれば5年間、安定した実績をあげているかを確認しましょう。これは、標準偏差でみたリスクの小ささとも関連する部分がありますね。
新発売の投資信託は華々しく宣伝されることが多いので目につきやすいのですが、実績も資産規模もどうなるかわかりません。
初心者は少し様子を見ることをおすすめします。
【投資信託の選び方第5条】資産クラスを分けて分散投資<
自分の条件に合う投資信託が選べたら、資産クラスが違う複数の投資信託を組み合わせて分散投資しましょう。
ひとつの投資信託だけに投資していると、その投資信託で損がでたときには損のままで終わってしまいます。しかしいくつかの投信に分散して投資していると、他の投信で損をカバーできる可能性があるからです。
複数の投資信託を組み合わせると言っても、同じ資産クラスに投資する投資信託は同じような値動きになってしまいがちです。
分散投資の効果を高めるために、外株式型と海外債権型を組み合わせるなど、違う資産クラスに投資する投資信託同士を組み合わせましょう。
分散投資の重要性については、次の記事を参考にしてください。
バランス型ファンドは信託報酬が割高!積立投資も視野に入れよう
ひとつの投資信託でバランスよく複数の資産クラスに投資する、いわゆるバランス型投資信託も人気があります。
ただしバランス型は信託報酬が比較的割高なことが多いので、その点も考慮した上で選びましょう。
「複数の投資信託を持つための資金が足りないので、ひとつだけしか買えない。だからバランス型しかない」と考えている人は、積立投信も検討してみてください。
ひとつの投資信託につき月々1,000円程度の少額からはじめることができるので、少ない資金でもいくつかの投資信託に分散して投資することが可能になります。
バランスファンドについて詳しく知りたい場合は、「バランスファンドのメリットとデメリット、注意点を解説!」の記事を参考にしてくださいね。
【投資信託の選び方第6条】目論見書を熟読
ある程度投資信託を絞り込んだら、最後に目論見書(もくろみしょ)を確認します。目論見書は、投資信託の説明書・パンフレットのようなものです。
簡易版のパンフレットタイプは大体8ページくらいで、投資信託の内容がコンパクトにまとめられています。
検索機能だけではわからない情報が載っており、信託報酬や手数料についても詳しく掲載。
検索機能だと0.98%で出てくるので、目論見書を見ないと長期保有による還元があるとはわかりません。
他にも、そのファンドの投資対象(実際に保有している株式の銘柄)、リスクやリスク管理体制についての説明があります。特にチェックすべきなのは資産クラスと投資銘柄です。
「国内外の株式に投資」と概要には書いていても、実際には国内株式投資メインになっている投資信託も多々あります。
資産クラスを分散させるためにも、投資対象はしっかりチェックしましょう。目論見書を読むことで、資産クラスの分散ができているかの最終チェックが完了します。
【投資信託の選び方第7条】分配金は再投資
分配金とは、投資信託を運用して利益が出たときに投資家に還元されるお金です。分配金にこだわりたいという人も多いですが、ちょっと注意が必要です。
なぜなら分配金を出すと、その分ファンドの資産が減るからです。
最近では毎月分配金がもらえる「毎月分配型投資信託」が人気ですが、運用に回せるお金が減ることに加え、信託報酬が高いというデメリットもあります。
分配金を出さずに再投資したほうが投資資金が増え、複利効果でリターンが大きくなるので「無分配型」もしくは「再投資型」の投資信託がおすすめ。
目先の利益よりも数年後の大きな利益を求めるなら、分配金は不要だと割りきりましょう。
投資信託の分配金については、次の記事で詳しく解説しているので確認してください。
7つのポイントを抑えて、あなたにあった投資信託を選ぼう
リスク、資産残高、費用、運用成績をしっかりチェックして、分配金がな無い投資信託がおすすめです。分散投資を心がけ、目論見書は必ず確認してください。
「初心者におすすめ」「みんなが選んでいる」などという謳い文句は多いですが、投資に求めるものは人それぞれです。
初心者だからといって、みんなが同じ投資スタンスではありませんよね。
「初心者におすすめ」などという宣伝に惑わされるのはやめましょう。
ご紹介したポイントはモーニングスターなどの投資信託検索機能を使えば簡単に絞り込みができ、目論見書はネット上で読むことができます。
7つのポイントをおさえて、自分にあった投資信託を選んでくださいね。