「ブラックマンデー」とは1987年10月19日の月曜日に、ニューヨーク証券取引所を発端に起こった史上最大規模の世界的株価の大暴落のことで、「暗黒の月曜日」とも言われます。
ここではブラックマンデーが起こった時代背景や原因、また大暴落からの回復の道のりについて紹介します。
ブラックマンデーとその時代背景は?レーガノミクスとルーブル合意
1981年、ロナルド・レーガンが大統領に就任。この頃アメリカは1979年の第2次オイルショックにより失業率も高くなり、スタグフレーション※が深刻化していました。
景気停滞(stagnation)と物価上昇(inflation)の合成語で、このふたつが同時に起こっている状態のこと。
レーガン政権が、スタグフレーションを解消するために行った経済政策が「レーガノミクス」です。
レーガノミクスの主軸は次の4つです。
- 社会保障支出と軍事支出の拡大(国防以外の歳出の削減)
- 個人所得税の減税(貯蓄の増加と投資の促進)
- 政府による産業や事業への規制を緩和(生産性の向上)
- 金融政策により通貨供給量の抑制(インフレ対策)
レーガンはこれにより「強いアメリカ」を復活させようとしました。
G5はプラザ合意によりドル高を改善させた!
レーガノミクスにより金利が上昇し、ドル高に。しかし予定以上にドル高が続いてしまったため1985年、G5はドル高対策としてプラザ合意※を発表しました。
1985年9月にアメリカのニューヨークにあるプラザホテルで開かれた、G5(米国・日本・英国・西独・仏)による先進5ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議での合意のこと。
アメリカの貿易赤字を収縮するために、各国の外国為替市場での協調介入によりドル高を改善しました。
プラザ合意は抜群の効果を発揮し、その目的のとおりドル安になります。しかしドル安が行き過ぎてしまったため、インフレや景気後退などの可能性が出てきたのです。
ドル安に歯止めをかけようと試みたG7のルーブル合意
プラザ合意による行き過ぎたドル安に歯止めをかけるため、1987年にG7がルーブル合意※を発表しました。
1987年2月にフランスのパリにある旧ルーブル宮殿で開かれた、G7(米国・日本・英国・西独・仏・伊・加)による先進7ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議での合意のこと。プラザ合意による行き過ぎたドルの下落に、歯止めをかけることを目的としたもの。
しかし金利調整の足並みが揃わず、結果は得られませんでした。そしてルーブル合意の8ヶ月後、ブラックマンデーの大暴落が起こったのです。
ブラックマンデーの原因は3つ!投資家の不安と自動売買プログラム
ブラックマンデーが起こった明確な原因はわからないと言われていますが、それは原因がひとつではなかったからです。
ブラックマンデーという史上最大規模の大暴落を引き起こした要因は3つありました。
- 「双子の赤字」の拡大
- ルーブル合意の信頼性の破綻
- 自動売買プログラムによる下落の加速
それぞれの要因を詳しく説明していきます。
財政赤字と貿易赤字の拡大!「双子の赤字」に陥ったアメリカ
ブラックマンデー当時、アメリカは「双子の赤字※」状態でした。
財政収支と貿易収支が共に赤字である状態のこと。財政赤字とは歳入よりも歳出が上回っている状況のことをいいます。また貿易赤字は輸出額よりも輸入額が上回っている状態のことです。
レーガンは減税と軍備増強を実施しましたが、これにより財政赤字が拡大。国債発行が急増したため、金利は上昇し、ドル高になりました。
同時にドル高になると輸出は減ってしまいます。しかし減税により消費は拡大するため、輸入は増加しました。この輸出入の増減により、アメリカは貿易赤字にも陥ったのです。
旧西ドイツが金利を引き上げ!ルーブル合意の信頼性が破綻
プラザ合意によるドルの行き過ぎた下落を止めるため、新たな政策協調に合意しましたが、その政策協調もすぐに信頼性が損なわれました。その理由は、ルーブル合意に加わっていた旧西ドイツが国内のインフレを懸念し、金利を高めに誘導したからです。
ドル安に歯止めをかけるためには、各国が足並みを揃えて利上げ・利下げを行う必要がありました。
しかし足並みは大きく乱れ、ルーブル合意による効果はほとんど得られなかったのです。そしてもともと懸念されていたドルの大幅な金利引き上げを、FRB(連邦準備制度理事会)が行うのではないかという不安も広がりました。
またこのとき、ほとんどの投資家が為替ヘッジ※を行っていなかったのでは、と言われています。
一般的にあらかじめ将来の為替レートを予約する、為替予約という手法を活用して行います。今すぐに通貨を交換するのではなく、将来のある時点での通貨の交換を約束し、外貨資産の価値の変動による損益を抑えるための手法のことです。
為替ヘッジについて詳しく知りたい人は、「為替ヘッジとは?あり・なしの違いと選び方をわかりやすく解説!」もチェックしてみてくださいね。
為替ヘッジを付けていない米国株の保有者は、資産を失う状況に追い込まれました。
この状況を回避するために投資家は、株の投げ売りを行ったのです。
自動売買プログラムの暴走?売りが売りを呼ぶ負の連鎖
ここまでの2つの要因から売り注文が殺到し、流動性の消失に繋がりました。そしてその売り注文の殺到を助長させたのが自動売買プログラムです。
ある一定の値段まで株価が下がると、自動的に損切りされるプログラムです。設定した値段を下回ると、損失を最小限にするためにコンピュータが自動的に売り注文を出します。
このプログラムによる売り注文がほかの売りを呼び、負の連鎖引き起こしたのです。
ブラックマンデーにより世界同時株安に!そして大暴落からの回復
ですが日本の下落率は香港、シンガポール、ヨーロッパと比較すると小さく、一般市民の生活にまで影響は及びませんでした。
一番影響が小さかったオーストリア市場の下落率は11.4%で、もっとも大きな影響を受けた香港ハンセン指数※は45.8%暴落しました。
香港株式市場の動向を示す代表的な株式指標のことです。
FF金利の引き下げによる資金供給!即座に対応したグリーンスパン
当時のFRBの議長は、グリーンスパンでした。前任のボルガーが高評価だったこともあり、グリーンスパンの就任を不安視する声も。
しかし就任2ヶ月後に起きた史上最大の大暴落を受け、グリーンスパン議長は翌日即座に緊急声明を発表、混乱と緊張の沈静化に向けた策を講じました。
FF金利※をブラックマンデー前の7.25%から6.5%にまで引き下げ、市場に大量の資金を供給し、株価のさらなる下落を食い止めたのです。
フェデラル・ファンドレートの略。連邦準備制度に加盟する民間銀行同士で、アメリカの中央銀行に預け入れる無利息の準備金の過不足を調整するために、無担保で資金を借りるときに適用される金利のことです。
またこの大暴落を受けニューヨーク証券取引所は、日本市場を参考にしたサーキットブレーカー制度※を採用しました。
相場が過熱してきた場合に取引を一時中断し、投資家の過熱感を鎮めて冷静な判断の機会を設ける制度のことです。
現在では日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国など先進国の株式市場で導入されています。
日本がいち早く回復した!ブラックマンデーとバブル経済
日本はブラックマンデーの影響を受けた国のなかで最も早く、半年後の1988年4月には下落分を回復させました。
その後日本銀行は利上げを検討していましたが、FRBが資金供給を行っているなかでの利上げは難しく、金融緩和を継続。そしてバブル経済の膨張とともに株価も上昇し、1989年12月には史上最高値になったのです。
当時の内閣総理大臣はタレントDAIGOの祖父である竹下登、日本銀行総裁は澄田智でした。
元々大蔵大臣であった竹下登がプラザ合意後の円高不況対策として低金利政策を行うため、澄田智に利下げを行うよう提言しました。
これにより1986年以降日本はバブル経済に突入し、ブラックマンデーの大暴落を乗り切ったのです。
また不動産市場ではすでにインフレの兆候が出ていたが、利上げが遅れ金融緩和を継続したことから、株価だけでなく不動産価格も上昇したぞ。
資産を守るにはどうしたら?未来のブラックマンデーに備えよう!
世界経済は「一寸先は闇」状態です。
いつまたこのような大暴落が起きないとも限りません。次に起こる経済危機を意識し、自分の資産を守るにはどうしたらいいか、常に考える人こそ「賢い投資家」だといえます。
私たちのような個人投資家でも、持っている資産を守るための工夫を怠らず、来たるべくして来る経済危機に抵抗していこうではありませんか。
資産を守るために、有効的に活用できるのが「信用取引」です。
「現物取引はやっているけど、信用取引は何となく難しいしやっていない」「レバレッジをかけられるなんてちょっと怖いな」そう思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし信用取引こそ株価が大暴落したときに、大損を食い止める技なのです。
自分の持っている銘柄の株価が暴落しているとき、持っている株数だけ空売りすると、空売りを入れた瞬間から、損失が拡大することを防ぐことができます。
暴落の危機が去り、また株価が上昇に転じたのを確認したら買い戻し、建玉を決済しましょう。
信用取引についての詳しい解説は、この記事をご覧ください。
信用取引なら松井証券がおすすめ!信用取引サービスが充実
信用取引口座を開設していない人は、ぜひ開設することをおすすめします。たとえ使わなくても、いざという時いつでも使えるようにしておくことが大切。
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- 一日信用取引だと取引手数料無料
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もともとはデイトレーダーのためのサービスですが、短期的に「株価が下がりそうだ」と判断されるときなど広い使い道が期待できそうです。
「無期限信用取引」は長期的な投資に利用できます。通常6カ月という返済期限が無期限になるので、思った方向に株価が動かなくても「すぐに返済しなきゃ」というプレッシャーが少ないんですよ。
このようにメリットいっぱいの松井証券の信用取引は、松井証券の口座を開設しなければ使えません。まだ松井証券の口座を持っていない人は、ぜひこちらから口座開設してくださいね!
史上最大規模の大暴落!第2のブラックマンデーに備えるために
これから起こる可能性のある株価の下落も、原因がひとつだとは限りません。
要因になりうる状況を見極めながら、今後の起こりうる暴落に備えたいですね。
またブラックマンデーの要因のひとつに、自動売買プログラムによる売り注文の連鎖がありました。コンピュータープログラムだけでも暴落は起きてしまいます。
コンピューターに全てを任せるのではなく、適度に利用しながら自分で判断して売買を行うことで、リスクを回避していきましょう。