「過払い金」「払い過ぎた利息」という言葉、テレビCMなどで耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
過払い金とは、貸金業者が法律の上限を超えて取り続けていた利息のこと。
20%を超える高金利で借金した人は、払い過ぎた利息を返してもらえる可能性があります。
しかし過払い金には時効があり、基本的には時効が成立すると請求できなくなってしまうんです。
早めに過払い金の時効やその延長方法、請求方法について確認しておきましょう。
過払い金返還請求の時効は最終取引日から10年!起算点はいつ?
過払い金の消滅時効は、基本的に最終取引日から10年です。
でも最終取引日は過払い金請求の時効を決める「起算点」となるから、まずはここを確認しておかないとね。
最終取引日は、その貸金業者で借金した人(過払い金の請求者)の状況によって異なります。取引状況は「取引履歴」を見れば確認可能です。
詳しくは「過払い金と時効を確認する方法を解説!まず取引履歴を取り寄せよう」の章を読んでみてください。
- 借りたお金をすべて返済した場合は「完済した日」
- 複数回借り入れ・返済している場合は「明確な基準が決まっていない」
過払い金の時効は「一連の取引」か「取引の分断」かで決まる
借り入れ・返済が1回だけなら、もちろん「一連の取引」と見なされます。完済から10年以内であれば過払い金の請求が可能です。
一方「取引の分断」の場合、それぞれの取引を終えた日が「最終取引日」となり、10年以上経過した分の契約については時効です。
しかし場合によっては、2回以上借り入れ・完済をした場合でも、「一連の取引」と見なされることがあるんです。
借り入れも返済もしていないブランク期間や取引内容等により、「一連」か「分断」かの判断は異なります。これは過払い金返還請求の際、訴訟でよく争点となるポイントです。
しかし一般的には貸金業者が時効援用により「過払い金を請求する権利」を消滅させてしまうため、過払い金を返還してもらえなくなってしまうんです。
貸金業者が不法行為を行なった場合は時効が止まる
貸金業者が「過払い金に関する不法行為」を行なった場合は、過払い金の時効を止められます。
不法行為と見なされるのは、次のような行為。
- 暴行や脅迫をする
- 嫌がらせをする
- 法的根拠がないと知っていながら、あえて請求する
ただし「過払い金」とは無関係に行われた不法行為は、これに該当しません。
貸金業者の不法行為があった場合、延長される過払い金の時効は「損害および加害者を知ったときから3年」です。
過払い金の時効は間近!?そもそも過払い金が発生した理由とは
グレーゾーン金利とは、「利息制限法」による上限利息は超えても、「出資法」の上限には満たない金利のこと。
2007年6月に出資法が改正されるまで、貸金業者は「利息制限法の上限利息20%を超えても、出資法の上限利息29.2%を超えなければ罰せられない」という状況が続いていたのです。
そのため多くの貸金業者が、利息制限法で定められた上限を上回る「グレーゾーン金利」で貸付を行なっていました。
2007年には貸金業法も改正されて、グレーゾーン金利での貸し付けは法令違反となったわ。
とはいえ「過払い金返還請求の時効が迫っている」という人が多いことは事実。「もう間に合わないかも・・・。」と諦めている人も多いのではないでしょうか。
しかし過払い金の時効をストップさせる方法もあるんです。
その方法を詳しくを、次の章で解説します。
過払い金と時効を確認する方法を解説!まず取引履歴を取り寄せよう
「そもそも過払い金があるかわからない」「最終取引日がいつだったか覚えていないから、過払い金の時効がわからない」という人もいますよね。
その場合、貸金業者から取引履歴※を取得すれば過払い金の有無・時効を確認できます。
消費者金融やクレジットカード会社などとの取引内容が記載されたもの。「いつ、いくら借り入れしたか」「いつ、いくら返済したか」を見ることが可能です。
取引履歴は過払い金の計算に必要。過払い金の請求を弁護士や司法書士などの専門家に任せれば、取り寄せてもらえます。
取引履歴を自分で取り寄せる場合は、次の手順で行なってください。
- 貸金業者に連絡し「取引履歴がほしい」と伝える
- 簡単な本人確認が行われる
- 履歴の取得理由を答える
- 必要な取引履歴は「契約当初から」であると伝える
- 受取方法を確認する
貸金業者によっては、取引履歴を指定店舗で直接受け取ることも可能です。「自宅へ郵送されると、家族に借金がバレるから困る」という人は、こちらの受取方法を選択しましょう。
過払い金の時効は伸ばせる!消滅時効を止める2つの方法
過払い金の消滅時効を伸ばす方法は、次の2つです。「手続きの準備をしているあいだに、時効になってしまいそう」「過払い金請求をするか検討する時間がほしい」という人は参考にしてください。
時効の延長期間 | 内容 | |
---|---|---|
裁判外の請求 | ・6カ月 ・6カ月以内に裁判上の手続きをしなければ6カ月後に時効が発生 | ・比較的簡単にできる ・一回しかできない |
裁判上の請求 | ・申立て時に時効中断 ・裁判確定時に10年の時効が発生 | ・手続きに手間がかかる |
では、それぞれの請求方法について解説します。
過払い金の時効を延長する方法1、裁判外の請求
裁判外の請求とは、裁判所を通さず貸金業者へ直接過払い金の返還請求を行なうことです。
内容証明郵便などで請求書を送付すれば、過払い金の時効を6カ月止めることができます。
請求書を送るだけなので「裁判上の請求」より手軽です。しかし、6カ月以内に訴訟などの手続きをする必要があります。
期間内に裁判上の請求など法的な手続きや和解がされなければ、6カ月後にはそのまま時効になってしまうのです。
過払い金の時効を延長する方法2、裁判上の請求
裁判上の請求とは、裁判所を通し、司法手続きによって請求を行なうこと。
申立てをした時点で、過払い金の時効はリセットされた状態になります。さらに裁判が確定すれば、そこから10年過払い金の時効が発生する仕組みです。
裁判上の請求には、主に次のような方法があります。
請求方法 | 内容 |
---|---|
民事調停の申立て | 双方の話し合いで解決を図る(裁判では争わない) |
支払督促の申立て | 裁判所から貸金業者へ督促状を送ってもらう |
訴訟の提起 | 過払い請求の訴訟を、裁判所へ提起する |
「裁判上の請求」は「裁判外の請求」に比べると手間がかかりますが、延長できる期間が長くなるのが特徴です。
では次の章で、貸金業者へ過払い金請求をする方法について説明します。
過払い金の請求方法【自分で請求する場合・専門家に依頼する場合】
過払い金の請求方法は、大きく分けて次の2通り。次のようなメリット・デメリットがあるので、自分に合った方法を選びましょう。
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
自分で請求 | ・弁護士報酬や司法書士報酬は不要 | ・戻ってくる金額が少額になる恐れがある ・手間や時間がかかる ・家族に借金がバレる可能性がある |
専門家に依頼 | ・戻ってくる金額が大きくなりやすい ・手間や時間がかからない ・家族に借金がバレにくい | ・弁護士報酬や司法書士報酬がかかる |
自分で過払い金請求をすると、貸金業者から自宅へ書類が郵送された際にバレる恐れがあります。
過払い金は時効までに請求しよう!時効を延長することもできる
時効までに請求すれば、払い過ぎた利息が貸金業者から戻ってきます。
しかし貸金業者が倒産した場合など、過払い金を請求できない場合もあるので注意してください。
過払い金の時効は、延長することも可能です。
過払い金請求には半年以上かかることもあります。必要に応じて「裁判外の請求」または「裁判上の請求」を行ない、時効を延長しておきましょう。
支払いすぎた利息は基本的に、時効が成立すると請求できなくなってしまいます。まだ間に合うのなら、早めに手続きを開始したほうがいいでしょう。