・配偶者がギャンブル依存症で多重債務者となり、ついには行方不明になってしまった
・家族に「借金しない」と約束させたのに、信用情報を見たらまた借金していた
このように自分・身内の借金で苦しみ、「これ以上借金できないようにする方法はないの?」と調べている方も多いのでは。
「貸付自粛制度」とは、対象者の借り入れを一定期間制限できる制度のこと。
ギャンブル依存症や買い物依存症対策の一環として実施されています。
貸付自粛制度はもともと日本貸金業協会が行っていたものですが、2019年3月29日より一般社団法人全国銀行協会でも受付開始予定です。
原則申し込みできるのは本人のみ。しかし条件を満たせば、代理人が手続きすることも可能です。
この記事では貸付自粛制度の仕組みや、申請できる人の条件、申請方法などについてわかりやすく解説します。
貸付自粛制度とは、借入を制限して本人・家族の生活を守る制度のこと
貸付自粛制度とは、特定の人の借り入れ(キャッシング)を制限する制度。有効期間は5年です。
貸付自粛制度は、次のような仕組みで実施されます。
- 本人または代理人が申告する
- 情報が信用情報機関に登録される
- 信用情報機関(※1)が加盟する金融機関(※2)に情報提供する
- 各金融機関が、対象者の支払い能力に関する調査に情報を利用する
※2:銀行・消費者金融・クレジットカード会社など
貸付自粛制度の情報は、次の3つの信用情報機関へ登録されます。
- 株式会社日本信用情報機構
- 株式会社シー・アイ・シー
- 全国銀行個人信用情報センター
全国銀行個人信用情報センターは、2019年3月29日から追加予定です。
当サイトでは、信用情報の登録内容や、開示請求のしかたについても解説しています。詳しくは次の記事をご覧ください。
貸付自粛制度を申請するのは原則本人!代理人の条件を解説
貸付自粛制度を申請できるのは、原則本人(自粛対象者)のみ。
しかし次のような代理人であれば、手続きすることが可能です。
※2:自粛対象者が所在不明(失踪中)である場合のみ
※3:※2に加え、二親等内の親族による申告が著しく困難な場合のみ
それぞれ申請するための条件が異なるので、詳しく説明します。
【1】法定代理人が貸付自粛制度を申請する条件
法定代理人とは、法律によって定められた代理人のこと。貸付自粛制度を申請できる法定代理人は、次のいずれかに該当する人です。
- 親権者
- 後見人
- 保佐人
- 補助人
ただし補助人については「借財について同意する権限を有するものに限る」という条件も設けられています。
【2】配偶者または二親等内の親族が貸付自粛制度を申請する条件
自粛対象者が所在不明の場合、配偶者または二親等内の親族も、代理人として貸付自粛制度を申請できます。
一親等 | 父母・子 |
---|---|
二親等 | 祖父母・孫・兄弟姉妹 |
また本人の兄弟姉妹に配偶者がいる場合、その人も「二親等内」と見なされます。
ただし、これらの人が貸付自粛制度を申請する場合、次の条件を満たす必要があります。
・自粛対象者が所在不明であることが、客観的な事実により証明できること
・所在不明の原因が、金銭の貸付による金銭債務の負担である可能性があること
・自粛対象者の生命や身体、または財産の保護のため、貸付自粛の対応が必要であると認められる場合であること
・自粛対象者本人の同意を得ることが困難であること
【3】同居人(三親等内の親族)が貸付自粛制度を申請する条件
「自粛対象者が失踪中で、二親等内の親族による申告が難しい」という場合、自粛対象と同居している三親等内の親族の場合も、一定条件を満たすことで申請ができます。
三親等内の親族とは、本人または配偶者から見て、次のいずれかに該当する人のことです。
一親等 | 父母・子 |
---|---|
二親等 | 祖父母・孫・兄弟姉妹 |
三親等 | 曾祖父母・曾孫・おじ・おば・甥・姪 |
また本人から見て「おじ・おばの配偶者」「兄弟姉妹の配偶者」にあたる人も、三親等内の親族と見なされます。
同居している三親等内の親族が「貸付自粛制度」を申請するには、次の条件を満たすことも必要です。
・自粛対象者が所在不明であることが、客観的な事実により証明できること※
・所在不明の原因が、金銭の貸付による金銭債務の負担である可能性があること
・自粛対象者の生命や身体、または財産の保護のため、貸付自粛の対応が必要であると認められる場合であること
・自粛対象者本人の同意を得ることが困難であること
・配偶者または二親等内の親族が申告することが、著しく困難と認められること
貸付自粛制度の撤回は3カ月間不可!申請者しか取り消しできない
貸付自粛制度は、対象者の多重債務・依存症などによるお金の借りすぎを防げる制度。しかし次のような注意点もあります。
- 原則、申告日から3カ月間は撤回できない
- 原則、撤回は「申請した人」しかできない
貸付自粛制度は、申告日から3カ月経つまで撤回(取り消し)できません。
この期間中に銀行や消費者金融などからお金を借りる必要があっても、ローンなどの契約は不可です。
また日本貸金業協会に問い合わせたところ、撤回できるのは原則「申請を行った人のみ」とのことでした。
つまり「代理人が申請して、対象者本人が撤回する」「対象者本人が申請して、代理人が撤回する」ということは基本的にできません。
電話番号 | 0570-051-051 |
---|---|
受付時間※ | 9:00~17:00 |
貸付自粛制度の申請方法と必要書類【公式サイトを必ず確認!】
貸付自粛制度は必ず「貸付自粛に係る承諾事項」を読み、内容をしっかり確認・承諾してから登録手続きを行いましょう。
手続きをすると、次のような対象者情報が信用情報機関に登録されます。
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 住所
- 携帯電話または自宅の電話番号
- 勤務先名
- 勤務先の電話番号
貸付自粛制度に対象者の情報を登録するには、日本貸金業協会または全国銀行個人情報信用センターへの申請が必要です。
日本貸金業協会に申し込む場合、申請方法は次の2通り。それぞれの詳しい手順をお伝えします。
【1】日本貸金業協会の支部へ来協して手続きする方法
来協して貸付自粛制度の手続きを行う場合は、最寄りの支部に本人確認書類(すべて原本)を持参しましょう。
提出すべき書類は依頼する人によって提出するものが異なります。詳しくは次の章からお伝えしているので、該当するものを選択し読み飛ばしてください。
申告理由がギャンブルの場合は、ギャンブル等依存症対策のため状況を聞かれます。
【2】日本貸金業協会に、郵送で貸付自粛制度を申請する方法
郵送申告の場合は、最寄りの支部(公式サイトで確認可能)へ必要書類を郵送しましょう。
提出すべき書類は、次のとおりです。
- 申告書
- 本人確認書類
- 返信用切手392円分※1
- 貸付自粛申告確認書
申告書・貸付自粛申告確認書は日本貸金業協会の公式サイトでダウンロード可能です。
本人確認書類は依頼する人によって提出するものが異なるので、詳しくは次のうち該当する章で確認してください。
書類を郵送したら、日本貸金業協会から申告者へ本人確認の電話がかかってきます。
また「貸付自粛申告確認書」を提出しなかった場合は、それについての聴取も行われます。
必要な本人確認書類【本人申請の場合】
自粛対象者本人が申請を行う場合、本人確認書類として提出できるものは次のとおりです。
- 運転免許証
- マイナンバーカード(個人番号カード)
- 各種健康保険証
- パスポート
- 年金手帳
- 各種福祉手帳
- 在留カード
- 住民基本台帳カード(※1)
- 印鑑登録証明書(※2)
- 官公庁から発行、発給された書類(※1)
※2:発行日より6カ月以内のもの
来協 | 次の2点のみ原本、他はコピー ・印鑑登録証明書 ・官公庁から発行、発給された書類 |
---|---|
郵送 | 原本 |
必要な本人確認書類【代理人申請の場合】
代理人が貸付自粛制度の登録を行う場合は、本人申請の場合の本人確認書類に加え提出すべき書類があります。
「法定代理人など」「自粛対象者の配偶者または二親等内の親族」「自粛対象者の三親等内の親族および同居の親族」の順に見ていきましょう。
法定代理人などの場合は、次の書類が必要です。
- 登録対象者との関係が証明できる書類(※1)
- 戸籍全部事項証明書または本人と親権者が記載された戸籍個人事項証明書(※2)
- 法定代理人であることを証明する書類(※3)
※2:未成年者の親権者の場合
※3:※2以外の場合
「自粛対象者の配偶者または二親等内の親族」「自粛対象者の親族および同居の親族」の場合は、それぞれ次の書類を用意してください。
- 登録対象者との関係が証明できる書類※
- 戸籍全部事項証明書
- 家庭裁判所の発行する審判書謄本と、それに類する公的証明書
- 登録対象者との関係が証明できる書類※
- 戸籍全部事項証明書
- 住民票記載事項証明書
- 家庭裁判所の発行する審判書謄本と、それに類する公的証明書
書類に不備があると返却され、登録不可となります。有効期限や記載内容など、よく確認のうえ提出しましょう。
貸付自粛制度で本人や家族の生活を守ろう!撤回不可の期間には注意
貸付自粛制度で強制的に借り入れが制限されれば、そのようなリスクを軽減できます。買い物やギャンブルがやめられないなど、「自分ではどうにもならず、ついお金を借りてしまう」という人に有効です。
依存症が理由で申請する場合は、適切な治療を受けるなど、根本的な原因への対処も行うことをオススメします。
ただし申告日から3カ月間は、貸付自粛制度を撤回することができません。住宅ローンなど借り入れの予定がある場合は、タイミングをよく考えて申請しましょう。