カードローンなどの借金の返済義務を負うのは、借入契約をした本人です。保証人や連帯保証人になっていない限り、契約者本人以外の家族に返済を求めてはいけないと法律で決められています。
しかし、保証人にもなっていないのに、ある日突然親族の借金トラブルに巻き込まれてしまうこともあります。例えば、親が亡くなって遺産を相続したら、実は借金があることがわかった場合です。この場合、遺産を相続した人が借金の返済義務を負うことになります。
また、「妻が借金している場合、条件を満たせば夫に返済を求めることができる」と定めた法律もあります。自分がした借金でもないのに、返済を求められるなんて嫌ですよね。それぞれのケースで、どんな対処法があるのかお伝えします。
借金返済の基本!契約者本人以外に返済義務はない
しかし、家族や友人の借金の保証人や連帯保証人になっている場合は別です。保証人や連帯保証人は、契約者(債務者)本人が借金を返さない場合、本人の代わりに返済の義務を負います。
ドラマでも、「友人の借金の保証人になってしまったばっかりに、返済に苦しむことになってしまって・・・」という場面が出てくることがありますよね。
契約者本人の代わりに返済の義務を負うことは保証人も連帯保証人も同じなのですが、連帯保証人のほうが、より重い責任を負います。保証人と連帯保証人の違いを詳しくご説明します。
保証人と連帯保証人は責任の重さが大きく違う!
保証人なら、債権者(お金を貸した人)が返済を要求してきても、「まずは契約者本人に請求してください(催告の抗弁)」「契約者本人に返済に回せる財産があるので、契約者本人から返済してもらってください(検索の抗弁)」と主張することができます。
しかし、連帯保証人には「催告の抗弁」も「検索の抗弁」も認められていないので、返済を求められたら必ず返済しないといけません。
さらに、保証人や連帯保証人が複数いる場合、保証人なら返済金額を保証人の人数を割った額だけを返済すればいいのですが、連帯保証人は1人で全額を返済するように求められても文句が言えません。
借金の契約での保証人は、連帯保証人を差すことが多いです。
連帯保証人と保証人の責任の範囲はかなり違うので、「保証人になってほしい」と頼まれて引き受けざるを得ない場合、自分が頼まれているのは保証人なのか連帯保証人なのかを確認しましょう。
カードローンの場合には、保証会社が保証人の役割を担うので、保証人や連帯保証人をつけることはごくごく稀です。
連帯保証人について詳しくは知らないうちに連帯保証人になってた!?連帯保証人の責任と注意点で解説しています。
普通、「保証人をお願い」と言われた場合は、連帯保証人であることが多いわよ。
亡くなった親に借金があった!相続放棄すれば返済義務はない
亡くなった親に返済が終わっていない借金があることがわかったとき、どうなると思いますか。借金していた本人が亡くなったら借金はチャラになるなんて、そんな甘いことはありません。
子どもや孫など、相続した人が代わりに返済する義務を負います。
「自分の責任じゃないのに、そんなの嫌だ!保証人でもないのに!」と誰しも思いますよね。相続した人が借金を払う義務を負わなくていいようにする、相続放棄という制度があります。
相続放棄するとどうなるのか、詳しくご紹介します。
相続放棄するとどうなる?借金と同時に資産も放棄
亡くなった親に借金があったとわかり、資産(プラス)よりも借金(マイナス)のほうが多い場合には、相続放棄を選択する人が多いです。
相続放棄の手続き書類は意外と簡単ですぐ書ける
相続放棄をするには、相続の開始(親が死亡したとき)から3ヶ月以内に、家庭裁判所に、「相続の放棄の申述書」と、戸籍謄本、800円分の収入印紙などを提出します。
提出先の家庭裁判所はどこでもいいわけではなく、亡くなった人の最後の住所の地域を管轄する家庭裁判所と決まっています。
申述書は意外なほど簡単な書類で、裁判所のWEBサイトで記入例も見れるので、すぐ作れます。
また相続放棄はあとから紹介する限定承認と違い、相続人全員が揃って手続きする必要はありません。この点でも簡単ですよね。
申述書が裁判所に受理されたら、債権者(カードローン会社)に相続放棄したことを伝えましょう。これで、返済を求める連絡が入ることもなくなります。150円かかりますが、「相続放棄が受理された」という証明書も裁判所で発行してもらえます。
書類の作成などで心配なことがあれば、司法書士や弁護士に相談するといいでしょう。相続関係の無料相談会なども開催されています。
相続放棄の注意点!相続した資産の一部を処分したら手続き不可
相続放棄の注意点についてもご説明します。
まず、相続の開始から3ヶ月を過ぎると、相続放棄の手続きはできなくなります。
例外として3ヶ月を超えても手続きがみとめられるのは、こんな場合です。
- 亡くなったのが遠い親戚だったため、自分が相続人になっていると知らなかった
- 相続する資産や負債があると知らなかった
また、相続した資産の一部を処分してしまったら、資産と同時に負債(借金)も相続(単純相続)したことになってしまい、相続放棄はできなくなります。
親族が亡くなって相続が始まった時は、資産に手をつける前に、借金がないかしっかり確認しましょう。
悪質なパターンで、プラスの資産を隠して自分のものにし、借金部分だけ相続放棄の手続きをしたような場合も、相続放棄は認められません。
実の親など気を使わない間柄なら、相手が元気なうちに聞いておくといいわね。
どうしても相続したい資産があるときには限定承認を使う
亡くなった人に借金があることがわかったとき、限定承認をするという方法もあります。相続放棄は全ての資産と借金を同時に放棄してしまいましたが、限定承認では資産の範囲内でのみ借金の返済義務を負い、借金のほうが多ければ相続しない方法です。
プラスの部分が出れば相続できるメリットがありますが、相続放棄よりも手続きが複雑なのがデメリットです。詳しくご説明します。
限定承認なら借金を精算した後にプラスが残ったら相続できる
限定承認をすると、相続する財産を限度として借金の支払義務を負うことになります。
プラスが多いときには、借金を精算した後に残ったプラス分を相続できます。プラスが多いのかマイナスが多いのかが分からない場合や、借金の返済義務を負ってでも相続したい資産(思い入れのある家や土地など)がある場合に使います。
限定承認は相続人全員で手続きをする必要があり煩雑
限定承認は相続放棄よりも手続きが複雑です。
相続放棄なら、自分一人が相続するかしないか決めればよく、手続きも相続人ひとりひとりが個別に行うのですが、限定承認は相続人全員が共同での手続きとなります。
例えば父親の遺産を限定承認するなら、他に相続人となっている自分の兄弟や、母親(父親の配偶者)と一緒に手続きする必要があります。
さらに、裁判所に受理された後、5日以内に限定承認したことを官報※に載せ(官報公告)、債権者に対して「債権があることを申し出てください」と伝えます。その後、債権者があらわれたら、資産と借金を精算します。
官報広告の時点で、すでに「この人が債権者だ」とわかっている人がいたら、その人には別途連絡をしないといけません。これを「請求申出を催告する」といいます。
官報への掲載はWEBから簡単に申し込みができますが、相続人全員が同意する必要があり、資産と負債の額を調査したりといった諸々の手続きも煩雑なので、相続放棄を選ぶ人が圧倒的に多いです。
限定承認の手続きをするときには、相続を専門に扱う司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
法律、条約、叙勲、国家試験、閣議決定などを広く国民に知らせるために政府が発行する広報誌です。行政機関の休日以外は毎日発行されており、ネットで見ることもできます。
例えば、思い出が詰まった家を手放したくない場合などがあてはまるわね。
配偶者の借金を返済する義務がある!?日常家事債務とは
夫婦のどちらかがカードローンで借金をしている場合、どちらが返済の責任を負うかでトラブルになることもあります。
家族でも保証人にならないかぎり返済の義務はないのですから、「当然、契約者本人だけが責任を負うのでは?」と思いますが、実は例外もあります。
日常家事債務は、夫婦が仲良く一緒に生活しているなら表面化しませんが、別居したり離婚したりといった変化があった場合に、トラブルになります。日常家事債務について、詳しくご説明します。
家賃や食費など生活費のための借金は日常家事債務にあたる
夫婦が一緒に済んでいるアパートの家賃を払うために、妻がカードローンで借入をした場合を考えてみましょう。実際に借入をしたのは妻ですが、ふたりで住んでいる家の家賃を払うためなのですから、妻だけに借金の責任があるとは言えませんよね。
これと同じように、普段の食費、医療費、子どもがいる場合には子どもの教育費など、生活費のための借金(債務)は、夫婦共同で責任を負うべき日常家事債務と判断されます。
ブランドバッグなどの贅沢品を買うためや、海外旅行に行くためにカードローンを使った場合は、日常家事債務にはなりません。
日常家事債務に該当する場合、カードローンの契約者が妻であっても、カードローン会社は夫に支払いを求めることができます。
すでに離婚している場合でも、元夫に支払いを求めることが可能です。
元配偶者の借金返済を求められてもすぐ払ってはいけない
ただし、日常家事債務にあたるかどうかの判断はとても複雑です。普段の生活の様子、夫婦の社会的地位や収入、地域の特性などを合わせて総合的に考えるので、単純にわかるものではありません。
家電にしても教育費にしても、夫婦の年収に対して高額な家電を購入したとか、高額すぎる学習教材を購入したような場合には、日常家事債務とは認められません。
ですから、もしカードローン会社に「これは生活費のための借金で日常家事債務にあたるから、配偶者の借金をあなたが払ってください」と言われても、本当に日常家事債務にあたるかはわかりません。
支払いを求められても、言いなりになって払ってしまうのではなく、まずは落ち着いて司法書士や行政書士、弁護士などの専門家に相談しましょう。
各地域の司法書士会などが主催している無料の相談会もありますよ。
一方、夫の月収17万円で、53万円の学習教材は、範囲外だったの。
トラブルに巻き込まれたらまず落ち着いて!解決策は必ずある
まず、他人の借金の肩代わりを求められたとしても、原則として契約者本人以外に返済義務はないことを覚えておきましょう。
保証人や連帯保証人でなければ、肩代わりする必要はありません。亡くなった親族に借金があった場合には、相続放棄をすれば借金の返済義務はなくなります。
自分がした借金の契約でなくても、配偶者の借金を返済する義務が生じるのは「日常家事債務」にあたる場合です。ただし、日常家事債務の判断は複雑なので、債権者(貸金業者)の言いなりになって返済してはいけません。
ここでお伝えした内容は、あなたが配偶者や親族の借金問題に直面した時、きっと助けになってくれるはずです。この内容を頭の片隅に置いて、いざというときには落ち着いて行動してください。