簡易裁判所の特別送達とは?受け取らない場合と身に覚えがない場合の対処法について解説

簡易裁判所の特別送達とは? 受け取らない場合と身に覚えがない場合の 対処法について解説

簡易裁判所から「特別送達」と書かれた郵便物が届いたら、ほとんどの方は驚くでしょう。同時に、以下の点が特に気になるかと思います。

  • 特別送達とは何なのか
  • 受け取らないとどうなるのか
  • 身に覚えがない場合はどうすればいいのか

上記3つのポイントを中心に、簡易裁判所の特別送達について詳しく解説します。特別送達を名乗る詐欺に騙されないための注意点もまとめているので、多くの方に役立てていただけるでしょう。

簡易裁判所の特別送達とは?どんな内容?

法律

まず、多くの方が最初に知りたいのは「簡易裁判所の特別送達とは何か」でしょう。ここでは、簡易裁判所の特別送達の概要を解説します。

内容は借金の支払督促や、罰金刑の略式命令

特別送達は、裁判所が発送する特別な郵便です。内容は主に、支払督促や少額訴訟の呼び出しです。

特別送達の封筒は、下記の見本のように「特別送達」と明記され、発送元の裁判所の名称と住所が記されています。

見本

特別送達には下のような特徴があります。

  • 郵便配達担当者が直接手渡す
  • ポストに投函されることはまずない
  • 受け取りの際に署名や押印が必要
  • 中身には「事件番号」や「事件名」が記載されている

参考:裁判所からの「訴状」?-特別送達について-|国民生活センター

上記のルールから郵便受けに投函されている特別送達は、まず偽物といえます。「事件番号」とは、事件を識別するための番号です。特別送達の場合、下のような記号から始まる番号が多数派です。

少エ 少額訴訟判決に対する異議申立て事件(簡易裁判所)
少コ 少額訴訟事件(簡易裁判所)
民事通常訴訟事件(簡易裁判所)

参考:各判例について|裁判所

「事件名」は、単純に「売掛代金請求事件」など、内容がそのまま書かれています。この事件名や事件番号がなかった場合も、その特別送達は偽物です。

(配達担当者から受け取ったという場合、その担当者も偽者という巧妙な詐欺の可能性があります)

(要確認)本物の特別送達であれば「異議申し立て」が必要

特別送達が偽物なら、そのまま無視してかまいません。しかし、本物であれば対応が必要です。

特別送達への対応は「異議申し立て」といいます。「この内容は虚偽である」という異議を申し立てるものです。

この反論をしなければ、特別送達に書かれていることが「事実だと認めた」ことになります。下記の説明のとおり「欠席裁判」となり、相手の主張が通ってしまいます。

もし本物の「特別送達」である場合は、身に覚えがなくとも放置してはいけません。「異議申し立て」や「答弁書」を提出しないと欠席裁判となり、相手方の主張が認められてしまいます。
引用:郵便受けに裁判所から「特別送達」?が届いた。どういうこと?|埼玉県松伏町

異議申し立ては2週間以内に行う

異議申し立ては、特別送達を受け取ってから2週間以内に行う必要があります。法務省は下のように説明しています。

「督促異議の申立て」をすることができる機会は、最初の「支払督促」の送達を受けた日から2週間以内
引用:督促手続・少額訴訟Q&A|法務省

上記は「督促」についての説明ですが、「罰金」でも同じです。罰金については、検察庁が下のように説明しています。

(前略)不服がある場合には,正式裁判を申し立てる(略式命令を受け取ってから14日間以内)ことができます。
引用:略式裁判について|検察庁

罰金の特別送達は「略式裁判」を行うものです。略式裁判とは、「簡単な事件なので書類だけで完結させる」という裁判です。

上の検察庁の文章では「罰金刑に不服がある場合、正式な裁判をはじめてください」という内容が書かれています。このように、罰金でも督促でも異議申し立ては「2週間以内」に行います。

申し立てをしないと「仮執行宣言」が届くか罰金が確定する

支払督促の場合、異議申し立てをしなければ「仮執行宣言」の通達が届きます。

債務者に支払督促正本が送達され,送達日の翌日から2週間以内に債務者から異議の申立てがないときは,あなたは仮執行宣言の申立てができます。
引用:支払督促の申立てについて|裁判所

上の説明は、請求する側に対して「相手から異議がなければ、仮執行宣言をしていい」という内容です。立場は逆ですが「異議申し立てをしなければ仮執行宣言が届く」ことがわかります。

相手の気が変わり、仮執行宣言の申し立てをしなければ、何も来ないこともルール上はありえます。しかし、基本的には2週間が経過してすぐに仮執行宣言を申し立てる債権者が多いです。

罰金についてはそのままで「罪が確定する」だけです。後は罰金の請求書が担当の行政部署から届きます。

仮執行とは「仮の差しおさえ」のこと

仮執行とは、仮の差しおさえのことです。まだ完全な差しおさえではありません。

そのため「相手と和解する」「自分に非がなかったことがわかる」などのケースでは、仮執行は解除されます。しかし、仮執行の時点で差しおさえの対象となる預金などの資産は、一時凍結されます。

参考:仮執行|コトバンク

簡易裁判所の特別送達を受け取らない場合

拒否

簡易裁判所の特別送達を、もし受け取らなかったらどうなるか、受け取らないことはできるのか、という点が気になる方も多いでしょう。ここでは、特別送達の受取拒否について説明します。

受け取らなくても「受け取った」と見なされる

特別送達は、受け取らなくても「受け取った」とみなされます。下の条文のとおり、発送された時点で届いたとみなされるからです。

前二項の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その発送のときに、送達があったものとみなす。
引用:民事訴訟法第107条3|e-Gov法令検索

このため、受取拒否をしてもメリットや意味はありません。書類の内容にあわせて対応するためにも、必ず受け取る必要があります。

訴訟に対して何もしなければ基本的に全面敗訴になる

簡易裁判所からの特別送達が訴訟であれば、それに応じる必要があります。初回の裁判については、最低でも「答弁書」を提出する必要があります。

「裁判には欠席してもいいが、反論の書類だけは提出しなければならない」のです。答弁書だけでも提出すれば、初回の裁判(第1回口頭弁論期日)には参加した扱いです。

上のルールは、陳述擬制(擬制陳述)というもので、下記の条文に規定されています。

(前略)口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、(後略)
引用:民事訴訟法第158条|e-Gov法令検索

上記のとおり裁判は欠席していいのですが、書類の提出だけは必要です。その書類を作成するためにも、特別送達の内容を確認する必要があります。

簡易裁判所の特別送達はどこに届く?

郵便局

簡易裁判所の特別送達が「送られるかもしれない」という状況になったとき「どこに届くか」が気になる方も多いでしょう。あるいは「なぜ職場に届いたのか」という点が気になっている方もいるかと思います。

ここでは、簡易裁判所の特別送達の送り先に関するルールを解説します。

原則、自宅にしか届かない(通常送達)

特別送達は基本的に、自宅にしか届きません。この送達方法を「通常送達」といいます。

「原則自宅に送る」というルールは、下の太字部分で規定されているルールです。

送達は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所(中略)においてする。
引用:民事訴訟法第103条1項|e-Gov法令検索

「営業所・事務所」も入っているのは、債務者が会社や事業所の場合があるからです。どちらにしても、その債務者の「メインの住所」に対して連絡が行きます。

やむを得ない場合は職場に届く(就業先送達)

自宅に送っても連絡がつかない場合などは、職場に特別送達を送ることも認められています。これを就業先送達といい、下のルールで規定されています。

前項に定める場所が知れないとき、又はその場所において送達をするのに支障があるときは、送達は(中略)就業する他人の住所等(中略)においてすることができる。
引用:民事訴訟法第103条2項|e-Gov法令検索

上のルールがあるので、自宅に届いた特別送達を無視していると、職場に送られる可能性があります。

裁判所の特別送達で身に覚えがない場合

郵便物を見る女性

簡易裁判所から特別送達が届いたとき「身に覚えがない」というケースもあるでしょう。なぜ身に覚えのない特別送達が届くのか、届いたらどうすればいいのかを解説します。

書かれている連絡先には決して連絡しない

借金や罰金などの思い当たる事項がない場合、特別送達を語った詐欺の可能性が高いです。この場合、書かれている裁判所などの連絡先は偽物なので、くれぐれも連絡してはなりません。この点は、自治体も下のように警告しています。

絶対、相手には連絡しないでください。
消費生活センターにご相談ください。
引用:身に覚えのない訴訟などのはがき・封書が届いて困っています。どうすればいいですか?|新潟県柏崎市

自分で裁判所の番号を調べて確認する

本当に特別送達であるか、裁判所への確認は必要です。このとき連絡する裁判所の電話番号は、裁判所の公式サイトで直接調べましょう。

参考:各地の裁判所の所在地・電話番号等一覧|裁判所

裁判所でなく消費者センターでも確認できます。全国の消費者センターの連絡先は下記でわかります。

参考:全国の消費生活センター等|国民生活センター

本物の特別送達なら事実確認をする

裁判所などに問い合わせをして本物の特別送達であることがわかっても、「特別送達を用いた詐欺」の可能性があります。この場合、ただの架空請求とは違い、異議申し立てなどの対応が必要です。

単なる架空請求であれば,身に覚えがない以上請求に応じる必要はありませんが,裁判所の手続を悪用する形で請求してきた場合には,注意を要します。
引用:督促手続・少額訴訟手続を悪用した架空請求にご注意ください|法務省

内容が「明らかな架空請求」という場合は、単純に異議申し立てをすればいいでしょう。しかし、たとえばクレジット会社など「詐欺をはたらく可能性が低い企業」からの督促のこともあります。

この場合、はカードの不正利用などなんらかのトラブルに巻き込まれている可能性があります。このため、ただ異議申し立てをするだけでなく、事実確認が必要です。

まとめ

まとめると、簡易裁判所からの特別送達が届いたとき、とるべき対応は下記のとおりです。

  • まず、本物の特別送達かを確認する
  • 本物だとわかったら、内容を確認する
  • 異議があれば異議申し立てをする
  • 異議がなければ、相手との和解交渉などを行う
  • 身に覚えがなくても必ず対応する

上記の対応を的確に行えば、特別送達自体は恐ろしいものではありません。督促の内容が事実であれば返済が大変なので、その場合は債務整理などもあわせて検討していただくのがいいでしょう。

(監修:鎌倉鈴之助)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

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