奨学金の返済が苦しいときにはどうすればいい?返済負担を軽くするための全知識

奨学金の返済が苦しいときにはどうすればいい? 返済負担を軽くするための全知識
日本学生支援機構が2018年に行った「学生生活調査」によると、約2人に1人が奨学金を受給しています。家庭の事情や経済状況で進学が難しい方に学費の付与や貸与を行う奨学金は非常に意義深い制度です。

その一方、思うような就職先が見つからなかった場合など、返済の負担が重くのしかかり、月々の返済が困難な方は珍しくありません。

この記事では、奨学金の返済が困難になった際に減額ができる制度について解説します。奨学金の返済に行き詰まってしまった方はぜひ参考にしてください。

奨学金の返済負担を軽減するための方法

日本学生支援機構では、奨学金の返済が困難になった方のために、返済の負担を軽減するための2つの制度を用意しています。

  • 一定期間、返済月額を減額できる「減額返還制度」
  • 奨学金の返済を最長10年間延長できる「返還期限猶予制度」

上記の2つの制度の概要と適用を受けられる条件から申請方法を解説します。

一定期間、返済月額を減額できる「減額返還制度」

「減額返還制度」とは、一定期間月々の返済額が減額できる制度です。1回の申請につき1年間減額でき、合計で最長15年間減額できます。

奨学金の返済月額を当初に約束した額の2分の1、または3分の1に減額できる制度で、減額率は自身で選べます。

月々の返済額が減るので完済までの期間は長くなりますが、カードローンなどの返済と違い、返済総額は変わりません。

減額返還制度を利用したからと言って、追加で利息や遅延損害金が発生しないからです。

適用を受けられる条件

適用を受けるための絶対条件は以下の通りです。

  • 奨学金の返済を滞納していない
  • 口座振替の手続きが済んでいる
  • 返済方式は月賦
  • 「個人信用情報の取扱いに関する同意書」を提出している

奨学金の返済を滞納していないことが第一の条件です。滞納している場合は、滞納分を納入後に申請可能です。口座の手続きが済んでいない方は、申請前に日本学生支援機構の「口座振替(リレー口座)による返還」の手続きを済ませてください。

また、返済方式が月賦の方のみ利用できる制度です。とはいえ、月賦以外の返済方式(年賦、半年賦、月賦・半年賦併用)の方は申請後、自動的に月賦に変更されます。申請者が手続きをする必要はありません。

「個人信用情報の取扱いに関する同意書」が未届けの場合は、減額返還制度の申請時に同封して提出すれば問題ありません。同意書は、日本学生支援機構のホームページからダウンロードできます。

ダウンロードはこちら→個人信用情報の取扱いに関する同意書

上記の条件を満たしたうえで、新卒、経済困難、疾病、失業中、災害のいずれかに当てはまる方が適用対象者です。適用条件の詳細は、以下の表の通りです。

新卒 以下、2つの条件を満たす必要あり
・2019年12月以降に卒業や退学をした方で、翌年6月までに願い出る方
・卒業や退学後にはじめて減額返還を願い出る方
※日付は2020年の場合
経済困難 ・給与所得者の場合=年間収入金額が325万円以下で現在も同様の状況にある方
・給与所得者以外の場合=所得金額が225万円以下で現在も同様の状況にある方
傷病 病気やけがのために、休職・失職し、返済が困難な方
失業中 失業後6カ月以内で、かつ再就職(正社員・派遣社員・アルバイトなど、雇用保険に加入している場合のすべてが対象)できていない方
災害 減額返還開始希望日から数えて1年以内に災害により、返済が困難になった方

参考:減額返還制度の拡充について|独立行政法人日本学生支援機構
なお、すべての条件に適合していても、所得連動返還方式を利用している場合は、いかなる理由があっても減額返還制度は利用できませんので、注意してください。

減額返還制度の申請方法

必要書類を下記に郵送してください。

日本学生支援機構
〒162-8412 東京都新宿区市谷本村町10-7
独立行政法人日本学生支援機構 返還部 返還猶予課

なお、必要な書類は以下の通りです。

  • 奨学金減額返済願
  • 提出前チェックシート
  • マイナンバー提出書

いずれも日本学生支援機構のホームページからダウンロードできます。

ダウンロードはこちら→奨学金減額返還願&チェックシート&マイナンバー提出書

上記書類に加えて、返済が難しい理由ごとに以下の書類の提出も必要です。

新卒 本人証明書(運転免許証など)のコピー
経済困難 住民税非課税証明書(原本)、所得証明書(原本)、市・県民税(所得・課税)証明書(原本)のいずれか1点
傷病 2カ月以内に発行された診断書※診断書に就労困難である旨、治療中である旨の記載が必要
失業中 雇用保険受給資格者証、雇用保険被保険者離職票、失業者退職手当受給資格証、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書のいずれかのコピー1点
災害 ・罹災から12カ月以内の月から減額を希望する場合=罹災証明書(原本)
・罹災から12カ月を経過した月から減額を希望する場合=罹災証明書(原本)、「経済困難」の証明書または「新卒など」の証明書

平成26年3月以降の貸与終了者(在学猶予終了者含む)については、返還開始より 1年以内(貸与終了または在学猶予終了の翌年に当年度の所得証明書が発行されるまで) の初回申請時に限り、収入証明書等の証明書類の提出が不要となりました。
引用:減額返還制度の申し込みに係る提出書類の簡素化|独立行政法人日本学生支援機構

奨学金の返済を最長10年間延長できる「返還期限猶予制度」

「返還期限猶予制度」とは奨学金の返済を最長10年間延長できる制度です。

1回の申請につき1年間返済期間が猶予され、最長で10年間返済期間を延長できます。減額返還制度と違い、すでに延滞している方も利用できるところが特徴です。

また、減額返還制度を同様に、追加の利息や遅延損害金は発生しませんので、返済期間が延長しても返済総額に変わりはありません。

適用を受けられる条件

適用を受けられる方は、多岐にわたります。理由と詳細な条件については、下記の表を確認してください。

疾病 傷病により就労が困難である方で、収入・所得条件が以下に当てはまる場合
・給与所得者=年間収入金額(税込)200万円以下
・給与所得以外の所得を含む場合=年間所得金額(必要経費など控除後)130万円以下
生活保護受給中 生活保護受給中である方
入学準備中 在学期間終了後1年以内で、大学・大学院などに進学する準備をしている方
失業中 失業後6カ月以内で、かつ再就職(正社員・派遣社員・アルバイトなど、雇用保険に加入している場合のすべてが対象)できていない方
経済困難 無職・未就職・低収入により奨学金の返済が難しい方
特別研究員 日本学術振興会などの特別研究員である方
新卒など 在学期間終了後1年以内で、無職や未就職、低収入により返還困難な方
災害 罹災により、奨学金の返済が困難な方。罹災から12カ月を経過した月から猶予を希望する場合は、収入・所得条件が以下に当てはまることが条件
・給与所得者=年間収入金額(税込)300万円以下
・給与所得以外の所得を含む場合=年間所得金額(必要経費など控除後)200万円以下
産前休業・産後休業および育児休業 産前休業・産後休業や育児休業により、無収入・低収入のため、奨学金の返済が困難な方
大学校在学 防衛大学校、防衛医科大学校、海上保安大学校、気象大学校、職業能力開発総合大学校、国立看護大学校のいずれかに在学している方
海外居住 海外に居住していて、無収入・低収入のため、奨学金の返済が困難な方
今年海外から帰国 海外居住、青年海外協力隊などで日本を離れていたが、今年1月2日以降に帰国している方で、収入・所得条件が以下に当てはまる場合
・給与所得者=年間収入金額(税込)300万円以下
・給与所得以外の所得を含む場合=年間所得金額(必要経費など控除後)200万円以下
海外派遣 青年海外協力隊、海外農業研修などで派遣されている方で、収入・所得条件が以下に当てはまる場合
・給与所得者=年間収入金額(税込)300万円以下
・給与所得以外の所得を含む場合=年間所得金額(必要経費など控除後)200万円以下
外国で研究中 外国の研究機関で研究していて、低収入のため返還困難な方
外国の学校へ留学 国内の大学などに在籍したまま海外留学する方、または国内の大学などには在籍せず大学・大学院などの学位取得課程に留学するか、在籍期間9カ月以上の課程に留学する方

返還期限猶予制度の申請方法

必要書類を日本学生支援機構に郵送してください。

日本学生支援機構
〒162-8412 東京都新宿区市谷本村町10-7
独立行政法人日本学生支援機構 返還部 返還猶予課

なお、必要な書類は以下の通りです。

  • 返還期限猶予願
  • 提出前チェックシート
  • マイナンバー提出書

いずれも日本学生支援機構のホームページからダウンロードできます。

猶予願&チェックシート&マイナンバー提出書

上記の書類に加えて、申請理由ごとに以下の書類や証明書の提出が必要です。

疾病 下記、両方の書類
・2カ月以内に発行された診断書(原本)
※診断書に就労困難である旨、治療中である旨の記載が必要
・「経済困難」の証明書、もしくは「新卒など」の証明書
生活保護受給中 下記のうち、いずれかの書類
・生活保護受給証明書(原本)
・民生委員の証明書(原本)
※いずれも2カ月以内に発行されたもの
入学準備中 下記のうち、いずれかの書類
・予備校の在籍証明書(原本)
・出身学校の長または出身学校教職員などによる入学準備中であることの証明書など(原本)
失業中 下記のうち、いずれかの書類
・雇用保険受給資格者証
・雇用保険被保険者離職票
・失業者退職手当受給資格証
雇用保険被保険者資格喪失確認通知書
※いずれもコピー可
経済困難 下記のうち、いずれかの書類
・住民税非課税証明書
・所得証明書
・市・県民税(所得・課税)証明書
※いずれも原本
特別研究員 下記、両方の書類
・「経済困難」の証明書
・研究員の証明書(原本)および研究費の金額がわかる証明書など(原本)
新卒など 下記のうち、いずれかの書類
・国民健康保険以外の健康保険証の被扶養者欄(コピー)
・給与明細(コピー)か給与明細書(原本)
・収入がわかる帳簿(コピー)
・求職活動中もしくは無職の証明書(原本)
災害 ・罹災から1年以内の場合=罹災証明書(原本)
・罹災から1年超の場合=「経済困難」の証明書もしくは「新卒など」の証明書、罹災証明書(原本)
産前休業・産後休業および育児休業 下記、両方の書類
・「経済困難」の証明書、もしくは「新卒など」の証明書
・休業証明書(原本)
大学校在学 下記、両方の書類
・在籍証明書(原本)
・在籍期間証明書(原本)
海外居住 下記、両方の書類
・直近連続3カ月分の給与明細コピー、または給与証明書(原本)
・ビザ(コピー可)
※就労しておらず、上記書類の提出ができない場合は以下のうち、いずれかの書類を提出
・就労不可のビザ(コピー可)+事情書
・外国で扶養にはいっていることがわかるもののコピー+事情書+ビザ(コピー可)
・求職活動中であることがわかるもの(コピー可)+事情書+ビザ(コピー可)
出国して海外にいることがわかるパスポート(コピー可)+配偶者の勤務先などの方による本人が働いていない状況に関する申告書(元本)+配偶者記載の事情書配偶者のビザ(コピー可)+事情書
・公的機関から生活保護などを受給していることがわかる書類(コピー可)+ビザ(コピー可)
今年海外から帰国 下記、両方の書類
・事情書
・ビザ、またはパスポート(コピー可)
※上記書類にあわせて以下のうち、いずれかの書類を提出
・帰国後の直近連続3カ月分給与明細(コピー可)
・健康保険証(国民健康保険は不可)の被扶養者欄(コピー可)
・求職受付票(コピー可)
・民生委員による求職活動中または無職であることの証明書(原本)
海外派遣 ・派遣証明書(原本)または研修生の証明書(原本)
※上記書類にあわせて以下のうち、いずれかの書類を提出
・「経済困難」の証明書
・「新卒など」の証明書
外国で研究中 下記、すべての書類
・在籍証明書(原本)または所属機関の証明書(原本)
・所得証明書(原本)
・収入金額に研究費が含まれている場合は、研究費の金額がわかる証明書(原本)
※いずれの書類も日本語訳の添付が必要
外国の学校へ留学 下記のうち、いずれかの書類
・在学証明書(コピー可)+ビザ(コピー可)
・入学許可書(コピー可)+ビザ(コピー可)
・履修登録書(コピー可)+ビザ(コピー可)

参考:返還期限猶予|独立行政法人日本学生支援機構

弁護士による法的手続き

奨学金の返済に関して、どのような対策を取ればいいかわからないという方は、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士に相談すれば、個別の事情に即した対策をアドバイスしてもらえるでしょう。また、必要であれば法的手続きも取ってもらえます。

奨学金の返済は債務整理できるが、おすすめはできない

奨学金の返済は債務整理できます。しかし、おすすめはできません。

奨学金の債務整理をおすすめできない理由について詳しく解説します。

任意整理は減額される額が少ない

債務整理には、任意整理と個人再生、自己破産の3種類があります。このうち、任意整理とは、借入先と交渉して借金を無理なく返済できるようにする手続きのことです。

任意整理でできることは、利息のカットですが、奨学金の任意整理はおすすめできません。奨学金はもともと非常に低金利だからです。

奨学金の第1種はそもそも無利息で、第2種にしても0%~1%程度の利息です。任意整理したとしても、月々数百円減額される程度でしょう。

利息が17%~18%あるカードローンの返済に困った場合の任意整理であれば有効ですが、もともと低金利の奨学金の返済において任意整理は効果的ではありません。

個人再生や自己破産はデメリットが大きすぎる

個人再生や自己破産がおすすめできない理由は、デメリットが大きいからです。個人再生は、借金が原則5分の1に減額できる制度ですが、個人信用情報に個人再生の情報が記載されます。いわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。

こうなってしまうと、クレジットカードやカードローンをはじめとしたあらゆるローン商品を5年から10年間利用できません。

自己破産の場合も同様です。裁判所から自己破産が認められれば、奨学金を含むすべての債務の返済義務はなくなりますが、クレジットカードやローン商品を5年から10年間は利用できません。

加えて、自己破産をすると車や住宅といった資産を没収される可能性もあります。

さらに、自己破産の手続き中は、弁護士・税理士・司法書士といった士業や、金融関連業・旅行業務取扱管理者・警備員・建設業などの職種につけなくなります。

すでに、これらの業種に就いている場合は、免責が確定するまで一時的にせよ仕事をやめなければなりません。この点も注意が必要です。

個人再生も自己破産も認められれば本人の返済義務はなくなりますが、もちろん連帯保証人の返済義務はなくならないので、奨学金の返済は連帯保証人に請求されます。

奨学金の返済だけではなく、他の金融機関からの借金もあり、借金を返せないような場合には、自己破産や個人再生の手段を頼ることも検討してもよいでしょう。

まとめ

奨学金の返済が苦しいときの対処法をお伝えしました。

お伝えしたように、奨学金事業を行っている日本学生支援機構では、奨学金の返済が困難な方のために、一定期間返済月額を減額できる「減額返還制度」と返済を最長10年間延長できる「返還期限猶予制度」などの支援制度を用意しています。

返済が苦しい方は、自分が適用されるかどうか、まずは確認してください。

返済が苦しいからといって、くれぐれもカードローンなどの新たな借入から返済することがないようにしましょう。

借金を新たな借金で返済すると多重債務に陥る可能性が高く、将来的により返済に苦しむことになってしまいます。

また、奨学金は債務整理できますが、メリットは小さくデメリットが非常に大きいので、決しておすすめはできません。

デメリットを把握したうえで、どうしても債務整理をしたいという方は早めに弁護士などの専門家に相談してください。

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

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