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2021年01月13日 15:22 更新

【医師監修】手足口病の症状の特徴、他の病気との見分け方

手足口病はその名の通り、手や足、口などに発疹が出るウイルス性の感染症です。稀に合併症を引き起こすこともありますが、だいたいは軽症で済むので、手洗いうがいをはじめとした衛生管理をして予防しましょう。

手足口病ってどんな病気?

手足口病のイメージ
Lazy dummy

「手や足、口に発疹が出るから『手足口病』」って、少しストレートすぎるような病名の付け方ですが、いったいどのような病気なのでしょうか。

ウイルスによる感染症

冒頭に書いたように、手足口病はウイルスによる感染症です。手足口病の場合は原因ウイルスが1つではなく、いくつかのウイルスが同じような症状を引き起こします。

手足口病の原因ウイルスは主にコクサッキーウイルスA16とエンテロウイルス71で、最近はこれらにコクサッキーウイルスA6というウイルスによるものも増えています。

これらのウイルスは「エンテロウイルス属」というタイプのウイルスで、腸の中で増殖するため「腸管ウイルス」とも呼ばれます。なお、これらのウイルスは手足口病以外の感染症を引き起こすこともあります。

子供の夏かぜの主な原因

手足口病は、国内では子供の夏かぜとして代表的な病気です。
患者さんの9割は6歳未満の子供です[*1]。原因ウイルスがいくつもあるため、一度かかっても違うウイルスに感染し、何度も手足口病になることがあります。

どのように感染する︖

手足口病の感染経路は、飛沫感染(せきや会話中に飛ぶ唾液などによる感染)、接触感染(ウイルスが付着している物に触れることなどによる感染)、糞口感染(便の中に排泄されたウイルスが口に入ることによる感染)が知られています。

とくに、この病気にかかりやすい乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは、子供同士の距離が近いため集団感染が起こりやすいです。また、乳幼児ではウイルス未感染であることが多いため、感染した子供の多くが発病します。保育施設や幼稚園で感染した子供から、家庭内で親にうつしてしまうこともあります。

ウイルスの感染力は、症状が現れ始めた最初の週が最も強く、症状が治まった後も唾液の飛沫や鼻水からは1~2週間、便からは数週間~数ヶ月間、ウイルスが排出され続けることがあります[*2]。

感染しやすい年齢と時期

手足口病は毎年、夏を中心に発生し、7月下旬に流行のピークを迎えます。ただし熱帯では季節性があまりなく、日本でも年によっては冬近くまで流行することもあります。流行には波があって、2~3年周期で大きな流行が起こります。

年齢的には、1~5歳[*3]の乳幼児の間で流行しやすく、中でも2歳以下だけで半数を占めます[*4]。ただし、小学生の間で流行することもあります。ウイルスに感染しても発病しない「不顕性感染」のこともあります。

成長過程で大半の人がウイルスに感染(不顕性感染も含めて)するので、成人になってからの発症はあまりありませんが、まれにみられます。

手足口病の症状

手足口病は手と足と口に症状が現れる病気。その症状について解説します。

基本的な症状

感染してから3~5日後に、口の中や手のひら、足の甲や裏などに小さな紅斑(発赤)が現れ、すぐに数ミリ大の水疱(水ぶくれ)になります。手足にできる水ぶくれは痛くはなく、かゆみを伴うことがあります。一方、口の中には水ぶくれとともにアフタ(口内炎)ができて痛みます。痛みのために食欲がなくなってしまうことも。

なお、近年増えてきたコクサッキーA6による手足口病では、手足やおしりに大きめの水疱が現れ、手の平や足の裏の水疱はむしろ少ない傾向があります。

また、発熱は約3分の1にみられるとされますが、あまり高くならないことがほとんどで、高熱が続くことは通常はありません[*5]。コクサッキーA6が原因の場合は高熱が出ることがあります。

症状が出るまでの潜伏期間

ウイルスに感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は3~6日です[*2]。

手足口病に伴う合併症

手足口病はほとんどの場合、数日間で治る病気です。しかし、まれに髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症のほか、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺、ギランバレー症候群などの合併症が起きることがあります。とくにエンテロウイルス71では中枢神経系の合併症が起きる頻度が高いことが報告されています。

また近年、コクサッキーウイルスA6による手足口病では、症状が消えてから1~2ヶ月後に手足の爪が変形したり剥がれ落ちたりするケースが報告されています。ただしこれは時間とともに自然に治るようです。

大人の手足口病の症状

手足口病は乳幼児に多い病気ですが、成人がかかることもあり、成人が集団感染したケースも報告されています。成人が手足口病になると、ひどい口内炎ができて水を飲むのにも苦労したり、皮膚に現れる症状以外の全身症状、例えば髄膜炎が起きやすい傾向があり、注意が必要です。

症状が出たときの治療・対処法

哺乳瓶からミルクを飲む赤ちゃん
Lazy dummy

手足口病の治療法・対処法を解説します。

安静にして、水分を十分とる

感染症の急性期の対処の基本は、体を暖かくして安静にすること。それに加え、水分をこまめにとるようにしてください。

・食べ物について
口の中にできた水疱が痛んで食事を嫌がることがあります。そのような場合、柔らかく薄味の食べ物を食べさせてください。牛乳や桃のジュース、バナナなどの酸味のないものはあまり痛みません。それに対して醤油や塩味、りんごやみかんなどの酸味のあるものは痛みます。

また、何よりも水分不足にならないようにすることが重要です。適宜、経口補水液などを利用して、水分を少量ずつ頻繁に摂取させてください。

・入浴について
熱がなければ毎日入浴させたほうが肌の清潔を保てます。体を洗うときに石鹸がしみるのなら、石鹸は使わなくて構いません。

・治癒の目安
手足口病は基本的に、まれな合併症が起きない限り予後が良い病気です。1週間から10日ほどで軽快します。

医療機関での治療

ウイルスによる多くの病気と同様に、手足口病の原因であるウイルスを直接排除する薬はまだありません。そのため医療機関でも、現れている症状に対する治療「対症的治療」が行われます。例えば、水分や栄養補給のために点滴をすることもあります。

注意すべきは稀に起こる合併症です。高熱が出たり嘔吐した場合、頭痛がある場合、ぐったりしている場合などは、すぐに受診してください。

なお、重症になる患者さんが多い中国ではエンテロウイルスA71に対するワクチンが開発され使われていますが、日本では重症化することが少ないこともあり開発されていません。

自宅では家庭内感染に注意

子供が手足口病になってしまったら、兄弟あるいは親に感染しないように、感染予防対策をしっかり行いましょう。

・こまめな手洗い、うがい
手洗いやうがいは感染症の拡大を防ぐ基本的な事柄です。とくに病気にかかっている子供は排便後にしっかり手を洗うようにさせてください。オムツをしている子供の場合、オムツ交換には手袋をして、その後、手を洗いましょう。

・タオルや食器などを共用しない
タオルは専用のものを使うようにしましょう。またはペーパータオルなどの使い切りタイプを使用しましょう。食事は大皿に盛り付けるのではなく、1人1人小皿に分けてください。

幼稚園・保育園はいつまで休む︖

手足口病の原因ウイルスは、症状が治まった後も長期間、便から排泄が続きます。そのため感染リスクを下げる目的で登園や登校を停止することは現実的でありません。感染拡大を防ぐというよりも、子供の症状や状態次第で登園・登校の時期を判断するのが一般的です。

目安は、発熱や口の中の水疱・潰瘍がなく、普段の食事がとれることです。発熱や喉の痛み、下痢などがある時期は登園・登校を控え、本人の全身状態が安定したら再開しましょう。ただしその場合も、排便後の手洗いはしっかりさせてください。また、登園・登校再開後も、プールは体力が十分回復するまで入らないようにしましょう。

なお、地域・施設によっては、幼稚園・保育園の登園に、医師の許可を求める場合があります[*2]。

他の原因による子供の夏かぜとの違い

ここでは、手足口病と同じように夏かぜの原因となるプール熱とヘルパンギーナとの違いについてお話しします。

プール熱(咽頭結膜熱)との症状の違い

プール熱は、専門的には「咽頭結膜熱」といいます。手足口病と同じように子供に多く、夏季を中心に流行します。感染経路は接触感染と飛沫感染で、プールでの感染もあるため「プール熱」と呼ばれます。

原因ウイルスはアデノウイルスで、手足口病とは異なります。症状は、高熱、喉の痛み、頭痛、食欲不振などです。手足口病との違いは、手足口病ではあまり出ない高熱を伴うこと(コクサッキーA6によるものは別)、皮膚には症状が現れないことです。

プール熱も原因ウイルスを直接的に排除する薬はなく、症状にあわせて治療する点は、手足口病と同じです。

なお、プール熱では症状がなくなった後も2日間は幼稚園や保育園、学校への出席が停止されます。一方、手足口病の場合、「幼稚園・保育園はいつまで休む︖」で紹介したとおり、状態が良ければ登園・登校が可能です[*2]。

ヘルパンギーナとの症状の違い

ヘルパンギーナは、春から夏に多く、乳幼児がかかる感染症です。高熱と喉の痛みや腫れ、口の中にできる水疱が主な症状です。口の中の水疱は手足口病でも見られますが、手足口病では顕著でない高熱がヘルパンギーナの場合は数日間続く事が多い点が異なります(コクサッキーA6によるものは別)。

ヘルパンギーナの原因ウイルスは主にコクサッキーA群ウイルス など数種類あります。そのため一度かかった後にも別のウイルスに感染し再度発症することがあります。感染経路は経口感染、飛沫感染、接触感染です。

ヘルパンギーナの場合も、原因ウイルスを直接的に排除する薬はなく、症状にあわせて治療します。

また、手足口病と同様に、症状がなくなった後もウイルスが数週~数ヶ月間、便から排出されるものの、体の状態に問題がなければ、排便後の手洗いなどを徹底したうえで、登園・登校可とされています[*2]。

まとめ

ママに見守られている赤ちゃん
Lazy dummy

手足口病は予防薬やワクチンがないので、完全に予防するのは難しい感染症です。一方で合併症を起こすことはありますが、ほとんどは軽症で済みます。発症しやすいのは幼稚園や保育園の年代の子供なので、手洗いうがいを徹底させ、親子でしっかりと予防していきましょう。

(文:久保秀実/監修:大越陽一先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]松嵜葉子:手足口病から重症化をきたすエンテロウイルス71, 小児科57(7), p.921, 2016.
[*2]保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版)
[*3]冨田靖:標準皮膚科学 第10版, p478, 医学書院, 2013.
[*4]国立感染症研究所:手足口病とは
[*5]厚生労働省 手足口病に関するQ&A

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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