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2020年12月28日 17:30 更新

【漫画】産後ママを最初に苦しめるのはママ自身? コミック『母親だから当たり前?』作者 龍たまこさん特別インタビュー! 第1回

平凡だけど幸せな主婦だったはずのあかりが、「母親ならフツウ」「女なら当たり前」という考え方に苦しみ、翻弄されるコミック『母親だから当たり前? フツウの母親ってなんですか』が話題です。ご自身も「フツウの母親」像に苦しんだという作者の龍たまこさんに、創作の元になった子育て体験やご家族との関係、創作裏話をお聞きします!

「いいお母さんにならなくちゃ」という自分のなかの強迫観念

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子どもが産まれたあと、主人公のあかりは育児ノイローゼに……。「いいお母さんにならなきゃ…!!」そんな気持ちに、作者の龍たまこさんも覚えがあるそう。
――『母親だから当たり前?フツウの母親ってなんですか』。

このタイトルを見て、はじめ、世間の「フツウの母親像」と主人公が戦う話かと思いました。

でも、主人公のあかりを最初に苦しめるのは、ほかでもない「あかり自身」。ここにまずびっくりして、でも同時に、「あるある……!」とも思わされて。

この物語は創作ですが、自分のなかの「フツウの母親像」に苦しんだ経験が、たまこさんにもおありだそうですね、その話をお聞きできますか?
龍たまこさん:はい、自分自身、「フツウの母親像」とか「良い母親像」には苦しんだ経験があります。

現在進行形で悩んではいるのですが、やはり一番苦しかったのは、第一子を出産したばかりの、新米母だったころです。

育児は幸せなもののはず! なのに、育児ノイローゼに

龍たまこさん:長女を産んだのは今から10年ほど前ですが、そのころは、ここまでママたちの「育児しんどい!」っていう情報が表には出てきてなくて(言える空気ではなかったかも)、どちらかというと「赤ちゃんのいる生活ってハッピー♡」みたいな情報ばかりでした。

当時のわたしは、育児は幸せなものだと思いこんでいたし、完母や布オムツにこだわったりして、「できるだけ良い母親になろう!」と、自分のキャパを超えてかなり頑張ってしまったんですよね(本来はズボラな性格のくせに、笑)。

そしたら、見事に育児ノイローゼになり、産後うつも発症してしまいました。

母親失格? 産後うつで「フツウの母親」らしいことは何もできなくなった

龍たまこさん:自分がうつになってみて初めて知ったのですが、「やらなきゃいけない」ってわかってるのに、体が動かない。冗談みたいだけど本当に、体が鉛のように重くて、足を一歩前に出すだけで一苦労なんです。当然、家事も育児も満足にできなくなりました。

母親の自分がうつ病になったことで、「終わったな」って、当時は思いました。

母親のくせに、料理も洗濯もまともにできない。子どもの相手もじゅうぶんにできない。

「フツウの母親」らしいことが何もできない。頭のなかには常に「母親失格」の四文字がありましたし、子どもにも夫にも義両親にも、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

働かない頭を抱えて、まだヨチヨチ歩きの娘を抱っこして、駅前の精神科クリニックへ通いました。待合室でボーっとしていたときの、どうにもやるせない感覚を今でも覚えています。

あの頃の体験は、今作にもかなり影響してると思います。
――それは、つらい経験をされましたね……。

最近でこそ、「産後うつ」や「産後クライシス」の経験を語る女性が増え、子育てに主体的に関わる男性も増えて、「子育てってしんどい」ということも認知されてきましたが、確かに、以前は、子育て中のママはネガティブなことを語りにくい空気が、今よりあったかもしれません。

子育てなんて、絶対思いどおりにはいかないものなのに……。

「赤ちゃんのいる生活ってハッピー♡」がフツウだと思っていると、つらさ、苦しさをどう受け止めればいいか、わからないですよね……。

姑に感じる息苦しさ。自分はなれない「理想の母親」像がそこに。

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義父母と敷地内同居することになった主人公のあかり。家事をカンペキにこなし、家庭を守る義母の姿に、感謝しながらも息苦しさを感じてしまう……。
――自分自身の次に主人公のあかりを苦しめる存在として出てくるのが、主人公のあかりと敷地内同居している、お姑さん。 家事はカンペキ、常に夫を立て、子どもを優先し、自分のことは後回し。いわゆる、主人公が考える「ちゃんとした母親」のカガミみたいな人です……。また、お舅さんも、「ザ☆昭和の男」という感じで。

たまこさんご自身と義実家との関係は良好だ、と、書籍の「おわりに」に太字で書かれてましたが(笑)、あかりの義理の両親のキャラクターや、「敷地内同居」といった設定は、どのように生まれたのか、教えてください。

本当に、たまこさんご自身と義実家との関係は良好なんですか?(笑)
龍たまこさん:そうですね(笑)、確かに、「今は」義実家との関係は良好です。ですが、過去にはいろいろと悩んだ時期もありましたよ~!

ウチのお義母さんと、作中のお姑さんは、性格はまったくちがうけど、「家事が完璧で夫を立てて自分は後回し」というところは同じです。そして、主人公のあかりとわたしも、「家事が下手でズボラ」という点が同じです(笑)。

お義母さんの、完璧な掃除や洗濯に、引け目を感じたことも……

龍たまこさん:先ほどお答えしたように、わたしは第一子出産後うつ病になり、その後も体調に波があったので、頻繁にお義母さんに手伝いに来てもらっていたんですよね。

お義母さんは嫌な顔一つせず掃除や洗濯をやってくれるんですが、どれもクオリティが高くて……。お義母さんには全然そんなつもりはないのに、不出来な嫁である自分に、勝手に引け目を感じてしまったりしていました。

正直にいうと、八つ当たりしちゃったこともあります………そのときの気持ちが、作品にも反映されています。

今は、「助かります~!お願いします~!」って感じでどんどんお願いしちゃうんですけどね(笑)。
――今のたまこさんとお義母さんとの関係性は良好だけど、以前はモヤモヤした気持ちを抱えていたこともある、と。それが、主人公のあかりの気持ちに反映されているんですね。だからあんなに、あかりのモヤモヤがリアルなんだ……!

物語のはじめ、お姑さんはただよくしてくれてるだけなのに、それでも主人公のあかりは息苦しく感じてしまう。それは、自分にはできない「理想の母親」像を、お姑さんのなかに見てしまうから、だったんですね。

ただ、物語が進むと、作中のお姑さんのなかの問題もクローズアップされていきますね。たまこさんの義理のご両親とはまったくちがうという、作中の義父母キャラクターは、どうやって生まれたんですか?

作品中の義父母は、昭和の父、母像を具現化したキャラにしたかった!

龍たまこさん:お姑さん、お舅さんのキャラクターは、まさに「昭和の父、母像」を具現化したような人たちにしたいと思って、あらゆる要素を切り貼りして作りました。

なので、お舅さんは多少やりすぎかな?というくらい亭主関白だし、お姑さんは絵にかいたような良妻賢母です(笑)。
――典型的な「昭和の夫婦」を目指して生まれたキャラクターだったんですね。「敷地内同居」という設定も、そこからですか?

「敷地内同居」設定は、モデルにした愛知県の地域性を出したくて……

龍たまこさん:物語の舞台のモデルは愛知県なんですが(わたしも愛知県在住です)、大手自動車企業のおかげで経済的に安定している世帯が多いんです。なので、専業主婦家庭が多く、なおかつ地元から出ないので、敷地内同居(あるいは完全同居)をしている人も多い。

経済的には恵まれてるけど、ちょっと閉鎖的で息苦しい。そんな、この地域性を出すためにも、敷地内同居という設定にしてみました。
――愛知県が舞台だったんですか! 偶然ですが、わたしの両親も愛知県の三河のほうの出身で、おっしゃっていること、なんとなくわかる気がします。

昭和的な働き方や家庭が、比較的残っている地域なのかもしれませんね。実際、叔父夫婦が敷地内同居でした、そういえば……!


創作だけど限りなくリアルな母親としての葛藤が描かれたコミック『母親だから当たり前?フツウの母親ってなんですか』。物語はさらに、夫、父親としての葛藤、さらには義父母のなかの葛藤へと、大きく広がっていきます。

次回は、主人公あかりの周囲の人物についても掘り下げていきますよ!

公開は、明日12/29の17:30を予定しています!

書籍『母親だから当たり前?フツウの母親ってなんですか』について

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平凡だけど幸せな人生…の、はずだったのに。

「母親だったらそれくらい当たり前でしょ?」「妻ならこうするものだ」という目に見えない圧を感じ、苦しめられる、専業主婦のあかり。

令和になってもこびりつく昭和の価値観。女の幸せはどこに!?

「ママの求人」サイトで大反響を呼んだ話題作が書籍化されました。主人公のあかりと夫・平太のなれそめや、義両親のその後など、書籍オリジナルのエピソードも収録されています。

龍たまこさんのプロフィール

3人の子どもを育てる主婦マンガ家。ライブドア公式ブログ「規格外でもいいじゃない!!」をほぼ毎日更新中。著書に 強迫性障害の夫との日常を描いたコミックエッセイ『規格外な夫婦』(宝島社)、「フツウ」に苦しみつつ抜け出そうともがく母親と家族を描く創作コミック『母親だから当たり前?フツウの母親ってなんですか』(KADOKAWA)がある。

ブログ 規格外でもいいじゃない!!
Instagram @ryu.tamako2

(漫画:龍たまこ コミック『母親だから当たり前?フツウの母親ってなんですか』KADOKAWAより/取材・文:マイナビ子育て編集部)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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