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2020年12月25日 18:00 更新

【弁護士監修】離婚すると子供はどうなる? 親権、養育費、戸籍などクリアにしておきたい5つのポイント

子供のためには離婚しない方がいい? 離婚したら子供にどんな影響が? 親権、監護権、子供の名字、面会交流(面接交渉)、養育費……クリアにしておきたい5つのポイントを、離婚問題に詳しい、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の代表弁護士、中里妃沙子先生に教えていただきました。

離婚は子供のためにならない、とは、限りません!

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離婚したら子供と会えなくなる? 子供を育てるだけの稼ぎがないと離婚できない? そもそも離婚は必ず子供に悪影響? いいえ、そんなことはありません! 離婚と子供をめぐる問題について解説します。

「子供の心の成長に与える影響や、生活の変化、経済的なことを考えると、離婚に踏みきれない」と悩んでいませんか?「子供ために」しているガマンが、子供を苦しめているかもしれません。

数多くの離婚相談にあたってきた中里弁護士へ取材をもとに、まずは、子供のためにも離婚を考えたほうがいいケースを考えていきます。

子供のためにも離婚を考えた方がいい場合 その1「子供の前で喧嘩をくりかえしている」

激しい口論など夫婦喧嘩は、大人が思っている以上に子供の心を強く揺り動かしています。

激高しているお父さんの姿は「男性は怖い」という男性一般に対する恐怖心の刷りこみになりかねませんし、喧嘩をくりかえす夫婦の姿を目の当たりにして、結婚に夢を持てなくなることもあるでしょう。

また、本当の喧嘩の原因がなんであれ、子供は「お父さんとお母さんは自分のせいで喧嘩している」と思いこむものです。自分を責め続けていると、自己肯定感の低い子供や、精神的に不安定な子供になってしまいかねません。

両親の喧嘩を見続けることで受けるストレスは、子供の成長に悪影響を及ぼす可能性は大きいです。これを避けるためにも、離婚を考えた方がよいでしょう。

子供ためにも離婚を考えた方がいい場合 その2「夫のDVやモラハラによるストレスで、ママが体調を崩している」

暴力が子供に及ぶ、及ばないにかかわらず、激しい夫婦喧嘩、暴力をともなう夫婦喧嘩を見せることは、子供に対する虐待とみなされます。110番通報されて、その場に子供がいた場合、警察から児童相談所に連絡が入り、子供を親から引き離す処置がとられることも。

仮に、DVやモラハラが子供から見えないところで進行していたとしても、心のバランスや体調を崩すまでに追い詰められたママの姿を見続けるのは、子供にとって大きなストレス。一日も早く、そのような状況から抜け出しましょう。

子供ためにも離婚を考えた方がいい場合 その3「夫婦関係が冷えきっている」

口論や喧嘩はなくても、パパとママがまったく口をきかず、笑顔も、一緒に過ごす時間も全然ない……、そんな冷えきった家庭では、子供は大人の顔色をうかがい、気を使って、感情を抑えるようになってしまいがち。

子供の健全な成長のため、離婚も考えるべきです。

離婚が子供に与えるマイナスの影響と、その対策

両親が離婚することによるマイナスの影響も、もちろんあります。しかし、マイナスを少しでも小さくするために、できることもあります。

ストレスが子供の心にどんな影響を及ぼすのか、正しく知って、できることをしっかりやりましょう。

親の離婚のせいで勉強に集中できない!

小学校高学年、中学生、高校生など、受験勉強が本格化する年頃の子供の場合、両親の離婚に対する不信や不満、離婚による生活環境の変化などの影響で、勉強に集中できなくなることがあります。

成績が下がり、受験結果を左右するようなストレスを与えることが心配な人は
・無駄に先延ばしにしないで、小学校入学前など、子供が幼いうちに離婚する
・子供の受験期を避けて離婚する
・子供が成人してから離婚する(2022年4月から、18歳で成人とみなされるようになります)

など、離婚のタイミングを慎重に見はからいましょう。

「自分はどうせ愛されていない」と親からの愛情を疑うようになる

子供にとって両親は大きな存在。反発しながらも親からの愛情を強く求めているのが子供です。ただでさえ不安定で危なっかしい小学校高学年から中学生の時期に親が離婚すると、「親は自分のことなんてどうでもいいと思っている」と感じ、攻撃的になったり、逆に無気力になったりすることがあります。

そんな思春期の子供に対する影響を最小限におさえて乗りきるために、次のようなことに気をつけましょう。

・「離婚してもパパもママも、変わらずあなたを愛している」と繰り返し伝える。
・「子供はパパからの愛情も、ママからの愛情も、両方求めている」ということを忘れずに、離婚後の面会交流(面接交渉)は状況が許す限り嫌がらずにきちんと行う。
(面会交流は、いつもは一緒に過ごせないもう一方の親の愛情を子供が確かめるための大切な時間)
・子供が大きい場合、大人だけで離婚後のことを決めないで、子供の希望も取り入れる。

さみしい思いをさせてしまう

これまでは仕事をしていなかったママが、離婚後は働きに出ることになることも多いでしょう。この場合、いままで家にいたママが急に働き始めると、子供は、パパだけでなくママまで同時に失ってしまったように感じることがあります。

なかなかむずかしいことですが、子供が一人ぼっちになる時間をできるだけ少なくして、不安感を取り除いてあげるようにしましょう。

離婚前より家計が厳しくなり、子供にガマンさせることが増える

これもむずかしい問題ですが、離婚前に別居期間があれば別居中の婚姻費用、離婚後には養育費、財産分与を、夫からしっかりとること。そのための手続きを、しっかり進めることが重要です。

また、市区町村がシングルマザー向けに設けている公的補助など、経済的な助けになるものを積極的に利用しましょう。

離婚と子供の問題、法律事務所にくる相談の事例

実際に中里弁護士の事務所に相談に訪れた人のケースから、子供と離婚について、学ぶべきポイントを見てみましょう。

離婚により子供に与えるダメージが少なくて済んだケース 

飲酒量が多く、何を言っても無反応、挙句の果てに自室に引きこもってしまう夫に愛想をつかした茉奈さん(仮名、32歳)。離婚を決意し「別れて欲しい」と伝えたところ、夫もすんなりこれに応じ、争う姿勢を見せませんでした。協議離婚も可能でしたが、離婚条件をはっきりさせておくために、茉奈さんは調停を希望。法律事務所に相談に訪れました。

離婚成立の経緯と子供への影響

調停条項としては以下の2点。面会交流についての取り決めは、とくにしませんでした。

・長男(小学4年生)、次男(小学2年生)に対する親権者は茉奈さん。
・養育費は、長男、次男がそれぞれ成人するまで、元夫が茉奈さんに2万5千円ずつ支払う。

子供へのダメージが少なくて済む条件が多くそろった離婚。そもそも争点が少ないケースではありますが、子供のすこやかな成長を願ってさまざまな決断をした茉奈さんの、ぶれない姿勢が導いた結果とも言えます。

子供へのダメージを押さえるポイントになったのは?

・子供たちが暴力や喧嘩を目にすることがなかった。
・離婚の理由を子供たちにきちんと説明した。
(「パパのことが好きだったから結婚したけど、好きじゃなくなっちゃったの。」だからパパとママは別れることになりました」と話したところ、子供ながらに夫婦関係の破綻を感じていた二人は驚くことなく受け止め、とくに何も言わなかったそう)
・茉奈さんは離婚前からフルタイムで働いていたので、離婚後、子供たちが父親の喪失と同時に母親の喪失を感じることがなかった。
・茉奈さん自身が主体的に動いての離婚であり、離婚後の生活にも茉奈さんは比較的早く適応できた。
・茉奈さんは子供たちにはいつでも好きなときに父親と会ってほしいと思っていたので、別居後すぐに月1~2回の頻度で面会交流を開始した。
・茉奈さんが面会交流に積極的だったので、子供たちが茉奈さんの顔色をうかがうようなことがなかった。
・茉奈さんは面会交流の日時を決めるときなどに、子供たちの意思を尊重した。
・離婚後の茉奈さんの生活に、祖父母(茉奈さん両親)によるサポートがあった。

祖父母のサポートが受けられるなどラッキーな環境に加え、たとえば、離婚前から仕事を続けておく、離婚後の面会交流に積極的になる、といった茉奈さんの行動が、子供のためにプラスになったケースです。

夫の突然の家出からの離婚! 子供たちが大きなダメージを受けたケース

今日子さん(仮名、35歳)の夫は、激しい嫁姑戦争の板ばさみに耐えられなくなり、ある日突然、家族を捨てて家を出て行ってしまいました。5歳の長男、2歳の長女を抱えて今日子さんはおろおろするばかりで、精神的にも激しく不安定に。実家に戻り、数年間別居。夫から離婚調停の申し立てがあったため、法律事務所に相談に訪れました。

離婚調停は不成立に終わり、裁判で争うことに。今日子さんが親権者になる以外は、夫側の条件をのむ形で離婚成立。面会交流に関する取り決めは何もされませんでした。

身勝手な夫が引き起こした突然の別居、子供の心に大きな負荷をかける状態での離婚で、心に深い傷を負った長男、長女には早くから問題行動が見られました。

子供のダメージの原因になったポイント

・夫婦は子供たちの目の前で日常的に激しい言い争いをしていたうえ、父親は突然いなくなり、別居が始まった。
・夫の突然の家出のショックで、今日子さん自身が別居後の生活になかなか適応できなかった。
・長男は別居後何度か父親に会いに行ったが、そのたびに拒絶された。
・夫から「子供に会いたい」との意思表示はなく、離婚にあたり、子供の健全な成長のために不可欠な面会交流がまったく考慮されなかった。
・夫が家を出てからというもの、今日子さんの精神不安定が続き、親としての機能不全の期間が長かった。
・実家に戻ったものの、今日子さんは親との関係が良好ではなく、良好なサポートは得られなかった。
・離婚後、フルタイムで働き始めた今日子さんは残業も多く、子供たちは父親の喪失に続いて母親の喪失も味わうことになった。
・家庭の事情を学校に隠していたため、子供たちの問題行動について、学校から適切なサポートを得られることがなかった。

夫の無責任は今日子さんのせいではありませんが、非常に胸の痛む結果となったケース。今日子さん自身に離婚の心構えがなかったことが、今日子さんにとっても、子供たちにとっても、大きな不幸だったといえそうです。

つらすぎる産後うつ 子供を置いて家を出た母親に親権は認められる?

長引く産後うつに苦しむ梨花さん(仮名、25歳)。一人ではじゅうぶんに育児ができない状態で、3歳の息子の世話は、かなりの部分を夫にしてもらっていました。育児に協力的な一方、梨花さんに対する夫の態度は厳しく、「お前はただなまけてるだけ」と決めつけ、口もきいてくれません。

育児がしたくてもできないつらさと、夫の理解ない態度に追い詰められた梨花さんは、ある日ついに、子供を置いて家を出てしまいました。

実家に戻ってうつの治療に取り組み、状態は徐々に回復。本来の自分を取り戻した梨花さんは、梨花さんのつらさをわかってくれようとしなかった夫との離婚を決意。家に置いてきた息子の親権が欲しいと、法律事務所に相談に訪れました。

離婚相談の経緯について

弁護士のアドバイスを受けた梨花さんは

・このまま今すぐ離婚したのでは、親権をとることは難しい
・子を育てた実績をつくれば、将来的には親権を得る形で離婚できる可能性がある

この2点を理解し、いったんは離婚希望を保留にし、子供と暮らすため、家に戻ることにしました。

夫の暴力が原因で子供を連れて実家へ 離婚で夫から取れるお金は?

自分だけでなく幼い2人の子供にも暴力をふるう夫に耐えられず、子供を連れて実家に戻った保奈美さん(仮名、40歳)。別居開始後5年が経ち、離婚を希望しましたが、夫は離婚を拒否。調停・離婚裁判を依頼するため、保奈美さんは法律事務所を訪れました。

離婚の経緯と、子供の養育費、解決金

保奈美さんのケースでは、結局、調停・裁判には至らず、11ヶ月で協議離婚が成立しました。離婚協議書の内容は以下のとおりです。

・2人の子供の親権者は保奈美さんとする。
・夫は保奈美さんに養育費として、子供が20歳になるまで各2万円支払う。
・上記養育費のほか、夫は保奈美さんに2人の子供の小学校入学、高校入学、専門学校ないし大学入学に際し、それぞれ10万円、30万円、50万円を支払う。
・夫は保奈美さんに解決金として100万円を支払う。

また、このように具体的に条件を公正証書にしておけば、夫が養育費等を払ってくれなくなったときでも、確実に強制執行ができるので、泣き寝入りしないですみます。

子供に関する離婚のポイント1:親権 どうしても譲れない!

子供のいるママが離婚を考えるとき、「親権」がとれるかとれないかは大きな問題です。

今は育児参加する男性も増えており、母親だからといって必ずしも親権がとれるとは限りません。まずは、正しく知りましょう。

よくある「親権」勘違い 〇?×?

専業主婦だから親権をとれない?→×

収入の有無など経済力は、親権の決定とは関係なし。親権者本人に収入がない場合は、収入があるほうの親からの養育費で経済力を補うことになります。経済力がないからと、親権をあきらめなくて大丈夫。

離婚理由が私の不倫 だから親権は認められない?→×

妻が不倫をした場合、夫が「妻は親権者不適格である」と主張することはよくあります。しかし、子供に悪影響を及ぼすような事情があれば別ですが、不倫の事実だけで親権者不適格とされることはありません。不倫は夫婦の問題、親権は親子の問題、そもそも別の問題なのです。

顔も見たくない元夫 親権は私にあるんだから面会はお断り!→×

離婚後、親権者または監護者にならなかった方が子供と一緒の時間を過ごすのが、「面会交流(面接交渉)」。親が別居中の子供に会うのは、当然の権利であると考えられており、会うことで子供に悪影響があるような場合をのぞき、これをさまたげることはできません。

親権をとられてしまったら、子供に対する権利が何もなくなってしまう?→×

親権がない親も、子供との面会交流(面接交渉)は可能です。親として子供にかかわるのは、当然の権利と考えられています。

親権とは?

親権は子供に対する権利というよりは、親として果たす義務と言えるもので、親権をもった親が担う仕事は2つあります。

・子供の身のまわりの世話、しつけ、教育をする
・預貯金など子供名義の財産を管理する

民法には、親権について次のように定められています。

民法818条
成年に達しない子は、父母の親権に服する

民法819条
母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める

親権が及ぶのは、基本的に子供が未成年の間。成年年齢は2022年(令和4年)4月1日から18歳に引き下げられます。

親権者決定のプロセス

未成年の子供がいる場合、離婚後の親権者をどちらにするか決めなければ、離婚はできません。「とにかく離婚だけして、親権者は後から決める」ということはできないのです。子供が複数人いるときは、それぞれの子について親権を決める必要があります。

夫婦の話し合いで親権者が決定できない場合は、協議離婚の届出ができないので、調停や裁判等で親権者を決定することになります。

親権者を判断する基準は、大きくわけて2つあります。

1 母親優先
乳幼児をはじめとした低年齢の子供に対しては母の監護を優先する。

2 現状優先
現状の監護状態が優先する。

親権について、要注意ポイント~「とりあえず」は絶対ダメ

親権者の変更には家庭裁判所の許可が必要です。

離婚の届出を急ぐあまり、「とりあえず」記入して提出するなどということは絶対にあってはなりません。

子供に関する離婚のポイント2:監護権 監護者とは? 親権とのちがいは?

離婚後の監護については、民法で、次のように定められています。

民法766条
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない

2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める

監護者とは?

監護者とは、子供を引き取り、生活をともにし、身の世話をする人のことです。

親権者を父親、監護者を母親と決めることもできます。この場合、子供は父親の戸籍に残りますが、実際に引き取って一緒に暮らし、子供の面倒を見るのは母親になります。

親権をめぐる争いが激しく、なかなか決着できない場合は、少し冷静になって、このように、親権者と監護者に分け、それぞれが部分的に子供に対する責任を負うというやり方も検討してみましょう。

子供と生活することを最も望み、あなたと生活した方が子供もしあわせになれると思うなら、親権を放棄して監護者になり、子供との生活を優先した方がいい場合もあるのです。

監護者のポイント

・裁判所が、親権者と監護者をわけることは少ない
・監護者になる場合は、取り決めを文書にして残す
 離婚届に監護者の記入欄はないため、別途書面を作成しないとトラブルになることがある。
・両親以外の第三者も監護者になれる
・監護者として子供を養育する場合、親権者から養育費を支払ってもらう権利が発生する

子供に関する離婚のポイント3:戸籍 子供は誰の籍に入る? 名字は?

親が離婚しても、何らかの手続きをしないかぎり、子供の戸籍に変動はなく、子供の名字も変わりません。

離婚で旧姓に戻った母親が親権者となり、子供を自分の戸籍に入れたい場合には、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てて、子供の姓を自分の姓と同じにする必要があります。(裁判所の許可を得てから、市区町村への届出も必要です。)

名字の変更は、子供がからかわれたり、いじめのきっかけになることもあるため、注意が必要です。

・子供がある程度大きくなっていれば、子供自身がどうしたいと思っているか聞く
・変更する場合には卒業・入学など、環境が大きく変わるタイミングに合わせる

など、子供の気持ちにじゅうぶんに配慮しましょう。

子供に関する離婚のポイント4:面会交流(面接交渉) 「離婚後は子供に会わせたくない」は可能? 

子供にとって、親権を手放した親との面会交流(面接交渉)は、大切な時間。

親の愛情に不安を感じさせないためにも、子供がのびのび育つためにも、面会交流を充実させることは、基本的には親のつとめです。

面会交流(面接交渉)とは

離婚後、親権者または監護者にならなかった方が、子供に面会したり一緒に時間を過ごしたり、文通をすることを、面会交流(面接交渉)と言います。

民法など条文には、親や子の「権利」として規定されているわけではなく、上で紹介した離婚時の子の監護に関する民法766条で、協議離婚の際に定めるべきとされているのみです。ただ、判例や家庭裁判所の実務上では、別居中の親が子供に会うのは、当然の権利と考えられています。

面会交流(面接交渉)の制限

親権者または監護者にならなかった方の親に、子供を会わせないようにすることは原則としてできません。明文規定はないにしても、面会交流権(面接交渉権)は親としての当然の権利であり、子供本人の利益を損なわない限り、これを拒否することはできないと考えられています。

このように、裁判所の考えは原則として面会交流を認めるものですが、以下のような場合には例外的に面会交流を制限・停止することがあります。

・親権者または監護者に断りなく勝手に子供と会う
・子供を連れ去ろうとする
・面会することで子供が動揺し精神的に不安になる
・面会で復縁を迫ったり、金銭を無心する
・子供への暴力から逃れるために離婚したケース
・再婚した親権者あるは監護者が子供とともに円満な生活を営んでおり、別れた親と会うことが子供に動揺を与えマイナスとなる場合

面会交流(面接交渉)にもコツがある!

離婚後の面会交流(面接交渉)がうまくいかない、という例は多いもの。失敗しないためには、次のようなポイントに注意してみてください。

・離婚後、最初のうちは、長時間の面会や宿泊を伴う面会は避け、短時間の面会を繰り返したのち、頻度を上げ、時間を長くしていく
・事前に子供の様子を相手に伝える
・定められた時間は守る
・親の心の葛藤は子供に見せない。笑顔で子供を面会交流に送り出す
・子供の前では相手の悪口を言わない
・子供の意見意向に耳をかたむける
・面会交流の援助活動を行っている家庭問題情報センターを活用する
・軌道に乗るまでは、弁護士立ち合いのもと面会交流を行う

面会交流(面接交渉) 方法もちゃんと決めたのに、相手がさせてくれない…どうしたらいい?

正当な理由もなく面会交流(面接交渉)を拒まれた場合、かつてはそれを是正する手立てがありませんでしたが、最近では一定の条件を満たしている場合、裁判所が相手に制裁金の支払いを命じることで、面会交流の実施をうながす「間接強制」がおこなわれています。

離婚時には、公正証書、あるいは調停調書といった正式な書面に、

・面会交流の日時と頻度
・各回の面会交流時間の長さ
・子の引き渡し方法

などを、あいまいにならないよう、具体的に特定して記載しておきましょう。書面に決めたことが守られない場合、裁判所の力を借りることができます。

子供に関する離婚のポイント5:養育費 子供のためにも、しっかり確認!

「少ない」「払ってもらえない」など、養育費で損していませんか? 正しく知って、適正な金額を受け取りましょう。

養育費の算定方法

養育費とは、子供が自立するまでに必要な費用です。高校卒業の18歳まで、20歳まで、大学卒業の22歳までなど、期間はケースバイケース。

金額の目安は、両親それぞれの収入、子供の年齢、人数を当てはめると養育費の概算が算定できる早見表を、裁判所が示しています[*1]。

養育費 増やして欲しい 減らして欲しい

子供が成人するまでの長い時間、家庭環境や職場環境が変化にすることもあるでしょう。収入減、失業、再婚、出産など環境に変化があったときは、養育費の額が適正か確認するようにしましょう。必要に応じ、裁判所が養育費の増減を認めることがあります。

養育費の支払いが滞ったら

日本の離婚後の養育費の未払い率の高さが問題になっていますが、これは、離婚時にきちんと取り決めておかないことが、原因のひとつです。

養育費は、法律の手続きに従ってきちんと定め、公正証書、調停調書、和解調書など書面にしておけば、支払いが止まった場合、すみやかに強制執行手続きをとることができます。強制執行とは、相手側の財産(この場合、夫の給料)を差し押さえ、支払いを実行させる法律上の手続き。相手に収入がない場合をのぞき、大半の場合は、無理にでも支払わせることができるのです。

とくに給与を差し押さえる強制執行手続きでは、裁判所から勤務先に通知され、給料から直接、養育費を差し押さえるので、夫を介さずに養育費を手に入れることができます。手取り額の1/2までとることができ、しかも、こちらから取り下げない限り、継続して、勤務先からの直接支払いを受けることができます。

離婚するときは、後から養育費の未払いに泣かないためにも、次の2点を押さえておきましょう。

・養育費の取り決めは法律の手続きに従ってきちんと定めておく(弁護士に相談)
・離婚したあとも、元夫が勤めている先はきっちり把握しておく

離婚と子供の問題で悩んでいる人へ 弁護士からのアドバイス

この記事の執筆にあたり取材・監修に協力いただき、これまで多くの女性からの離婚相談にあたってきた中里弁護士から、子供を連れての離婚を考えている女性に向けて、アドバイスをいただきました。

まとめ:あなたとお子さんの人生を明るくするためにも負けないで!

離婚の多くは悲しくつらい経験です。乗り越える決意をして行動するのは、本当に大変ですよね。

離婚する場合、子供のために大事なことは、子供に愛していると伝え続けること。可能なら、子供には元夫へのマイナスの感情をなるべく隠すこと。

そして、離婚には面倒でもきちんと進めたほうが、後々になって有利になる手続きがたくさんあります。一人でなにもかも片付けようとせず、専門家の力を借りることも考えましょう。法律事務所にいきなり相談するのは気が引けるようであれば、自治体の多くが設けている無料の法律相談や、シングルマザーの相談窓口を頼ることもできますよ。

どうかこの記事を、あなたとお子さんの新しい人生が明るく幸せなものになるよう、役に立ててくださいね。

(文:小川睦美/監修:中里妃沙子弁護士/漫画:まちこ)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]最高裁判所「養育費・婚姻費用算定表」https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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