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2021年02月15日 14:18 更新

【医師監修】産後いぼ痔の押し込み方の方法と手順とは?

妊娠中や産後、排便後におしりの穴に違和感があったり、肛門が出っ張っているように感じたことはありませんか? 妊娠・出産を経ていぼ痔になるママは多くいます。ここでは、産後のいぼ痔の対処方法や治療、予防についてお話しします。

妊娠・出産といぼ痔の関係って?

妊娠出産といぼ痔の関係
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産後はじめて「いぼ痔」になることは珍しくありません。妊娠・出産といぼ痔には、どのような関係があるのでしょうか。

いぼ痔って?

肛門は、網目状の血管があって肛門をしっかり閉じる役割をする「肛門クッション」、肛門を閉じるための筋肉である「括約筋」などの組織でできています。

いぼ痔とは、「肛門クッションや皮膚と、それを支える組織がだんだんとゆるんで、粘膜や静脈が大きくなってできるもの」です。医学的には「痔核」と呼ばれています。

いぼ痔になると、排便の時だけ出血したり、いぼ痔部分が肛門からぷっくりと飛び出したり、いぼ痔そのものに腫れなどが起こります。急に腫れたり炎症が起こると痛むことはありますが、それ以外ではたいてい痛みはありません。

なお、いぼ痔が大きくなったりいぼ痔が肛門の端近くにできると、運動中や歩いている時、重いものを持った時にも、肛門の外にいぼ痔が飛び出すことがあります。

産後にできやすい、いぼ痔のイメージ
いぼ痔(痔核)のイメージ
歯状線(粘膜と皮膚の境目)より上にできる「内痔核」と、下にできる「外痔核」がありますが、普通、痔核というと内痔核のことをさします。

妊娠・出産すると「いぼ痔」になりやすいの?

妊娠すると子宮が大きくなります。すると、大きくなった子宮が直腸のまわりの静脈を圧迫し、血流が悪くなることがあります。その結果、痔ができやすくなるのです。

また、妊娠中から産後は便秘になりやすいものです。便秘になって排便の時に強くいきむこともいぼ痔発症のきっかけとなり、またいきむことでいぼ痔が悪化しやすくなります。

なお、分娩の時に強くいきむこと自体も、いぼ痔を悪化させる要因です。ですから、便秘にならなくても、産後、いぼ痔になる可能性はあります。

妊娠中から産後はいぼ痔になりやすいものと考えて、肛門付近に違和感を感じたら早めに肛門科などで診察を受けておくのがおすすめです。

自分で押し込んでいいの? いぼ痔の対処法

自分でできるいぼ痔の対処法
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いぼ痔ができて間もないうちは、自分で正しく対処するだけで改善することもあります。どんなことに気を付ければよいのか知っておきましょう。

自然に治ることもある?

妊娠中にできた痔は、たいていの場合、出産後数週間経つと自然に改善していきます。
排便の時に少し飛び出す程度であれば、次にあげる方法で対処してみてくださいね。

自分でできる対処方法

肛門は刺激せず清潔に

肛門付近を何度も手でいじったりせず、刺激しないようにしながら清潔に保ちましょう。
トイレの温水洗浄便座や、入浴の際に温水シャワーでやさしく洗い流します。ただし、かえって悪化する原因になることもあるので、強い水流を当てたり、長時間洗い流してはいけません。

いぼ痔って押し込んでいいの?

排便した際に肛門から痔核が飛び出したら、便器に座ったままで飛び出した部分をゆっくりと指で肛門の中に押し戻しましょう。指で押しながら立ち上がると、スムーズに肛門の中に戻しやすくなります。
このとき、くれぐれもいぼ痔を爪で傷つけたり、強い力をくわえ過ぎないように気をつけてくださいね。

戻りにくい場合は、トイレの温水洗浄便座やお風呂の温水シャワーを肛門付近にかけて温めると、戻しやすくなります。
それでも肛門の中に戻りにくい場合は、無理やり押し戻さずに、医療機関を受診しましょう。

病院での治療方法

産後のいぼ痔の受診目安と治療方法
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受診の目安

強い痛みや出血が急に見られたり、いぼ痔が続くようなら、肛門科や妊娠中なら産婦人科などの医療機関を受診しましょう。特にいぼ痔が飛び出たままで肛門の中に戻せない場合は、早めに診てもらいましょう。

なお、いぼ痔ではなく、粘膜脱や直腸・肛門ポリープ、直腸脱などの別の病気を起こしている可能性もあるので、たかが痔と軽く見ないことが大切です。

いぼ痔の検査方法って?

病院では、詳しい病歴などを問診し、肛門を診察することになります。
肛門の診察では、医師が実際に肛門を見て(視診)、手や指で触れて(触診・指診)確認します。また、肛門鏡という器具を使って、肛門の中を確認する「肛門鏡検査」を行うこともあります。

血便や下血がある場合は、大腸カメラを肛門から入れて大腸の中を見る「大腸内視鏡検査」を行うこともあります。

いぼ痔の治療法って?

(1)座薬や軟膏を使う
いぼ痔であると診断されたら、たいていの場合、まずは座薬や軟膏を使うことになります。
こうした薬は、患部の腫れや脱出、痛み、出血などの症状を和らげてくれるものです。薬が処方されたら、医師の指示に従って使用しましょう。

(2)便秘があれば改善させる
便秘はいぼ痔の原因の1つです。そのため、便秘になっている場合は、いぼ痔そのものの治療とともに便秘の治療も行います。

(3)手術を行うことも
いぼ痔が悪化してしまい、脱出したら毎回指で押し戻さなければならなかったり、痔核が出っぱなしの場合などでは、手術となることもあります。

手術には、痔核そのものをレーザーなどで切除する「切除術」、薬液を痔核に注入して固める方法、いぼ痔に特殊なゴム輪をはめ込んで締め付けることで取る「結紮術」などがあります。

産後のいぼ痔の予防法

産後のいぼ痔を予防する方法
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まだいぼ痔にはなっていないけれど便秘がちだったり、過去にいぼ痔になったことがあり再発が心配というママのために、いぼ痔の予防法もお伝えします。

産後、いぼ痔にならないためには

いぼ痔を予防するためには、いぼ痔を引き起こしやすい生活習慣を改善することが大切です。
また、便秘を防ぐとともに、便秘になっている場合は改善していきましょう。
具体的には次のやり方を続けていきましょう。

日常生活を見直す

長時間座り続けたり、寒い環境にい続けるといった行為は避け、疲れやストレスをなるべく溜めないようにしましょう。

血行を改善する

温かいお風呂に入って血行を改善すると、いぼ痔予防につながります。

排便方法を見直す

排便の時にいきんだり、長時間便器に座り続けるといぼ痔になりやすくなります。
いきんだり時間をかけないとなかなか出ないのであれば、生活習慣の見直しや薬の服用など、産後の便秘対策を始めましょう。

なお、理想的な排便は「便意を感じてトイレに行き、軽くいきむだけですっきりと出て、残便感がない」状態です。

食物繊維や水を十分摂取する

便秘対策には食物繊維と水分を十分摂取することが大切です。成人女性(70歳未満)なら食物繊維は1日18g以上[*1]、水分もしっかり摂取するようにしましょう。

なお、産後に便秘が気になるようになった人は、下記の記事も参照してください。

まとめ

いぼ痔とは、排便をした時に肛門から中の組織がはみ出したり、出血や痛み、腫れなどが起こる痔の一種です。妊娠中は大きくなった子宮や便秘などが原因でいぼ痔になりやすく、分娩の際に強くいきんでいぼ痔になることもあります。

いぼ痔になってしまったら、肛門を清潔にし、中から飛び出した痔核は清潔な指でそっと押し込んで戻しましょう。なかなか改善しなかったり、いぼ痔が飛び出したまま戻らなくなったり、痛みや出血が急に起こった場合は、肛門科などの医療機関で症状に合った治療を受けましょう。

妊娠中に治らなくても、ほとんどのいぼ痔は産後数週間で改善していくので、落ち着いて対処していってくださいね。

(文:大崎典子/監修:窪 麻由美先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2015年版)

・日本臨床外科学会:一般のみなさま 痔・肛門疾患
・日本大腸肛門病学会:「肛門疾患(痔核・痔ろう・裂肛)診療ガイドライン」

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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