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2020年12月01日 11:30 更新

“ちゃんと”にとらわれない。目標は「楽しくやりがいのある管理職」 商社勤務 高畑恵さん #働くママの人生

赤ちゃんとの生活がスタートして一息ついたと思ったら、保活・職場復帰、仕事との両立などなど、働くママは心も体も忙しい毎日。他のママたちはどんな風に一日を過ごしているのか、どんな考え方で育児をしているのか、夫婦間での分担は?など、働くママが知りたい、リアルな日常をインタビュー。

妊娠、出産を経て、同じ職場で仕事を続けているママは、どのような日常を過ごしているのでしょうか?今回は、都内の商社に勤務しながら、女の子2人を育てる高畑恵さんにお話を伺いました。

プロフィール

・お名前:高畑恵(37歳)
・業種:商社

神奈川県出身。5歳と0歳の姉妹を育てるママ。中学では水泳部、高校ではハンドボール部に所属し、メンタルを鍛えた。大学ではバックパックでヨーロッパや中国、東南アジアなどを旅し、見聞を広める。海外とつながりのある仕事を志す中、「女性が生き生きと働く会社」といった雰囲気にも魅かれ、2006年、現在勤める商社に一般職として入社。営業部門で貿易事務を担当。15年に長女を出産。職場復帰後の17年、人事部へ異動し、試験を経て総合職への転換を果たした。現在は人事担当として主に人材育成を担う。
19年10月に次女を出産。今年7月に職場復帰し、コロナ禍の影響で在宅勤務。人事異動の調整や研修、人材育成策の検討、勤務環境に関する社員からの相談対応などを担う。

1日の流れ

7:00 起床 先に起きた夫が次女の身支度
7:15 家族で朝食
7:30 身支度
7:45 保育園の連絡帳を記入、出発前の授乳、長女の身支度チェック
8:00 保育園へ出発する夫と子供たちを見送り、洗い物や洗濯物干しを済ませる
8:30 始業
12:00 自宅で簡単にランチ
16:00 終業 夕飯の下ごしらえ
17:00 保育園のお迎え
18:00 夕飯
19:30 次女就寝
22:30 就寝
子供が目を覚ますときなど、夜2、3回起きる

マタニティ整体も活用して乗り切った妊娠期の通勤

——仕事を続けながらの妊娠期の生活は、どうでしたか?

「長女のときも次女のときも、通勤が大変でした。千葉県内にある実家から勤務先に行くには約30分間、電車に乗らなければなりません。通勤時間はいつも満員で、その中で揺られるのは辛かったです。会社に相談し、出勤・退社の時間を1時間ほど早めて特に混む時間を避けられて、かなり楽になりました。

次女の妊娠中に迎えた4~5月は、人事部にとって新入社員の研修や配属先決定などに追われる繁忙期です。このころはなかなか休めず、大変でした。立ち仕事を避けて座ったままできる仕事を割り当ててもらえたことは助かりましたし、一方で、私自身が『これは責任をもってやりたい』という仕事は体調を見ながら任せてもらえました。こうした職場の配慮はありがたかったです。

妊娠後期になってくると、仕事で座っているだけでも腰や背中が張り、体が重く、痛くなりました。仕事にも集中できないほどです。そこで見つけたのがマタニティ整体でした。一般的な整体のお店では、妊婦の来客は断られることも多いのですが、整体師によっては体に負担がない程度の施術をしてくれます。お金はかかりますが、必要経費と割り切って妊娠8か月ころから週1回、痛みがひどいときは週2回行って、体をほぐしてもらいました。こうしたケアも活用しながら、次女の妊娠のときは34週目まで仕事に行きました」

——出産後の生活では、妊娠中のイメージとギャップを感じる部分はありましたか?

「長女の出産後は、初めての育児で余裕がなく、辛いことが多かったですね。思っていたより自分の時間がなくて。出産前は、『育休ってとても楽しいんだろうな』と思っていました。仕事はお休みで、習い事とか自分の好きなこともできるんじゃないかと。でも実際は、赤ちゃんはなかなか寝ないし泣きます。個人的には、妊娠中で時間のあるうちに、美術館を見に行くなどすればよかったな、と思いますね。

次女のときには妊娠出産も二度目ですから、産後に辛いと感じることは少なくなりました。じゃあ妊娠中に好きなことをしたかというと、実際には体が重くてなかなかできませんでしたけど。それでも、しんどいときにはちゃんと休もう、と割り切って過ごせていたと思います」

自然にできた夫婦の役割

——夫婦で、家事や育児の役割分担はどうしていますか?

「我が家では、どこかの段階ではっきり分担したというより、流れの中で自然に役割が分かれていきました。トイレやお風呂の掃除と、子供たちを保育園に送るのは夫。保育園に迎えに行き、ご飯の用意をするのは私です。

家事の分担は、結婚当初からなんとなくできてきました。私は風呂やトイレといった水回りの掃除に苦手意識があったので、次第に夫がしてくれるようになりました。洗濯は、溜まっているのが気になった人がやる、という感じで。今は夫も在宅勤務なので、家事はやれるほうがやれるタイミングでする、というのがベースです。ただし、夫は料理ができないので、そこは私の担当になっています。

夫は子煩悩なタイプで、育児に積極的に取り組む方です。長女が生まれてから、お風呂やおむつ替え、お散歩のコツをつかみ、次女の誕生後も自然といろいろなお世話をしてくれました。子供たちをお風呂に入れるのは、平日は私、土日は夫です。また、週末は夫が子供たちを遊びに連れて行ってくれることもあるんです。そんなとき私は、一人でカフェに行くなど好きなことをして過ごしています」

——夫婦で上手にやっていくために、意識していることはありますか。

「相手のやり方が気に入らなくても、文句を言わないことです。といっても、長女の育休復帰から2年くらいは、よく不満をぶつけていました。洗濯物のたたみ方が違っていたり、掃除した後に汚れが残っていたりすると、気になって。そう言われれば、夫は『そんなふうに言うんだったら、やらない』と不機嫌になってしまいます。私自身、後になって『あんな風に言われたら嫌だろうな』『いやな思いをさせちゃったな』と反省していました。

でも、子供が成長してきて手がかからなくなってきて、心に余裕が生まれたころでしょうか。『洗濯物のたたみ方なんて家庭によって違うし、違ったところで影響もない』と、いろいろなことが気にならなくなってきたのです。ふと浮かんできた考えが、自分でも心から腑に落ちました。

それまではすべてにおいて、『やらなきゃいけない』にがんじがらめになっていたと思います。『世のワーママはこんなふうに頑張ってるから、自分もこうやらなきゃ』。雑誌やテレビの情報で『世の旦那はこんなに協力的だから、協力してもらわなきゃ』。世の中の『こうあるべき』というイメージと自分を比べて、余裕がなかったのかもしれません」

オンラインのつながりで自分を見つめる

——考え方が変わるきっかけはありましたか?

「ある女性起業家さんが日常で感じる育児論や仕事論をつづったブログで、『“ちゃんと”しなくてもいい』という考えに共感したことですね。その方は、ブログでかなりワーママとしての率直な思いを書いています。その育児や家事への向き合い方を読み、私自身があるべき姿にとらわれていたことに気づいたときに、肩の力が抜けていきました。

例えば、『料理好きじゃないのに頑張っていたな』ということも、改めて感じたことの一つです。以前は『子供に食べさせるためにも、ちゃんと自分で料理しなきゃ』と思っていましたが、疲れたときは割り切って、総菜を買って帰るようにしました。また、下ごしらえした食材や調味料のセットを宅配してくれる『ミールキット』も利用し始めました。以前は値段がネックで我慢していましたが、買えば10分足らずで調理できて便利ですから、こちらも割り切って使うようにしています。

現在はオンラインのコミュニティに参加して、働いて育児をする女性たちとの意見交換を続けています。多くの考えに触れながら、自分らしいあり方を見つめていきたいです」

上司とのコミュニケーションも積極的に

——仕事への向き合い方は、出産や育児を経験する中で変わりましたか。

「そうですね。2回の職場復帰を経て、だんだんと変わってきました。

長女出産後の3年前、試験や面接を通過し、総合職への転換を果たしました。挑戦しようと決めた理由の一つは、妊娠中に業務の負担軽減などまわりのサポートがあり、長く続けられる職場だと実感したことです。その後も、短時間で集中して成果を出すためには?と試行錯誤をし、メールは即返信、面倒なものや、気持ちが向かない作業を後回しにせず、タスクをためない、といった工夫をしてきました。

次女の育休から復帰した今夏からは、上司との積極的なコミュニケーションを意識しています。働く女性は、『今後、こういうことがやりたい』という主張をすることが少なく、上司にとっては『やる気がないのか』『考えが分からない』といったマイナスに受け取られることも少なくないようです。仕事に対する思いを知ってもらうためにも、私は『ゆくゆくは管理職になりたい』といったことも伝えるようにしています。仕事を頑張っていますし、それなりの立場に進みたいですから。

ただ、よくイメージされる『責任ばかり重くて長時間労働が大変』という管理職には魅力を感じません。これからの管理職像は、いくらでもつくり出していくことができると考えています。私が知っている管理職の方の中にも、一見破天荒に見えるのに、実は人望があり、仕事ができる人もいます。個人的には、ワーキングマザーが管理職になれば、『夜の会議はしない』といったより働きやすい職場づくりの実現にもつながるのではないか、と考えています。同僚との信頼関係をしっかり築いて、同じ目標に全員で向かっていくことができる、楽しくやりがいのある管理職になりたいです。

仕事は、お金のため、生活のためだけじゃない。自分の成長や自己実現の達成のためにも取り組んでいます。私自身、現在の部署で人材育成に関わり、会社をもっとよくするためにどうすればいいかを考えて実行する役割も担っており、やりがいを感じています。娘たちにも将来、やりたいことを仕事にしてもらえたらいいですね」

(取材・文:内田知子)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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