母乳ってどんな味?
みなさんは自分の母乳をなめてみたことはありますか? マイナビウーマン子育てがとったアンケートによると「なめてみたことがある」というママは46%ほどでした。
自分の母乳をなめてみたことはありますか?
また、なめてみたことがある人からは、「母乳の味」について以下のような感想が寄せられました。

(38歳/ホテル・旅行・アミューズメント/営業職)

(28歳/アパレル・繊維/事務系専門職)

(32歳以上/情報・IT/事務系専門職)

(32歳/建設・土木/事務系専門職)

(31歳/電力・ガス・石油/事務系専門職)

(40歳以上/学校・教育関連/講師)

(28歳/自動車関連/秘書・アシスタント職)
マイナビウーマン子育て調べ
調査日時:2020年9月25日~9月29日
調査人数:101人(22歳~40代までのママ)
人によって、様々な味を感じたようですね。
母乳って血液からできている?
母乳はおっぱいにある小葉で作られ、乳管を通って乳頭に運ばれます。赤ちゃんが乳首を吸うと、その刺激によってプロラクチンというホルモンが多く分泌されます。すると、血液が乳房に張り巡らされた毛細血管にさらに流れ込み、母乳が作られるのです。つまり、母乳のおもな材料はママの血液なのです。
とはいえ、血がそのまま母乳になるわけではありません。「母乳が血の味だった」という人は「血乳」といって母乳に血が混じっていたことが考えられます。母乳が作られる量が安定するとなくなりますが、生後1週間くらいの間にみられることがある生理的なものなので、そのまま飲ませても問題ありません。
その後も血乳が続いたり、片側からのみ血乳がある場合は、乳腺外科などを受診しましょう。
母乳が作られるしくみについての詳細は、以下の記事も参照してください。

【助産師解説】母乳は白い血液?作られる仕組みと成分、血乳の原因と対処法
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/7319母乳は血液でできていると言いますが、ではなぜ白いのか?本当に血液なのか?という疑問について助産師が解説します。また、母乳に血が混じる「血乳」の原因と対策、授乳中の注意点についてもお伝えしています。
母乳は約9割が水分。母乳の構成成分は?
母乳にはどのような成分が含まれているのでしょうか。おもな成分は下記の通りです[*1]。
・乳糖:7.0%
・脂質(脂肪酸、コレステロール、リン脂質、脂溶性ビタミンなど):4.0%
・ホエイ(水溶性のたんぱく質):0.6%
・カゼイン(不溶性のたんぱく質):0.2%
・その他:0.2%
人間の母乳は乳糖が多い
母乳は動物の種類によって成分が異なるため、人間の母乳と牛乳とでは成分は違います。哺乳類の中でも人間の母乳には“乳糖”が多く含まれているのが特徴です。なお、母乳中の乳糖の量は一定で、脂肪に関しても母親の食事によって量が変わることはありません。ただし、脂肪の構成成分は食事によって変化することがわかっています。
母乳って何ヶ月もずっと同じ味?
では、母乳の成分や味はずっと変わらないものなのでしょうか。
初乳から成乳へ変化する母乳
母乳は、分娩2〜3日後から分泌が増えていきます。分娩後3~5日までは初乳と呼ばれる半透明で黄色っぽい色をした母乳が出ます。その後、産後2週間後あたりからは成乳と呼ばれる白くて不透明な母乳が出るようになります。なお、初乳から成乳に変化している途中の母乳は移行乳と呼ばれます。
赤ちゃんの成長に合わせて変化する母乳の成分
初乳と成乳は、色だけではなく、成分も違います。初乳はたんぱく質の含有量が多く、塩類と糖質を多く含みます。また、免疫に関与する物質もたくさん含まれており、赤ちゃんの免疫機能を補う働きをします。成乳は初乳よりもナトリウムは少ないのですが乳糖や脂肪が多く、カロリーが高めです。おもに赤ちゃんの発育成長をうながす役割を果たします。
母乳の味も、時期や序盤・終盤で違う
このように、初乳と成乳とでは成分が違うので、味も変わってきます。
まず、初乳はナトリウムが多いので、なめてみると大人は「おいしくない…」という感想になることが多いです(赤ちゃんにとっては大事な物質たっぷりのご馳走です!)。
また、その後も授乳ごとに、スタート時(前乳)と飲み終わりあたり(後乳)では味わいに違いがあります。これは、母乳に含まれる脂肪分が授乳している短時間の間にどんどん増えていくため。あっさり前菜から高カロリーのデザートまで、まるでコース料理のように変化するのです。
母乳の味が変わる原因と対処法
赤ちゃんが乳首をすぐに離してしまうと、「母乳がまずいから飲まないのではないか」と心配になるかもしれませんね。
実際、食事内容で母乳の風味が変わることは多少あるようです。とはいえ、そもそも赤ちゃんが母乳をおいしいと思っているのかは確認のしようがありません。
成長発達に必要な程度に母乳が飲めていれば、赤ちゃんは母乳の味に不満を感じているわけではないと考えてもよいのではないでしょうか。そこまで「母乳の味」に一喜一憂しなくても大丈夫ですよ。
食生活で母乳の味がまずくなるって本当なの?
「食べ物次第で母乳がまずくなる」という言説は、科学的に根拠のある話ではないと先ほども説明しました。そもそも、食べたものは消化管を通じて、糖やアミノ酸、脂肪酸、グリセロールに分解され、最終的に血流に入り、その血液から母乳が作られます。したがって、食べたものがそのまま母乳に出てくるわけではないのです。
母乳のしくみと食べ物との関係についての詳細は、以下の記事も参照してください。

【助産師解説】授乳中の食事のウソ・ホント!母乳にいい食べ物って?
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/3555授乳中はおっぱいの詰まり予防や母乳の質をよくするために食事に注意すべきとの声をよく耳にしますが、これは本当なのでしょうか? 母乳と食事の関係と、食べ方、母乳にいい食べ物のアドバイスや注意点について助産師がお伝えします。
冷凍保存すると母乳は味が変わるのは本当?
冷凍すると脂肪成分が変化します。母乳に含まれる脂肪分の周りは細胞膜で覆われているのですが、これが冷凍によって壊れてしまうからです。また、母乳に含まれている生きた細胞も多少減ってしまいます。このような背景から、母乳の味が変わることがあります。
冷凍で味が変わっても赤ちゃんにとってはほとんど問題にはならないのですが、ごくまれに嫌がる赤ちゃんもいます。その場合は、寝起きや半分寝かかっているときなどにあげると、ぼーっとしているので飲んでくれることがあります。
母乳の冷凍保存についての詳細は、以下の記事も参照してください。

赤ちゃんと一緒に出かけられない場合など赤ちゃんに母乳を直接あげることが難しいとき、あらかじめ搾乳した母乳を冷凍してストックしておくといいでしょう。今回は、母乳の冷凍に関して、メリットや注意点、具体的な手順などを解説します。
乳腺炎だと母乳の味が変わるって本当?
乳腺炎を発症してしまった場合、乳房から作られる母乳は塩分が増えることもあり、赤ちゃんが飲んでくれないこともあります。
このようなときは炎症のない乳房から授乳し、少し時間をおいてから痛い方の乳房から授乳してみましょう。それでも飲んでくれないときは、搾乳で対処するのもひとつの方法です。
乳腺炎についての詳細は、以下の記事も参照してください。

【助産師解説】乳腺炎対処法!効果的な自宅ケアとマッサージの方法
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/3527乳腺炎のような症状が出たとき、自宅ですぐにできるケアやマッサージ方法を助産師が教えます。乳腺炎という言葉はよく耳にするけど、具体的にどのような症状なの? という疑問にもお答え。発症リスクや予防方法についても知っておきましょう。
母乳のための食事
「おいしい母乳にしたい!」「乳腺炎を予防したい!」という理由で、授乳中の食事に気を遣う人は多いでしょう。しかし、「この食べ物はよくない」「これを食べると乳腺炎になりやすい」などの情報に振り回されて過剰な食事制限をしてしまうのはストレスがたまりますし、何より母体の栄養不足につながりかねません。
「授乳中は和食で粗食にすべき」の誤解
よく耳にするのが「母乳のためには、和の粗食を食べた方がいい」いう話。もちろん、和食はだしを活用するので薄味でもおいしいですし、副菜もあるので栄養バランスもとりやすいです。その点では、和食は授乳中の食事にも適しています。
しかし、本来意図するところではなく、「和の粗食にしなければ!」というメッセージにとらわれてしまって、過剰に粗食にするのは考えものです。菜食主義のお母さんが動物性食品を長期間とらないでいると、母乳中のビタミンB12が不足して赤ちゃんに神経障害が起こったという例も報告されています[*2]。とにかく意識してほしいのは、偏りなく、バランスがいい食事なのです。
なお、アルコールなど授乳中に注意が必要な成分もあります。以下の記事も参照してください。

お腹の赤ちゃんへの影響を考え、妊娠中は避けるべき食べ物や飲み物が少なくありません。では、出産後、赤ちゃんに母乳をあげている時期はどうでしょうか。今回は「授乳中の飲み物」について解説します。
まとめ
母乳の味はどんなもので、どう変わるのかは気になる疑問ですよね。初乳と成乳、授乳の最初と終わり、冷凍母乳、乳腺炎など、時期やタイミング、保存法によって母乳の味が変わる可能性があります。なお、「おいしい母乳を飲ませたい!」という気持ちはわかりますが、授乳中の偏った食事制限はいけません。母乳の味のためというより、ママの健康のため、バランスの良い食生活を心がけましょう。
(文:今井明子/監修:坂田陽子先生)
※画像はイメージです
[*1]水野克己ほか「母乳育児支援講座」(南山堂)p.38-42
[*2]CDC「Neurologic Impairment in Children Associated with Maternal Dietary Deficiency of Cobalamin --- Georgia, 2001」
https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5204a1.htm

HP:https://sumire-josanin.com/
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます