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2022年03月30日 14:45 更新

【医師監修】妊娠初期に太る原因 | 急激な体重増加を防ぐ3つのポイント

妊娠初期は、つわりがひどくて体重が減ってしまったという人がいる一方、食欲が増して太ったという人もいます。妊娠初期に太るのは、どんなことが原因なのでしょう。対策や注意すべきポイント、体重増加の目安などを解説します。

妊娠中に「太る」原因

妊娠初期の太り過ぎに体重計に乗る女性
Lazy dummy

まずは妊娠中、体重が増える原因について知っておきましょう。

妊娠中の体重増加の内訳は?

妊娠中に体重が増える一番の原因は、お腹の赤ちゃんが成長することです。といっても、出産時の赤ちゃんの重さはおよそ3kg(3,000g)。一方で妊娠中に増える体重は、妊娠前と比較して10kg前後であることが多いとされています。赤ちゃんの重さ以外に、一体何が増えているのでしょうか。

赤ちゃん以外に妊婦さんの体重を増加させているのは、「胎盤・水分・皮下脂肪」などです。妊娠中の体重増加の内訳は下記の通りだといわれています[*1]。
 
・赤ちゃん(胎児):およそ3kg

・胎盤・羊水:およそ1.5kg

・血液・水分:約2~3kg

・乳房・子宮:約1~1.5kg

・皮下脂肪など:約2.5~3kg


ただ、これらはあくまで出産間近の重さです。まだ妊娠がわかって間もない、妊娠初期の場合、体重はどれくらい増えるものなのでしょう。

妊娠初期は「3kg増程度」を目安に個別に判断

妊娠期間中の平均的な体重増加量は、妊娠初期1.1kg、中期4.9kg、後期5kg程度とされています[*2]。

妊娠前の体型などによって個人差があるので一概に言うことはできませんが、妊娠15週ごろまでの体重増加は3kg程度を一つの目安にするといいでしょう。そしてその後、妊娠16週以降は4週間に1~1.5kg程度の増加が目安となります[*3]。

ただしこれはあくまでも「目安」なので、あなた自身の体重増加量について詳しくは、健診の際に主治医と話しておくといいですね。

もともと痩せている場合、体重が増えないのもリスクに

ここまでで説明したように、赤ちゃんがお腹のなかで育っていくので、妊娠中に体重が増えるのは当然のことですが、極端に体重を増やしすぎるのはあまりよくありません。

妊娠前の体格ごとに妊娠中の推奨体重増加量が設定されています。特に肥満の体格だった場合は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高いとされており、また、妊娠中に体重増加量が極端に多い場合には、巨大児分娩や帝王切開分娩のリスクが高くなります。

一方で、体重増加が少なければいいかというとそういうわけでもありません。本来ならもっと体重を増やすべきなのに増加が少なすぎる場合は「切迫早産を含む早産」「胎児発育不全」「将来の生活習慣病発症」などのリスクが見られることが明らかになっています。

妊娠中に必要なのは「適切な体重管理」です。とはいえ、もともと体重には個人差がありますし、体重にばかり神経質になるのもよくありません。目安を意識しつつ、体重増加などで心配事があったら隠さずに。

自分に適切な体重増加量を知っておこう

さきほど「妊娠初期は3kg増程度に収められるとベスト」とお話ししましたが、自分の場合はどれくらいの増加が適切なのかを実際に確認しておきましょう。

妊娠期間中の体重増加量の目安

まずは、妊娠前のBMIを計算します。BMIとはBody Mass Indexの略で、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数です。肥満度を表す指標として、このBMIが国際的に用いられています。BMIは下記の計算式で求められます。

体重(kg)÷[身長(m)の2乗]=BMI

身長が160cm(1.6m)、妊娠前の体重が58kgの人の場合、BMIは58÷(1.6×1.6)=22.66となります。日本医師会のホームページ[*4]では、身長(メートル単位)と体重(kg)を入力するだけで自動計算してくれます。

日本医師会 健康になる!適正体重
https://www.med.or.jp/forest/health/eat/11.html

妊娠中の体重増加の目安は、この妊娠前のBMIによって異なります[*5]。

妊娠全期間を通してのBMIごとの体重増加量の目安(2021年3月改定)

・妊娠前のBMI18.5未満(やせ)…増加目安12〜15kg

・妊娠前のBMI18.5以上25未満(普通)…増加目安10〜13kg

・妊娠前のBMI25以上30未満(肥満1度)…増加目安7〜10kg

・妊娠前のBMI30以上(肥満2度)…個別に対応(上限5kgまでが目安)


上記は、BMIごとの妊娠全期間を通しての体重増加量の目安です。

妊娠初期の体重管理のポイント

妊娠初期に太るのを予防するために野菜を多く取る食事を作る女性
Lazy dummy

神経質になりすぎる必要はないとはいえ、適切な体重管理はお産を安全に迎えるための大切なポイントです。妊娠初期はどのようなことに気を付けておけばよいのでしょう。

妊娠初期のエネルギー追加分は本当に少しでOK

妊娠中は胎児が正常に発育するため、通常時よりも多少多くのエネルギー(カロリー)が必要となります。必要なエネルギー量は妊婦さんの年齢や身体活動レベル、妊娠週数などによって異なりますが、妊娠初期の場合は「1日あたり非妊娠時+50kcal」が目安とされています。

50kcalというと「キャンディーチーズなら3個」「バナナなら約1/2本」「ポテトチップスならほんの3枚」に相当する程度の量です。もともとの体重にもよりますが、妊娠初期のエネルギー量は、非妊娠時とほぼ変わらないと考えておいた方が良いかもしれません。

妊娠初期の胎児は母体からの栄養をまだそれほど必要としないため、このころは妊婦さんの身体に必要な栄養を摂取しておけば、基本的に問題はありません。ただし、つわりによる脱水症状予防のため、水分は積極的に摂取しましょう。
 
なお、妊娠中に必要なエネルギーは、妊娠経過が進むにつれて増加していきます。妊娠中期(14~28週未満)では+250kcal、後期(28週以降)では+450kcalが必要となっていきます。妊娠経過の進みに合わせて、主食を中心に十分なエネルギーをとるようにしましょう[*6]。

食べづわりのときはこまめに食べる&内容を工夫して

「妊娠初期のエネルギー追加分は本当に少しでOK」と言われても、食べづわりの症状がある人はなかなかうまくコントロールができず、不安になってしまうことがあるかもしれません。

なぜ食べづわりになるのかのメカニズムは正しく解明されていないのですが、どうやら妊娠すると変化する「女性ホルモン」(エストロゲン、プロゲステロン)の分泌量が関係しているようです。

女性ホルモンの一種である「エストロゲン」は、身体に対してさまざまな作用を与えます。その作用の中には、体中の細胞にエネルギーとして血糖を取り込ませる「インスリンの効きを良くして、血糖値を下げる」というものもあります。適度に下がるのならば問題はないのですが、エストロゲンの影響が強すぎて、インスリンの効きが良すぎるために低血糖になってしまうと、中には空腹で気持ちが悪くなってしまうことがあります。これが「食べづわり」を引き起こすのではないかと考えられています。

食べづわりの症状があるときは、食べたいものを食べて構いません。できればカロリーの低いものを選べると良いですね。つわりの症状が治まってきたら、食べすぎないように徐々に食欲や食べるものを調整するとよいでしょう。

なお、食べづわりの対策はこちらの記事に詳しく書かれています。

タンパク質やビタミン・ミネラルもバランスよく

妊娠中は妊娠前に比べて多めにエネルギーが必要になりますが、だからと言ってなんでも多めに食べればよいというものではありません。食事の基本にならい、「主食」「主菜(メインディッシュ)」「副菜(小鉢や汁物)」「牛乳・乳製品」「果物」をバランスよく摂ることが大切です。

まずはご飯やパンなどの「主食」で、しっかりとエネルギーを摂取し、「主菜」で肉や魚、卵、大豆など、からだづくりの基礎となるタンパク質を適切に摂りましょう。そして「副菜」では不足しがちなビタミンやミネラルを、野菜などでたっぷりと補ってください。

ビタミンやミネラルの中には妊娠中、普段より多めの摂取が推奨されているものもあります。エネルギー量だけでなく、栄養バランスにも気を配り、栄養素の積極的な摂取を心がけましょう。

妊娠中の栄養の摂り方については下記の記事も参照してください。

適度に体を動かす

食べづわりなどで食べ過ぎや体重増加が気になったら、適度に身体を動かしてみましょう。

日本産科婦人科学会の診療ガイドライン[*7]では、健康上問題のない妊婦さんであれば、妊娠中に適度な有酸素運動を行うことは「早産や低出生体重児のリスクを増加させることなく、健康維持・増進に役立つ可能性がある」としています。適度な運動は母体にとってもお腹の赤ちゃんにとっても有効といえます。

妊娠中にはっきりと禁止されている運動は、柔道、空手、ボクシング、バンジージャンプ、スキューバダイビングなどです。「お腹に強い衝撃を与える可能性のあるもの」「酸素濃度が下がる可能性のあるもの」が禁止されています。

また、妊娠後に新たに運動を始める場合には、妊娠12週(妊娠4ヶ月)以降に開始することをおすすめします。なお、マタニティスポーツの教室は妊娠13週ごろ、または妊娠中期に入る16週ごろから入会を受け付けていることが多いようです 。

栄養バランスのとれた食事と適度な運動で、適切に体重増加を防ぎましょう。妊娠中の運動について、くわしくは下記の記事を参照してください。

まとめ

妊娠初期に太るのを予防するためにストレッチする女性
Lazy dummy

妊娠初期に体重が増加し「太った……」と落ち込むことがあるかもしれませんが、体重増加に対し、あまり神経質になる必要はありません。太った、痩せたと一喜一憂するよりは自分の身体=母体と赤ちゃんのために健康な状態をキープするつもりで、食事の栄養バランスに気を遣ったり、運動ができたりするとよいですね。

(文:山本尚恵/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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