【医師監修】妊娠初期の腹痛と出血 | その原因と対処法

【医師監修】妊娠初期の腹痛と出血 | その原因と対処法

妊娠13週までの妊娠初期に、腹痛や出血が現れたらどうすればよいのでしょうか。痛みや出血の原因によっては注意が必要なことがあります。妊娠初期に腹痛や出血があった場合に、注意すべき症状や対処法をまとめました。


妊娠初期に腹痛や出血が起こる原因とは

妊娠初期の腹痛と出血に苦しむ女性
Lazy dummy

腹痛や出血は妊娠中によくあるトラブルですが、妊娠初期にこれらの症状が起こった場合、その原因には何が考えられるのでしょうか。

正常な経過でも起こることがある

正常な妊娠経過をたどっていても、妊娠初期に腹痛や出血がみられることはあります。その主な原因を順に説明しましょう。

まず腹痛については、妊娠初期の場合、子宮の変化が始まることで生じる可能性があります。妊娠すると、赤ちゃんを育てるために子宮への血流が増加していきますが、その際に張りを伴う腹痛が起こることがあるのです。

加えて、妊娠初期にも非妊娠時に比べて子宮は大きくなり始めているので、それに伴って子宮の周りの靭帯が引っ張られ、つるようなお腹の痛みを感じることもあります。

また、子宮への血流が増えると、ちょっとした刺激によって容易に出血がしやすい状態にもなります。

これらの原因によって、妊娠初期は腹痛や出血が比較的起こりやすい状態になっていますが、中には何らかの異常により、腹痛と出血が起こることもあります。詳しくはこの後、説明します。

異常による妊娠初期の腹痛と出血

ここからは注意すべき腹痛や出血の原因について説明します。

妊娠初期に注意したい腹痛・出血の原因

切迫流産・流産

「切迫流産」とは「胎児が子宮内で生きているけれど、流産へ進行する可能性のある出血などの症状を伴う場合」、すなわち「流産のリスクが高い状態」をいいます。ですから、切迫流産から流産に進んでしまうこともあります。ただ、切迫流産=流産するということではありません。経過によっては妊娠を継続できる場合も多いのです。

「流産」とは妊娠22週よりも前に、なんらかの理由で妊娠が終わってしまうことです。妊娠22週未満では、赤ちゃんはお母さんのお腹の外で生きていくことはできません。したがってなんらかの理由で妊娠が継続できなくなると、流産となってしまいます。

妊娠中の出血というと、この流産を想像する人が少なくないかもしれませんが、じつは流産が起こると必ず出血するというわけでもないのです。

「切迫流産」では少量の出血と腹痛がみられることがありますが、流産の中でも死亡した胎児が子宮内に留まっている「稽留流産」の場合は、出血や腹痛などの自覚症状はほとんどない場合が多いとされています。ただし流産がいままさに起こっている「進行流産」では、陣痛のような下腹部の痛みとともに多量の出血が、内容物の一部が子宮のなかに残る「不全流産」では、出血と下腹部痛が続きます。

このようにひとくちに流産と言っても出血の量や腹痛の有無、度合いは異なります。出血がみられたり、腹痛を感じたりした場合は自己判断せず、かかりつけ医に連絡して指示をあおぎましょう。

絨毛膜下血腫

「絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)」は、何らかの原因によって子宮の内面と胎盤から続く「絨毛膜」という組織の間に血液がたまった状態になることです。この場合、妊娠初期から出血が起こるほか、おなかの張りが見られることもあります。

たまる血液の量が増えたり感染が起こったりすると、流産や早産の原因になることも。絨毛膜下血腫のある切迫流産では、ベッドで安静にすることで流産の予防効果があるとする報告もあります。

異所性妊娠

卵管など子宮内膜以外の場所に受精卵が着床してしまう「異所性(いしょせい)妊娠(子宮外妊娠)」でも出血が起こります。以前は子宮外妊娠と呼ばれていましたが、子宮頸管や卵管間質部など「子宮外」とは言いにくい部分への妊娠を多く含むことから、異所性妊娠と呼ばれるようになりました。

異所性妊娠は全妊娠の1~2%の頻度で発症するとされています[*1]。とくに異所性妊娠の多くを占める卵管妊娠で最初に起こる代表的な症状が、少量の出血と下腹部痛です(ただし、これらの症状がない場合もあります)。そこから卵管破裂にいたると多量の腹腔内出血や急激な下腹部痛が起こり、大量出血からショック状態におちいることもあります。

異所性妊娠であっても妊娠期特有のホルモン・hCGが分泌されるため、妊娠検査薬では陽性が示されます。妊娠の反応があった場合は、必ず医療機関を受診し、正常な妊娠かどうかを確認しておきましょう。

卵巣のう腫茎捻転

卵巣のう腫とは、卵巣の中に液状成分がたまって腫れた状態のことです。そうして腫れ上がった卵巣と子宮をつなぐ靭帯がねじれてしまうことを「卵巣のう腫茎捻転」といいます。

茎捻転が起きると、お腹(主に下腹部)に痛みが生じます。この場合、激痛となることが少なくありません。また、完全にねじれてしまうと卵巣に血液が届かなくなり、組織が壊死することがあります。突然、強い下腹部痛が起きたら、卵巣の異常が原因の場合もあることを知っておきましょう。

なお、大きくなった卵巣のう腫自体が、膀胱や直腸を圧迫して腹痛や頻尿、便秘を起こしたり、破裂して腹痛を起こすこともあります。

婦人科系以外の病気が原因の場合も

このほか婦人科系以外の病気により、腹痛や出血が起こることも考えられます。

急性虫垂炎

急性虫垂炎(いわゆる「盲腸」)とは、盲腸についている虫垂突起に炎症が起きることをいいます。この虫垂炎を妊娠中に発症し、なおかつ発見が遅れた場合は妊娠の継続に影響を与える可能性があり、注意が必要です。

妊娠中は、そもそも2つの理由で虫垂炎の発症に気付きにくいと言われています。ひとつは虫垂炎の痛みが子宮収縮による痛みと似ていること、もうひとつは大きくなる子宮によって虫垂の位置が変わり、痛みを感じる部位が非妊娠時と異なることです。

妊娠中に虫垂炎を発症したことがわかったら、胎児への悪影響がないように手術で早急に切除を行います。腹痛のほかに吐き気や発熱など、虫垂炎を疑う症状を伴う場合も、かかりつけの産婦人科医に連絡し、判断をあおぎましょう。

尿路結石

尿路結石は、腎臓から尿道までの尿路にカルシウムなどが固まってできた石のようなもの=結石が生じる病気です。痛みや出血といった症状が現われるほか、尿路の感染や閉塞の原因となることがあります。

妊娠中に尿路結石が原因で入院が必要になるケースもあります。お腹や背中に強い痛みがあり、血尿を伴う場合は尿路結石を疑います。検査の結果、尿路結石があることが判明した場合、妊娠中であれば通常は点滴と鎮痛剤で治療を行います。

妊娠初期に腹痛と出血があったらどうすればいい?

ここまでさまざまな妊娠初期に腹痛や出血を起こしやすい原因を見てきましたが、では実際こうした症状がある場合は、どのようにするのがよいのでしょう。

まずは安静にして様子を見て

最初にもお伝えしたように妊娠初期は、正常な妊娠経過をたどっていても腹痛や出血がみられることがあります。腹痛を感じたら、まずは横になって休み、様子を見てみましょう。それで痛みがおさまるようであれば特に心配はいりません。

なお、体が冷えた状態になっていると体の血流が悪くなり、腹痛や張りが強くなることがあります。横になっている間はなるべく体を冷やさないようにすると良いかもしれません。体が冷えてしまっていると感じる場合は、足湯をするだけでも体を温める効果があります。必要に応じて試してみてください。

強い腹痛や出血量が多いときは早めに受診

・安静にしていても痛みがおさまらず、持続する

・ズキズキするような強い痛みがある

・周期的、規則的に痛みが繰り返す

・腹痛に加え、生理のときよりも多い出血がある

・今まで感じたことのない、いつもと違う痛みがある


上記のような妊娠初期の腹痛の症状がある場合は医師に連絡をするか、もしくは早めに医療機関を受診しましょう。
その場合、可能であれば妊娠週数や痛みの様子、出血の色や量、お腹の張りなどについてあらかじめメモをとっておくとよいでしょう。そのほうが医師への状況説明が落ち着いて、的確にできるはずです。

まとめ

妊娠初期の腹痛と出血でお腹を押さえる女性
Lazy dummy

妊娠初期の腹痛や出血はそれほど珍しくない症状とはいうものの、中には急いで受診すべきケースも。痛みが軽く、出血も少量なら、まずは安静にして様子を見てみましょう。それでも症状が改善しない場合や「いつもと違うな」と感じる場合は、遠慮せず医療機関に相談しましょう。慌てず、我慢せず、体の状態を見ながら対処していきましょう。

この記事の監修ドクター
産婦人科専門医 齊藤英和先生
梅ヶ丘産婦人科勤務、国立成育医療研究センター臨床研究員、神戸元町夢クリニック顧問、浅田レディースクリニック顧問、昭和大学医学部客員教授、近畿大学先端技術総合研究所客員教授、1 more baby 応援団理事、ウイメンズヘルスリテラシー協会理事。山形大学医学部卒業後、同大学、国立成育医療研究センターを経て現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖専門医、医学博士

(文:山本尚恵/監修:齊藤英和先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気がみえる vol.10 産科(メディックメディア)

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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