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2021年01月24日 15:54 更新

【医師監修】妊娠初期は頻尿になりやすい?2つの原因と対策とは

妊娠初期は、体内の水分が増加することで尿量が増えたり、大きくなった子宮が膀胱を圧迫したりするために頻尿になることがあります。しかしトイレが近くなるからと言って、水分をとらないのはNG。妊娠初期の頻尿の正しい対処法を紹介します。

そもそも頻尿とは

妊娠初期の頻尿でスッキリしない表情の女性
Lazy dummy

頻尿とは読んで字のごとく、「尿が頻回=回数多く出る」ことです。具体的には「トイレの回数が多い」「頻繁に尿意を感じる」といった自覚症状があれば、頻尿だといえます。

そう聞くと「『回数が多い』や『頻繁』とは、何回くらいのこと?」と気になるかもしれませんね。でも、じつは1日の排尿回数には個人差があるため、一概に「○回以上は異常」と言い切ることはできません。

日本泌尿器科学会によれば、「朝起きてから寝るまでの排尿回数が8回以上の場合を頻尿とする」と定義されていますが[*1]、さきほどもお伝えしたように、1日の排尿回数には個人差があるので、8回を下回るようでも自分で「多いな」と感じる場合は頻尿の可能性はあります。

妊娠と頻尿は関係ある?

さて、ここからが本題です。「妊娠すると頻尿になった」という人は意外に多いもの。妊娠と頻尿の発症には、どんな関係があるのでしょうか?

妊娠初期にはマイナートラブルが起こりやすい

じつは頻尿は、妊娠初期に起こりやすいとされるマイナートラブルのひとつです。妊娠初期の女性の体は、見た目にはまだほとんど妊娠前と変わらないものの、血漿(けっしょう)と呼ばれる血液の液体成分が増加するなどの変化が始まっています。

血液の量以外に、さまざまなホルモンの分泌量変化などもすでに始まっているので、個人差はありますが、いくつかのマイナートラブルが起こりやすくなるのが妊娠初期の特徴といっても過言ではありません。妊娠初期に起こりやすいマイナートラブルには、頻尿のほかにも以下のようなものがあります。

・つわり
・便秘
・頭痛
・不安、うつ

妊娠中に頻尿になる原因(1)体内の水分量の増加

妊娠初期にはさまざまなマイナートラブルが起こりやすいことを説明しましたが、中でも「頻尿」は多くの妊婦さんが経験しているようです。妊娠中のマイナートラブルの発症率を調べたところ、じつに9割以上の女性が「頻尿」を経験していたという調査もあります[*2]。

妊娠中に頻尿になりやすいのには、大きく2つの原因があります。
まずひとつめは「体内の水分量の増加」です。最初にもお伝えしたように、妊娠中は赤ちゃんの成長に欠かせない酸素や栄養などをより多く運ぶために、体内を循環する血液の水分量が増加します。

そうして増えた水分からつくられる尿の量も増加します。そのため、排尿回数も増え、頻尿になったと感じるようになります。

妊娠中に頻尿になる原因(2)子宮が膀胱を圧迫する

もうひとつは、大きくなった子宮が膀胱を圧迫することで起こる頻尿です。妊娠によって子宮には大きな変化が起こります。妊娠初期には7cmだった子宮の大きさは妊娠末期には約5倍の36cmにまで大きくなり、重さは60~70gから1,000gにまで増加していきます[*3]。

この変化は妊娠初期にも始まっており、妊娠前はニワトリの卵ほどだった子宮は妊娠初期の後半には新生児の頭くらいにまで大きくなっています。

子宮が大きくなってくると、狭い骨盤の中でほかの臓器を圧迫します。当然、膀胱も圧迫されるので、尿を溜めておく容量が減ったり、排尿にかかわる神経が刺激されたりし、それによって頻尿になることがあります。とくに妊娠後期に起こる頻尿ではこの影響が大きいといえるでしょう。

その他、妊娠すると膀胱のなかの粘膜が充血したり、膀胱頸部(膀胱の下部)が伸びたりすることも、妊娠中の頻尿に関係していると言われています。

妊娠初期の頻尿の注意点

頻尿になるとトイレに頻繁に行かざるを得なくなり、それがストレスになることもあります。しかしトイレが近くなるからと言って、水分をとらないようにするのはNGです。特につわりで食事量が減っている場合は、なおさら水分は意識してとるようにしましょう。

頻尿を気にして水分の摂取量を減らしてしまうと、以下のようなリスクが生じるかもしれません。

尿が減ると膀胱炎のリスクが高まる

頻尿だからといって水分摂取を少なくすると、たしかに排尿の回数は減りますが、一方で「膀胱炎」の危険が高まります。

膀胱炎は、大腸菌などの細菌が膀胱で炎症を起こす病気です。通常、膀胱には細菌はほとんど存在していませんが、なんらかの理由で尿道口(尿が出るところ)から細菌が侵入し膀胱へ上ってきてそこに感染し、炎症を引き起こすことがあるのです。

通常、排尿すると尿とともに細菌は洗い流されますが、尿の量や回数が減ると膀胱に細菌が感染するリスクは高くなります。
そして、膀胱から腎臓に感染が拡がると腎臓に炎症が起きる「腎盂腎炎」となります。

腎盂腎炎は赤ちゃんに影響を及ぼすことも

膀胱炎は妊娠時に発症しやすい感染症のひとつですが、進行して腎盂腎炎になると流産や早産を引き起こすほか、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症を発症させるなど、母体や胎児に多大な影響を与えることがあります。それを防ぐには膀胱や腎臓への感染を予防することが非常に重要です。

したがって頻尿が気になっても、水分補給を制限する必要はありません。夜間の頻尿でよく眠れない場合は寝る前の水分摂取を控えめにしても、日中は十分な水分補給を心がけましょう。

便秘改善のためにも水分は必要

また妊娠中は尿の悩みだけでなく、便通の悩みが生じることも少なくありません。妊娠中に起こりやすい、大腸のぜん動運動が弱いことで起こる便秘に対しては、食べたものが腸に長くとどまりすぎないよう、食物繊維とともに十分な水分の摂取を心がけることも大切です。

水分には、便を軟らかくして排出しやすくしたり、胃や大腸の活動を促したりする働きがあります。
なお、便秘になると腸内で細菌が増えすぎ、膀胱炎を起こすリスクが上がるという悪循環も起きます。

妊娠初期の頻尿に治療は必要?

妊娠初期の頻尿でトイレから離れられない女性
Lazy dummy

よくある「マイナートラブル」とはいえ、いつもと違う体調の変化があると、治療の必要があるかどうか気になりますよね。妊娠初期に頻尿の症状が見られた場合、医療機関で治療をする必要はあるのでしょうか?

膀胱炎の疑いもあるので医師に相談を

妊娠中は最初に説明した血液量の増加や膀胱が刺激されることなどにより、頻繁に尿意を感じやすくなります。これは妊娠の初期と後期によく見られる症状です。

ただ、妊娠初期に頻尿を感じたとして、それが妊娠中に起こる体の変化によるものか膀胱炎によるものか、症状のみから判断するのは難しいので、頻尿が気になったら念のため医師に相談しましょう。医療機関では尿検査により膀胱で細菌が増えていないか調べ、膀胱炎の場合は妊娠中でも服用可能な抗菌薬が処方されるはずです。

妊娠中の膀胱炎についてくわしくは、下記の記事も参照してください。

妊娠したことによる体の変化が引き起こしている頻尿ならば心配ありませんが、膀胱炎や腎盂腎炎は早めの治療が必要です。 「妊娠しているから頻尿で当たり前」と思い込まず、頻尿が気になったら産科医に相談しましょう。

まとめ

頻尿は妊娠中に起こりやすいマイナートラブルのひとつですが、排尿の回数ばかりにとらわれて水分摂取を怠ると、あらたなトラブルを引き起こすことにもなりかねません。
母体や胎児の健康のためにも、しっかりと水分を摂取することを心がけながら、頻尿が気になったら、遠慮せずかかりつけの産科医に相談しましょう。

(文:山本尚恵/監修:齊藤英和先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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