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2021年08月18日 16:00 更新

【医師監修】受精から着床まで気をつける事|レントゲンや薬、お酒は大丈夫?

着床とは、受精卵が子宮内膜にくっつくこと。着床してはじめて妊娠が成立します。ここでは着床までの流れとともに、気をつけること、妊娠前にやっておきたいことについてお話しします。

「受精から着床まで」はいつ起こる?

着床のことを考えている女性のイラスト
(イラスト:まちこ @achiachiachico

妊活中の人ならとても気になる「受精から着床まで」の間。これは具体的にはいつごろ起こるものなのでしょうか。

「排卵後~生理予定日の数日前」の間

卵子と精子が出会って融合する「受精」のあと、受精卵が子宮に「着床」しないと、妊娠したことにはなりません。

この受精は、「排卵日~遅くともその翌日までの間」に起こります。

そうしてできた受精卵は、卵管から子宮に移動し、受精から約5日目以降に「着床」し始めます。着床には数日間かかり、完了するのは「生理予定日の数日前」です。

排卵・受精・着床|妊娠するまでの流れって?

着床までの流れ
排卵・受精・着床までの流れ(イメージ)

妊娠するまでに体の中で起きていることを、もう少しくわしく解説します。

排卵

排卵とは、「成熟した卵子が卵巣にある“卵胞”という袋の中から排出されること」を言います。

排出された卵子は、卵管の先にある「卵管采」というフサフサした部分に入り、その少し奥にある「卵管膨大部」にとどまります。

なお、生理周期が28日の人であれば、生理開始からだいたい14日目に排卵が起こります。排卵された卵子は約24時間だけ生きています[*1](ただし、体外受精の結果からすると、受精後も正常発育を示すには、「排卵後数時間以内」に精子と受精することが必要とも言われています)。

受精

受精は、「精子と卵子が出会って合体し受精卵になること」です。

セックスをすると精子は腟内に射精され、子宮に入り込んで行きます。子宮の中を通過し、卵管を通って卵管膨大部についた精子は、そこで卵子と出会って合体し、受精卵ができるのです。

なお、精子は女性の体内で「およそ72時間」生きられます[*1]。
卵子の寿命と精子の寿命が尽きる前に、両者が出会って初めて受精することができるのです。

着床

着床は、「受精卵が細胞分裂を繰り返しながら子宮に移動し、子宮内膜に潜り込んで根を張る」ことです。

受精卵は2個、4個、8個と次々に細胞分裂をしていきます。それとともに、卵管の中を移動して子宮に向かいます。

受精後5日ほど経つと受精卵は子宮の中に到達し、受精から約5日後以降に子宮内膜に潜り込んで根を張り始めます。これが着床で、こうして妊娠がスタートするのです。

なお、子宮では、生理周期の20~24日目になると着床しやすいように子宮内膜が変化をします。この受精卵が受け入れられる期間を「着床の窓」と言います[*2]。

さきほど、精子と卵子は互いの寿命が尽きる前に出会わないと受精できないと説明しましたが、着床もタイミングが重要です。「“着床の窓”が開いている(子宮内膜の準備ができている)」期間に子宮に到着しないと、受精卵は着床できないのです。

着床しやすくなる方法ってあるの?

受診する女性のイメージ
Lazy dummy

せっかく受精卵ができても、着床しなくては妊娠することができません。受精卵が着床しやすくなる方法はあるのでしょうか?

あらかじめ受診して体の状態を調べてもらおう

着床しやすくする方法は残念ながらわかっていませんが、卵巣や卵管、子宮などの形に異常があったり、不妊につながる性感染症にかかっていると、着床はしにくくなります。また、免疫異常があると化学流産をしやすくなることもあります。

ですから、赤ちゃんがほしいと思ったらまずは産婦人科で卵巣や卵管、子宮など体の状態を調べてもらっておくとベスト。男性も、精子の状態などを泌尿器科などで確認しておくのがおすすめです。

そこで着床にしくくなる異常がある場合、必要であれば治療を受けておきましょう。また、診察の際は、日常生活での注意点がないか確認しておくといいですね。

「受精から着床まで」の間、気をつけること

たばこ

さて、「受精から着床まで」の間は、妊娠するかしないかという微妙な時期ですが、何か気をつけたほうがよいことはあるのでしょうか。

レントゲン(X線)検査

「妊娠したら、レントゲン(X線)検査を受けるのは避ける」必要があります。X線の放射線量によっては、赤ちゃんへの影響が心配されるからです。

ただ、妊娠したことに気づかないうちにうっかり一度、X線検査を受けてしまったとしても、赤ちゃんに何か影響すると心配する必要はほとんどありません。通常のX線検査では赤ちゃんに影響が出る放射線量を超えることは極めてまれだからです。

また、妊娠に気づかないような妊娠早期の放射線被ばくでは、赤ちゃんへの影響はとても低いこともわかっているそうです[*3]。

とはいえ、やはりお腹に赤ちゃんがいる可能性があるときは、X線検査は避けるにこしたことはありません。医療機関で検査を受ける場合は、妊娠の可能性があることは必ず伝えましょう。

「受精前または受精~2週間の間(妊娠3週末)まで」は、ごく一部の薬を除いて、妊婦さんが使用しても、薬による先天異常のリスクは上がらないと言われています[*4]。この時期、もし、薬によって胎児にダメージがあると「流産してしまう」か「ダメージは修復される」かのどちらかになると言われています。

ただ、薬の中には長い間体内にとどまり、赤ちゃんに影響するものもあるので、妊娠の可能性があるなら「不必要な服薬はやはり避けたい」ところです。

なお、持病があって服薬する必要がある人は自己判断で止めてはいけません。妊娠を希望していることを伝え、主治医と相談するようにしてください。

お酒

「お酒も妊娠したら控える」必要があります。妊娠中に飲酒すると、「赤ちゃんの先天異常や発育不全」だけでなく、妊娠高血圧症候群や胎盤の異常などのリスクを高めるとも言われているからです[*4]

日常的に飲酒する習慣のない人が、妊娠していることを知らずに酒席などで少し飲んでしまった程度であればそこまで心配はいりませんが、妊活を始めたなら、晩酌などで習慣的に飲むのはやめ、酒席でもノンアルコールにしたほうがよいです。

赤ちゃんに影響するアルコールの量や時期ははっきりわかっておらず、少ないから安心とは言えないからです。

喫煙

喫煙は、がんなど様々な病気を引き起こすことで知られています。
さらに妊娠中に喫煙を続けていると、お腹の赤ちゃんに酸素や栄養が届きにくくなり、低出生体重児になってしまうことがあります。

妊娠する女性が煙草を吸っていなくても、パートナーの男性や同居する家族が煙草を吸っていれば副流煙で赤ちゃんに悪い影響を及ぼすことも考えられます。

赤ちゃんがほしいと思ったら、家族みんなで禁煙に取り組んでいきましょう。

妊活中、普段からやっておきたいこと

妊娠に備えて葉酸サプリを飲む
Lazy dummy

さきほど紹介したように、着床しやすくなる方法はわかりませんが、以下で、着床に限らず、一般的に妊娠前から気をつけておきたいことを紹介します。

医療機関で体の状態を確認してもらい、とくに異常がないなら、下記のポイントに注意しながら、できるだけ積極的な夫婦生活をもつよう心がけましょう。

葉酸を飲む

妊娠初期に葉酸が不足すると、お腹の赤ちゃんが「神経管閉鎖障害」という病気になりやすくなります。

葉酸は、食事からだけでは十分な量を摂りにくいものです。そのため、妊活中~妊娠初期はサプリメントなどの栄養補助食品からも葉酸を摂ることが推奨されています。

妊娠したことは、実際に妊娠して数週間経たないと判明しません。妊娠したかどうかはっきりしない妊娠初期からしっかりと葉酸を摂れるように、妊娠前から食事に加えて、1日0.4mg(400μg)の葉酸を摂るようにしましょう[*5]。

風疹などの予防接種は済ませておく

感染症の中には、妊娠中に感染すると妊娠に悪い影響を与えたり、赤ちゃんに異常を引き起こすものがあります。また、妊娠してからでは、接種できないワクチンもあります。

代表的なものとしては、「風疹」があげられます。
妊娠初期に抗体のない妊婦さんが風疹になると、赤ちゃんが白内障や緑内障などの目の病気や難聴、先天性心疾患を持って生まれやすくなります。

赤ちゃんがほしいと思ったら、ぜひ夫婦で風疹の抗体検査を受け、抗体が低い場合は風疹・麻疹の混合ワクチン(MRワクチン)を接種しておきましょう。

太りすぎ・痩せすぎを改善

太りすぎていたり痩せすぎていると、排卵が止まったり、妊娠しても妊婦さんや赤ちゃんにさまざまな異常の起こるリスクが高くなってしまいます。

太りすぎや痩せすぎは、BMI(体格指数)を計算することでわかります。

BMI=[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]
を計算してみましょう。

「BMIが22になる体重」は、標準体重といってもっとも病気になりにくい状態と言われています。
また、日本肥満学会の定めた基準では

・BMI18.5未満:低体重(やせ)
・BMI18.5以上25未満:普通体重
・BMI25以上:肥満


BMIが30を超えると深刻な肥満となり、積極的な減量治療が必要となります[*6]。
普通体重を目ざして、太りすぎ・痩せすぎは改善していきましょう。

まとめ

夫婦仲良く
Lazy dummy

排卵が起こり、精子と卵子が出会って合体、受精卵が子宮内膜に「着床」したら、妊娠したということ。赤ちゃんを望んでいる人は、心待ちにしているできごとですね。「受精~着床」が起こるまでの間にはとくに、X線検査、薬、お酒、喫煙は気をつけましょう。

なお、これをすれば着床しやすくなるという方法は、残念ながらありませんが、着床しにくくなる要因をできるだけ取り除くことはできます。まずは夫婦ともにメディカルチェックを受け、改善できる異常がないか確認しておきましょう。

また、できるだけ積極的な夫婦生活に努めるとともに、普段からなるべく健康的な生活を送ることがおすすめです。生活習慣を整えながら、元気な体で赤ちゃんをお迎えする日を楽しみにしていきましょう。

(文:大崎典子/監修:齊藤英和先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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