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2022年03月10日 13:28 更新

【医師監修】出産後も高血圧に注意が必要なの!? 血圧が高い場合の3つの対処法

産後に高血圧が続いていませんか? 高血圧は「サイレント・キラー」と呼ばれ、自覚症状なしに、ある日突然命にかかわる状況を引き起こします。育児で忙しい時期ですが、血圧が高いなら放っておいてはいけません。高血圧の目安や対処法などについてお話しします。

どのくらいの血圧が高血圧?

産後の高血圧で頭痛がする女性
Lazy dummy

高血圧という言葉はよく聞きますよね。それもそのはず、日本人のおよそ3人に1人は高血圧なのではないかと推計されています[*1]。ただ、よく耳にする割には「どのくらいの血圧が高血圧なのか」「どうして血圧が高いと体に良くないのか」、あいまいな人も多いのではないでしょうか。

まずは高血圧とは何かについて簡単に解説します。

血圧とは|血管の内側にかかる圧力

血圧とは、「血液が動脈を流れていく時に、血管の内側にかかる圧力」のことです。

心臓が収縮して血液を送り出した時の血圧を「収縮期血圧(最高血圧)」、心臓が拡張した時の血圧を「拡張期血圧(最低血圧)」といいます。呼び名の通り、最高血圧は高めの数値で、最低血圧は低めの数値となります。

高血圧の基準|家庭での計測なら135/85mmHg以上

高血圧の基準は、診察室で測った「診察室血圧」、特殊な血圧測定器で30分または1時間ごとに測定した血圧の平均値にあたる「24時間自由行動下血圧」、家庭で測った「家庭血圧」のそれぞれで違う数値となります。

診察室血圧値の場合は140/90mmHg以上、家庭血圧値の場合は135/85mmHg以上、24時間自由行動下血圧値の場合は130/80mmHg 以上が、高血圧となります[*1]。

高血圧の症状|最初は無症状。悪化すると自覚症状や合併症も

高血圧は初期段階であったり、合併症が起こっていない場合は普通、無症状です。

ただし、高血圧が続くと動脈に負担がかかり続けるため、脳や肝臓、目の網膜に悪い影響を与えます。特に脳梗塞や腎不全、眼底出血、心不全などの合併症が起こりやすくなります。

また血圧がかなり高いと、頭痛やめまい、肩こりなどが起こりやすくなります。その他にも運動障害やしびれなど、様々な症状が起こることもあります。

この後詳しく解説しますが、なんらかの原因で妊娠中に高血圧となる「妊娠高血圧症候群」が産後も治らずに続いている場合は、脳出血が起こりやすくなっています。この脳出血が原因で頭痛が起こることもありますが、産後の脳出血は、発症と同時に意識を失うことが多いようです。また、頭痛に、片麻痺や言語障害、立てない・歩けない、視覚障害などを伴うこともあります。

このように、高血圧は始めは無症状でも、気づかないうちに全身に影響が及び、命に関わることがある怖い病気なのです。

妊娠高血圧症候群は産後に治る?

さて、高血圧といえば、妊娠中に「妊娠高血圧症候群」という病名を耳にしたことがあるかもしれません。これと産後の高血圧は何か関係があるのでしょうか。

基本的には妊娠が終われば改善する

妊娠高血圧症候群は、出産して妊娠が終わればたいていは急速に良くなっていきます。そのため、妊娠高血圧症候群によってママと赤ちゃんが危険にさらされた場合は、帝王切開や分娩誘発によって出産を早めることもあります。

産褥期は血圧が上がりやすいので要注意

ただし、妊娠高血圧症候群が重症化した人や、妊娠34週未満で妊娠高血圧症候群を発症した人は、産後も症状がなかなか改善しないことがあります。特に、産褥期は血圧が上がりやすいため、産後3~6日で血圧がピークに達することもあるのです[*4]。

妊娠高血圧症候群と診断されたママは、産後も血圧に注意しつつ、できるだけ産後に無理をしないように心がけたいですね。

妊娠高血圧症候群については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎妊娠高血圧症候群の症状と治療法
▶︎妊娠高血圧症候群を予防!妊婦が血圧を下げる方法とは

産後の高血圧の対処法は?

ママが産後の高血圧で、育児のサポートをするパパ
Lazy dummy

産後は赤ちゃんの授乳やお世話で睡眠不足が続くため、血圧が上がりやすくなっています。

ママの命を守り、元気に赤ちゃんのお世話を続けていくためにも、産後の高血圧は放置しないで次のように適切に対処していきたいですね。

1. 軽く見ず、引き続き治療を受ける

妊娠高血圧症候群と診断された人は、産後12週以降も高血圧が続く可能性があります。産後も受診を続け、必要な場合は主治医の指示に従って降圧剤を飲み続けるようにしましょう。

母乳をあげていても安全に使用できる降圧剤もあります。受診の際は授乳中であることを必ず伝え、心配事がある場合は主治医に遠慮せず聞いてみてくださいね。

なお、降圧剤含め、授乳中も安全に使用できると考えられている薬は、以下のサイトで確認することができます。

▶︎国立成育医療研究センター 授乳中に安全に使用できると考えられる薬- 薬効順 -降圧剤

2. 食事療法と安静を心がけながら経過に注意する

さきほども触れた通り、妊娠高血圧症候群では、産後12週以降も高血圧が続く可能性があり、その場合、薬による治療以外では、食事療法(減塩など)と自宅での安静を指示されるでしょう。

十分に睡眠をとり、ストレスを溜めない生活を心がけて血圧が正常値に戻るか観察することになります。重症の場合は入院して安静治療となることもあります。

なお、塩分は水分を体内に留めてしまうため、血液量を増やすとともに、血管を収縮させて血圧を上げます。1日1g減塩することで、収縮期血圧は約1mmHg低くなるとも言われています[*5]。主治医の指示に従って、減塩をはじめとした食事療法も行いましょう。

3. 育児や家事をがんばり過ぎないで

高血圧の原因の1つに、寝不足があげられます。また、精神的なストレスも血管を収縮させて血圧をあげてしまいます。

赤ちゃんの授乳やお世話は大変ですが、ママ1人でがんばり過ぎていると、寝不足になったりストレスがたまって、血圧が上がりやすくなってしまいます。

産後の高血圧がわかったら、パートナーや祖父母などの家族に協力してもらったり、一時保育などの地域サービスも積極的に利用して、できるだけ無理しないでくださいね。

まとめ

産後は育児で睡眠不足になりやすく、慣れないお世話が続いて血圧が高くなりやすい時期です。高血圧は自覚症状がありませんが、様々な病気を引き起こします。

妊娠高血圧症候群はたいてい産後に改善されますが、産後も血圧が高めで気になったらかかりつけの病院で相談しましょう。授乳中でも使える薬を処方してもらったり、毎日の暮らしで気をつけるポイントや工夫を教えてもらえます。

育児や授乳、家事などを一人でがんばり過ぎると、血圧にも影響します。家族の協力や地域サービスなども積極的に利用して、心身のストレスや疲れをできるだけ抑え、赤ちゃんと一緒に笑顔の毎日を送ることが血圧の改善にも大切です。

(文:大崎典子/監修:窪 麻由美先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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