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2022年04月25日 15:29 更新

【医師監修】痛い? 赤ちゃんが何度も耳を触る理由と注意したい病気とは

赤ちゃんが繰り返し耳を触るときは、髪の毛が触れていたり、耳垢が詰まっている可能性がありますが、耳の病気や異常を疑ってみる必要もあります。ここでは、赤ちゃんが耳を触るときに考えられる理由と、関連する病気などについて紹介します。

まずは「髪の毛」「耳垢」をチェック!

赤ちゃんはなぜ耳を触るのか
Lazy dummy

赤ちゃんが耳を触っているとき、最初にチェックしたいことは、耳に何かが触れているのではないかという点です。

髪の毛を切ってあげる

よくある理由は、生まれたばかりのときは短かった髪の毛が伸びてきて、耳にかかるようになったことです。そのようなときは、まず髪の毛を短く切り、すっきりさせてあげましょう。それで赤ちゃんが耳に触れなくなったら、原因は髪の毛だったということです。

耳垢のお手入れは、耳の入口まで

何かが耳についているのではないかと赤ちゃんの耳をのぞいたときに、耳垢(みみあか。じこう)が溜まっているのに気づくことがあります。「さっそく耳かきで取ってあげよう!」というのは間違い。安易な耳かきはトラブルの原因となります。

もともと耳には自浄作用があって、奥のほうから徐々に耳の入口に向かって耳垢が運ばれてくるような仕組みになっています。安易に耳かきをすると、反対に耳垢を耳の奥へ押し込んでしまうことになります。また、耳の中の皮膚はとてもデリケートなので、簡単に傷ついてしまいます。

その結果、後から解説する外耳炎などの病気になってしまったり、場合によっては鼓膜を破ってしまうことも。また、耳垢のように見えても耳垢ではなく、炎症によってできた痂皮(かさぶた)のこともあり、その場合は炎症の原因を治療しなければいけません。

綿棒を使い、周囲に子供がいないときに

赤ちゃんの耳掃除は、耳の穴のほんの入口や周りだけを綿棒などで拭うようにしてください。ヘアピンなどを使ってはいけません。また、周囲に子供がいるときは、耳かきをしないようにしましょう。万一、子供がぶつかってきたら、その衝撃で綿棒が耳の奥に入ってしまい、思わぬ事故を起こしかねないからです。

耳垢が硬くて取りにくいときは、綿棒にオリーブ油を含ませてそれを耳垢に塗り、しばらく時間をおいてみてください。耳垢が柔らかくなり、取れやすくなると思います。それでもとれなければ、無理は禁物。耳鼻科を受診して取ってもらいましょう。

なお、耳介(じかい。耳の外側部分)は、湿らせたガーゼで、溝や裏側などを拭ってあげてください。

赤ちゃんの耳掃除について、くわしくは下記の記事も参照してください。

耳の病気や異常の可能性も

耳の病気や異常のために、痛みやかゆみが起きていることが原因のこともあります。

耳の構造のイメージ (右耳を前から見た図)
耳の構造のイメージ (右耳を前から見た図)

外耳炎

耳の穴の入口から鼓膜までを「外耳」、または「外耳道」といいます。その外耳に細菌などが感染して炎症が起きる病気が「外耳炎」です。原因の多くは、不適切な耳掃除。綿棒を耳に入れたときに色が着いて臭いがする場合は、外耳炎が起きている可能性もあります。また、後述の中耳炎が外耳にまで拡がって外耳炎になるケースもあります。

外耳炎が起きたときの赤ちゃんの症状

・耳に触れると痛がる
・耳の穴の部分が腫れている
・耳だれが増えた
・耳が臭う

治療の際は、抗菌薬の点耳、内服、軟膏などが処方されます。 耳だれは適宜、ガーゼやティッシュで拭き取ってあげてください。

異物が入っている

赤ちゃんや子供は、手にした異物を口に入れてしまうことがありますが、それだけでなく、異物を耳や鼻の穴に入れてしまうことも。

耳の中の異物として発見されるものには、「プラスチックの玉」「ビーズなどのおもちゃ」「豆」「綿棒や耳かきの一部」「昆虫」などが挙げられます。これらのうち、昆虫については子供で多く、赤ちゃんは耳毛が多く昆虫が入りづらいため、少ないようです。

一方、赤ちゃんでは「おもちゃ」と「豆」が多いと言われています。どのような異物であっても見つかり次第、耳鼻科で摘出してもらうことになります。とくに「ボタン電池」は、すぐに摘出する必要があります。

なお、異物が入っても痛みがあることは少なく、赤ちゃんが耳を触る仕草などでようやく気づくことがあります。気づくのに時間がかかると、外耳炎を起こし耳だれがひどくなったり、異臭がしたりするようになってきます。

耳痩孔(じろうこう)

皮膚の表面に穴があり、それが体の中に向かって管状に続いているものを「瘻孔」といい、耳の周辺にあるのが「耳瘻孔」です。胎児期に耳ができる過程での異常が原因と考えられています。頻度的には珍しいものではなく、左右の耳にある場合と片方の耳のみにある場合があります。

耳瘻孔があっても、とくに症状がなければ治療する必要はありません。ただ、この穴に細菌などが感染して炎症を繰り返すような場合には、手術での摘出が勧められます。

外耳道の湿疹

耳の穴の中は通気が悪いので、湿疹ができやすい場所です。また、アトピー性皮膚炎などアレルギーのある赤ちゃんではとくに、その影響で外耳道に湿疹ができることがあります。

急性中耳炎

ここまでは外耳の病気や異常について解説してきましたが、ここからは「中耳」の病気について解説します。

「中耳」とは、外耳よりも奥に位置する部分で、鼓膜の奥です。鼓膜はご存知のように、音の波を振動に変換するところです。「中耳」はその鼓膜の振動を、より耳の奥深くの「内耳」へと伝える中間地点です。「内耳」では振動を神経の刺激に変換し、脳へと伝えています。

さて、その中耳に起きる病気として、赤ちゃんでは急性中耳炎がよくみられます。その頻度は、1歳までに62%、3歳までに83%が1回はかかるとされるほどで、子供の身近な病気と言えます[*1]。

中耳にウイルスや細菌が感染して炎症が起きる病気が「中耳炎」です。ウイルスや細菌は、「耳管」という中耳と鼻の奥を結んでいる管を通して侵入してきます。そのため中耳炎は、多くの場合、上気道炎(かぜ)に前後して起こります。

中耳炎の症状は、急に始まる耳の痛み、耳だれ、耳が詰まった感じ、難聴、発熱などです。赤ちゃんはそれらを訴えることができないので、泣き止まなかったり、不機嫌になったり、耳を触ったりします。中耳炎の治療では抗菌薬を使ったり、鼓膜切開が行われることがあります。疑わしい場合は、医師に診てもらいましょう。

赤ちゃんの中耳炎の詳細は、下記の記事も参照してください。

滲出性中耳炎

中耳に滲出液(組織から染み出してくる液体)が溜まっている状態が、「滲出性中耳炎」です。さきほど解説した「耳管」がつぶれるなどして、中耳に滲出液が溜まることで起こります。

滲出性中耳炎になると、耳が聞こえにくくなることはありますが、痛みはあまりありません。

鼻や喉の病気が基にあることが多く、それらを治療することで中耳の滲出液も減ってきます。なかなか治らない場合には、鼓膜を切開して浸出液を吸引したり、鼓膜に滲出液を排出するためのチューブを設置したりします。

滲出性中耳炎について、くわしくは下記の記事も参照してください。

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)

流行性耳下腺炎は、耳の下が腫れるウイルス感染症で、その特徴的な見た目から「おたふくかぜ」とも呼ばれます。1歳からは予防接種を受けられますが、予防接種を受ける前に発症することもあります。

通常、耳の下の腫れは症状が出てから2~3日目あたりがピークで、1週間~10日ほどで引いていきます。このウイルスに効く薬はないので、発熱などの症状を和らげる治療を行います。なお、腫れが引くまでの間、痛みのために食欲がなくなることがあります。

ウイルスが内耳に感染して難聴になったり、脳炎、髄膜炎などを引き起こすこともあります。

医療機関を受診する目安

赤ちゃんが耳を触る時の受診の目安
Lazy dummy

「赤ちゃんが耳を触るとき」に考えられる原因を解説してきました。病院にはどんなときに連れて行くべきなのでしょうか。

発熱など、耳を気にする以外の症状があるときは受診を

「赤ちゃんが耳を触る」というだけで医師に診てもらうのは、少し気が引けますね。乳児健診の際に相談するとよいでしょう。

ただし、赤ちゃんが耳を触るだけでなく、次のような症状もある場合には、健診の日を待たずに医療機関を受診してください。

赤ちゃんが耳を触るときの受診の目安

・熱がある
・不機嫌
・耳だれが多くて臭う
・耳の下や周りが腫れている
・耳垢が詰まっているのが見える

まとめ

赤ちゃんが耳を触るとき、単に耳に何かが触れている場合と、耳介または耳の中に病気や異常が起きている場合があります。いずれにしても赤ちゃんは痛みや不快感を言葉で訴えることができません。ママやパパが気にかけてあげ、耳だれや腫れ、不機嫌などもある場合は、早めに医療機関に連れて行きましょう。

(文:久保秀実/監修:丘 逸宏先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]小児急性中耳炎診療ガイドライン.臨床検査62(1),p22,2018 [*2]南山堂「母乳育児感染-2版」中耳炎.p31,2012

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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