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2022年04月21日 13:28 更新

【医師監修】赤ちゃんの耳が臭い…! これって病気? 考えられる原因と受診の目安

赤ちゃんの耳が臭うとき、その多くは「耳垢(じこう。みみあか)」が原因です。ただし、外耳炎や耳の中の異物などが原因となっている場合もあります。ここでは、赤ちゃんの耳が臭くなる原因と対処法を紹介します。

臭いの原因の多くは耳垢

赤ちゃんの臭いの原因になる耳垢
Lazy dummy

最初に、赤ちゃんの耳の臭いの原因の多くを占める「耳垢」が、どのようにできるのかについてお話しします

耳垢はどうしてできるの?

「垢(あか)」とは、体の汚れのこと。耳垢は、耳の中の「外耳」という部分の古くなった皮膚の細胞やゴミ、そして分泌腺からの分泌物などが溜まったものです。

耳の中の構造

ここで耳の中の構造、特に外耳の構造を簡単に解説します。

耳は、耳の穴から鼓膜までの「外耳(外耳道)」と、鼓膜に伝わった音の振動を耳小骨という小さな骨を通じて内耳へ伝える「中耳」、そして音を神経の信号に変換したり、頭の傾きを感知したりする「内耳」という3つの部分に分かれています。

外耳道の長さは大人の場合35mmほど[*1]ですが、赤ちゃんでは大人の半分ほどの長さしかありません[*2]。外耳道の表面は皮膚で覆われていて、外側の3分の1は軟骨部、内側の3分の2は骨部と呼ばれます。外側の軟骨部には、脂腺や汗腺などの分泌腺があります。耳垢は、おもにこの外耳道の軟骨部付近でつくられます。

耳の構造のイメージ (右耳を前から見た図)
耳の構造のイメージ (右耳を前から見た図)

耳垢は人によって異なる

耳垢の量や性状(色や粘性など)には個人差があります。例えば、黄色い耳垢が多い人、黒っぽい耳垢が多い人、ベトベトしている人、カサカサしている人などの違いがあります。

このような個人差は、外耳道にある分泌腺からの分泌物の量や組成が大きく影響しています。ベトベトした耳垢を「湿性(軟性)」、カサカサした耳垢を「乾性(硬性)」と呼びますが、日本人は遺伝的背景から乾性の耳垢が多く、湿性は約20%と言われています[*3]。もちろん、乾性、軟性どちらでも全く問題ありません。

耳垢には役割がある

垢と聞くときれいに掃除したくなりますが、実は、耳垢には耳を保護する役割があるとされています。

耳垢は酸性で殺菌作用があるので細菌やカビなどが外耳道で増えるのを防いだり、耳垢に含まれている皮脂が、外耳道の表面を保護してくれるのです。また耳垢には苦味があり、虫などが耳の中に進入するのも防いでいると言われています。

耳垢は耳掃除しなくても自然と出てくる

なお、外耳道で古くなった皮膚の細胞は鼓膜から耳の穴の方向へと少しずつ移動しており、最終的には耳垢になって自然と耳の外に排出されます。ですから、「耳の中」は基本的には掃除しなくて良いのです。正しい耳掃除は耳の「入り口」や「周り」をぬぐうことです。

赤ちゃんの耳掃除について、くわしくは下記の記事を参照してください。

赤ちゃんの耳垢はベトベトしていることが多い

耳垢には人によって異なる特徴があると説明しましたが、赤ちゃんの耳垢に何か特徴はあるのでしょうか。

赤ちゃんの耳垢は、「ベトベトした湿性タイプ」であることが多いようです。耳垢がとくに柔らかい赤ちゃんでは、膿のような白っぽい耳垂れが出て、中耳炎と間違われることもあります。ただしこの場合、中耳炎でみられるような発熱はなく、もちろん診察を受ければ耳垢とわかります。

さきほど、湿性、乾性の違いは遺伝的な背景によるものだと書きましたが、赤ちゃんに湿性の耳垢が多いのは、遺伝的な体質というよりも、むしろ「赤ちゃんだから」という理由のほうが大きいでしょう。

その理由の1つは、大人よりも「外耳道が狭いために分泌物が溜まりやすい」ということです。2つ目は、「皮膚の代謝が活発であること」。他にも、涙や入浴の際のお湯、あるいは授乳時のミルクといった液体が耳に入りやすいこと、などが考えられます。

左右のどちらか一方の耳に耳垢が出やすいことも

赤ちゃんでは、左右いずれかの耳の耳垢がとくに多いということもあります。そのような場合、耳垢の多いほうの耳に何か病気が起きている可能性もありますが、意外に多い原因として、「左右どちらか一方のみを向いて眠る癖」が挙げられます。いつも頭の下側になる耳は、ベトベトした湿性の耳垢が多くできやすくなるためです。

耳垢が詰まる「耳垢塞栓」では受診して

耳垢は基本的には自然と出てくるものですが、何かの理由で自然に出てこなくなることもあります。耳垢が溜まって外耳道を塞いでしまった状態を「耳垢塞栓(じこうそくせん)」と言います。

耳垢塞栓は、耳の中まで綿棒で掃除するために起こることが多いとされています。綿棒により、耳垢が耳の中へ押し込まれてしまうからです。ほか、もともと耳垢の量が多い、指で耳をこすること、耳栓の使用などでも起こります。

赤ちゃんに多いベトベト湿った耳垢は自然に排出されにくいので、耳垢塞栓になることがあります。耳垢塞栓になると、聴力の低下、耳が詰まった感じなどの不快感といった症状がありますが、赤ちゃんの場合はうまく訴えられません。定期的に耳の様子を確認し、耳の中に耳垢があったら、家庭で無理に取ろうとせず、耳鼻科を受診し取ってもらいましょう。

赤ちゃんに耳を触る様子が見られて気になるときは、下記の記事も参考にしてください。

【医師監修】赤ちゃんが耳を触る理由と注意したい病気とは?
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/8647

その他の原因

ここまでは、赤ちゃんの耳の臭いの原因として多い、耳垢について解説してきました。ここからは、臭いの原因として考えられるその他の病気や異常について解説します。

外耳の病気や異常

まずは「外耳」に起きる病気や異常についてお話しします。

外耳炎

外耳道に細菌が感染して炎症が起きる病気です。耳から臭いがしたり、耳垂れが増えたり、耳に触れると痛がったりします。耳の入口のあたりが腫れて見えることもあります。

これも原因として多いのは、耳掃除。幼児期になると、水泳などで生じることもあります。また、後から解説する中耳炎が外耳に拡がって外耳炎になることもあります。

治療方法は、受診して処方してもらう、抗菌薬の点耳、内服、軟膏など。治るまで家庭でできることは、耳垂れを清潔なガーゼやティッシュで拭き取ってあげることです。

異物が入っている

耳の中に異物が入っていることが、耳の臭いの原因になっていることもあります。

異物は、おもちゃのプラスチック製の玉、豆、綿棒や耳かきの一部、昆虫、ボタン電池などがよくあるケースです。赤ちゃんが成長し一人で動けるようになると、おもちゃや豆を入れてしまうことが増えます。一方、小さいうちは耳毛が多いため、昆虫の侵入は少ないと言われています。これらのうち、治療の緊急性が高いのは、昆虫とボタン電池です。

症状は、無症状の場合もありますし、痛みを生じることもあり、一概に言えません。小さい子供の場合、耳を気にする仕草をしていることで、保護者が気づくことが多いです。
異物に気づかずにいると、それが原因で外耳炎が起きて、耳だれや臭いを生じたりします。気づいたら、耳鼻科を受診してください。

耳痩孔(じろうこう)

「瘻孔(ろうこう)」とは、体の内部と体の表面が管のような組織でつながっていて、皮膚や粘膜に孔(穴)ができている状態のことです。その瘻孔が耳にあるものを「耳瘻孔(じろうこう)」と言います。

お母さんのおなかの中で耳がかたちづくられる時に生じる生まれつきのもので、耳の先天的な異常として比較的頻度の高いものです。左右両方の耳にみられることもあります。

瘻孔があっても、症状がなければ治療する必要はありません。ただし、細菌などに感染して赤く腫れたり、膿が出る炎症を起こしたことがある場合、繰り返すことが多いので治療がすすめられます。

治療は、手術で管状の組織を取り出すことです。

外耳の湿疹

アトピー性皮膚炎などアレルギーのある赤ちゃんでは、外耳道に湿疹ができやすく、その影響で、耳垢が増えることも考えられます。

中耳の病気

耳を気にする赤ちゃん
Lazy dummy

続いて「中耳」の病気についてお話しします。中耳とは、最初に解説したように、鼓膜の内側にあり、鼓膜の振動を、耳のより奥の内耳へ伝えるところです。

なお、中耳と外耳とは鼓膜で隔てられているため、鼓膜に穴が開いたりしていなければ、普通、外部から水や異物が入ることはありません。その点が、外耳に起きる病気や異常と大きく異なります。

急性中耳炎

中耳にウイルスや細菌感染が起きて生じるのが「急性中耳炎」で、赤ちゃんの発熱の原因としてよくみられます。1歳までに62%、3歳までに83%が1回はかかるというデータがあり、子供にとても多い病気です[*4]。

症状は、発熱、耳の痛み、耳だれ、耳の閉塞感、難聴など。赤ちゃんがかかると、これらの症状を訴えられないので、泣いたり、不機嫌になったり、耳を気にする仕草をしたりします。

ところで、鼓膜で外耳と隔てられている中耳がウイルスや細菌に感染するのは、中耳と鼻の奥を結んでいる「耳管(じかん)」を経由して、鼻から病源体が入ってくるからです。ですから中耳炎の多くは上気道炎(かぜ)に前後して起こることが多いです。

治療では、細菌感染が疑われる場合は、抗菌薬が使われます。炎症部分を切開して膿を出すこともあります。

滲出性中耳炎

中耳炎の中でも、中耳に滲出液(組織から染み出した液体)が溜まってくる病気です。耳が聞こえにくくなりますが、痛みはあまりありません。鼻や喉の病気が原因で、耳管がつぶれてしまうことで起こることが多いです。

ですから鼻や喉の病気を治すことで、滲出性中耳炎も軽快します。自然に治らないときは、鼓膜を切開して滲出液を吸引したり、難聴により言葉の発達が遅れている場合は鼓膜内に滲出液を排出させるチューブを入れることもあります。

滲出性中耳炎について、くわしくは下記の記事も参照してください。

赤ちゃんの中耳炎の詳細は、下記の記事も参照してください。

耳が臭くて病院に行ったほうが良いのはどんなとき?

赤ちゃんの耳が臭いことに気付いたら、医療機関を受診したほうが良いのでしょうか?

他にも症状があるときは受診して

ここまでに解説したように、赤ちゃんの耳の臭いの原因は、「耳垢」による場合と、その他の病気や異常による場合とがあります。

耳の臭いに加えて、次のような症状がある場合は、耳鼻科を受診しましょう。

耳の臭いが気になるときの受診の目安

・熱がある
・不機嫌
・耳の周りが腫れている
・耳垢が詰まっているのが見える
・赤ちゃんが耳を気にしているようだ

まとめ

赤ちゃんの耳の臭いは、その多くが生理的なものです。耳垢が気になっても、通常は自然に排出されるので、耳の中まで掃除してはいけません。ただ、耳鼻科で取ってもらわないといけないほど耳垢が詰まっていたり、病気や異物が原因で臭いがすることもあるので、気になるときは医師に診てもらいましょう。

(文:久保秀実/監修:丘 逸宏先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
[*2]Keefe DH et al.: Pressure transfer function and absorption cross section from the diffuse field to the human infant ear canal, J Acoust Soc Am, 1994;95(1):355-371.
[*3]日本耳鼻咽喉科学会/一般の皆さん/子どものみみ・はな・のどの病気Q&A/耳垢
[*4]小児急性中耳炎診療ガイドライン.臨床検査62(1),p22,2018

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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