【医師監修】赤ちゃんにマスクは危険⁉ 不要な理由と注意点
新型コロナウイルスの流行で感染症対策が気になる昨今ですが、その一方で「赤ちゃんはマスクをしない方が良い」と言われています。赤ちゃんがマスクをするとどんな危険があるのか、またマスクを使う時の注意点などについても解説します。
赤ちゃんにマスクを着けると危険な理由
「赤ちゃんはマスクをしないほうが良い」という勧めには、どんな背景があるのでしょうか。
2歳未満の子には「窒息などのリスク」が
最近、厚生労働省や国内外の小児科学会が「2歳未満のマスク着用には注意が必要」または「着用させないで」という勧告を出しています。乳幼児、とくに2歳未満の子供の場合は、マスクをすると次のような危険が考えられるからです[*1-3]。
窒息の危険がある
乳幼児がマスクをつけると、マスクによりうまく呼吸ができなくなっても自分で外すことができないなどの理由で、窒息につながる危険性があります。
おう吐したとき窒息する可能性がある
乳幼児は胃腸の働きが未発達でもともと吐きやすいものです。マスクをつけたまま吐いてしまうと、吐いたもので窒息するリスクが高まります。
熱中症になりやすい
マスクをつけていると外気を吸いづらくなり熱がこもって、熱中症になりやすくなります。子供は大人に比べて体温調節の機能が未熟で熱中症になりやすいので、特に注意が必要です。
体調の異変に気付きにくくなる
乳幼児のうちは、息苦しかったり体調が悪かったりしても、それを自分からはっきりと伝えることができません。子供の顔がマスクでおおわれていると、顔色や呼吸の変化が周囲の大人にはわかりづらく、体調に異変が起こっても、見過ごしてしまう可能性があります。
乳幼児は正しくマスクをつけているのが難しい
ここまでで説明したように、乳幼児の場合はマスクをつけることにより、いくつかのリスクが考えられます。さらに、そもそもマスクは感染症対策としてメリットがあるからつけるものですが、そのメリットについても乳幼児の場合はあまり期待できないと考えられます。
なぜなら、乳幼児のうちは、マスクをつけていてもずらしてしまったり手でいじってしまったりと、正しいつけ方ができないことがほとんどだからです。マスクを正しくつけていられなければ、その効果はあまり期待できません。
マスクの効果と正しい着け方
ここまでで、2歳未満の乳幼児のマスク着用は勧められない理由を説明してきました。
それでもやはり感染症予防のために子供にマスクをつけさせたい、と考えるママやパパもいるかもしれません。
ただ、そもそも感染症対策でマスクがどのように役立つのかはご存知でしょうか。ここでおさらいしておきましょう。
マスクの効果って何?
マスクの効果については、新型コロナウイルスの流行でだいぶ注目されていますね。そのため、これまで科学的にはあまりよくわかっていませんでしたが、新型コロナウイルスに関してマスクの効果を調べた研究報告が最近増えてきています(2020年8月末時点)。
「周囲の人に感染させるのを防ぐ」
最近発表されたいくつかの報告では、それぞれさまざまなシチュエーションで新型コロナウイルスに関するマスクの効果が確かめられていると言います[*4]。それらの結果を見ると、とくにマスクは「ウイルスを持っている人が、周囲の人に感染させるのを防ぐ」という効果が大きいようです。
新型コロナウイルスに限らず、インフルエンザや風邪など、「飛沫」によって感染が拡がる感染症はたくさんあります。飛沫は、咳やくしゃみをしたとき以外に、普通に会話しているだけでも空気中に拡がります。
マスクをしていると、こうした飛沫が空中に拡がるのを防ぎ、他の人に達することが少なくなります。そのため、感染の拡がりを抑えることができるのでしょう。
周囲から感染するのを防ぐ効果は?
新型コロナウイルスに関して言えば、「マスクをすることで周囲から感染するのを防ぐ」効果も多少あるようです。とはいえ、これまでの報告によれば「周囲の人に感染させるのを防ぐ」ことに比べると、その効果はそこまで高くないようです[*4]。
なお、顔とマスクとの間には隙間があるので、ウイルスなどを含んだ飛沫の侵入を完全に防ぐことはできません。さきほども説明したように、乳幼児の場合はとくにマスクをきちんと着けていることが難しいので、病気にかかるのを防ぐためにマスクを使ったとしても、その効果はさらに低くなるだろうということが推測できます。
マスクの正しい着け方
さて、マスクをしても、正しくつけていないとその効果は期待できません。
大人やマスクを着用したほうが良い年齢の子供がマスクをつける際の、正しいつけ方についても確認しておきましょう。
マスクの正しい着け方[*5]
1. マスクをつける前に手を洗う
2. マスクを鼻と口にかぶせ、顎の下まで包み込む。
3. 頬にもぴったりフィットするようにする。
4. スムーズに呼吸できるかどうか確認する
なお、マスクを着脱するときは紐の部分を持つようにします。
大人が使うときも熱中症などに注意を
マスクをつけていると、熱がこもって熱中症になりやすくなります。特に気温や湿度が高い時には注意したいですね。
熱中症を防ぐために、夏場や暑い場所では次のように、無理してつけ続けないないことが大切です。
高温・多湿な場所でマスクを着用するときの注意点[*6]
・屋外で少なくとも2m以上人と離れている場合は、マスクをはずす
・マスクをつけたままで、負荷の強い作業や運動はしない
・のどが渇いていなくてもこまめに水分を取る
・ほかの人と十分な距離を取って、マスクを一時的にはずして休憩する
・外出するなら、熱い日や時間帯は避ける。服装も涼しく過ごせるものを選ぶ
2歳未満にマスクはおすすめできない
ここまでで説明した背景があるので、小児科学会などの専門家団体は「2歳未満の乳幼児のマスク着用は危険がある/着けさせないで」と訴えています。WHO(世界保健機関)は「5歳以下の子供はマスクを着用する必要はない」とも表明しています[*7]。
どうしても着けなければならない場合は「目を離さない」
それでも、たとえば同居中の家族が感染しているなど、何か特別な事情があって乳幼児がマスクをつけなければならない場合は、ママやパパ、まわりの大人がそばで見守り、目を離さないことが大切です。
マスクをつける場合は子供の顔に合ったサイズで、ほどよいフィット感のものを用意してあげましょう。また、子供にもマスクが重要な理由、正しいつけ方などを少しでも理解できるよう教えてあげられるといいですね。
まとめ
新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症は、ウイルスを含んだ飛沫が咳やくしゃみ、おしゃべりなどによって拡がり、それを他の人が吸い込むことでますます感染が拡大していきます。
マスクをかけると飛沫が飛び散りにくくなって、感染症の流行をある程度抑えることができますが、ここで説明したように2歳未満の小さな子供には心配な点がいくつかあるので、できるだけマスクはつけさせないようにしましょう。もしも特別な事情があってどうしてもマスクをつけなければならないのだとしたら、ほどよいサイズとフィット感のものを選び、危険がないように着用中に目を離さないことが重要です。
大人もマスクを使う時には熱中症に気をつけ、他の人との距離などを確認して、安全につけ外しすることが大切です。健康を守ってくれるマスクですが、適切な効果を得るためには注意点があるのです。正しい使い方で活用していきたいですね。
(文:大崎典子/監修:梁 尚弘先生)
※画像はイメージです
[*1]「乳幼児のマスク着用の考え方」日本小児科学会
[*2]米国小児科学会 (AAP):2歳未満の子どもには顔を覆う布(マスク)を使用しないでください。
[*3]米国疾病予防管理センター(CDC):赤ちゃんや2歳未満の子どもには、窒息のおそれがあるため、顔を覆う布(マスク)を使用しないでください。
[*4]忽那賢志:Yahoo! JAPANニュース 新型コロナ マスク着用による感染予防の最新エビデンス | 2020年7月23(木)
[*5]CDC:マスクの着用方法
[*6]「『新しい生活様式』における熱中症予防行動のポイントをまとめました」厚生労働省
[*7]WHO:Q&A:COVID-19に関連する子供とマスク 2020年8月21日
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます