【医師監修】赤ちゃんの便秘と母乳との関係性とは?
赤ちゃんの便秘と母乳には関係があるのでしょうか? そもそも赤ちゃんの便秘はどんなものなのでしょうか? 今回は、赤ちゃんが便秘かどうかの見分け方や、便秘になった時のケア、便秘を起こす病気についても説明します。
赤ちゃんの便秘ってどんなもの?
うんちが「1週間に2回以下なら便秘」と考える
赤ちゃん(1歳未満の乳児)のうんちの回数は、もともと個人差が大きいうえ、母乳かミルクか、また月齢によっても変わります。そのため、赤ちゃんの場合、何日便が出なければ治療すべき「便秘症」であるとするかは、専門家でもはっきり言うのが難しいと言います。
健康な赤ちゃんの排便回数
月齢 | 1週間の排便回数 | 1日の排便回数 |
---|---|---|
0~3ヶ月(母乳栄養児) | 5~40回/週 | 2.9回/日 |
0~3ヶ月(人工乳栄養児) | 5~28回/週 | 2.0回/日 |
6~12ヶ月 | 5~28回/週 | 1.8回/日 |
ただ、ほとんどの赤ちゃんは3日に1回以上はうんちをするので、「週に2回以下しか出ない」などの場合に治療が必要な「便秘症」と考えられることが多いようです。また、これより多い回数の排便があっても、「うんちをするとき痛そうだったり、うんちが硬い」場合も便秘と考えられます。これらに加え、「うんちが出なくてお腹が張っている」という症状も見られるでしょう[*1]。
軟らかいうんちなのに出すのが大変なときも
赤ちゃんは、うんちが軟らかい状態なのに、排便のたびに顔を真っ赤にしていきんだり、泣いたりすることがあります。それでも、毎日のように軟らかいうんちが出ていれば、便秘ではなく「ディスケジア」という状態と考えられます。
うんちを出すときは、横隔膜と腹筋を収縮させ腹圧を高めると同時に、骨盤底の筋肉(外肛門括約筋、恥骨直腸筋、肛門挙筋)をゆるめる必要があります。これが「いきむ」ということですが、赤ちゃんはまだ上手にできません。こうした理由でなかなかうんちが出せない状態のことは、「ディスケジア」と呼ばれています。
ディスケジアは病気ではなく、赤ちゃんの成長とともに自然と治っていくものなので、とくに治療はいりませんが、うんちがなかなか出ない時には、綿棒などで肛門を刺激してあげると出しやすくなります。
赤ちゃんが踏ん張っていても出なくて大変そうな時には、ぜひ綿棒で助けてあげてくださいね。
赤ちゃんの便秘と母乳には何か関係があるの?
さて、赤ちゃんの便秘がどのようなものかはここまでで説明しましたが、赤ちゃんの便秘に母乳は何か関係するのでしょうか?
母乳やミルクを十分飲めないことも便秘の原因の1つ
便秘の原因の1つに、母乳やミルクが不足していることがあります。
特に母乳は飲んだ量がわかりにくいので、母乳や、ミルク・母乳の混合の場合は、十分に飲めているかどうか注意が必要です。
「赤ちゃんがなかなか乳首を離さない」
「母乳をあげたのにすぐまだおっぱいを欲しがる」
などの様子が見られたら、母乳が足りているかどうか考えてみましょう。母乳が十分に出ていても、赤ちゃんがまだ上手に飲めなくて飲み足りていないこともあります。
飲み足りているかどうか気がかりな時には、1~2週間ごとに赤ちゃんの体重を調べてみるとわかりやすいです。体重が何週間も変わらなかったり減っていたら、母乳やミルクを飲む量が足りないのかもしれません。
ただ、昨日と今日とで体重が変わらないこともあります。排尿と排便によっても影響があります。哺乳量が気になる場合でも、毎日ではなく1~2週間ごとを目安に計測すると良いでしょう。
母乳が足りている目安は?
なお、生後6週間までの赤ちゃんで「母乳が足りている」場合は、次のようなサインが見られます [*3]。
・体重が1週間に平均で140~210g増えている
・1日に8回以上飲んでいる
・色の薄いおしっこが1日6~8回出ている
・うんちが1日3~8回出ている
・肌に張りがあり、皮膚の色がよく、元気がある
こんな時は受診を
母乳やミルク不足が原因かどうかにかかわらず、赤ちゃんが便秘を繰り返していたり、体重が増えにくかったり、よく吐いたり、お腹がパンパンに張っているなどの症状が見られたら、念のため小児科で診てもらってくださいね。
赤ちゃんに便秘があり、下記にもあてはまるような場合は受診しましょう。
赤ちゃんに便秘があるときの受診のめやす
・生まれてから24時間以内にうんち(胎便)が出なかった
・体重が増えない、減った
・おう吐を繰り返す
・血便が出た
・お腹がふくらんでいる
・お腹を触るとしこりのようなものが触れる
・肛門の位置や形に異常があると言われたことがある
赤ちゃんの便秘のケアって?
赤ちゃんの便秘の治療方法は、まだしっかりと定まっていません。
そこで、次の方法を試しながら改善していくことになります。
自宅でできるケア
肛門刺激
綿棒にワセリンなどを塗り、肛門に入れやすくします。肛門から綿棒を1~2cm差し入れて刺激します。
肛門を傷めないように注意しながら優しくやれば、毎日行っても大丈夫です。
果汁
離乳食開始後の赤ちゃんの場合は、プルーン、リンゴ、かんきつ類などの果汁を3倍くらいに薄めたものを、約10~20ml飲ませましょう。あげ過ぎると離乳食をしっかり食べられなくなるので、量に注意しましょう。
ヨーグルト
離乳食開始後の赤ちゃんの場合、毎日少しずつヨーグルトをあげると、便通がよくなることがあります。
おかゆや野菜をスムーズに食べられるようになり、魚や豆腐などのたんぱく質にも慣れたら少しずつ試してみましょう。
糖類下剤
肛門刺激をしたり果汁をあげても便秘が続いていたら、この方法を試してみましょう。
マルツエキスやラクツロースなどの糖水をあげると、うんちがやわらかくなり、出やすくなります。
病院で相談して行うケア
糖類以外の下剤
自宅でできるケアを試しても効き目がない場合は、小児科でピコスルファートナトリウム(ラキソベロンなど)や酸化マグネシウム(カマ、カマグなど)などの下剤が処方されることがあります。
かかりつけの小児科で処方されたものを、指示通りあげるようにしましょう。
浣腸
時々浣腸するだけで便秘がなくなったり改善する赤ちゃんには、うんちが出なくなった4~5日目に浣腸するのも1つの手です。
ただし、浣腸も、行う場合は事前に必ずかかりつけの小児科に相談してから試してみてくださいね。
まとめ
赤ちゃんのうんちが1週間に2回以下しか出なかったり、硬くて出にくい、お腹が張るなどの症状があったら、便秘と考えられます。母乳やミルクを飲む量が少ないために、便秘になることもあります。中でも母乳は赤ちゃんがどれだけ飲んだか確認しにくいものです。不足していないか調べる場合は、1~2週間に1度体重を測ります。便秘の症状が長引く場合には、小児科で相談して改善していきましょう。便秘では、綿棒浣腸や、果汁、ヨーグルト、糖水を与えるといったホームケアもありますが、なかなか改善しない場合には、小児科に相談して下剤や浣腸を使うのも1つの手です。赤ちゃんのお腹をすっきり楽にしてあげ、元気に毎日を送れるようにしてあげましょう。
(文:大崎典子/監修:丘 逸宏先生)
※画像はイメージです
[*1]「こどもの便秘 ―正しい知識で正しい治療を―」小児慢性機能性便秘診療ガイドライン作成委員会
[*2]「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会編集
[*3]水野克己ほか『これでナットク母乳育児』監修・水野克己 編著・本郷寛子・瀬尾智子・水野紀子(へるす出版)
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます