【医師監修】赤ちゃんのよだれかぶれはどうしたら治るの? 予防と対処法
よだれによる接触皮膚炎の一種である、「よだれかぶれ」。赤ちゃんの口の周りがカサカサしたり、ブツブツができたりしますが、そもそもなぜ赤ちゃんはよだれでかぶれるのでしょう。赤ちゃんのよだれかぶれの原因と予防法、対処法を調べました。
なぜ赤ちゃんはよだれでかぶれる?
まずは、赤ちゃんがよだれでかぶれる理由を知っておきましょう。
なぜ、よだれでかぶれるのか
赤ちゃんによくみられる「よだれかぶれ」は、よだれが皮膚につくことで炎症を起こす、「接触皮膚炎」の一種です。
「接触皮膚炎」とは、なんらかの刺激物質や抗原(よだれかぶれの場合はよだれ)が皮膚に接触することで発症する、湿疹を伴う炎症反応のこと。かゆみ、ヒリヒリ感、赤み(紅斑)といった症状から始まり、進行するとブツブツや水ぶくれなどの湿疹が出ることがあります。ちなみにおむつかぶれも接触性皮膚炎の一種です。
赤ちゃんの皮膚はとても薄く、新生児では大人の半分しかありません。また、新生児期を過ぎたころには皮脂分泌量がとても少なくなるため、「外からの刺激に弱く、かぶれやすい」のです。よだれかぶれは、離乳食が始まる乳児期の後半~2歳くらいまでの、よだれの多い月齢の子供に多くみられます[*1]。
よだれかぶれを発症したら、のちほど説明する、よだれかぶれ予防のためのケアを行うと多少は症状がやわらぐことがあります。しかし、よだれそのものが皮膚への刺激となって炎症をおこしているため、よだれが流れ出ている間は「治った」と思ってもまたかぶれを繰り返すことが多いようです。成長とともによだれが減ると、徐々に炎症は収まっていきます。
赤ちゃんはよだれが流れ出やすい
赤ちゃんのよだれが気になってくるのは、個人差はありますが、だいたい生後3ヶ月ごろからのことが多いでしょう。
そもそもよだれとは、飲み込めなかった唾液(だえき)が口から流れ出たもの。唾液には食べ物の消化を助けたり、口の中をきれいにしたりする働きがあり、健康な成人では1日に1~1.5Lほど分泌されています。乳幼児の唾液の分泌量についてはよくわかっていないものの、専門書によるとおよそ120~150mLと言われています[*2]。
このように赤ちゃんは唾液の分泌量こそ大人の10分の1程度ですが、唾液を飲み込む力そのものが弱いため、よだれとなって流れ出る量が多くなってしまうのです。加えて、本来なら唾液が流れ出すのを防ぐ“堤防”(ていぼう) の役割を果たす下の前歯が、生後3ヶ月ごろの赤ちゃんにはまだ生えていないことも、よだれが増える一因となっています。
これらのことから赤ちゃんは大人よりはるかによだれが出る量が多く、それが刺激となって、皮膚にかぶれをおこしてしまうことがあるというわけです。
よだれかぶれを予防するには
よだれかぶれは、皮膚についたよだれが刺激となって炎症を引き起こします。
それに加え、よだれを拭くときに皮膚をこすることがダメージとなり、炎症につながることもあります。そのため、よだれかぶれの予防には下記の点に注意しておきましょう。
よだれを拭くときはこまめに、そしてやさしく
よだれかぶれを予防するにはまず、かぶれ(炎症)の原因となるよだれを皮膚につけたままにしないことが大切です。赤ちゃんによだれが出たら、こまめに拭き取ってあげましょう。
ただし、よだれを拭くときにも注意が必要です。しっかり拭き取ろうとしてゴシゴシこすってしまうと皮膚にダメージを与え、かえってかぶれを起こす原因になってしまうことがあります。皮膚を傷つけないよう、やさしく拭き取ってください。
拭くたびに保湿剤や薬を塗る
よだれを拭き取ったら、保湿剤や炎症を防ぐ外用薬(医療機関から処方されている場合)を口の周りに塗ることもセットで行いましょう。
よだれを拭くと、よだれや汚れだけでなく、皮膚を保護している皮脂や、皮膚に潤いを与える保湿剤なども一緒に拭われてしまいます。そこで「よだれを拭いたら保湿剤を塗る」というのをできる範囲で続け、皮膚を保護してあげましょう。そうすることで皮膚のバリア機能を損なうことがなくなり、結果的によだれかぶれの予防につながると考えられます。
よだれでかぶれてしまったときの対処法
こまめによだれを拭いたり、保湿剤を塗ったりしていても、赤ちゃんのお肌は繊細。よだれかぶれがおきてしまうことが多々あります。できてしまったよだれかぶれには、どのような対処をすればよいのでしょう。
まずは保湿でホームケア
よだれかぶれができてしまったときのホームケアには、ワセリンによる保湿・保護をおすすめします。やり方は以下の通りです。
まず、かぶれている部分の皮膚を清潔にします。そして、その部分を軽く覆うようにワセリンを塗ります。
かぶれができている部分の皮膚というのは、皮膚表面のバリア機能が乱れた状態にあり、ワセリンはその乱れた皮膚表面を保護する役割を果たします。
なお、食事の際は、食事前にしっかりとワセリンを塗り、保護膜を作っておきます。こうすることで、荒れた皮膚から食事の成分が入り込みさらに炎症を起こすのを防ぐことができます。そして食事が終わったら、皮膚を再び清潔にしてワセリンを塗り直します。ワセリンで常に皮膚を保湿・保護しておくことでより、ケアの効果が高まります。
治りが遅いときやかゆそうなとき、症状がひどいときは病院を受診
軽いかぶれであれば、上記のようなホームケアを続けていくと症状の改善がみられることがあります。しかし赤みがひかないときや、かゆみがありそうなとき、また症状がひどいときは薬での治療が必要になります。かかりつけの小児科、もしくは皮膚科を受診しましょう。
「たかが、よだれかぶれ」と放っておかず、医師の診察を受け、きちんと治療することをおすすめします。
まとめ
赤ちゃんの皮膚は非常にデリケート。よだれでさえ刺激となり、炎症をおこしてしまいます。かぶれやすさにも個人差があり、多少のよだれなら放っておいても大丈夫な赤ちゃんもいれば、こまめに拭き取らないとすぐにかぶれてしまう赤ちゃんもいます。
赤ちゃんの様子をチェックしながら、適切に対処してあげてください。
(文:山本尚恵/監修:大越陽一先生)
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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