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2021年01月18日 17:02 更新

【医師監修】赤ちゃんに歯磨き粉は使っていい? 使用時の注意点は?

赤ちゃんに歯が生えてくると、むし歯予防についても考えなくてはいけません。歯磨きの開始時期や方法はもちろん、「歯磨き粉(剤)はいつごろから使っていいのか」も気になりますよね。また、フッ化物(フッ素)の量など、赤ちゃんの歯磨き剤はどのように選べばよいのでしょうか。ここでポイントを紹介します。

赤ちゃんは「いつから歯磨き剤を利用できる」の?

赤ちゃんは「いつから歯磨き剤を利用できる」の?
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赤ちゃんの歯を磨く際、歯磨き剤はいつごろから使ってよいのでしょうか。そもそも、赤ちゃんの歯磨きはいつから始めればよいのでしょうか。

うがい不要のものなら歯が生えてすぐからOK

歯磨き剤をいつから使うとよいのかについては、さまざまな考え方があります。
「歯磨き剤はぶくぶくうがいができる2~3歳ころから」[*1]という意見もあれば、「歯が生えていて、赤ちゃんがいやがらなければOK」[*2]という意見もあります。

うがいができるようになる前の赤ちゃんに歯磨き剤を使う場合は、うがい不要のジェル、スプレータイプや泡状などの歯磨き剤を使いましょう。

なお、歯磨き剤を使うのは、むし歯を予防するためです。そして、むし歯を予防する成分には、歯磨き粉に含まれるフッ化物(フッ素)があります。しかし、フッ化物は過剰に摂取しすぎると体に悪影響を及ぼすので、使う量には注意が必要です。

歯磨き剤を使う量

歯磨き剤を使う量は以下を目安にしましょう。また、歯ブラシは年齢に合った大きさのもので仕上げ磨き用も用意するようにしましょう[*3]。

・歯の生え始め~2歳:ゴマ粒程度
・3~5歳:エンドウ豆程度(5mmくらい)
・6~14歳:1cm程度(歯ブラシの半分くらい)
・15歳以上:2cm程度


歯磨きはそもそもいつから始めればいい?

個人差はありますが、だいたい6~9ヶ月ごろ、乳歯が生え始めたら歯磨きを意識し始めるとよいでしょう。ただし、この時期は唾液の分泌がさかんで、歯ブラシを使わなくても歯に汚れがつきにくいです。離乳食のあとに湯冷ましを飲ませたり、湿らせたガーゼでみがく程度でも十分にむし歯予防に効果があります。

1歳ごろまでには前歯の上下4本が生えてきます。特に上の前歯は唾液が届きにくく、汚れが歯につくと自然に落ちにくいので、歯磨きが必要になります。このころから、歯ブラシを使った歯磨きの習慣づけをはじめるとよいでしょう。デザインにとらわれないで、ブラシの大きさやかたさに気をつけてあげましょう。

赤ちゃんに使う歯磨き剤の選び方は?

赤ちゃんに歯磨き剤を使う場合、どのようなものを選べばよいのでしょうか。選ぶ際のポイントを説明します。

子供に適したフッ化物濃度のものを選ぶ

市販されている歯磨き粉の商品のうち、約9割にはフッ化物が含まれています。フッ化物の含まれた歯磨き粉のむし歯の予防効果は、30~40%程度といわれています。

歯磨き粉にフッ化物が配合されたものを使えば、毎日口の中にフッ化物を供給することができるので、むし歯の予防効果が高まります。歯科医院でフッ化物を歯に塗ったあと、フッ化物の含まれた歯磨き粉を使うと、乳児の虫歯の減少率が65%にもなるという結果も報告されています[*3]。

ただし、フッ化物の過剰摂取には注意が必要

フッ化物にはむし歯を予防する効果がありますが、たくさん使えば良いというものではありません。フッ化物は過剰摂取すると、歯などに良くない影響を及ぼすことがあります

これは「フッ素症」と言いますが、生まれてから8歳までの子供がフッ化物を過剰に摂取した場合、歯のエナメル質にまず、「不透明な縞模様・境界不明瞭の白い斑点・白濁など」が現れます。これがひどくなると、歯全体がチョークのように濁ってきたり、歯の表面にでこぼこができ、へこんだところが茶色や黒に変色したりします。

なお、フッ素濃度が高い飲料水を利用している国では、フッ化物の過剰摂取によって骨に影響が出る場合もありますが、日本では水道水にフッ化物は添加されていないのでこの心配はほぼ不要です。

フッ素症のリスクが高いのは特に6歳以下の幼児期です。とくに、見た目に目立つ「上の前歯」のフッ素症を防ぐためには、1~3歳の間にフッ化物を過剰に摂取しないことが大切です。うがいが完全にはできない、誤って飲み込んでしまう可能性がある年齢ではとくに、大人が歯磨き剤の使用量をよく気を付けてあげる必要があります。

子供に使う歯磨き剤のフッ化物濃度は?

子どもに使用する歯磨き剤のフッ化物濃度は以下を参考にし、それより濃度の高いものは使用しないようにしましょう[*4]。

・歯の生え始め~2歳(*):500ppm
(0.05%。泡状の場合は1,000ppm、0.1%)
*:仕上げ磨きで保護者が使う

・3~5歳:500ppm
(0.05%。泡状またはモノフルオロリン酸ナトリウム配合の歯磨き剤の場合は1,000ppm、0.1%)

・6~14歳:1,000ppm(0.1%)

・15歳以上:1,000ppm~1,500ppm(0.1~0.15%)


このように、子供と大人ではフッ化物の適した濃度が異なるので、大人の使う歯磨き剤は子供の手の届かないところに保管するようにしてください。

研磨剤、発泡剤、着色料、香料などの入っていない赤ちゃん用が安心

赤ちゃんに使う歯磨き剤としては、うがいをする必要がない、研磨剤や発泡剤の入っていない赤ちゃん用のものを選びましょう。また、着色料や香料も入っていないほうが安心です。

もう少し大きくなって、子供が歯磨きの後に歯磨き剤を吐き出してぶくぶくうがいができるようになったら、うがいが必要な子供用歯磨き剤を使っても構いません。

ただし、先ほども説明した通り、歯磨き剤をつけすぎないようにしたり、歯磨き剤はできるだけ飲み込ませないように注意してください。うまくブクブクができないうちは、最後にガーゼなどでふきとってあげても良いでしょう。

歯磨き粉を誤飲したらどうする?

もし、フッ化物入りの歯磨き剤を飲み込んでしまった場合、フッ化物が体に影響を及ぼすことはないのでしょうか。

通常の量なら心配いらない

ぶくぶくうがいのできない赤ちゃんが、歯磨き剤をつけて歯磨きすれば、飲んでしまうのは仕方がないことです。ここまでで説明しましたが、「うがいのできない赤ちゃんにはうがい不要の歯磨き剤」を使いましょう。そういった製品は飲んでしまったとしても問題ない程度にフッ化物の濃度を抑えてあるので、製品の説明書きにある使い方をしていれば、飲んでしまったとしても問題ありません。

もう少し大きくなって、歯磨き剤を吐き出せるようになっても誤飲することはあります。 ただ、「0.1mg/kg(体重)/日」のフッ化物を毎日摂取していると、フッ素症になるリスクがあるとされていますが、幼児がひとりで磨いた場合でも口の中のフッ化物の残留量(率)は、3~5歳児で0.06mg(15.3%)であったという報告があります。ですから、1日に3回使用したとしても心配ありません[*4]。

このように、普通に使用している分には多少飲んでしまっても心配いりませんが、普段から歯磨き剤は適量に留め、つけすぎに注意したいものです。 また、おやつやおもちゃと間違えチューブから出して誤飲することもあるので、保管場所には気を付けましょう。

赤ちゃんの歯磨きはどうやってするの?

ここでは、赤ちゃんの歯磨きの具体体な進め方について紹介します。

まずはスキンシップから

いきなり口の中に指を入れられると赤ちゃんは嫌がります。まずは赤ちゃんの頭を保護者のひざの上にのせ、顔をなでたり頬を触ったり、あおむけの状態を心地よいと感じさせるところから始めてみましょう。慣れてきたら口の中を観察し、清潔な指をそっと入れてみます。

いきなり磨こうとしない

赤ちゃんが口をいじられることに慣れてきたら、乳児用の歯ブラシで1~2回ちょんちょんと歯に触れる練習を始めてみてください。そして、これにも慣れてきたら、歯を見ながら1本ずつ優しく磨いていきます。磨く時間は1本につき5秒程度でOKです。この時期は丁寧に磨くことよりも、子どもが嫌にならないようにすることを優先したほうがよいでしょう。

なお、上唇をめくるとミルクのカスがついていることがあります。これはガーゼでそっと拭ってあげるとよいでしょう。

歯磨きの習慣づけは「前歯が生えそろったころ」を目安に

歯磨きの習慣づけは「前歯が生えそろったころ」を目安に
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1歳のお誕生日を迎えるころには、上下の前歯がそろってくることがほとんどです。このころまでには、保護者が口の中を毎日見て、歯ブラシで磨く習慣をつけるようにしましょう。

1日何回、どのくらいの時間やればいいの?

赤ちゃんの間は毎食後でなくても構いません。あくまでこの時期は歯ブラシに慣れることが目的なので、赤ちゃんの機嫌のよい時間帯や保護者の余裕のあるときに行えばOKです。そして、慣れてきたら徐々に毎食後に磨けるようにしていきましょう。

ただ、寝ている間は唾液の分泌が減るので、できれば寝る前には仕上げ磨きを行うようにしましょう。

歯ブラシはどんなものを選ぶといい?

子どもが小さいうちは、歯ブラシは「2種類」用意するとよいでしょう。ひとつは「赤ちゃんが自分で持ち、口に入れるもの」です。こちらは、口に入れたまま転倒して喉の奥に刺さらないよう、柄の部分が口の奥まで入らないように工夫されているものを選ぶとよいでしょう。

もうひとつは「柄の長い、親の仕上げ磨き用」です。歯ブラシは毛のついた頭の部分が小さめで、毛先が丸く加工してあるほうが磨きやすく、歯ぐきにもやさしいです。どちらの歯ブラシもデザイン性にこだわらず、お子様のお口にあったサイズと毛のかたさに気を付けて選ぶようにしましょう。

強さや歯ブラシの当て方はどうする?

保護者の膝の上に頭をのせて寝かせて磨くようにしましょう。特に歯ブラシを口の中に入れるときは頭をしっかり固定しないと、赤ちゃんが突然動いて歯ブラシで口の中を傷つけてしまうことがあります。歯ブラシはペンを持つようにして持ち、上下や横方向に動かして磨きます。広い面は円を描くようにするとよいでしょう。

歯磨き時に気を付けたほうがよいポイントは?

歯磨き時に気を付けたほうがよいポイントは?
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赤ちゃんの歯磨きをしようとしても、動き回ったり嫌がったりして、じっとしてくれるわけではありません。歯磨きのときに気を付けたほうがよいポイントは何なのでしょうか。

痛い場所に歯ブラシを当てない

上唇をめくると、「上唇小帯」と呼ばれる、上の前歯に張り出しているすじ状の部分があります。ここに歯ブラシが当ると痛いので、赤ちゃんは歯みがきを嫌がることがあります。そのためにも、まず保護者の指でしっかりと上唇をめくり、唇小帯が見えるようにすることです。そして、すじをさけて一本ずつ磨くようにするとよいでしょう。小帯のわきは磨き残しが多いので要注意です。

ほか、歯ぐきに強く歯ブラシが当たっても痛いので、力加減には気を付けるようにしましょう。ブラシを爪に当てると白くなりますが、そのくらいの圧で十分です。

仕上げ磨きをする

慣れてくると、赤ちゃんは歯ブラシを持って自分で歯磨きをしたがることがあります。当然うまく磨けませんが、大人は赤ちゃんが自分でしたがる気持ちを大切にしてあげてください。ひとしきり赤ちゃんの気のすむまで歯磨きができたら、大人にバトンタッチし、仕上げ磨きをします。子どもが自分でしっかり磨けるようになるまでは大人の仕上げ磨きが必要です。

歯ブラシをくわえたまま「動き回らせない」

月齢が上がると、歯ブラシをくわえたまま逃げ出してハイハイしたり、歩き出したりすることもあります。しかし、赤ちゃんは転びやすいので、歯ブラシをくわえたまま転倒することも。すると、歯ブラシの柄が喉の奥に入り込んだり、刺さってしまうことがあります。

喉の奥はとてもデリケートな構造になっていてるので、命に関わる事故につながることもあります。動き回るようなら、歯ブラシは必ず口から出すように、大人が目を光らせておきましょう。

まとめ

赤ちゃんのむし歯を予防するために、なるべく早く口の中のケアを始めなければと焦る人は多いはずです。「やらなくてはいけない!」という思いから力を入れすぎないように、楽しい時間になるようにしましょう。フッ化物配合の歯磨き剤等いろいろなグッズもあります。フッ化物はたくさん使用すればむし歯にならないわけではありません。むしろ過剰な摂取で害もたらすこともあります。いろいろな歯磨き剤が出ているので、月齢に合った製品をうまく活用して、楽しくむし歯を予防してあげたいですね。

(文:今井明子/監修:石塚ひろみ先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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