【医師監修】妊娠後期に起こる息苦しい原因と5つの対処法

【医師監修】妊娠後期に起こる息苦しい原因と5つの対処法

妊娠後期にはお腹の重みと動きづらさが一段と増し、何をするのも“しんどい感じ”かもしれません。さらに息苦しさや胸苦しさなど、“しんどい”では済まないつらさも。妊娠後期の“苦しい”タイミング別にケア法などをまとめます。


「座っていても苦しい」ときは?

Lazy dummy

生活の中で頻繁に行う「座る」という動作。妊娠後期になると、この状態で苦しくなることも少なくありませんが、その場合の原因は複数考えられます。

苦しくなる原因はさまざま

①子宮の増大やホルモン変化により、浅い呼吸になったり呼吸数が増えるから

妊娠後期にもなると、大きくなった子宮が横隔膜を押し上げるため、自然に浅い呼吸(胸式呼吸)になります。また横隔膜が押し上げられることで、肺の体積が小さくなります。そのためハァハァと荒い呼吸になり、息苦しく感じます。

妊娠が進むと呼吸の仕方にも変化がある

妊娠が進むと呼吸の仕方にも変化が

また、妊娠の進行と共に酸素を必要とする量が増え、ホルモンの作用で自然に呼吸する回数が増えることからも、息苦しく感じるかもしれません。

②鉄分が不足して酸素の運搬能低下

妊娠後期には赤ちゃんへの血流と鉄分供給が増えるので、鉄が不足しやすくなります。鉄欠乏性貧血にもなりやすい状態です。

血液中の「ヘモグロビン」は鉄分を多く含む色素で、おもに全身に酸素を送る役目を果たしています。鉄分が不足するとヘモグロビンも減少し、酸素の運搬能力が低下するので、息苦しさを感じることがあります。

③大きな子宮が胃など消化器を圧迫する

妊娠中は、いつも子宮が胃や腸などの消化器を圧迫していますが、座るとより圧迫感が強くなります。デスクワークなどで上半身が前に傾斜している姿勢(または猫背)では、より強まり、息苦しさや胸苦しさを覚えることもあります。

松峯先生
「妊娠期間中、特に妊娠後期になるほど息苦しさや胸苦しさを感じる人は増えます。特に妊娠36週ごろには、血液循環量が最大となって貧血状態になりやすいので、息苦しさが強まったと感じるかもしれません。 また、妊娠中に適正体重が保てず、肥満が進むと心臓にかかる負担がより大きくなるため、動悸や息切れが強くなり、息苦しく感じることがあります」

ラクな姿勢で深呼吸!

苦しいときは姿勢を変えてみましょう。クッションなどを利用して、自分がラクな姿勢でしばらく休み、静かに、ゆっくり呼吸を!

松峯先生
「座っていて苦しくなったら、吸った息をしっかり吐き切るように意識して深呼吸をしてください。息を吸うときは鼻からお腹に吸うイメージで。吐くときは口をすぼめ、ふーっとできるだけゆっくり、長く吐いてみましょう」

「寝苦しくて睡眠不足」のときは?

妊娠後期には睡眠の質の低下を感じる人も多くなります。

寝返りがうてないのも原因の1つ

本来、“脳の眠り”と呼ばれる「ノンレム睡眠」という種類の睡眠中、体はいくらか起きていて、寝返りで血流や筋肉の緊張を調整しています。しかし、お腹が大きくなってくると、自然な寝返りがうちづらく、寝苦しくて目が覚めることがあります。

また、無意識に仰向けで寝ていて、子宮の重みが脊柱の右側を通る下大静脈を圧迫し、静脈の血流を妨げて「仰臥位低血圧症候群(ぎょうがいていけつあつしょうこうぐん)」を起こし、血圧が急に下がることによって意識障害や頻脈(ひんみゃく)、気分や顔色がわるくなる、冷や汗が出る、吐き気を感じるなどの症状が出て、苦しいこともあります。

松峯先生
「仰臥位低血圧症候群は、病名に“低血圧”とありますが、日頃の血圧の状態とは関係なく、妊娠後期では誰でも仰向け寝で起こることがある症状です。しかし体の左側を下にして横を向く姿勢(左側臥位、ひだりそくがい)をとると、静脈の血流が改善し症状は速やかに回復するので、いざというときのために覚えておきましょう」

ラクな寝姿勢を見つけよう

就寝時は、体の左側を下にして横を向く姿勢(左側臥位)で、抱き枕を抱えるようにして寝る習慣にしてみましょう。

左側を下にするのは静脈の圧迫や「仰臥位低血圧症候群」を予防し、心臓に戻る血液の流れを妨げないためです。脊柱の左側を通るのは動脈なので静脈に比べて弾力があり、体重で潰れにくいので「左側を下」がポイント!

静脈のそばにはリンパ管も通っているので、仰向けになると静脈と同様に圧迫されてリンパ液の流れが滞り、むくみの原因にもなります。左側臥位で寝るとむくみ予防にもなります。

松峯先生
「左側を下にする『シムスの体位』を試してみるのも良いでしょう。ただ、ラクな体位は人によって違うので、いろいろ試してみて、自分がラクなようにアレンジしてみましょう」

「シムスの体位」のやり方

1. 左側臥位で横向きに寝る

2. 少しうつ伏せ気味になり、下の左足を楽な位置へ伸ばす

3. 上の右足は付け根から曲げて、左足より前に出す
  ※抱き枕の上にのせるなどして右足を浮かすのもOK

4. 右手は前に出して曲げ、楽な位置に

5. 左手は体の後ろで伸ばすなど楽な位置に

「食べると苦しい」ときは?

つわりはとっくに終わったはずなのに、妊娠後期になってまたぶり返したように胸苦しさや気持ち悪さを感じることもあります。

消化機能の低下や逆流が原因に

妊娠中はホルモン(プロゲステロン)の影響で消化器の筋肉がゆるむこと、大きくなった子宮で圧迫されることから消化器の運動が低下し、非妊娠時より消化に時間がかかり、胃の内容物の逆流も起こりやすくなります。そのため、つわりの時期に限らず食後に苦しくなりやすいのです。

なるべく「優雅なお食事タイム」を

食事はゆっくり、よく噛んで食べましょう。食事を「日に3回」とこだわらず、1回に食べる量を減らし、食事の回数を増やす「分割食(1日4または5回×半人前〜0.7人前程度)」を試してみてもいいでしょう。

松峯先生
「なるべく『上の子の面倒を見ながら』『スマホを見ながら』『テレビを見ながら』といった“ながら食べ”や早食いは控えることも消化を助けるために大切です。胸のつかえや逆流で苦しいときは胃酸を増やす甘いもの、脂っこいものを食べすぎないように気をつけてください。 呑酸(どんさん:口や喉まで酸っぱい液がこみあげる感じ)や胸焼けが続くなら、主治医に相談しましょう」

「洋服で締め付けられて苦しい」ときは

気に入って買ったマタニティウェアも、着ると苦しくて、残念ながら着こなせないこともあります。

締め付けNG

ここまでで紹介した通り、妊娠後期のママはさまざまな理由から「何もしなくても(何をしていても)苦しい」状態である場合も。そのようなとき、体を締め付ける衣類は苦しさを増悪させてしまう可能性があります。

ラクラクを極めよう

何もしなくても苦しいときはどうしても「浅い胸式呼吸」になりがち。休憩するときなどは先に紹介した深い腹式呼吸でできるだけリラックスを。
衣服もゆるめるとラクな部分はゆるめて、ラクラクに過ごしましょう。

松峯先生
「骨盤にかかる負担を軽減する骨盤ベルトだけ締めて、他はすべて“ユルユル”に、ゴムや紐を外した服を利用している先輩ママは少なくありません。ただし骨盤ベルトは正しい位置に、適度な圧迫があるようにつけなければ逆効果になってしまうので最初は主治医や助産師さんのレクチャーを受けてつけ方を覚えてくださいね」

「不安で苦しい」ときは

息苦しさや胸苦しさの原因が、不安やそれからくるストレスである場合も少なくないようです。

メンタルの不調から過呼吸になることも

妊娠・出産や育児、今後の生活に関して不安が強い場合、息苦しさなどを訴えるママも少なくないようです。

不安が募っているときに息を激しく吸ったり吐いたりする「過呼吸状態」になると、血液中の炭酸ガス濃度が低くなり、呼吸中枢が呼吸を抑制するので呼吸ができない息苦しさ(呼吸困難)を感じてしまうことがあります。

1人で悩まないで!

周囲の多くの人が、ママと赤ちゃんが健やかであることを願い、「必ず支えたいと思っている」と松峯先生は言います。どんな場合も、1人で悩まないようにしましょう。

松峯先生
「不安なことは1人で抱え込まず、パートナーや家族に話しづらい場合は主治医や助産師さん、行政の子育て支援の窓口など、誰か信頼できる人に継続的に相談をして、必要に応じたサポートを受け、心健やかに過ごすことが大切です。 過呼吸発作が出た場合は、患者さんの手を握り、息を吐くことを意識してもらって呼吸を整え、落ち着きを取り戻してもらうようにしています。一緒に穏やかな分娩や生活のイメージを話し合うこともあります。呼吸ができないような息苦しさは、必ず主治医に相談をしてください」

まとめ

Lazy dummy

妊娠後期のママの苦しさは症状も原因もさまざま。個々の原因に合わせた適切なケア方法については、主治医や助産師からアドバイスをもらいましょう。主治医や助産師とコミュニケーションをとりながら、ラクに過ごせるように工夫して、穏やかなマタニティライフを過ごしてくださいね。

この記事の監修ドクター
松峯美貴先生
医学博士、東峯婦人クリニック副院長、東峯ラウンジクリニック副所長、産前産後ケアセンター東峯サライ副所長(いずれも東京都江東区)妊娠・出産など女性ならではのライフイベントを素敵にこなしながら、社会の一員として悠々と活躍する女性のお手伝いをします! どんな悩みも気軽に聞ける、身近な外来をめざしています。
http://www.toho-clinic.or.jp/

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
・「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア)
・厚生労働省e-ヘルスネット 貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-008.html
・国立循環器病研究センター 循環器病あれこれ 心不全
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph07.html
・日本呼吸器学会「過換気症候群」
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=41

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
※新型コロナウイルス感染症についての最新情報は、[内閣官房][厚生労働省]妊婦に関する情報[日本小児科学会]幼児に関する情報など公的機関等で発表されている情報をご確認ください。

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