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2023年02月24日 11:10 更新

【医師監修】妊娠後期の「キリキリ、チクチク」腹痛。その原因と対処法

出産が目の前に迫ってきた妊娠後期。お腹が大きくなり、日常生活のちょっとした動作もだんだん負担に感じてくる時期です。このころ、「キリキリ」「チクチク」とした腹痛があったら何が原因なのでしょうか。対処法とともに解説します。

「妊娠後期の腹痛」にはどんな原因があるの?

妊娠後期に腹痛があり、受診した方がいいのかな?と考えている妊婦のイラスト
(イラスト:epico428)

妊娠8ヶ月(28週)~出産予定日前までの期間である「妊娠後期」。まずはこのころの妊婦さんに腹痛を起こす可能性がある要因をいくつか紹介します。

前駆陣痛

出産予定日が近づいてくると起こる、不規則な子宮の収縮。多くはいったん止まり、後日、出産のときに起こる真の陣痛が始まります。

対処法
前駆陣痛の場合は、しばらくすると自然に痛みが治まります。楽な姿勢をとって体を休めてみましょう。
もし「1時間に6回」など、あらかじめ指示を受けた頻度やそれ以上に頻繁に痛みがある場合は、産院に連絡して指示を受けましょう。
なお、前駆陣痛の場合も出産のときの陣痛同様、痛みの治まる時間があります(陣痛間欠)。治まることなくずっと痛みが続く場合も、産院にすぐに連絡して指示を受けてください。
破水や出血があった場合、赤ちゃんの胎動が感じられなくなった場合も産院にすぐに連絡してください。
関連記事 ▶︎前駆陣痛はいつから? 陣痛との痛みや間隔の違いとは

子宮などが伸びることによる痛み

妊娠後期には赤ちゃんはぐんぐん大きくなっていきます。それに伴って子宮や子宮を支える靭帯などが引き延ばされ、腹痛を感じることがあります。

対処法
この場合、横になって休んだり、ガードルを使用したりすることで痛みは軽くなります。しばらくしても痛みが続く場合やほかの症状がある場合は、やはり産院に連絡しましょう。

便秘

妊娠中は便秘になりやすいものですが、子宮が大きくなり腸を圧迫する妊娠後期はさらに便秘がちになります。

対処法
便秘の場合、排便時は無理にいきんで出そうとせず、出そうなタイミングを逃さないようにましょう。また、受診して便を柔らかくするタイプの下剤を処方してもらいましょう。

鉄剤など飲んでいる薬の影響

貧血の治療で鉄剤を処方されている妊婦さんは、薬の副作用で下痢や腹痛が現れることがあります。

対処法
鉄剤の影響である場合、しばらく服用していると不調を感じにくくなるようですが、辛いときは主治医に相談しましょう。

切迫早産/早産

妊娠37週(妊娠10ヶ月の2週目)より早い時期の出産を「早産」と言います。早産で生まれた赤ちゃんは様々な機能が未熟なので、生まれると「NICU(新生児集中治療室)」で治療を受けることになります。
切迫早産」は早産になるリスクが高い状態のことです。医療機関で「規則的な子宮収縮」「子宮口の開大」「子宮頸管の短縮」が確認されると、切迫早産と診断されます。

対処法
切迫早産の自覚できる症状には、下腹部痛のほか、「性器からの出血」や「破水」もあります。腹痛が治まらないことに加え、これらの症状がある場合はすぐに産院に連絡してください。

常位胎盤早期剥離

正常な位置にできた胎盤が、分娩の前に子宮の壁からはがれてしまうことを「常位胎盤早期剥離」と言います。胎盤は生まれる前に子宮からはがれると、赤ちゃんに酸素を届けられなくなってしまいます。
お腹に電極を付け赤ちゃんの「心拍数」を診たり、超音波検査で「胎盤の状態」を確認したりしてこれと診断されると、「緊急帝王切開」などで赤ちゃんを一刻も早く取り出すことになります。

対処法
この場合も、最初は切迫早産のように「軽い下腹部痛や腰痛」「少量の出血」しかないことが少なくありません。お腹が板のように硬くなることもあります。
やはり「少し休んでも治まらない腹痛」や「出血」など、いつもと違う症状がある場合は、産院に連絡して指示を受けてください。

ウイルス性胃腸炎などの感染症

ノロウイルスやカンピロバクターなどのウイルスや細菌などに感染して、腹痛を起こすこともあります。感染症が原因の場合は、腹痛のほかに吐き気や発熱などの症状があることも。

対処法
症状がひどかったり治まらなかったりする場合は、かかりつけの産院にまずは相談してください。近くに感染した人がいたり、疑わしい食品を食べたりした場合は、必ず伝えたうえで指示を受けましょう。
なお、自己判断で「吐き気止め」や「下痢止め」を飲むと、かえって治りが遅くなることがあるのでやめましょう。市販の下痢止めには妊娠中に注意が必要な成分が含まれていることもあります。
下痢やおう吐がひどい場合は、脱水状態にならないよう、経口補水液などをこまめに飲みます。医療機関で、点滴による栄養や水分の補給が必要になることもあります。

こんな症状は心配!受診したほうがいい場合

腹痛のある妊婦
Lazy dummy

妊娠後期の腹痛は、さきほど解説した「切迫早産・早産」「常位胎盤早期剥離」「ウイルス性胃腸炎などの感染症」など、受診する必要のある原因により起こっている場合もあります。

痛みの感じ方は人それぞれなので、痛みだけから体の状態を推測するのは困難ですが、下記のような症状がみられたときはできるだけ早くかかりつけ医療機関を受診し、診断と治療を受けてください。

できるだけ早く受診したほうが良い場合

☑ 初めて経験するような激しい腹痛。痛みがひどく休んでも治まらない

☑ 便に血や膿のようなものが混じっている

☑ 発熱、下痢、吐き気・おう吐などほかの症状もある

☑ 脱水の症状がある(※)

※脱水による症状の例:尿が少ない/出ない/濃い色をしている、口や舌が異常に乾く、皮膚の弾力がない、めまいやふらつきを感じる など

☑ 腹痛や下痢がずっと続いている/悪化してきた/体重が減ってきた

☑ 食中毒の疑いがある(同じものを食べた人も症状が出ている)


腹痛とともに次のような症状がある場合も、できるだけ早くかかりつけ産科医にまずは電話で相談し指示を受けてください。

☑ 下腹部の痛みが規則的(※)にある(陣痛が始まった)
※1時間に6回(約10分間隔)以上の間隔で下腹部が痛む

☑ 性器から出血している

☑ お腹の張りが続いている

☑ 胎動がそれまでより減った/なくなった

妊娠後期に「キリキリ」「チクチク」などする腹痛の原因は何?

疑問がある妊婦のイメージ
Lazy dummy

さて、ここからは妊娠後期にお腹が「キリキリ」「チクチク」「キュー」などして痛む場合、どんな原因が考えられるのか、みていきましょう。

<1>お腹が「キリキリ」するとき

「キリキリ」とは、「鋭い痛みが走る」ような症状についてよく用いられる言葉です。

痛みの間隔が不規則なら「前駆陣痛」かも!?
妊娠後期に「キリキリ」とした痛みを下腹部に感じたら、「前駆陣痛」の可能性もあります。「前駆陣痛」は最初に説明したとおり、分娩のときに起こる「陣痛(本陣痛とも)」と違って、痛みの間隔が不規則な子宮の収縮です。
この場合、しばらくすると痛みやお腹の張りは治まることが多いのですが、痛みが続いたり強くなる時はかかりつけ医療機関に相談しましょう。

<2>お腹が「チクチク」するとき

「チクチク」痛むというときは、軽い痛みや違和感をあらわしていることが多いのではないでしょうか。

赤ちゃんに子宮や靭帯などが引っ張られている感覚かも!?
妊娠8ヶ月末には赤ちゃんの体重はおよそ1.5kg、身長40cmほどになります。これがひと月後にはなんと体重2.0kg、身長45cmくらいにまで成長します[*1]。
妊娠後期にお腹が「チクチク」痛むのは、毎日少しづつ、でも確実に大きくなる赤ちゃんを包む子宮、子宮を支える靭帯が引き延ばされているからかもしれません。
この場合もしばらくすると治まるはずですが、治まらない・ひどくなってくるような場合は産院に相談を。

<3>「キューと締め付ける」ような痛み

下腹部が「キュー」と締め付けられるような痛みは、子宮の収縮によって起こっていることがあります。

子宮が収縮して「早産」のリスクがあるサイン!?
安静にしても治まらなかったり、性器出血や破水などほかの症状があったりする場合は「切迫早産」の可能性もあるので、かかりつけの産院に相談してください。

<4>横になると痛む

仰向けなどで横になったときに、腹痛を起こすことがあるかもしれません。

大きなお腹に圧迫されることによる痛み!?
これは、大きくなったお腹が腹部を圧迫していることが原因のこともあります。その場合はシムス位」といって、左側を下にして横になるとお腹の重さを感じにくくなるかもしれません。自分にとって楽な姿勢を探してみましょう。

いずれにしても、痛みの感じ方は人それぞれなので言葉で「キリキリ」「チクチク」「キュー」と言い表していたとしても同じ状態とは限りません。「こんな場合はすぐ受診!」で紹介した内容を目安に、おかしいと思ったらためらわず産科を受診しましょう。

まとめ

赤ちゃんが生まれてくるのが楽しみな妊婦のイメージ
Lazy dummy

妊娠後期はもうすぐ来る分娩に、心も体も緊張してくるころ。そんなときにお腹が痛むと、ちょっと慌ててしまいますね。ここで紹介したとおり、腹痛の原因にはさまざまなものがあります。痛みの程度、間隔、ほかにも何か症状があるかどうかなどに注目して、いつもと違うと思ったらためらわずにかかりつけ医療機関に相談しましょう。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気が見えるvol.10 産科, p.10, メディックメディア, 2018.

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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