【医師監修】妊娠中期の貧血。立ちくらみなどの症状と原因・対策、鉄分の摂り方

【医師監修】妊娠中期の貧血。立ちくらみなどの症状と原因・対策、鉄分の摂り方

妊娠中期は実は「貧血」が起こりやすいころです。女性はもともと貧血になりやすいのですが、それは生理でほぼ毎月血液が失われるから。妊娠するとホルモンの影響でさらに貧血になりやすくなります。ここでは、妊娠中期の貧血について、対処法、鉄分摂取のポイントを含め解説します。


妊娠中期から増えてくる「貧血」

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妊娠中は常に貧血になりやすいと言われています。それは、赤ちゃんの血液をつくるために、胎盤を通してお母さんの体から「鉄分」が赤ちゃんの体へとどんどん運ばれて行ってしまうから。なかでも妊娠中期以降はとくに貧血になりやすいと言われています。

妊娠中期は、血液の量が急に増え「薄くなる」

さきほど説明したとおり、赤ちゃんの血液を作るのはもちろん、赤ちゃんに栄養や酸素を運んだり、老廃物を運び出したりするために、妊娠中は非妊娠時に比べて多くの血液が必要になります。

そのため、妊娠中期ごろには妊婦さんの血液量は急激に増えるのですが、このとき液体の成分(血しょう)に比べて、赤血球はそれほど増えないため、血液の量は増えるものの赤血球の濃度が低い、「薄い血液」になります。

血液が薄まると、体のすみずみにまでうまく酸素を届けられなくなってしまい、細胞が酸欠状態になります。これが「貧血」で、血液量が急激に増える妊娠中期以降は貧血に注意が必要な時期なのです。

貧血でよくある症状

貧血になるとどんな症状が現れるのでしょうか。

「立ちくらみ」って貧血の症状?

貧血になると、以下のような症状がよく現れます。

「貧血」でよくある症状

☑ めまい、立ちくらみ
☑ 動悸、息切れ


ただし、妊娠する前から貧血気味だったり、貧血がゆっくりと悪化した場合は、こうした症状があまりはっきりしないことがあります。

貧血が原因ではない立ちくらみも

なお、妊婦さんは貧血ではなく、「起立性低血圧」によっても「立ちくらみ」や「めまい」を覚えることがあります。

起立性低血圧は、妊娠すると分泌量が増えるプロゲステロン(女性ホルモン)の影響で下半身に血液が溜まりがちになり、脳に血液が不足することで起こります。

この場合も、目の前が真っ暗になったり、動悸、胸のむかつき、冷や汗などの症状が出ます。プロゲステロンは妊娠の維持に欠かせないホルモンなので減らすことはできませんが、起立性低血圧の症状は、「急に立ち上がったり、長時間座り続けることを避ける」ことで防ぐことができます。

貧血かどうか調べるには

貧血かどうかを調べるためには、医療機関で血液検査を受ける必要があります。妊娠中の貧血(妊娠性貧血)の多くは「鉄欠乏性貧血」ですが、この場合、血液検査で下記の数値となったときに診断されます[*1]。

貧血の診断基準

☑ ヘモグロビン(Hb)値:11g/dL未満
または
☑ ヘマトクリット(Ht)値:33%未満

妊娠中期の貧血の影響と対処方法

妊娠中期に貧血になると、赤ちゃんにはどんな影響があるのでしょうか。対処方法と併せて解説します。

ひどい貧血は赤ちゃんに影響することも

妊婦さんが貧血になると、赤ちゃんに十分な酸素が届かなくなるので、貧血の程度によっては赤ちゃんがうまく育たずに、低出生体重児・未熟児のリスクが高まったり、重症では胎児死亡となることもあります。

ただ、妊娠中期以降のHb値10 g/dL台の軽度貧血では、低出生体重児の頻度が少なかったという報告があるようです。一方で、急速に重症の妊婦貧血(Hb≦6.0 g/dL)になると胎児死亡につながることがあります。また、中等度の貧血(Hb値8.0~10g/dL程度)でも、胎児死亡や低出生体重児・未熟児の頻度が高くなると言われています[*2]。

貧血と診断されたら、主治医の指示に従い、悪化させないようにきちんと治療することが、赤ちゃんのためにも大切なのです。

妊娠中期の貧血の予防法・対処法

普段から鉄分を摂取して貧血予防

非妊娠時の成人女性の鉄分摂取推奨量は6.5mg/日。妊娠すると、妊娠初期は9mg/日、中期・後期は16mg/日の鉄分を摂取することが推奨されています[*3]。つまり、妊娠中期以降は「妊娠していない時の2倍以上」の鉄分を摂る必要があるのです。

牛ヒレ肉、あさり水煮缶詰、かつお、大豆製品、小松菜、春菊、ほうれん草など、鉄分の豊富な食品を普段から意識して摂るようにしましょう。

不調があるなら、放っておかず早めに受診を

立ちくらみなどの症状が辛いときは我慢したり、放っておかず、かかりつけの産科を受診しましょう。検査の結果、貧血と診断されれば鉄剤などで治療することになります。貧血が赤ちゃんに影響することもありますし、貧血とは別のトラブルの可能性もあるので、よく調べてもらいましょう。

仕事をしている場合はできるだけゆっくり休む

仕事をしている妊婦さんが貧血などの体調不良で辛いときは、医師等に相談して「母健連絡カード」を書いてもらい職場に申し出ましょう。妊娠中の労働者が医師等から指導を受けた場合、事業主は必要な措置を講じなければならないことが、男女雇用機会均等法によって定められています。

貧血では、Hb9g/dL以上11g/dL未満では「負担の大きい作業の制限または勤務時間の短縮」、Hb9g/dL未満では「休業(自宅療養)」が標準措置とされています(妊婦さんの体調によってはこれ以外の措置が必要と判断されることもあります)[*4]。

具体的には、

●身体的な負担が大きい作業をしている場合は、負担の軽い作業の割合を増やすか、軽作業に配置換えする
●立作業の場合は、椅子に座って作業できるようにする
●勤務時間を短縮する場合には、遅い出勤の許可、昼食休憩の延長、早退の許可
●Hb9g/dL未満の場合は、休業(自宅療養。妊娠以外の原因による貧血の場合は、医師等の指示に従う)


などの配慮がしてもらえるはずです。

まとめ

ここでは妊娠中期の貧血について解説しました。妊娠中期は俗に「安定期」ともいわれますが、妊婦さんに貧血が増えてくるのはちょうどこのころ。貧血では「体中が酸欠になる」と聞くと、どんな状態なのかイメージしやすいかもしれません。妊婦健診で貧血を指摘された場合はもちろん、立ちくらみやめまいなどを体調不良が続く場合は放っておかずに受診し、きちんと治療を受けましょう。また妊娠中はとくに普段から鉄分を意識して摂るようにしましょう。

この記事の監修ドクター
産婦人科医・医学博士 宋美玄先生
大阪大学医学部医学科卒業。丸の内の森レディースクリニックの院長として周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。主な著書に、ベストセラーとなった「女医が教える本当に気持ちいいセックス」がある。一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事

(文:マイナビウーマン子育て編集部/監修:宋美玄 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]日本産婦人科・新生児血液学会:Q&A産科編 Q1-4. 妊婦貧血とはどんな病気ですか?
http://www.jsognh.jp/qa/
[*2]日本産婦人科・新生児血液学会:Q&A産科編 Q1-4. 妊婦貧血とはどんな病気ですか?
http://www.jsognh.jp/qa/
[*3]日本人の食事摂取基準(2020年版) p366
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
[*4]厚生労働省委託 母性健康管理サイト 妊娠・出産をサポートする 女性にやさしい職場づくりナビ「母健連絡カード」(母性健康管理指導事項連絡カード)について https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/renraku_card/

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

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