【医師解説】 子供や赤ちゃんの鼻血(鼻出血)は何が原因? 対処法とやってはいけないこと
鼻血は前触れもなく突然出てくるので、つい慌ててしまうことがあります。ここでは、子供や赤ちゃんが鼻血を出す原因、いざというときに慌てないための正しい対処法、意外とやっているかもしれない「鼻血が出た時にしてはいけないこと」などについて、小児科医の坂本昌彦先生に解説してもらいます。
子供の鼻出血について
子供が鼻血(医学的には「鼻出血」といいます)を出すのは珍しいことではありません。鼻血を出しやすい年齢は3~8歳です。赤ちゃんが鼻血を出したらどうしよう、と思われるかも知れませんが、2歳までの鼻血はめったに起こりません[*1]。逆に赤ちゃんに鼻血があった場合には、原因をはっきりさせるため、一度病院で相談されるとよいと思います。
鼻血が出ると、つい親も子も慌ててしまうものです。しかし、子供の鼻血は安静にすることと適切な圧迫を行うことでほとんどが止血できます。落ち着いて対応してください。
どこから出血するの?
子供の鼻血の出血部位はどこが多いのでしょうか。よく起こるのは、鼻の真ん中にあり左右の鼻の穴の仕切り(鼻中隔)の粘膜の部分からとされています。特に鼻の入り口から1cm内側の部分(「キーゼルバッハ部位」といいます)が繰り返し出血しやすく、子供の鼻血の90%がこの部位からです[*2]。
出血の原因は?
出血の原因としては、以下が挙げられます。
・鼻への機械刺激(鼻ほじり、鼻こすり)
子供の鼻血の原因はこれが多いとされています[*2]。粘膜が傷つくと違和感が出たり、かさぶたができることでさらにいじりたくなる悪循環におちいり、鼻血が繰り返されることになります。
・遊んでいて遊具や友達にぶつかるなどしてできた顔のケガに伴う場合
・鼻粘膜の乾燥
・アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎など
鼻炎のお子さんは鼻汁やくしゃみで鼻をかむ機会が多く、また鼻がかゆくなりやすいです。結果として鼻をこすることも増え、鼻血を繰り返しやすいとされています。
・鼻の異物
これは小児特有の注意点です。子供は鼻に異物を入れてしまうことがあります。よくあるのはビーズやBB弾といったおもちゃ、小石、ナッツなどです。
ある報告によれば、子供が鼻に異物を詰めた場合、約3/4は家族や本人の訴えで気づくことができた一方、残りの1/4は悪臭や鼻出血などの症状がきっかけとなって病院で診断がついたとされています[*3]。何度も鼻血を繰り返したり、悪臭を伴う鼻水が出る場合には病院で相談されることをお勧めします。
チョコレートを食べ過ぎると鼻血が出る?
ちなみに「チョコレートを食べ過ぎると鼻血が出やすくなる」という話を時々耳にします。私自身も子供の頃にそのようなことを聞いた記憶があります。
「チョコレートに含まれるカフェインで興奮して血圧が上がるから」だとかいう説もあるようですが、もしそうなら、チョコレートより多くのカフェインが含まれる紅茶やコーヒーでも血圧が上がり、鼻血が出ることになります。私も調べてみましたが、チョコレートと鼻出血の関連を指摘する報告は見当たりませんでした。特に気にする必要はないかと思います。
鼻血が出たときの対処法
ここからは鼻血が出た場合の対処方法についてお伝えします。
血を飲み込まないようにして圧迫止血する
まず、血液が止まりにくいような病気でなければ、圧迫すれば10~20分で止まるので落ち着いて対処しましょう。
①落ち着かせる
お子さんが突然の鼻出血に驚いて興奮している場合、まずは落ち着かせるために話しかけて不安を和らげてあげましょう。
②姿勢
仰向けに寝かせると鼻血がのどに流れ込むので、座らせて少し前かがみにしてあげてください。横になった場合には仰向けにせずに横向きに寝かせ、顔をやや下に向けるようにしましょう。
③飲み込ませない
血液は飲み込むと気分が悪くなり、嘔吐の原因になるため、飲み込ませず口から吐き出させてください。
④出血部位を圧迫する
出血するのは鼻の穴の前の方(キーゼルバッハ部位)なので、親指と人差し指で両鼻の柔らかい部分をつまんで圧迫し、口で呼吸させてあげましょう。鼻柱の上の硬い部分を押さえても効果はありませんのでご注意を。
完全に出血が止まるまで(だいたい10~20分間くらい)圧迫を続けてください。完全に止まればティッシュや綿球を詰めなくても大丈夫です。無理に詰めるとかえって出血することもあります。
なお、どちらの鼻から出血しているのか明らかな場合には、出血している方の鼻の柔らかい部分だけを親指で押さえて圧迫する方法もあります。これだと両方の鼻を圧迫しないため、子供が息苦しさを訴えにくく、協力が得られやすいという利点があります。
⑤安静を保つ
圧迫している間、子供にじっとしてもらうことはなかなか難しいです。
安静を保つために、圧迫している間は動画を見せてあげたり絵本を読んであげたりすることも有効です。
鼻血の時にやってはいけないこと
鼻血は、子供はもちろん大人でも珍しい不調ではなく、自宅で治まるのを待つことがほとんどです。つまり鼻血の際に専門家の指導を受けることはあまりなく、それだけに、本当に適切かどうかわからない、場合によっては不適切な対処法もまことしやかに語り継がれています。
ここでは、鼻血への対処法としてもしかしたら聞いたことがあるかもしれませんが、実際はやらないで欲しいことを紹介します。
鼻血対応の間違った方法5つ
・「仰向けに寝かせる」
血がのどに垂れ込んで吐いたり、場合によっては窒息の原因になるため避けてください。
・「鼻の上の骨の硬いところを押さえる」
出血している部位と異なるため血は止まりません。
・「ティッシュを詰め込み何度も取り替える」
せっかく止まりかけた血液が再び出血するきっかけになってしまいます。
・「上を向いて首の後ろをトントンする」
医学的な根拠のない迷信です。
・「鼻を冷やす」
一部では鼻や首周りを冷やすことで鼻の血流を減らし、止血の役に立つのではと信じられていますが、これまで報告されている研究では、冷却しても血流が減ったとの証明はされておらず、根拠はないといえます[*4]。
鼻血の予防
心配ないことが多いとはいえ、鼻血が出るとびっくりします。鼻血が出ないよう予防する方法はあるのでしょうか。
鼻の粘膜をできるだけ傷つけない
まず、鼻血は一度起こると、かさぶたなどが気になりやすくなり、再びほじることが増え、出血しやすくなります。しばらくはほじったり鼻をかんだりしないよう子供に伝えることが大切です。
また鼻が傷つきにくいように爪を定期的に切ることも大切です。アレルギー性鼻炎の児の場合は鼻をこすることで粘膜が傷ついて出血しやすくなるとされ、鼻炎の治療、すなわち抗ヒスタミン薬を内服して鼻の粘膜の状態を良好に保つことで鼻血の予防につなげることができます。
受診が必要な鼻血もあるの?
ここからは鼻血で受診が必要なときの目安についてお話しします。
出血が大量なときやなかなか止まらない場合は注意して
<救急車で受診>
・大量の出血がある、もしくは呼吸が苦しい状態
・ぐったりしている場合
<自家用車ですぐに受診>
・適切に止血しているにもかかわらず止血できない場合
・顔のケガで鼻血が止まらない場合
<日中の診療時間内に受診>
・鼻血は頻回に出るがすぐに止まる場合
・鼻血以外に出血しやすい症状がある(皮膚に青あざができやすいなど)
※受診する際には、医師に次のことを伝えてください。
□ どちらの鼻からの出血か
□ どれくらいの出血の程度か
□ どれくらいの頻度で出るか
□ きっかけの有無
□ 出血しやすい病気があるか
□ 鼻の病気(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎)があるか
□ 家族に特別な病気があるか
まとめ
鼻血は派手に見えるので心配なこともあると思いますが、子供の鼻血は適切に圧迫すればすぐに止まることがほとんどです。慌てずに対処していただければと思います。
(執筆・監修:坂本昌彦 先生)
※画像はイメージです
[*1]McIntosh N, Mok JY, Margerison A. Epidemiology of oronasal hemorrhage in the first 2 years of life: implications for child protection. Pediatrics. 2007;120(5):1074-1078.
[*2]Schlosser, RJ. et al. Clinical practice. Epistaxis. NEJM. 360(8),2009,784-9
[*3]Abou-Elfadl M, Horra A, Abada RL, Mahtar M, Roubal M, Kadiri F. Nasal foreign bodies: Results of a study of 260 cases. Eur Ann Otorhinolaryngol Head Neck Dis. 2015;132(6):343-346.
[*4]Teymoortash A, Sesterhenn A, Kress R, Sapundzhiev N, Werner JA. Efficacy of ice packs in the management of epistaxis. Clin Otolaryngol Allied Sci. 2003;28(6):545-547.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます