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2022年12月15日 13:40 更新

【医師監修】妊娠後期の下痢は早産につながる? 妊娠中に下したときの対処法と胎児への影響

妊娠8ヶ月から始まる妊娠後期。お腹がどんどん大きくなってきて、お産の日が近づいていることを実感するころです。そんな時にひどい下痢があったらいろいろ心配になりますね。ここでは、妊娠後期の下痢について、原因と対処法、赤ちゃんへの影響など気になる疑問とその回答をまとめて解説します。

妊娠後期の下痢。よくある2つとその他の原因

妊娠後期に下痢がみられる妊婦
Lazy dummy

「下痢」とは一般的に「境界がはっきりしない形が定かでない便」や「水様便」のことで、1日に3回以上のゆるい便通がある状態のことを指します[*1]。

下痢の原因にはさまざまなものがありますが、ここでは妊娠中に下痢を引き起こすことがあるおもな2つの原因と、他に考えられる原因について紹介します。

(1)妊娠中のホルモンバランスの変化

妊娠中はよく便秘になりやすいと言われますが、逆に下痢になることもあります。これはともに女性ホルモンの1つである「プロゲステロン」の分泌が増えることによる影響です。

「プロゲステロン」には腸の動きを抑える働きがあり、その影響で妊娠中は便秘がよく起こるのですが、腸の動きが遅くなり食べ物の消化に時間がかかることで便秘とは逆に下痢が引き起こされることもあるのです。

なお、妊娠後期にはそれまでに比べ、より下痢になることが増えることがあり、これは出産に対する準備が妊婦さんの体の中で始まっているからともいわれています[*2]。

(2)ウイルスや細菌の感染によるもの

妊娠中は非妊娠時に比べ食中毒にかかりやすく、また重症化しやすいと言われています。とくによく注意が必要と言われるのが細菌の一種である「リステリア菌」です。感染すると下痢、発熱、頭痛、筋肉痛といった症状が現れますが、妊婦さんは妊娠していない人に比べて感染率が20倍も高いと言われているのでとくに注意が必要です[*3]。

ほかにも、「ノロウイルス」「ロタウイルス」「サポウイルス」「アデノウイルス」などのウイルス、「腸炎ビブリオ」「病原性大腸菌(O157など)」「カンピロバクター」「サルモネラ」などの細菌が感染したことによる胃腸炎でも下痢の症状は起こります。

(3)その他

その他、下記の場合などでも下痢をすることがあります。

・抗菌薬(抗生物質)、下剤、鉄剤などの薬の服用中
・食物不耐性(乳糖不耐症など)や食物アレルギーがある
・カフェイン、人工甘味料などによる影響
・過敏性腸症候群(IBS)、甲状腺機能亢進症などの病気がある

妊娠中の下痢「いつもと違う」と思ったら早めに受診を

ここまでで妊娠後期に下痢を起こす可能性がある原因について紹介しましたが、原因がなんであれ「いつもと違う」と感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。
以下に妊娠後期に下痢を起こした時の受診の目安を紹介します。

■すぐに受診する目安|妊娠中の下痢で受診が必要なケース

下記のような症状がある場合はできるだけ早く受診しましょう。

☑ 初めて経験するような激しい下痢
☑ 便に血や膿のようなものが混じっている
☑ 発熱、吐き気・おう吐などもある、排便後も腹痛が続く
☑ 脱水の症状がある(※)
※脱水による症状の例:尿が少ない/出ない/濃い色をしている、口や舌が異常に乾く、皮膚の弾力がない、めまいやふらつきを感じる など
☑ 下痢がずっと続いている/悪化してきた/体重が減ってきた
☑ 食中毒の疑いがある(同じものを食べた人も下痢をしている)


また、下痢とともに次のような症状がある場合も、できるだけ早くかかりつけ産科医にまずは電話で相談し指示を受けてください。

☑ 性器から出血している
☑ お腹の張りが続いている
☑ 胎動がそれまでより減った/なくなった

■自宅で様子を見るとき|脱水に気をつけ、市販薬に注意

さきほど紹介したような症状には当てはまらない場合も、下記の点に注意しましょう。

経口補水液で水分補給を

下痢がある場合は、便から大量の水分が失われるので、水分を飲むことで補充しましょう。下痢が数時間で治まらない場合は、塩分と糖分をバランスよく含んでいる「経口補水液」で水分を補うことが勧められます。それほどひどくない場合は、スポーツドリンクやスープなど、塩分を含む水分や液状の食品でも良いでしょう。

一方、乳製品やソーダ・ジュースは、乳糖や甘味料などの腸から吸収されづらい糖分やカフェインを含んでいる可能性があり、症状を悪化させる可能性があるので下痢の時は控えましょう。

市販の下痢止めは自己判断で飲まないで

市販の下痢止めには妊娠中に注意が必要な成分が含まれていることもあるので、自己判断で服用するのは止めましょう。服用の前には、かならず医師や薬剤師に妊娠中であることを伝え、相談してください。

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妊娠中〜産後の下痢について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎臨月の下痢は出産の兆候!? 主な3つの原因と気を付けるべき症状
関連記事 ▶︎産後の下痢は何が原因? 自宅でできるセルフケア方法

妊娠後期の下痢で気になる疑問Q&A

妊娠後期の下痢が気になる妊婦
Lazy dummy

ここからは、妊娠後期に下痢をしたとき気になる疑問にお答えします。

Q.妊娠後期の下痢で赤ちゃんに影響はあるの?

A. 一時的なものなら心配ありません。ただし、食中毒などの感染症には気を付けて。

ひどい下痢で脱水症状が進んでいるようでなければ、赤ちゃんへの影響はあまり心配しなくて大丈夫です。ただし、下痢の原因がリステリア菌やカンピロバクターなどの場合は、菌が胎盤を通って胎児に影響を及ぼす可能性もあります。この場合は、「症状が出る前に生や加熱が不十分な食品を食べたかどうか」がカギに。思い当たる場合は医師に早めに相談してください。

Q.妊娠後期の下痢で早産になることはあるの?

A. これも基本的には心配ありません。ただし、お腹の張りや出血を伴う場合は早めに受診して。

下痢になったからといってすぐ早産になるのではと心配する必要はありませんが、脱水状態になると「お腹が張りやすくなる」こともあるようです。お腹の張りには生理的で心配ないものもあれば、中には早産の兆候である場合もあります。

もし、下痢のほかに「お腹に張りを感じる回数が多い」「出血がある」「張りが続く、持続的な痛みがある」「休んでも治まらない」「張りを感じる回数が増えてきた/間隔が短くなってきた」「いつもは感じる胎動を感じない/胎動が少ない」などの症状がある場合は、産院に電話で相談してみましょう。なお、破水した場合もすぐに産院に連絡し、指示に従ってください。

まとめ

妊娠8ヶ月以降となる妊娠後期は大きなお腹を抱えて、日常生活もだんだんと不自由になってくるころ。下痢はつわり中のママなど妊娠初期にもよく見られ、時期にかかわらずしばしば起こることがありますが、出産の近づいてきたこの時期にお腹を壊すと少し慌ててしまいますね。ここで説明した通り、妊婦さんは普段よりお腹の調子を崩しやすいものなので、下痢をしてもあまり心配し過ぎないでほしいのですが、いつもと違う症状や下痢のほかに気になる症状などがある場合は早めに受診するようにしましょう。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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